栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第65回大阪杯回顧~重のフレンチ、手先の強さで逃げ圧勝

2021-04-07 11:38:59 | 血統予想

阪神11R 大阪杯
◎2.サリオス
○7.コントレイル
▲12.グランアレグリア
△8.レイパパレ
サリオスは母方に入るデインヒルの血脈構成を増幅した配合で、父ハーツクライにも母サロミナ(独オークス)にも全く似ておらず、配合どおりデインヒルを巨大にしたような馬だ。このようにデインヒルが表現されたハーツ産駒は、その強大なパワーを受け継ぐがゆえに、グラティアスやワーケアやグレイルのように中山をパワーで捲れるような脚質になりやすい。土曜のダービー卿で2着に追い込んだカテドラルもハーツクライ×デインヒルだ。
今春は安田記念が大目標ということで、陣営は今でもマイラーという見立てのようだが、大きな馬で肉付きもいいが走りや加速などはやはり中距離馬に見えるし、だからコントレイルを負かすとしたら皐月賞しかないだろうと◎にした。結果はストライドロスなく大外をグルッと回したコントレイルに差し切られたのだから完敗だが、あの日の中山はインがかなり悪くて、そこを走ったヴェルトライゼンデやディープボンドは掲示板にも載れなかったがダービーや菊で巻き返した。あの悪いインをスルスル押し上げてコントレイルと叩き合ったのだから、終日雨予報の阪神内2000でイン有利なバイアスも想定するのならば、逆転不可能な半馬身差ではないだろう。姉サラキアも重は巧かった。ここで勝てなければ、ほんとにもうコントレイルには勝てないよ。
グランアレグリアはタピットの影響が強い爪や繋ぎだから道悪そのものは巧者。ただしタピッツフライ似のマイラー体型で、タフな馬場で時計のかかる決着になると2000のスタミナの問題が出てくる。レイパパレは424キロのディープ牝駒とは思えない手先の強い走りで、スローだと折り合い面は心配だが道悪を苦にするとは思えない。他となると、道悪だけで埋まる能力差ではないだろう。重馬場でもすごいレースを期待して。

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昨日まで日高に足を伸ばしていたので回顧が遅れました m(_ _)m

土曜の阪神芝は相変わらずイン有利でしたが、日曜は午後から降りはじめて、9R明石特別が稍重で行った行った行った、10R淀屋橋Sはやはり稍重でしたが逃げ粘るサウンドカナロアを8枠15番ビオグラフィーが差し切り、そして大阪杯を前に重になり、雨量が多く馬場が加速度的に悪化し、それに伴い内のほうが悪くなっていったとみるべきかと

レイパパレはこの馬場でも闘志満々で持ったままでハナに立つと、折り合いを欠かないようペースを緩めず逃げて前後半のラップは59.8-61.8、川田が直線で馬場のいいところに持ち出して追うと後続を突き放してしまう圧勝でした

当日パドックを見て「サリオスはベタ爪なので滑る馬場はアカンかもしれないが、レイパパレは鬼ではないか」と書いておいたんですが、422キロの小さなディープ牝馬でも全く非力なタイプではなく、しなるとか弾むというよりも手先の回転の速さと強さが印象的な走りで、脚元を見てもノメらず走れそうなイメージはあったんですよね

ディープ×クロフネとかディープ×フレンチデピュティには道悪巧者がよく出ますが、レイパパレの走りや脚元はフレンチデピュティとマルゼンスキー(Buckpasser)の影響を強く感じるもので、少頭数道悪ならドイツ血統やろと私は思ったんですが、北米パワーで先行圧倒という大阪杯でしたね

フレンチデピュティはDeputy Minister系屈指の優秀な種牡馬で、サウンドトゥルーやゴールドドリームのようなダートの鬼はもちろん、エイシンデピュティやレインボーラインのような重の鬼を出す血としても知られます

フレンチデピュティが伝える硬く立った繋ぎはIn RealityやEight ThirtyなどFair Play系由来と考えられ、Deputy MinisterはLadder≒Good Example6×4・4、フレンチデピュティはGood Example≒Eight Thirty5×4



小岩井農場の基礎輸入牝馬フロリースカップ(1907年輸入)にさかのぼる牝系で、牝祖ヤマニサクラはHarina=プリメロ4×4とNearco4・4×4という当時の日本では最高レベルの血統配合をしています

そこにHyperion3×4のトウショウボーイを配してナムラピアリスはNearco5×5・5・5、そこにウイニングチケットを配してテスコボーイ4×3としたオイスターチケットはファンタジーS3着のオープン馬



そこにNorthern Dancer≒Icecapade4×3のクロフネを配したブラックシェルはNHKマイル2着ダービー3着と活躍、ブラックシェルの全妹シェルズレイはローズSとチューリップ賞で2着し、ディープインパクトとの間にレイパパレとシャイニングレイを産みました

然るべき種牡馬を配し然るべき配合をつづけていけば、いつまでも牝系は色褪せないのだと、そんなことを教えてくれるレイパパレの血統表ですが、これもしかしオイスターチケットから金子血統なんですよね

モズベッロは返し馬で全くノメっていなかったのが印象的で、クロノジェネシスが圧勝したタフな宝塚でも3着に追い上げており、当時サートゥルナーリアに先着したのと今回コントレイルに先着したのはだいたい同じ意味合いで考えていいと思うし、私は道悪になっても上位人気で決まると思ってましたが、巧拙で順番が入れ替わるぐらいには急速に悪化していたとみるべきでしょう

あとこの馬はディープ×Storm Catらしい柔ストライドで走るので根は大箱向きで、もちろん雨は歓迎やったんですが、3~4角で外々を追い上げられるバイアスになっていたのもプラスだったかと

コントレイルはしなやかかつ強靭なストライドで爆発するには上滑りする馬場はプラスではなかったのはたしかで、古馬になって馬体に厚みを増し、斬れ味とスタミナの両方を殺がれてしまったような敗戦でしたが、東京1800良でグランとやったらすごい勝負になるんかなあ~と思いながら観てました

グランアレグリアはTapitの影響が強い脚元ですから道悪はこなすし、好位で折り合って直線半ばまでは手応えもあるように見えましたが、タピッツフライ(芝マイルの米G1を2勝)似のマイラー体型なのでさすがに最後は苦しかった…

あと前から書いてるように、この馬は母系にAureoleの血が入るので揉まれると気弱な面を見せるところがあり、完敗したのはアドマイヤマーズに捲られて萎んでしまったような朝日杯、直線でぶつかり合って戦意喪失したようなNHKマイル、そしてコントレイルに捲ってこられてプレッシャーかけられた今日の大阪杯、祐一と池添はマイルCSでも交代でグランの外に張り付いていましたね(グランに乗ったことがあるのはルメールと池添だけ)

サリオスはデインヒルが強い大型馬ですからパワー十分で、皐月賞では荒れたインをスルスル押し上げていたし、サラキアの弟なので道悪もプラスだろうと考えたのですが、ベタ爪なので上滑りする馬場はよくないようで、ノメっているからこそ松山くんはラチ沿いを走らせたんかなあと

例によってNETKEIBAの全頭血統解説より(モズベッロは想定リストにはありませんでした)

レイパパレ
シャイニングレイの全妹で、ブラックシェルやアンコールプリュの姪。母シェルズレイはチューリップ賞とローズSで2着。母母オイスターチケットはファンタジーS3着。ディープ×クロフネはステファノスやカワキタエンカと同じ。420キロの牝馬だが、カワキタエンカを小柄俊敏高速にしたようなイメージで非力ではなく、5戦5勝は全てエンジンが違うという勝ちっぷり。楽しみなG1挑戦だが、チャレンジCのようにスローになると押さえるのが大変かも。(距離○スピード◎底力○コース◎)

コントレイル
母母フォルクローレは北米2歳女王。母系にUnbridled's SongとStorm Catが入り、母はUnbridled≒Jaano2×3とIncantation4×5。まさにド真ん中のディープ黄金配合だ。ダノンキングリーなどと似たタイプといえるが、こちらのほうが3歳時から強靭で完成度も高かった。ディープ×Storm CatらしいしなやかさとWild Risk的ナタの斬れで走り、皐月賞でサリオスを差し切っているが本来は内回りより外回りベターだろう。(距離◎スピード◎底力◎コース○)



グランアレグリア
母タピッツフライは芝8Fの北米G1を2つ勝っており、牝系はマリスターやゴールデンフェザントと同じで芝向き。母父Tapitは北米リーディングサイアーでラニやラビットランの父。ディープインパクト×Tapitはアルーシャやプライドランドと同じ。母似のマイラー体型でしなやか体質で、高速巡行能力に優れた最強マイラーだが、脚元はタピット的で繋ぎは短く爪は小さく渋った馬場も巧者。2000のG1だとスローがベターだろうし、スローを折り合いたい。(距離○スピード◎底力◎コース○)

コメント (4)
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