栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第68回阪神JF回顧~「1/4ドイツ」のFrankel娘が2歳女王に

2016-12-12 17:52:29 | 血統予想

阪神11R 阪神JF
◎18.リスグラシュー
○7.ブラックオニキス
▲2.ソウルスターリング
△1.ディーパワンサ
×11.ジューヌエコール
×17.ヴゼットジョリー
素質や将来性は◎▲だろうが、現時点での完成度と阪神芝1800mを1分46秒台で走破した実績から◎を軸にとった。母リリサイドはリファール4×3とミルリーフ5×3を持ち仏1000ギニーで1位入線(6着降着)。その父アメリカンポストは仏2000ギニーに勝った。ワンアンドオンリーしかりヌーヴォレコルトしかりウインバリアシオンしかりで、2歳~3歳春にある程度完成して大レースで好走するようなハーツクライ産駒は、母父がマイラーで、母がノーザンダンサー系の強いクロスを持っていることが多い。ブラックオニキスは細身で脚長でアルザオとチーフベアハート譲りのストライドで走るので、クローバー賞も札幌2歳Sも直線に入ってから加速しているから本来は大箱向きだろう。デイリー杯は上がりだけの競馬で反応できなかったが、持続戦での穴はこれか。

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昨日はウインズで打った後、メタボ博士たちと「創作居酒屋 ちからんち」へ







ここ日曜もやってるし、海鮮ものだいたいいけるので重宝してます(でも「ふる里」には叩き合いでちょっと負けるかな)

この日も外を回して勝ったといえるのは単勝130円のシャケトラぐらいで、阪神芝は内伸び優勢のバイアス、それだけに外枠を引いたリスグラシューがどう乗るかが注目されました

レースは前半46.7-後半47.3で勝ち時計1.34.0、メジャーエンブレムが先行押し切った昨年(46.9-47.6)と似たような淀みない流れで、スピードの持続力も要求されるレース

ソウルスターリングはこんなに行けるのかと驚かされるほどの行きっぷりでイン3番手へ、メジャーエンブレムとは鞍上も同じでしたが勝ち方もよく似ていて、直線で追い出されてからもビュンと鋭く斬れるというよりは確かな足どりでゴールまで駆け抜けたという完勝でした

血統については「競馬道Online」の有力馬解説より再掲します

ソウルスターリング
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014105535/
母はドイツ血統の中距離馬
母スタセリタは仏オークス、ヴェルメイユ賞、ビヴァリーDSなど仏米の芝中距離G1を6つ勝った。その父Monsunはドイツの名種牡馬でノヴェリストなどの父。そこへ1600~2000mの大レースを勝ちまくった名馬Frankel(ミスエルテの父でもある)が配された。FrankelはNorthern Dancer3×4を持つので、ドイツのアウトサイダー血脈が強くNorthern Dancerのクロスを持たないスタセリタとの配合は合っている。3歳になっての成長力や距離延びてのしぶとさではミスエルテより上だろうと思っているが、まだ完成途上の中距離馬でマイルの速い流れも経験していない。ここを素質だけで勝ちきれるかとなると半信半疑だ。

ちなみに勝利騎手インタビューでも語ってましたが、スタセリタの仏オークスとヴェルメイユ賞とサンタラリ賞の勝利はともにルメールの手綱

まあ望田的な言い方をすれば、母父MonsunがKaiserkrone=Kaiseradler4×4、Arjaman≒Alchimist≒Aditi5・6・7×5・6・7・7・8で、このドイツ血統を1/4異系とした「3/4Northern Dancer、1/4ドイツ」の好形になっているといえ、たとえばGalileoなんかも同じような配合形ですが、このことはソウルスターリングの繁殖牝馬としての価値を更に高めるものだろうと

そういえば12/7のエントリで「ドイツ血統を引く馬はだいたい真っ黒で、調べてみたらAlchimist(blk)≒Aditi(dkb/br)≒Arjaman(blk/br)、ドイツのDark Ronald三銃士はみんな黒かった」という話を書きましたが、ソウルスターリングは左後一白で真っ黒(青鹿毛)ですな

今日のレースぶりは前2走と比較しても前向きさがあり、桜花賞に向けて視界良好といえるものでしたが、Frankelの母系に入るデインヒルもBlushing Groomも牝馬はスプリンター~マイラーが出やすいラインで、ソウルスターリングやミスエルテがマイルで気の張ったレースを見せるのはそういうところからも由来しているのかもしれません

栗山ブログによると、Frankelの初年度産駒からはすでにヨーロッパで4頭の重賞勝ち馬が出ており、
Fair Eva…プリンセスマーガレットS(英G3・芝6F)
Frankuus…コンデ賞(仏G3・芝1800m)
Queen Kindly…ロウザーS(英G2・芝6F)
Toulifaut…オマール賞(仏G3・芝1600m)
この4頭のうち、Frankuus以外の3頭は牝馬で、いずれも1600m以下の重賞を勝っています

たったこれだけのデータであれこれいうのは早計ですが、Blushing Groom系のバゴが牝駒は気性の勝ったマイラーが多かったり、デインヒル系のスニッツェルが牝駒はスプリンターばかりだったり、それと似たような傾向がFrankel産駒にもあるのかもしれません

阪神ジュベナイルフィリーズはソウルスターリング~栗山求の血統BLOG
http://kuriyama.miesque.com/?eid=2197

まあ仮にそんな傾向があったとしても、ソウルスターリングはFrankel牝駒の中でもかなり持続力や成長力に富んだタイプだとは思います

リスグラシューは出遅れたので腹を決めて大外から追い込みましたが、今日の馬場バイアスではここまでが精一杯で、しかしまあこの馬も強い

小柄ですが牝馬とは思えない野太い末脚はMill Reefの影響を強く感じさせ、また小さいなりに後駆の肉付きはけっこうよくて、トモの緩さが弱点になることが多いハーツクライ産駒が2歳~3歳春にある程度完成するには、「母父がマイラー(タイキシャトルやスピニングワールドやStorm Bird)で母がNorthern Dancerのクロス」という配合形が望ましく、そういう配合によって早期に後駆に肉をつける必要がある、という持論を体現してくれている馬でもあります
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014106220/

レーヌミノルは1400ベストかなあとみていたのですがマイルのこのペースでもしぶとく食い下がって3着、前2頭には完敗ですが、ダイワメジャーですから正攻法で乗ったのも正しい

ディーパワンサとジューヌエコールはともに「父中距離×母マイラー(スプリンター)」の配合形で、しかも母がHalo(Glorious Song)のクロスですから機動力で立ち回りたいタイプ

だから外回りのマイル戦だと、もう少しペースが緩んで上がり特化のレースになってほしかったかな、来春はフィリーズレビューで巻き返しをかけたいところでしょう

コメント (1)
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香港国際競走回顧~イン伸び馬場で明暗、中距離は歓喜、短距離は無念

2016-12-12 12:19:38 | 血統予想

12回11日目8R 香港カップ
◎2.モーリス
○8.シークレットウェポン
▲1.エイシンヒカリ
△4.ブレイジングスピード
×3.デザインズオンローム
注5.ステファノス
昨年の香港Cはエイシンヒカリとヌーヴォレコルトでワンツー。Qエリザベス二世Cはステファノスが2着。最近ではトウケイヘイローやエイシンフラッシュも馬券に絡んだように、日本の芝中距離馬は世界のトップレベルで、秋天で勝ち負けできる中距離馬ならば香港CやQエリザベス二世Cでも勝負になると考えるべきだ。またデザインズオンローム、アキードモフィード、ウェルテル、ブレイジングスピード、ミリタリーアタックと、最近の沙田2000mの大レースで勝ち負けしている馬はほとんどがダンジグの血を引いている。秋天と香港マイルの勝ち馬で、ダンジグの血を引くモーリスがここは譲れないところ。クイーンズリングはエリザベス女王杯では◎にしたが、エイシンヒカリが緩めず逃げるとするとベストは1800mだけに微妙だ。シークレットウェポンはミルリーフを活かした配合で斬れ味なら一番だろう。前走のように一発狙いで追い込めばここもハマる可能性はあるし、鞍上も達者なので怖い。

12回11日目7R 香港マイル
◎1.エイブルフレンド
○7.ネオリアリズム
▲3.ロゴタイプ
△5.ビューティーオンリー
×12.サトノアラジン
注13.サンジュエリー
最近の香港マイルやチャンピオンズマイルの連対馬、エイブルフレンド、ヴァラエティクラブ、ゴールドラン、ジャイアントトレジャーなどの血統表をみると、ブラッシンググルームやストームキャットやトムフールやサーアイヴァーやサーゲイロード、このあたりの血がキーになっている配合馬が目立つ。平坦なマイル戦での機動力と斬れ味を兼備しているタイプが強いイメージだ。ビューティーオンリーは父の母がストームキャットと似た組成で母父父ロイヤルアカデミーはストームキャットの3/4兄。クロスがセクレタリアト≒サーゲイロード3×5で配合どおりしなやかに斬れるが、これならば長期休養を叩いたエイブルフレンドの復権に期待したい。モーリスに真っ向勝負を挑んだ昨年も強い3着というべきだ。ネオリアリズムはマイルCSは立派な内容だったが、マイラーではないのでここも勝ちきるまではどうか。サトノアラジンは大跳びなので沙田1600mで14頭いると捌ききれない心配がある。

12回11日目5R 香港スプリント
◎6.ビッグアーサー
○2.ラッキーバブルズ
▲4.ノットリスニントゥミー
△1.エアロヴェロシティ
香港競馬はオセアニア産のスプリンターの層が厚く、香港スプリントは日本馬にとって厚い壁といえる。しかしながらロードカナロアの連覇にカレンチャンの5着入着と、サンデーサイレンスの血を引かない短距離王が遠征したときは通用しているとみれば、非サンデーサイレンスの短距離王が世界一の鞍上で挑むのだから、ビッグアーサーにカナロア以来の快挙を期待したくなる。

12回11日目4R 香港ヴァーズ
◎4.サトノクラウン
○1.ハイランドリール
▲2.シルバーウェーヴ
△13.ヌーヴォレコルト
注9.フレイムヒーロー
香港国際競走は長い距離ほど遠征馬の台頭が目立ち、昨年のヴァーズは欧州馬が上位独占だったし、ジャガーメイルが毎年好走していたのもまだ記憶に新しい。今年はハイランドリールとムーアのコンビが連覇を狙ってきたが、2400mで一番買いたい日本馬はサトノクラウンだ。母方はマイラー色が強いのだが、インディジェナス(98年ヴァーズの勝ち馬でJCでスペシャルウィークの2着)と同じマージュ産駒で、ダービー3着といい京都記念完勝といい、長いところでゆったり走ったときはジャガーメイルに見劣らないパフォーマンスを発揮している。モレイラなら◎を打つ価値はある。

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この日の沙田競馬場は明らかにイン伸び馬場で、昨年の香港CのヌーヴォレコルトやJCのラストインパクトを見てのとおり、こういうバイアス下では露骨にインを狙ってくるのがライアン・ムーアでもあります

香港Cは出遅れたので腹をくくってインに潜り、直線も最内から追い出すとモーリス一頭だけ別次元の加速で、異次元のアクションで、ゴールしたときは3馬身差という戦慄の圧勝

エイシンヒカリが中盤の1200mを70秒で引っ張ったのでラスト400mは24.15かかり、Mill Reef的なストライドで走るSecret Weaponが直線立て直してジワジワ伸びて、好位のステファノスとラブリーデイを差し切るという持続戦になりました
http://www.pedigreequery.com/secret+weapon12

クイーンズリングは外を回らされたのが痛恨でしたが、日本馬の中で距離適性が最も短いと思われる(エリ女で◎にしたときも私は1800ベスト説で書いてます)この馬が伸びあぐんだのも、ビッシリ2000mを走るレースになったからで、そんな中で一頭だけまるで別のレースをしていたという圧勝でした

モーリスも私は1800ベスト説ですが、たとえば1400ベストのストレイトガールがスプリントとマイル両方ぶっこ抜いたようなもんで、エンジンの違いで1600~2000をぶっこ抜きつづけたのがモーリスだったんじゃないかと思いますね

香港マイルは安田記念やマイルCSで上位を賑わした3頭が5,7,9着に終わり、それぞれ敗因はあるでしょうが、やっぱり1600m以下の地元香港勢の層は厚く、このマイルも過去10年で16頭の日本馬が出走し、馬券に絡んだのはモーリスとグランプリボスだけの[1-0-1-14]

ロゴタイプは母父サンデー、サトノアラジンとネオリアリズムは父父サンデー、「1/4サンデーサイレンス」はカップやヴァーズでは毎年のように勝ち負けするのに、マイルやスプリントではなかなか出番がない

勝ったBeauty Onlyは予想コメントにも書いたように、父の父がデインヒルで、父の母L'On ViteはSecretariat×Northern Dancer×Chop ChopですからStorm Catと似た血脈構成で、母父の父ロイヤルアカデミーはStorm Catの3/4兄、そして自身のクロスがNorthern Dancer4・4×5(3/4Northern Dancerクロス)と、Sir Ivorを経由するSecretariat≒Sir Gaylord3×5
http://www.pedigreequery.com/beauty+only

これは昨年まで香港のマイル王に君臨しつづけたAble Friend(父系がStorm Catで母父父がGreen DesertでクロスがSir Ivorを経由するSecretariat≒Sir Gaylord5×4・6)となかなかよく似た配合といえ、2頭の血統表から「沙田の芝マイルの大レースを勝つのに必要なもの」をある程度実感できます
http://www.pedigreequery.com/able+friend

Able FriendもBeauty Onlyも、安田記念よりはマイルCSのほうが斬れるようなタイプといえるかな、それが沙田のマイル戦のイメージともいえるのではないかと

私は昨年のチャンピオン復活に賭けたんですが、Beauty Onlyの動きに呼応して動いたAble Friendは完全に伸び負けで、どうやら新旧交代を決定づけるレースやったようです

サトノアラジンは大跳びで馬群に突っ込むと不利を受けやすいし、今日みたいなイン伸び馬場ではなおのこと馬群が密集するので、ああいう競馬になってしまうのは半ばやむを得ない

スプリントは「非サンデーサイレンス」のビッグアーサーに期待したんですが、ムーアといえども1200の外枠では内に潜るのは難しかったし、外々を回ってねじ伏せられる馬場バイアスでも相手関係でもなかった

レースはエアロヴェロシティAerovelocityが好位インで立ち回って抜け出し、高松宮制覇後は体調を崩してスランプがつづいていて、近走もLucky Bubblesが1着2着でAerovelocityは3着どまりという結果がつづいていたんですが、この大一番で古豪復活とは
http://www.pedigreequery.com/aerovelocity
配合については下記エントリで詳しく書いたのでそちらをご一読ください

Lucky Bubblesは道中は後方のイン、4角でビッグアーサーの外に持ち出して追い込みましたが、勝ち馬とはそこのコース取りの差だけだったかな、という惜しい2着でした

ヴァーズはスタートからゴールまでサトノクラウンとモレイラだけを追いつづけていて、向正面で内からスルスルと進出しはじめたときには胸が高鳴り、しかし前の馬が下がってきていっしょに下がってしまったときには絶望の淵に落とされ、しかししかし直線で馬群を割って抜け出してきて、もう楽勝かと思われたHighland Reelに一歩ずつヒタヒタと迫りはじめた

あの直線ではウインズB館の5Fに響きわたるような、とても日本語では表記できないような叫び声を発してました(^ ^;)

3着One Foot in Heavenは名牝Prideの息子で重馬場のコンセイユドパリ賞(仏G2・芝2400m)に勝ち凱旋門6着、His MajestyにAllegedとVaguely Nobleを合わせたスタミナ満点の配合馬で、欧州馬がスタミナで好走するようなレースでこそサトノクラウンは最大限に光り輝くのだ、ということをモレイラ神が証明してくれた

まあしかしこの国際競走4Rを見て改めて実感したのは、ムーアとモレイラは神、スミヨンも才能別格、パートンとボウマンは名人、このレベルの乗り役は世界中のどこで乗ってもムーアでありモレイラでありスミヨンであり、パートンでありボウマンであるのだと

ヌーヴォレコルトとスマートレイアーは少なからず外枠に泣いたという結果で、前者は外を回らさせるのが嫌でいったん下げざるをえなかったし、後者は終始外を回らされてしまい、それでも掲示板に載ったのだから着順以上に立派な内容だったといえるかと

サトノクラウンの配合については下記「202X年から逆算した…」を参照していただきたいですが、私はセレクトセールで実馬を見たときはマイラーに見えたし、実戦で走るのを見たときも2000mぐらいの馬だろうと思ってて、しかし「サトノクラウンの末脚は典型的な欧州12Fタイプのそれだ」と『サラブレ』のラッ血対談で言いつづけてた人がいた

種馬になるべき名配合やと書いてきた私としては、もう半分意固地になってるだけの◎やったんですが、あのMahmoudさんの言葉がその意地を後押ししてくれたのです

長くなったのでJFの回顧は別にやります

第45回高松宮記念回顧~短距離王国の王者、サンデーの血をねじ伏せる
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/85d70fc54d4ab512a6ed4b7e6485e91a
ライバルの血(2)~202X年から逆算した、配合史的ダービー予想
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/182fa417ea5535b5853834df264abff0

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