栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

「血統クリニック」マイルCS

2014-11-23 15:26:01 | 血統クリニック

今日は珍しく、レース発走前に再掲します

ワールドエース
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106353/
プリンスオブウェールズS(英G1・芝10F)とイスパーン賞(仏G1・芝1850m)とジャックルマロワ賞(仏G1・芝1600m)に勝ったManduroの甥で、母マンデラも独オークス(独G1・芝2200m)3着の活躍馬。牝祖MariapolisがAcropolis産駒でHyperion3×3、そこにArjaman≒Aditi3×4・4のNorfolkがかけられ、そこにTicino4×3のElektrantがかけられた3代母MandelaugeはAlycidon=Acropolis4×3、Ticino4・5×4。母マンデラはLis≒Norfolkの3/4同血クロス3×3で、このMasetto×Ticinoの組み合わせはArjaman≒Aditi3×4になる。血統表のどこを切ってもHyperionと“ドイツのDark Ronald三銃士”の組み合わせばかりで、そこにディープインパクトが配されたワールドエースはBurghclere≒Egina≒Mariapolisのニアリークロス3×5・6(HyperionとDonatelloとFair Trial~Son-in-Lawの組み合わせのクロス)となり、ディープ産駒としてもハイインロー的な組み合わせに傾注した配合といえる。
叔父のように先行して後続がくればくるだけ伸びるというレースができる血統だから、デビューからダービーまでずっと◎を打ちつづけながら「先々は前で受ける脚質にシフトしていくべきだ」と口酸っぱく言いつづけてきたが、マイラーズCではシュタルケが出していって好位追走から早め先頭、直線はフィエロがくればくるほど伸びるという完勝だった。あの勝ち方はほんとうにManduroに瓜二つで、もちろん古馬になっての成長があってのものだろうが、奇しくもドイツ人騎手の手綱によって重厚なドイツ牝系の血が覚醒した瞬間だった。毎日王冠は出していけず後方から、直線は前の馬たちと同じような脚で上がってきただけ。体型に伸びがないのはマイラー的というよりはHyperion的だからで、Manduro同様マイルでも中距離でもOKというタイプとみるべきか。新コンビを組むブドーを背にした一週前追いではハミをしっかり噛んで闘志を見せながら坂路を駆けあがっていた。あの感じならばマイラーズのような競馬が期待できるのではないかと思うし、この若きフランス人もルメールやスミヨン同様「集中力を伴った折り合い」のタッチが抜群の名手だ。

ミッキーアイル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2004110007/
ハーツクライと同じMy Bupersの牝系で、3代母ステラマドリッドはエイコーンSなど米G1を4勝した一流馬でダイヤモンドビコーの母でもある。母父ロックオブジブラルタルはデインヒルの代表産駒の欧州マイル王だが、力馬すぎて日本では期待ほど成功しなかった。代々パワーの勝ちすぎた血が配されてきてパワーの勝ちすぎた配合をしている母スターアイルは、500キロを超える巨漢でダ1000mで2勝したパワースプリンター。そこにディープインパクトのしなやかな体質や無駄のない脚捌きが加わることで、ミッキーアイルは力強くかつしなやかに動けるマイラーとなった。母は米血ステラマドリッドを1/4異系とする「3/4欧,1/4米」でNorthern Dancer4・4×3、自身はサンデーサイレンスを1/4異系とする「3/4欧,1/4米」で、LyphardとNureyevとDanzigとBe My Guestを通じる「Northern DancerとFair Trial~Lady Juror」のクロスにBurghclere≒Fair Alyciaのニアリークロス。昨年のPOGでディープのイチオシだと書いてきたし、フィエロ(母がロックオブジブラルタルの全妹)の配合もずっとほめてきた。
母父が強いマイラー体型だが、ムキムキのマッチョではなくディープらしいしなやか体質で、若いころのリアルインパクトのように中山記念でも好走できるイメージ。運動神経が良いのでゲートが開いたときの反応が抜群で、ダッシュが良すぎて押さえる競馬ができないままここまできたというべきだが、一本気な気性は母系に入るGallant Man譲りか。スワンでは凄い加速で突き放したところで馬が遊んだようで、ゴール前は詰められていたがしかしゴールを過ぎても2,3着馬には抜かれておらず、この馬が一番余力があったように見えた。ゆくゆくは毎日王冠とか中山記念を勝つような馬に完成するのではないかとも思っているのだが、現状はマイルを一本気にスピードにまかせて走り抜く競馬が合っている。昨年11月に京都内1600mを1.32.3で走破した馬が、一年経って京都外1600mを何秒で走破するのか、結論としては勝てばアッサリというしかないだろう。

トーセンラー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008102985/
母プリンセスオリビアはNorthern Dancer4×3、Goofed4×4、ハイハット≒Aureole4×5、Nashua≒Nantallah4×6をクロスする強力かつ綿密な父母相似配合で、本馬の他にもFlower Alley(トラヴァーズS)とスピルバーグとブルーミングアレーを産んでいる名繁殖。ディープインパクトとの配合はLyphard4×4にBurghclere≒Aureole3×6となり、古馬になって馬体重も増えて逞しくなって本格化したトーセンラーとスピルバーグの成長曲線はBurghclereのニアリークロスならではだろう。母父Lycius(英2000ギニー2着のマイラー)の影響も強い体型で、ベストは1800mとみているが折り合いがつくので得意の京都ならば長い距離にも対応する。昨年は◎としたが、今年も京都大賞典3着を叩いてここに照準を絞ってきた。ピュアマイラーではないが、今年も1800m馬の格で勝ち負けだろう。

グランデッツァ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105989/
マルセリーナの3/4弟。母マルバイユはアスタルテ賞(仏G1・芝1600m)勝ち馬で、Mill ReefとSir Gaylordを通じるナスキロクロス、他にMy Babu≒Klairon5×5やTudor Minstrel6×6やTom Fool6×7など緩やかな父母相似配合になっている。そこにアグネスタキオンが配されて、「父中距離×母マイラー」の配合形、体型はタキオン似だが体質は父よりナスキロ柔く少しトモが非力になった。母系に入るHabitatやRound Tableの影響も感じられる前輪駆動で、都大路の凄い時計での圧勝をはじめ、直線に上り坂のないコースの1800mでは[3.1.0.0]、毎日王冠は直線の上り坂で急に元気がなくなったようにみえた。京都で見直せる余地は多分にあると思うのだ。

グランプリボス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103388/
3代母Nervous Pillowの産駒にBCジュヴェナイルフィリーズ3着のFine Spiritが出るが、近親にこれといった大物はいない。サクラバクシンオーにサンデーサイレンスとナスキロ(Secretariat)を重ね、父よりも体型に伸びが出て父よりも体質が柔らかくなり、父よりも距離適性が長くなったマイラー。
しなやかなストライドで走るので東京と外回りの高速馬場のマイル戦でベストパフォーマンスを叩き出してきたが、タフな馬場だと凡走してしまうような非力な面はあって、それだけに極悪馬場の安田記念の力走には驚かされた。スプリンターズは好位差しで勝ちにいったが、未だにスプリンターとしては柔らかすぎる体質なので正攻法で1200mのG1を勝ちきるのは難しい。1200mで出していった後だけに折り合い面の心配は残るが、今の京都は外差しはなかなか厳しい状況だから、枠次第では好位のインで立ち回るような競馬を三浦皇成は選択してくるかもしれない。

ダノンシャーク
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008105554/
レイカーラの半兄で、3代母の子孫には名馬Montjeuや愛1000ギニーのAgainが出る。母カーラパワーはナスキロ+フレンチな外回り向きの斬れ味とゼダーンのマイラー体型を強く伝える繁殖牝馬で、そこにディープインパクトでAlzaoとCaerleonを通じるNorthern DancerとSir Ivor≒Foreseerのクロスだからナスキロ柔いマイラーに出たのは順当。東京と外回りの芝マイルでは[3.4.4.4]と高値安定だが、昨年のマイルCS3着、安田記念は3着と4着でG1ではもうワンパンチ足りない。そこはサンデーとナスキロベースの“柔らかすぎるマイラー”の限界かもしれない。最近前向きになってきて先行しているが、今回は陣営はタメ差しを示唆している。岩田ならイン差しに賭けてくる可能性も高いから、脚をタメてロスなく運んで3着を拾ってくるかも。

フィエロ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106035/
母ルビーはロックオブジブラルタル(デインヒルの代表産駒の名マイラー)の全妹にあたり、つまり父ディープ×母父ロックオブジブラルタルのミッキーアイルとは3/4同血の間柄。ディープにNorthern Dancer系の頑強なマイラー血脈をもってきた成功パターンで、特にBurghclere≒Fair Alyciaのニアリークロスが男馬としての大物感を醸し出しており(トーセンラー、ミッキーアイル、ワールドエースもBurghclereのニアリークロス)、ほとんどのレースで◎を打って配合をほめてきた。デインヒルが強いマイラー体型はミッキーアイルと同じだが、こちらは体質も母方が強くてかなり頑強で、パワーでノシノシと加速する長めマイラー。京都の高速馬場よりは阪神の重馬場のほうがパフォーマンスは上がるタイプで、この相手に勝ち負けするにはさすがに馬場が渋ってほしいところだろう。

ダイワマッジョーレ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105925/
サトノキングリーの全兄でハイアーゲームの3/4弟。母ファンジカはランカシャーオークス(英G3・芝約11F)とイエルバブエナH(米G3・芝11F)に勝ち、その母FlorieがSir Gaylord3×4。産駒にもナスキロ柔い斬れ味を伝え、これまで頭の産駒が23勝を中央であげているが、芝20勝のうち14勝が東京と外回りでのもの。いっぽう父系からみると、母系にニアリーDrone(Sir Ivor)とHyperion+Donatello(Aureole)が入る「ダイワメジャー黄金配合」といえる。
本馬もダイワメジャー産駒にしては細身柔らかな体質でストライドで走るほうで、だから中山や阪神内回りでは印を落としてきたが、毎日王冠は馬体減の影響かあまり見せ場もなくブービーに沈んだ。叩いてどれだけ変わってくるかだが、昨年はスワンとマイルCSで2着と京都外回りは実績があるだけに一概に軽くは見れないか。ただしスワンを叩いた昨年と比べると毎日王冠を叩いた今年はマイルのペースに乗りきれるかがポイントで、母からナスキロ柔さを受けているとはいえそこはダイワメジャー産駒、G1で好走するには昨年のような好位差しで運びたい。

サダムパテック
http://db.netkeiba.com/horse/2008102652/
母母ダイアモンドシティの産駒にサバーバンH(米G2・ダ10F)2着のCatienusがいる。サンデー×Seattle Slew×Mr.Prospectorという配合のアウトラインがリーチザクラウンと似ていて、伸びのある体型でストライドで走るところも似ているので若いころからよく比較して書いてきたが、サンデーとミスプロとナスキロで柔らかくなりすぎそうなところを、母が持つGlamour≒Francis S.7×4やNantallah≒Nashua6×4などのパワーが支えている。
一昨年の勝ち馬で、その一昨年が稍重で上がり11.5-11.9、今年の中京記念勝ちも稍重で上がり12.2-13.1。外回り向きのマイラーだが、年を食って差し脚がますます渋くなってきており、高速馬場よりは少し時計や上がりがかかっての狙いだろう。

クラレント
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105009/
母エリモピクシーはエリザベス女王杯のエリモシックの全妹にあたり、自身も京都牝馬S3着などオープン級で活躍した。Drone≒デプス3×3(ナスキロ+Tom Fool)のニアリークロスを持ち、母としてもマイルのスピードを強く伝え、本馬の他にもリディル、レッドアリオン、サトノルパンとオープン級のマイラーを毎年のように産んでいる。本馬も母似のマイラー体型だが、父がダンスインザダークのぶん、リディルのようにマイルで弾けるスピードとかサトノルパンのようにマイルで弾ける斬れ味は持ち合わせていない。だからこそ川田や田辺や岩田が前で受けるようになって、母系のLyphardやVaguely Nobleの血を活かしたレースをするようになって戦績が安定してきたのだ。とはいえ関屋とオータムHの2連勝も、マイラーとしての爆発力がG1級なのだというほどの勝ち方ではなかった。そこはマルカフェニックスやダノンヨーヨーやザレマなどと同じで、G1レベルの戦いになると「ダンスインザダークのマイラー」という矛盾と限界からは逃れられない、ということか。

エクセラントカーヴ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105721/
アドマイヤベガやハープスターでおなじみのアンティックヴァリューの牝系だが、ベガを経由しない傍流で、このオールドスタッフ→アンティックオークションの分枝にはコレクターアイテムやサンライズブレットやアンティークコインやオルトリンデなどマイラーが多い。(Mr.Prospector直仔でNashua≒Nantallah3×2の)Geiger CounterのパワーとスピードがONになりやすいからだろう。そこにA.P.Indyが配された母インディアナカーヴはWeekend SurpriseとPokerとRivermanを通じるナスキロラトロのクロスで、現役時は芝1200~1800mで5勝。エクセラントカーヴのダイワメジャー産駒らしからぬ伸びのある体型と細身でしなやかな体質は母譲りといえる。
「サンデー×Seattle Slew×Mr.Prospector」のアウトラインだから“女サダムパテック”のイメージで書いてきた馬で、オータムHを勝ってはいるが本質は中山より東京向きで、距離適性もピュアマイラーというよりは1800m寄りではないかと思っている。京都外マイルは条件としては悪くないが、今の馬場で外から追い込むのはよほど抜きん出た脚がないとなかなか難しいというべきだろう。

ロゴタイプ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010103783/
父ローエングリンは一本気な気性でマイル近辺を活躍の場としたが、Singspiel(ジャパンC)×カーリング(仏オークス)という堂々たる中距離血統で、産駒も芝1800mの成績が最も良い。母母スターバレリーナは阪神内2000mのローズS勝ちでBold Ruler3×4、そして自身はHalo4×3にBold Ruler6×5・6だから機動力抜群の配合で、デムーロ兄弟が乗って中山でフワリと捲る脚質に出たのは順当。
中山記念は58キロを背負って好位のインで上手に立ち回り、皐月賞馬の地力を再確認させる3着だった。ただ外マイルとなると、行っても差してもちょっとハマりにくいのではないか。

タガノグランパ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105005/
タガノテイオーの近親で、キングカメハメハ×スペシャルウィークはクラリティシチーと同じ。母父がサンデー系でクロスがNorthern DancerとMill Reefだからローズキングダム的なアウトラインでもあり体質はナスキロ柔い。父も母もNorthern Dancerのクロスというのは感心しないが、本馬の場合はNijinskyやトライマイベスト≒マルゼンスキーやMill Reeなどのクロスで父母相似配合的でもある。
母タガノグラマラス同様この馬も外回りベターで1800mベストだろうと書いてきたが、Blushing GroomのオールラウンドさがONになった馬で1400mから3000mまで好走レンジは幅広い。裏を返せばG1レベルになるとどんな条件でも好走はするがハマりきらない4着…というキャラが定着しつつあり、久々のマイルでそのイメージを払しょくしたいところだろうが、さて。

エキストラエンド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105771/
母カーリングは仏オークス馬で、その父Garde Royaleはジャンドショードネイ賞(仏G2・芝2400m)の勝ち馬だが、母母父TyrantはBold Ruler直仔でNasrullah≒Perfume2×3でダ7FのカーターH勝ち、産駒にも仏1000ギニーのL'Attayanteなどがおり、本馬はこのマイラー資質がONになったと思われる体型や走りで、全兄リベルタスとはかなりタイプが違うと書いてきた。むしろ半兄のローエングリンに近い馬だろう。京都芝マイルには実績があるが、マイラーズCの内容からするとダノンシャークあたりとならば互せるという評価が妥当だろう。

レッドアリオン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010101775/
母系解説はクラレントを参照。リディルの全弟にあたるが、こちらのほうが胴伸びのある体型でスピードの乗りもマイラー然としないと書いてきた。60秒ちょっとで1000mを通過して上がり32秒台で追い込んだという意味では富士と西宮は同じようなレースをしていて、準オープンでは届いたけれど重賞では届かなかったというべきなのだろうが、これは1600mよりも1800mの流れのほうがこの馬に合っているからという見立てもできる。やっぱり1800mで前で受けられるようになったときが、この馬の完成するときだという思いは変わらない。

サンライズメジャー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102469/
母母Careless HeiressはボウゲイH(米G3・芝8.5F)勝ち馬。ノーザンテースト≒The Minstrel3×5(Northern DancerとVictoria Park)の3/4同血クロスにノーザンテーストとVice Regentを通じるNorthern DancerとVictorianaのクロスで、全体にノーザンテースト血脈を増幅していてノーザンテースト的な体型とパワー体質を受け継いで道悪や急坂は得意、一方でHalo≒Red Godのニアリークロスなので高速馬場対応の脚捌きでも走れる1400m寄りマイラー。ここは中団から差す形になりそうだが、良で圏内まで差し届くには少し鋭さが足りないか。

サンレイレーザー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009103402/
サンレイジャスパーの半弟で、3代母Lake Champlainは愛1000ギニー2着。父ラスカルスズカはDrone≒Hopespringseternal4×3(ナスキロ+Tom Fool)を持ちコマンダーインチーフ産駒にしては柔らかな体質で、春天2着に菊3着など京都外回りでナスキロ柔く斬れる馬だった。本馬は母父Cozzeneからもナスキロ柔さを受け、少し動きは緩慢だがストライドでジワッと加速するので、戦績どおり東京や外回りに向いた脚質になった。
オープン入りしてからは差しに回ることが多かったが、芝での勝利は全て先行してのもので、父中距離×母父マイラーだから1600mをピシャッと差すというよりは1800mをフワッと流れ込むような脚質で、毎日王冠はスローで逃げたが引きつけすぎず緩めすぎず、この馬の出せる範囲の上がりで流れ込めるような展開に持ち込んだ田辺の手腕も光った。もともと丁寧に乗れる人だったが、見た目のキャラとは違って痒いところに手が届く繊細な騎乗ができる技術の持ち主だと前から思っている。ただマイルG1であの手は通用しないだろうし、ここで無理してミッキーに絡んでいくようなことはしないだろうしできないだろう。

ホウライアキコ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100693/
3代母Catopetlはセクレトの全妹にあたり、スカーレットブーケやFlower Bowlなどと同じBoudoirにさかのぼる牝系。ヨハネスブルグはStorm Cat≒Narrate(Storm Bird≒Nijinsky,Bold Ruler,Princequilloが共通)のニアリークロス2×3で、Storm Catの仕上がり早いスピードを高確率で伝えてファーストシーズン・リーディングサイアーとなった。産駒の代ではこのニアリークロスを緩和する方向の配合が望ましく、本馬の場合は母父サンデーサイレンスがNorthern Dancerもナスキロも持たないのがいい。一方で母母ホウライコメットはNorthern DancerにSecretariatにTom FoolだからStorm Catとかなり血脈構成が重なり、自身はMr.Prospector4×4にStorm CatとCatopetlを通じるNorthern DancerとSecretariatのクロスだから、父のニアリークロスを緩和しつつそのスピードを2歳時に完熟させようとした配合といえる。
京都外マイルは合っているのでNHKマイルよりは狙い目はあるのかもしれないが、そのマイルCはミッキーには完敗、3歳夏以降の成長という点でも疑問符がつく血統だから、ちょっと印は回らない。



ドイツでデビューして4連勝を飾ったManduroは、フランスの名門ファーブル厩舎に見出され、転厩してからはペリエとスミヨンとパスキエの3人が主戦をつとめた。
そしてペリエとのコンビでは[0.2.0.0]、スミヨンとは[0.2.3.0]とともに惜敗つづきだったのに対し、パスキエとのコンビでは[6.0.0.0]と全勝で、3つのG1勝ちも全てこのコンビによるもの。
ステファン・パスキエといえばディープインパクトが出走した凱旋門賞をRail Linkで差し切ったのが鮮明な記憶として残っているが、07年の仏リーディングジョッキーでもあり、JC(04年ポリシーメイカーで4着)や国際騎手招待にも何度か乗っていて日本で[1.1.2.16]という成績を残している。
この馬券に絡んだときの4角順位は①④②⑩で、日本での全20回の騎乗のうち14回が逃げ先行という“行く”ジョッキーで、この前受けスタイルがManduroのHyperionを絞り出していたことは容易に想像がつく。
どのレースを見ても直線では早々と先頭か2番手、そこから追い出してもビュンと速い脚を使うわけでもストライドが伸びるわけでもなく、同じようなフォームとピッチでゴールまで走りつづけて、最後は後続が根負けしたかのように少しづつ離されていく。
youtubeでManduroの動画をみるたびに「これがHyperionや!」と言いたくなるし、「ワールドエースだってこういうレースができるんや!こういうレースをして強い馬なんや!」とも言いたくなる。

初来日のブドーはここまで[7.5.3.31]、単回値161複回値129という期待にたがわぬ数字を残しているが、この全7勝(全て芝)の4角順位は②⑤②③③②③、フランス人らしく逃げはしないが(逃げたのは一度だけ)、ルメールやスミヨンやペリエと比較しても若さゆえの強気な積極策が目につく。
フランスのトップクラスだけに「適度な緊張と集中を伴った折り合い」のタッチは抜群で、出して行っても我慢させられる自信があるから出して行っているのだ。
来日時のプロフィールには「09年にファーブル厩舎からデビュー。ペリエやパスキエと同じ敏腕エージェントに見出されたので、“ペリエ二世”と呼ばれている」とあったが、パスキエがManduroを前受けで勝たせつづけたように、この怖いもの知らずの若者はワールドエースを出していくだろうし、追い切りでは引っかかる手前ぐらいの手応えで闘志満々に坂路を駆け上がってくるワールドエースを確認できた。

トーセンラーとミッキーアイルはデビュー前から配合を絶賛してきてG1でも◎を打ってきたが、トーセンラーはその配合の素晴らしさを昨年みごとに証明してみせたし、ミッキーアイルはまだまだ未完成でハナタレ小僧みたいなもんで、NHKマイルもスワンも青っ鼻たらしながら逃げ切っただけで、この配合が最強なのだと証明する機会なんてこれからいくらでもある。
だからここは、ここだけは、Manduroとパスキエのようなコンビが5歳の秋についに実現したのだから、こうなるともう予想ではなくて感情論になってしまうが、ここだけはワールドエースに肩入れしたくなる。

◎ワールドエース
○ミッキーアイル
▲トーセンラー
☆グランデッツァ
△グランプリボス

現時点ではこの印、追い切りと枠順を見てから、△を2,3頭追加したいと思っています。
 

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「血統クリニック」エリザベス女王杯再掲

2014-11-17 09:12:01 | 血統クリニック

昨日はヤンチャ同級生が急用で参戦できず、矢マキバさんと一緒に京都旅行に来られるはずだった方も入院されて来れなくなって、二人で新馬戦のパドックで落ち合って最終まで打って、それから木屋町の例の店でジンギスカン食って、それからどんぐりで軽くお好み焼きもつまんで、オッサン二人で一日中競馬の話ばっかりしてました(・∀・)

矢マキバさんはHNのとおりアロースタッドで種馬を扱っておられる方で、今はシニスターミニスターなどを担当されてて、昨日は東京8でシニミニ産駒のダンシングミッシーが勝ってニッコリ、東京最終では持ち馬のジャッカスバーク(栗山求のピック馬でもある)が火の出るような叩き合いを制してまたニッコリ

しかもその後のドンカスターで「よくわからんのでサウスヴィグラスとブライアンズタイムのアロースタッド馬券ですわ」「おお、京都のダートは差し追い込みがよく決まるらしいですから、いいんじゃないですかね~」と買ったミヤジエルビスとジャコカッテのスイチで決まって、一軒目は矢マキバさんの奢りとなりました(・∀・)

回顧はこれから、もう一度レースを見なおして書きますが、想定どおり去年と同じようなスローになったのに、ラキシスは去年と同じように好走したのに、メイショウマンボがアッサリ沈んだのはショックでした…

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メイショウマンボ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010102094/
ダイコーターが出るダイアンケーの牝系に、ライジングフレーム、シンザン、ヴェンチア、ミルジョージと確かな種牡馬が代々配されてきて、そこにジェイドロバリーが配されたメイショウアヤメは現フィリーズレビュー2着など短距離で活躍。そこにグラスワンダー、メイショウマンボと配されて、スプリングマンボ≒ジェイドロバリー2×3(Mr.ProspectorとNijinskyとSpecial)、Gold Digger≒Bramalea5×5・5、Northern Dancer5・6×5・6、Graustark=His Majesty6・7×5。スプリングマンボはNorthern Dancer4×3とRaise a Native3×4とGraustark5×4を持つ父母相似配合で、スズカマンボやスプリングサンダーをはじめ出走産駒9頭中8頭が勝ち馬(うち7頭が2勝以上)という名繁殖牝馬。この名繁殖の血脈構成を強力なニアリークロスで増幅し、良血の塊で自己主張が強いが大物は出さないジェイドロバリーが入るという弱点をも帳消しにしてしまった。最近のG1勝ち馬の中でも屈指の名配合と言っていい。
京都大賞典は馬体的には今年一番良く見えただけに、インベタ馬場で外を回らされるロスはあったにせよ、あそこまで止まってしまうとはガッカリで、このスランプは体調面以外にも何か原因があるのかもしれない、という疑念が頭をもたげてきた。振り返ると、古馬になっての唯一の好走がヴィクトリアマイル2着で、フィリーズレビューもこぶし賞もうなりをあげての差し切り、桜花賞は枠ナリに大外を回りつづけたのが敗因だった。一方で宝塚や大阪杯やローズのように中距離で淀みのないペースで流れると案外伸びきれないことが多く、オークスも秋華賞もマイラーがよく勝つレースではあるし、エリ女は1000m通過が63秒近いスローのヨーイドン。スプリングマンボ≒ジェイドロバリーのスーパーニアリークロス2×3と表記してきたが、これはKingmambo≒ジェイドロバリー3×3とも表記できるから、実は筆者が思っていた以上にKingmambo(仏2000ギニー)とジェイドロバリー(仏グランクリテリウム)のマイラー資質が強い馬で、古馬になって更にマイラーの筋肉がついてきてマイラーっぽい体質になってきたと解釈すべきなのかもしれない。1600mでは概ね高値安定、中距離ではスローのほうが高パフォーマンス、この戦績と血統や体型をもう一度すり合わせなおしてみると、実はマイラー寄りの馬だったというあたりが着地点ではないかと思うのだ。この仮説が正しいとするとここでどんな印を振るかだが、同型不在の2200mでヴィルシーナがヴィクトリアのようにノシをつけて行くとは考えにくいから、14年宝塚や12年秋華のような62秒台のスローが濃厚と読むならば、昨年同様マイラーっぽい爆発力が炸裂するのではないか。

ショウナンパンドラ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103584/
血統配合は秋華賞を参照。徐々に体重が増えてパワーアップしているのはたしかだが、未だにトモは少し非力で主に前の駆動のよさで走っている。だから急坂コースでは勝ち鞍がない一方で、新潟の平坦な直線では抜け出してくるときの反応や鋭さが違うし、京都の4角から下ってくるときの加速が素晴らしい。もともと“下る力”に優れている馬がインベタ馬場の最内を捲ったのが秋華賞で、勝つときは全ての条件が揃うものだ。京都外回りでもっとタメる形ならばこのメンバーでも上がり最速を出せる可能性はあり、追い切りの動きも快調で調子落ちもみられないとあれば引きつづき有力の見立て。

ヌーヴォレコルト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104201/
血統配合は秋華賞を参照。ハーツクライにNureyevだからもともとHyperion的な粘着力に富む脚質ではあったし、父中距離×母マイラーだから先行脚質になりやすい配合形でもあるのだが、ローズでは開幕週の馬場を考慮して先制すると直線抜け出して後続を寄せつけず。秋華賞もおそらくショウナンパンドラあたりのポジションは欲しかったはずだが後手を踏んでしまい、ワンポジション後ろになってしまったぶん届かずという惜敗だった。晩成のハーツクライ産駒が完成するということはHyperion的な体質脚質になってくるということでもあり、やはりここはローズのようにドンと前で受けたいところで、そういう競馬ができれば古馬相手でも身上の二枚腰を発揮できる馬だ。ただし京都外回りの直線で牝馬らしく斬れる馬は多数いるだけに、パワーと粘りにモノを言わせたいこの馬にとっては坂があるに越したことはないだろう。持続力でヒケをとることはないだろうが、メンバー的に昨年(上がり11.6-11.2)のようなスローのヨーイドンになる公算も高いだけに、上がりが速すぎるがゆえの惜敗という絵もまた容易に描けるのだ。

ディアデラマドレ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104211/
イグアスやマゼランの姪で、母ディアデラノビアはフローラSと京都牝馬Sと愛知杯に勝ちオークスとヴィクトリアマイルとエリザベス女王杯で3着。その母ポトリザリスは亜ダービーや亜オークスに勝ったアルゼンチンの年度代表馬。母系にはNorthern Dancerの血が皆無で傍系の南米血脈が強く、そこにNorthern Dancer4×4・6のキングカメハメハが配された緊張と緩和のリズムが最高な配合だ。
配合に素直な種牡馬キングカメハメハは、Nureyev内のForli(Riot≒Fair Trial3×3)をいじくるとトゥザワールド(Nureyev4×3)、コディーノ(Special≒ポッセ5×3)、グラッツィア(Nureyev≒Sadler's Wells4×2)、キョウワマグナム(Nureyev≒Sadler's Wells4×2)など小回りのきく機動力型をよく出す。ポトリザリスにはForliの父Aristophanesと母父Advocateが入るので、つまりディアデラマドレはForliの父と母父をクロスしていることになり、更にRaise a NativeやNashuaやLa Troienne系の血もクロスすることで、全体に父母のパワーと機動力の要素を引き出した配合になっていることがわかる(一方でキンカメの斬れの要素であるナスキロ血脈のクロスはない)。体型は父似なのだが走らせると回転の速さで俊敏に加速できるのが最大の長所で、この俊敏な加速は母ディアデラノビア譲りでもあり、トゥザワールドやコディーノ的でもある。だから追いこみ馬ながら小回りコースを全く苦にしないし、府中牝馬やマーメイドのようなスローの上がりの競馬のほうが瞬発力が際立つタイプでもある。ここもスローの上がりの競馬になったほうが追い込めそうで、速いペースで先行する馬が見当たらないのは実はこの馬にとっては幸いだろう。ただしこれはトゥザワールドをダービーや菊花賞で消すときの殺し文句なのだが、直線長い芝コース(東京、新中京、京都と阪神の外回り)でのG1で馬券に絡んだキンカメ産駒は、アパパネ、アロマティコ、エーシンリターンズ、コスモセンサー、フィフスペトル、ベルシャザール、ルーラーシップ、フローズキングダム、レディアルバローザ、ロードカナロアの10頭で、アロマティコを除く9頭は母系にナスキロ血脈を持っている。結論としてはスロー見込みなら昨年のアロマティコ以上のパフォーマンスも想定して4番手。

スマートレイアー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010102459/
母スノースタイルはLyphard3×4、Drone≒Red God4×4、Bold Ruler5×5という強力な父母相似配合で、現役時は芝1200~1600mを主戦場とした。そこにティンバーカントリーが配された半兄カントリースノーはダートの長めマイラー、母の弟レオハスラー(父エアジハード)は芝1400mベスト、エクセリオン(父ジャングルポケット)は1800~2000mベスト。このダムスペキュタキュラーの牝系はマイラーっぽい資質の米スピードを伝える。そこにディープインパクトが配されたスマートレイアーは、Alzaoとダンシングブレーヴとグルームダンサーを通じる「LyphardとSir Ivor≒Drone≒Red God」の組み合わせのクロスになった。またディープインパクトは「1/2米,1/2欧」でスノースタイルは「3/4欧,1/4米」でスマートレイアーは「3/4欧,1/4米」の配合形。
後肢高のマイラーっぽい体型や阪神牝馬の凄い斬れ味をみると、相似配合で自己主張が強い母の影響が強いようで、これまではマイラーとしての性能の高さで2000m以上を走っていたとみるべきだろう。阪神牝馬Sでは出遅れをものともせず凄い斬れ味で差し切ってしまったが、Northern DancerとHalo≒Droneを使った相似配合が生むスピードで1400mで抜群に斬れたという意味では、同じ芦毛で“阪神千四姉さん”としてならしたジョリーダンスと重なるイメージもある。府中牝馬はあのスローでもビュンと反応して突き抜けるかの勢いできて、しかしゴール前では手前を替えて失速気味。更に距離延長のここは難しい立場になったが、折り合いはつくのでスローの上がりだけの競馬になれば斬れ味だけで差せる可能性も一考したいし、京都外回りを知り尽くした鞍上の手腕込みで印は必要だろう。

ホエールキャプチャ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008100544/
千代田自慢のチヨダマサコ(My Babu4×4、Nasrullah4×5、Dinner Time≒War Admiral5×6を持つ名繁殖)にさかのぼる牝系で、その娘で本馬の3代母にあたるタレンティドガール(タマモクロスの半妹)はエリザベス女王杯に勝った。そこにNashwanが配された母母エミネントガールはHeight of Fashionとリマンドを通じてAurora6×5(Hyperion6・7・7×6)、Fair Trial7・7・8×5、Donatello6×5、Aloe7・8×6、Uganda7×6など重厚な欧血をクロスする。「父クロフネ×母父Hail to Reason系×チヨダマサコ牝系」はシゲルスダチやベストクルーズなど高確率で上級馬が出るニックスで、これはBlue Moon=Blue Grotto≒Nothirdchanceのニアリー継続クロス(Blue LarkspurとSir GallahadとMan o'WarとHigh Time)で主に説明できるが、チヨダマサコが持つMy Babu4×4にTurn-to(Pharos+Lavendula)やAmbiorix(Tourbillon+Lavendula)が絡むことも指摘しておきたい。そしてホエールキャプチャの場合は間にNashwanとリマンドが入ることによりAuroraがLavendulaと脈絡し(Rose Red=Sweet Lavender)、母にはHalo≒Red Godのニアリークロスが派生する。そしてクロフネに希薄なHyperion血脈を補強するという効果もあり(筆者が言う“クロペリオン”)、また「Northern Dancer≒Icecapade4×3のクロフネ×Northern Dancerを持たないグローバスピース」という「緊張→緩和」のリズムに優れた配合でもある。
東京新聞は時計ひとつかかる重馬場で締まったペースとなり、上がり11.5-12.3とわりと消耗戦になったが、それを57キロを背負い、中団から馬場のいい外目に持ち出してジワジワ伸びて、あと200mで先頭に立ってからも実にシッカリした脚どりで後続との差を広げる完勝。札幌記念はG1馬2頭の捲り合い、ロンスパ戦になって上がり3Fが12.3-12.0-12.0、タマモベストプレイもロゴタイプもトウケイヘイローもみんなバテてしまい、ステイヤーのラブイズブーシェがジワジワ差してくる流れをこの馬もジワジワ差してきて3着。しかし上がり11.2-11.7のヴィクトリアマイルや上がり11.3-11.6の府中牝馬では手応えほど弾けず4着3着。東京新聞の回顧で「今は母系のNashwan×リマンドの重厚さが発現してきて、Hyperion的にしつこい中距離オバチャンになってきた」と書いたのだが、体質がHyperion的になってきたぶんフォームに若いころのしなやかさが失われてきて、そのぶん若いころよりは持続力や粘着力は増している。ここは先行馬が少なく、スローの瞬発力勝負になりそうなのは歓迎ではないが、蛯名はどうもこの馬でまだ差したがるところが見受けられ、ロンスパでHyperionを振り絞る博打を打ってきそうな予感はない。

ラキシス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104304/
サトノアラジンの全姉で、母マジックストームはモンマスBCオークス(米G2・ダ9F)勝ち馬。ディープにStorm CatとMr.ProspectorとNijinskyが入ってSir Gaylord≒Secretariatのクロスだから、体型に伸びが出て脚が長くなって体質は柔めになった。ディープ×Storm CatはSir Gaylord≒Secretariat的な柔さ緩さがONになりすぎるきらいもあるのだが、この姉弟の場合は母がStorm Bird≒Nijinsky2×3で母母父Fappianoがミスプロ系でもパワーに定評がある血なので、ここからパワーの要素を補ってバランスがとれている。
長手の体躯を活かした東京や外回り向きの中距離馬で、昨年のこのレース2着を見てのとおり京都外2200mはベストコースのひとつ。今年もペースは上がりそうにないから、好位で運べばあの再現も十分だろう。ただ同じディープ×Storm Catのキズナやアユサンと比較するとちょっと配合全体の評価では落ちる。キズナの母母Pacific Princessとアユサンの母はBuy the Firmと比べると本馬の母母Foppy Dancerはちょっと凡庸だ。そこがマジックストームの仔をG1で大きくプッシュしきれない大きな理由でもある。

アロマティコ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106257/
ノーザンテースト×ペルースポートはSans Souci3×5のガーサントを1/4異系とし残りの3/4でHyperionとNearcoをクロスする好形になり、この配合で生まれたシャダイスピーチ=シャダイチャッタ=アンデスレディー三姉妹はいずれも繁殖として成功し今も枝葉を伸ばしているが、本馬はインティライミ=サンバレンティン兄弟やフェデラルホールと同じアンデスレディーの分枝。キングカメハメハは配合に素直な種牡馬で、キンカメ×サンデーも万能なぶん配合には素直で、Mill ReefをクロスすればローズキングダムになるしNureyevをクロスすればトゥザワールドになるが、本馬の場合は母ナスカがHalo≒Red God2×4なので、無駄のない脚捌きで俊敏に加速できる脚質になった。
巴賞やクイーンSや中山牝馬Sを見ての通り小回り内回りを小器用に追い込む脚があるが、ちょっとピッチがききすぎているので東京や外回りで長く脚を要求されるようなレースでは凡走も多く、昨年のエリ女が上がり11.6-11.2、準オープン勝ちの新潟外2000m佐渡Sが10.8-11.8で、直線の長いコースならばむしろ上がりの競馬になったほうが追いこみやすいタイプといえる。オールカマーは内回りだがスローで上がり11.6-11.2、3番手から抜け出したラキシスにゴール前猛然と迫っての3着というのは昨年のエリ女と似た光景で、つまり似たような質のレースになったということか。三浦皇成はこの馬については一瞬の脚に賭けるしかないと腹を決めてインに突っ込んでくるので、スローならばまたハマるシーンもあるか。

キャトルフィーユ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101532/
レディアルバローザの半妹で、母ワンフォーローズはカナダ最優秀古牝馬に三度選ばれた活躍馬。母父Tejano Run(ケンタッキーダービー2着)はCaroの孫にあたるがRaise a Native4×5、War Relic≒Good Example≒Eight Thirty5・6×6、Bimelech≒Belle Historie=Businesslike5・6×6・6と米血パワーが強く(アンファンテ≒Wavering Monarch2×2のニアリークロスと言ってもよい)、この姉妹のパワーと機動力に富むが少しジリ脚で2着3着が多い脚質にはTejano Runの影響が強く感じられる。
ディープ産駒にしては硬肉でしなやかに斬れるタイプではなく、全4勝が内回り小回りでいずれもゴール前が12秒台、パワーと機動力が活きるレースでベストパフォーマンスを発揮してきた(ちなみにレディアルバローザも全5勝のうち未勝利勝ち以外の4勝はゴール前12秒戦)。オツウがビュンビュン逃げて先行馬総崩れになったクイーンSの先行押し切りは強いの一語だが、東京で上がりが速くなると府中牝馬もヴィクトリアももう一つ弾けきれない。京都芝は[1.0.1.5]で、勝ったのは稍重の内1600mの未勝利戦で上がり11.6-12.1。ここは良でスローなら上がり11.5-11.5というこの馬が斬れ負けするパターンにハマってしまう可能性が高いから、雨かHペースの助けがほしい。ルメールならば自ら動いてペースを上げにかかる可能性はあるだけに安易には消せないのだが、テン乗りでこの馬のジリ脚をどこまで理解しているか。

ヴィルシーナ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106264/
フレールジャックやマーティンボロの姪で、3代母Morn of SongがRahyの全妹で、その母は名繁殖Glorious Songという名門。フレールもマーティンもHaloクロス馬らしい機動力の持ち主だが、本馬は間にMachiavellianが入ってHalo≒Sir Ivor≒Red God3・5×4・5・5とHalo的な血が多すぎて、無駄のない脚捌きで機動力とセンスが抜群だが、爆発力に欠けるのだけが弱点だと書いてきた。
マイルでバーンと弾けるというよりは1800mをフワッと抜け出してくるような脚質で、しかし東京マイルもスローになるとそういうタイプが立ち回りの巧さと反応の良さで勝ちきるケースはままあり、まさにここ2年のヴィクトリアマイルがそんなレースだった。ここはおそらくハナを切ることになりそうで、非常に折り合いがつく馬で押していかなければすぐにペースダウンできるから、ここは道中緩めて1800mのレースにしてフワフワッと流れ込みたい。ただし今の京都であまりスローにしすぎると、それほど瞬発力があるほうではないだけに鋭さ負けしてしまう心配はあり、そのあたりのさじ加減は手の内に入れているウチパクでも難しいところでは。

サングレアル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104004/
血統配合は秋華賞を参照。フローラSでは岩田が追い出すとしなりながら斬れてブランネージュを差し切り、秋華賞も内回りにしてはストライドで追いこみやすいレースになったとはいえ、外々を回ってよく伸びていた。ただし馬体に成長が感じられないのも事実で、外回りに替わるのはたしかにプラスではあるのだが、ガサがないので末一手で乗らざるをえない部分もあるのだろう。あとブエナ同様のラトロ肩でちょっと掻き込むので、京都がベストコースというわけでもないだろう。ここはスローで前がなかなか止まらないようなレースになりそうなだけにまだ過信はできない。

フーラブライド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105546/
3代母ゴールデンローズはランニングフリーの全姉にあたる。「ゴールドアリュール×マルゼンスキー」はタケミカヅチ、トウカイパラダイス、トップカミングなど芝上級馬が出ることで知られるニックスで、ゴールドアリュールの母母Reluctant GuestはビヴァリーヒルズH(米G1・芝9F)に勝った活躍馬でNijinsky、Princequillo、Count Fleet、La Troienneなどマルゼンスキーと似た血脈構成なので、ようするにReluctant Guest≒マルゼンスキーのニアリークロスによって芝適性がONになりやすいのだろう。父がHaloにNureyevにNijinskyで母母がNijinskyにSir IvorにBold Rulerだから血統表の3/4はNearco系の血が強いが、母父メジロマックイーンがNearcoの血を7代目に一本しか引かないので、ここが文字通りの1/4異系になってもいる。
NureyevとNijinskyが強い伸びのある体型と重厚なストライドで、外回りベターの持続型中距離馬というべきだが、内回りでも上がりがかかる持続戦ならば中山牝馬Sのように好走できる。京都外回りは[1.0.1.1]で、1000万下を勝ったときも辛勝だったし、日経新春杯もハッキリ鋭さ負けという3着で、京都外のスローの上がり11.5-11.5を勝ちきるには俊敏さ軽さが少し足りない。上がりのかかる持続戦になってほしいが、ヴィルシーナの逃げではそれは叶わないだろう。

グレイスフラワー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106185/
母ジャッキーテーストは計5勝をあげた芝中距離馬で、母母ジャッキーマックスの産駒にニューヨークH(米G2・芝10F)などに勝ったマックスジーンがいる。母父カーネギーは凱旋門賞馬でBold Reason≒Never Bend3×3。4代母SolitudeがAsterus3×3、Ksar4×4、母母父Sexton BlakeがHyperion4×4。自身はNorthern Dancer4×4で、ダイワメジャー産駒としても重厚な中距離配合といってよく、5歳の夏に距離延長とともに飛躍のキッカケを掴んでオープンまでのし上がってきた。
ノーザンテーストが強い体型でピッチのきいた走りだがわりと重厚に実直に伸びつづけるような末脚で、近走も上がり3Fこそ速いがビュンと鋭く斬れたイメージではなく、このあたりは父母が持つHyperion的凝縮が発現してきての本格化という見立てでいいか。ノーザンテーストがRiverman的に斬れているけれど鋭敏さよりは力強さや持続力のほうを感じさせる末脚はあのレインボーダリアと重なるものもあるが(奇しくも鞍上も同じ柴田善)、となるとさすがにこの相手だと一雨ほしい。

ブランネージュ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103510/
血統配合は秋華賞を参照。シンボリクリスエス産駒としてはストレッチランナーに出やすい配合パターンで、フレンチデピュティをSeattle Slew的に少し長手にした体型で、体質はソコソコ柔らかい。秋華賞の予想では「鋭角なコーナーで加速しながら差すようなレースはあまり得意ではないと思う」と書いたが、実際4角で少しモタつくようなところはあった。外回りに替わるのはプラスに考えていいが、一方でそれほど鋭い瞬発力があるほうではないので京都外回りのスローでは鋭さ負けの公算も大、そこをカバーするには自ら動いて持続戦に持ち込むしかないだろうが、ここも秋山らしい、馬に優しく戦略性に乏しい好位差しでくるのはほぼ間違いない。

レッドリヴェール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104324/
血統配合は秋華賞を参照。秋華賞はインに潜って岩田の後ろをついて回って直線追ったら弾けなかったという、これのどこが“攻める騎乗”だったのかはわからないが(出していって引っかかって前崩れに巻き込まれた川田や田辺のほうがよっぽど攻めていた)、しかしローズと同じく思ったほど弾けなかったのは事実だ。
血統・体型・走りをすり合わせていくと、“女ナカヤマフェスタ”とか“女アクシオン”に近いところに完成形はあるのではないかと思うし、若いころはマイルで斬れていたが、今は血統どおりの中距離馬にシフトしつつある途上の段階ではないか。うまく言えないが、このスランプに関してはそんな見方をしてみたい。だから二度叩いたからといって一変があるかは疑問だし、これからもっと頑強でもっとHyperion的な体質になってきて、古馬になってクイーンSあたりで渋い中距離馬に完成した姿をみせてくれるだろう、というような長い目で見守るべきではないかと思うのだ。

サンシャイン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105903/
母バルドウィナはペネロープ賞(仏G3・芝2100m)勝ち馬で、Top VilleにVal de LoirにSupreme CourtにKlaironとアウトサイダー血脈ばかりで固めた配合で、Northern DancerもTurn-toもNasrullahも持たないのであまり主張せず相手種牡馬を立てるタイプで、だから父ファルブラヴの牝駒ワンカラットがスプリンターに出て、父ハーツクライの本馬が粘り強い中距離馬に出たのは順当といえる。
エルフィンS勝ちや愛知杯2着など好走はほとんど先行したときで、ここはヴィルシーナの番手が有望なのだが、京都外回りのスローだと鋭さ負けの公算も大。

コウエイオトメ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104252/
3代母Possible Mateの産駒にオーキッドH(米G2・芝12F)のFairy Gardenなどが出る一族。母系にSeattle Slewが入るのはアドマイヤラクティ、カレンミロティック、カポーティスター、マジェスティハーツなどと同じ。母系にSpecial(=Thatch)が入るのはアドマイヤラクティ、ヌーヴォレコルト、メイショウナルト、マジックタイムなどと同じ。母系にThe Axeが入るのもアドマイヤラクティ、ギュスターヴクライ、カポーティスターなどと同じで、つまり母系にSeattle SlewとNureyev≒Fairy KingとThe Axeが入る点でアドマイヤラクティと似た配合パターンといえるが、母がNorthern Dancerクロスのラクティのほうが配合的な完成度は高い。
Seattle Slew的ナスキロ斬れとHyperion的持続力を兼備した中距離馬で、日経新春杯4着を見てのとおり外回り向きの末脚が武器だが、高速馬場で重賞級をまとめて差し切るほどの鋭さはない。ヌーヴォレコルトやカレンミロティックのように前で受ける方向に脚質転換していきたいところだが…。

オメガハートロック
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104198/
ハーツクライの姪で、オメガハートランド、オメガスカイツリー、オメガブルーハワイと兄姉もみんな走っている。母オメガアイランドはNorthern Dancer4・5×4を持つので、そこにネオユニヴァース、アグネスタキオン、ゼンノロブロイ、フジキセキと、毎年非Northern Dancerのサンデー系が配れてきたことも成功の因だろう。
エルコンドルパサーは母父に入っても牝馬には主に機動力を(アイムユアーズ、ラブフール、ダンスアミーガ、クッカーニャ)、牡馬には主に持続力を伝えるが(クリソライト、ブレイズアトレイル、サムソンズプライド、トミケンアルドール)、オメガハートランドもオメガハートロックもエルコン的Special的機動力を受け継いでいて、だからオメガハートランドはフラワーとフェアリーと中山牝馬で◎にしたし、本馬もフェアリーで◎にした。この姉妹はリンカーンの牝馬版のようなイメージだから中山内1800mで実に狙いやすいが、いかにも「HyperionとFair Trial」的な粘着力と機動力を感じさせる脚捌きで、京都外回り向きのタイプではないだろう。

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ヴィルシーナのスローの逃げを揺さぶることができるのは、ルメールのキャトルフィーユ、祐介のサンシャイン、岩田のヌーヴォレコルト、蛯名のホエールキャプチャ、そして川田のラキシスか。
レースを動かしたいのはジリ脚のキャトルとHyperion的なヌーヴォとホエールだが、下りからロンスパを仕掛けてくるようなレースはこれまでやったことがないし、これまでやったことがないことをここでやってくるとは思えないから、やっぱりペースはあまり上がらないまま4角までくるとみたい。
ならばスプリングマンボ≒ジェイドロバリーのスーパーニアリークロスが、一年ぶりに爆発するお膳立ては整ったのではないか。

◎メイショウマンボ
○ショウナンパンドラ
▲ヌーヴォレコルト
☆ディアデラマドレ
△スマートレイアー
△ホエールキャプチャ
△ラキシス
△アロマティコ

コメント (3)
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「血統クリニック」エリザベス女王杯をアップ&今週の新馬戦

2014-11-13 17:10:24 | 血統クリニック

先ほど「血統クリニック」エリザベス女王杯をアップしました~
面白いレースになりそうですが、天気はもちそうなのでペースがカギを握るんじゃないですかね~

土曜京都5Rルートヴィヒコード(デ)
日曜東京5Rロードユアソング(デ)
日曜京都5Rアンビシャス(デ)
日曜京都6Rホームズ(パ)
デ…「ディープインパクト好配合リスト」 パ…「パーフェクト種牡馬辞典」POG推奨

ホームズはスズカマンボ産駒でスプリングマンボ≒ジェイドロバリー2×3というかスプリングマンボ≒タイキシャーロック2×2というか、いずれにしてもメイショウマンボばりのニアリークロスですな
あと土曜京都5Rサダムエルドラドは昨年のセレクトセールでチェック入れてた馬で、これも実馬を見るのが楽しみ(・∀・)

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「血統クリニック」天皇賞・秋再掲

2014-11-03 09:13:22 | 血統クリニック

これから実家に年寄りが集結してみんなで餅をつくって食べるという催しが開かれるらしく、なぜ月曜の朝に餅大会なのかよくわからんですが、私は二階に避難して秋天の回顧を書きます…

フェノーメノ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106599/
Indigenous(香港国際ヴァーズ、JC2着)の甥で、近親にコロネーションS(英G1・芝8F)のNanninaなどが出る。母母Sea PortはNearco3×5、Pharos=Fairway4・6×5・6・6、そこにNatalma3×3のデインヒルが配されて、母ディラローシェはRibot4×4。代々4×4レベルのクロスを重ねて緊張状態できたディラローシェに、父も母も自身も強いクロスを持たないステイゴールドが配されて、自身は「3/4欧,1/4米」の配合形。一方でステイゴールドからみると、Flower Bowl、Tudor Minstrel、Heliopolisと「HyperionとSwynford」的な組み合わせを重ねることによってLady Angela的頑強さをONにすることに成功している…というのが配合のあらすじ。母系にデインヒルが入るのはナカヤマフェスタと同じで、母がRibot系のクロスを持つのも同じ(ナカヤマフェスタの母はHis Majesty2×4)。デインヒルはNorthern DancerとFlower Bowl(Alibhai+Mahmoud)とHeliopolisを持つので、Dixieland Band(レッドリヴェールの母父)とも血脈構成が似ている。
体型はデインヒルが強く典型的な中距離馬と言っていいだろうが、体質はナカヤマフェスタ以上にしなやかで、デインヒル~Danzig系特有の掻き込み走法やパワー体質はあまりONになっておらず、しなやかな身のこなしで前肢をきれいに伸ばして走る。だから字面の血統以上に高速馬場への適性が高く、東京でソコソコ斬れる脚を使えるし京都外回りをスムーズに下って流れ込める。もちろんHyperion的な粘着力も持ち合わせており、高速馬場を好位で立ち回れる機動力と、3角からスムーズに下る力と、そして直線先頭に立っての粘り腰、この三つが噛み合っての春天連覇達成だった。ステイゴールドの大物牡駒は5歳時にピークを迎えるぐらいの成長力があるし、仕上がっていれば休み明けは動く馬、しかも今年は速いペースで逃げる馬が見当たらないから好位差しのこの馬は楽だ。13年宝塚ほどタフな馬場は向かないのかもしれないが、あのときは春3走目でデキも落ちていたように思う。12年JCは上がりが速すぎて斬れ負けという5着でもあったから、イスラやジェンティルやエピファの鋭い差しを相手にするのならば、むしろ多少渋ったほうがチャンスは拡がるという見立てもできるのではないか。

イスラボニータ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103565/
母イスラコジーンはミセスリヴィアS(米G2・芝8.5F)2着で、近親に目立った活躍馬はいない。フジキセキ×Cozzene×Crafty Prospectorという血統どおりの伸びのないマイラー寄り体型だが、サンデー系×ミスプロ系の組み合わせでボルキロのクロスだから体質は柔らかく、全身を使ってストライドを伸ばして走れる。しかも運動神経が良くて俊敏さや器用さも兼ね備えており、「しなやかに大きく、しかも速く」動けるのが素晴らしい。ただし伸びのない体型なのに可動域が大きく全身運動で走るわけだから、力んでエンジンを吹かしてしまうとエネルギーを浪費しやすいタイプでもあるだろう。ダービーは出していったぶん前半少し行きたがったが、最後は距離適性の差という2着でもあったか。ベストは1800~2000mとみるのが妥当だろう。
今まさに円熟を迎えている35歳のルメールは、日本の競馬にもすっかり慣れて、芝ダ距離コース問わないパーフェクトな名手に完成してしまった。でもこの人の本領は、フランス競馬で育まれた当たりの柔らかさ、“適度な緊張や集中を伴った折り合い”にこそあるのは疑いない。1月京都では外回り重賞で[2.0.1.0](人気は2,5,6)、高速馬場の京都外回りのスローでサトノノブレスに重賞を勝ちきらせる術なんて私には思いつかなかったが、それを事もなげにやってしまった手綱捌きには唸るしかなかった。京都金杯はダノンシャークとエキストラエンドで連覇中、どちらも母系にナスキロ血脈とフレンチな斬れが入るディープ産駒で、こういう柔らかく斬れる馬で外回りのスローを差させたら世界一の乗り役だと思う。スローを完ぺきに折り合うだけでなく馬が遊んでないので、ポジションが変に下がらないしゴーサインが出たら即座に反応することができるのだ。JCのウオッカなんかもその反応の良さ、絶妙な抜け出しのタイミングで勝ちきったといっても過言ではなかった。前任の蛯名はイスラボニータが皐月とダービーを勝つためにやるべきことはやったし、関東の第一人者としての存在感を確かにアピールした。しかしやや前向きな気性でナスキロ柔くストライドを伸ばして走る皐月賞馬と、そういう馬に乗せたら世界一の乗り役がコンビを組むのだから、東京の直線でもっと鋭くもっとしなやかに斬れるのではないか、という期待が膨らむのは当然だろう。ただ走法的にみて馬場が渋るのはどうか。少なくとも上滑りするような馬場は得手ではないだろう。

エピファネイア
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104155/
母シーザリオは米G1アメリカンオークスと優駿牝馬に勝ち桜花賞2着、母母キロフプリミエールはラドガーズH(米G3・芝11F)勝ち。Kris S.≒Habitatのニアリークロス(Turn-toとPrincequilloとOccupy)2×4をはじめ、Hail to Reason4・7×5・6、Striking=Busher≒Blue Eyed Momo≒Busanda6・8・8×7、Tom Fool6×7などをクロスするが、母がNorthern Dancer5×3なので厳密にいうと父母相似配合ではない。
その配合の狙いどおり、母を少し長手の体型でナスキロ柔い体質にしたような中距離馬に出て、しかもHabitat絡みのニアリークロスの影響で俊敏さ軽さも兼ね備えている。だから皐月賞や弥生賞のように内回りコースで機動力も発揮できるのだが、未だに少しトモは非力で前の駆動の良さで走っているところはあり、京都や阪神の外回りの3~4角を唸りながら下ってくる脚は圧巻の一語。唸りながら惰性で流れ込める京都外回りがベストコースで、京都外1800mのG1があればこの馬とトーセンラーが最強かもしれない。東京も急坂がないのでダービーのように差しに回って斬れを発揮できるコースで、多少馬場が渋っても辛抱はきくから、折り合いスムーズな今ならベストパフォーマンスを叩き出す可能性は高そうだ。エピファをこの秋どこで買うかとなると、ここだろうと思う。

ジェンティルドンナ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106253/
ドナウブルーの全妹で、母ドナブリーニはチェヴァリーパークS(英G1・芝6F)勝ち馬で、その父BertoliniもジュライS(英G3・芝6F)などに勝ったDanzig系のスプリンター。母はNorthern Dancer3×4で、ディープ産駒はNorthern Dancer系のスプリンター・マイラーの母から筋肉や馬格を受け継ぐ配合が成功しやすい、ということは何度も書いてきた。
JC連覇のとおりスローの上がりの競馬に強いが、それは母譲りのスプリントで一気にトップスピードに加速できる能力に秀でているからで、本質は2000m前後がベストの機動力と加速力に富む中距離馬だと思っている。2000mよりも2400m戦のほうが上がりの競馬になりやすいので、JCやドバイでベストパフォーマンスを出してきた。そのあたりはTreveと重なるところもあるキャラで、あの牝馬も「父中距離×母マイラー」の配合形だ。休み明けは動かないが、昨年の秋天は持続戦になったにもかかわらず3着以下には2馬身差をつけている。今年はシルポートもトウケイヘイローもいないのでペースが緩む可能性は多分にあり、1000m通過が60秒近く上がり3Fが10.8-11.3-11.6と速くなった09年のようなレースになれば、昨年以上のパフォーマンスを見せつけられても驚けないだろう。2000mのスローといえば、どう見ても届かないところからヴィルシーナをねじ伏せるように差した秋華賞がそうだ。

デニムアンドルビー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104
トゥザヴィクトリーやサイレントディールなどでおなじみのフェアリードールの牝系で、トゥザグローリー=トゥザワールド兄弟とはサンデーサイレンスとキングカメハメハとフェアリードールが共通する3/4同血の間柄。こちらは父がディープでAlzaoとラストタイクーンを通じるNorthern DancerとナスキロとAttica≒Tom Foolのクロスになり、長手の体躯を利したストライドで差す角居厩舎らしいストレッチランナーとなった。一方で道悪にもへこたれないパワーと持続力は母系の濃厚なハイインロー譲りで、カミソリではなくナタと表現したい斬れを武器とする。
秋華賞4着が内回りの4角の加速ではメイショウマンボに譲るという負け方だっただけに、宝塚も牡馬の強豪が相手では苦しいかとみていたが、内々を立ち回れたとはいえあの5着は古馬になっての着実な地力アップを示す内容だったし、そのような成長力もこの牝系のセールスポイントのひとつ。渋った馬場は巧いほうだし週末の雨予報は歓迎のクチだろう。掲示板なら十分、恵まれればそれ以上も望める。

フラガラッハ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103033/
イリュミナンスやフェルメッツァの3/4兄で、3代母Shoot a Lineの孫にサンダーガルチやバトルラインが出る。母スキッフルがジャングルポケットと同じトニービン×NureyevでHyperion4・6・6×5・6・6、ここからナタの斬れ味と古馬になっての成長力を受け継いだ。父デュランダルの母サワヤカプリンセスもHyperion4・5×5・6・6なので、血統表の3/4をHyperionの強い継続クロスで固め、残りの1/4に米血サンデーサイレンスをもってきた「3/4Hyperion,1/4米」の配合形。体型はNureyevとノーザンテーストが強く、ルーラーシップのような緩慢かつ重々しいナタの斬れでズドーンズドーンと追い込んでくる。
燃えやすい気性で未だに仕掛けるとガーッと行ってしまいそうなところはあって、だからスタートはソロッと出していくしかないのだろうが、ソロッと乗っていれば中距離でも折り合いはつくようになってきた。むしろ中京記念は後方でちょっと追走に忙しいというレースぶりで、ゆったり追走したオールカマーでは速い上がりを大外からよく追い込んでいたように、今は中距離馬へとシフトし完成してきたという見方をしたい。最近の東京芝G1の勝ち馬はジャスタウェイ(トニービンとWild Again)、ワンアンドオンリー(トニービンとSpecial)、ヌーヴォレコルト(トニービンとSpecial)とトニービンの「HyperionとNasrullah」をいじった配合馬が3連勝中で、東京の直線でナタ斬れ爆発に一票投じたい気持ちは少なからずある。一方でスローの秋天となると、とても届かないところから豪快にストライドを伸ばしてきたルーラーシップ3着と同じような絵も浮かんでくる。現時点では良なら△まで、重なら▲も一考という構えで。

マイネルラクリマ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104087/
クロフネサプライズのイトコで、母母パイナップルスター(ダンディコマンドの全姉)はHyperion5・6×5・5・6・8。そこに強いクロスを持たないサンデーサイレンスが配され、そこにBold Ruler4×3のチーフベアハートが配された。緊張と緩和のリズムがオーソドックスに良い配合といえる。Bold Ruler的な機動力ある脚捌き、そして母系のHyperion的な粘り強さと成長力、これが主な武器で、若いころは小回りのきく1800m寄りマイラーというイメージだったが、徐々に母系のHyperionが発現してきて2000mベストの粘着型中距離馬に完成してきた。
内回り2200mの七夕賞は56キロでスローの上がりの競馬を番手追走、この馬の持ち味の一つであるBold Ruler的機動力立ち回り力をフルに活かしての勝利だった。一方で東京や外回りでは12年京都金杯以来勝ち鞍がない。エプソムCにしても完全な勝ちパターンをディサイファに目標にされて差し切られており、やっぱりBold Ruler的機動力とHyperion的粘着力だけでは東京の重賞を勝ちきるのは難しく、長い直線でビュンと弾ける脚や斬れる脚が必要で、そこがこの馬の唯一の弱点というべきだろう。その唯一の弱点を補えるという意味でも、週末の雨予報は大歓迎。

スピルバーグ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009105961/
母プリンセスオリビアはNorthern Dancer4×3、Goofed4×4、ハイハット≒Aureole4×5、Nashua≒Nantallah4×6をクロスする強力かつ綿密な父母相似配合で、本馬の他にもFlower Alley(トラヴァーズS)、トーセンラー、ブルーミングアレーを産んでいる名繁殖。そこにディープインパクトで、Lyphard~GoofedとBurghclere≒Aureoleのクロスだから粘着力や持続力に富む配合といえる。トーセンラーは母父のマイラーっぽさもONになっていて長いところよりは1800mぐらいのほうが斬れ味が際立つタイプだが、本馬は兄よりも体型に伸びがあり体質も重厚で、スピードの乗りも持続型で、こちらのほうがLyphard的でありサドラー的であるという見方で書いてきた。
毎日王冠はメイSと同じようなラップを刻んで追い込んだが、直線馬群を捌くときに待たされたぶんと相手が強くなったぶん届かず、という3着だったか。4走連続で東京1800mを使われて[3.0.1.0]、ただ前走の行きっぷりなどをみても1800mよりは2000mのほうが追走は楽そうだ。兄ほどビュンと斬れる脚は使えず持続力で差している感じで、「サンデー×Lyphard×ハイインロー」的な中距離馬だとしたら前で受けてひと脚使う競馬のほうが合っているイメージもあり、実際先行したときは[2.0.0.1]で長休明け以外は全部勝っている。距離延長で先行馬が少ないここは神奈川新聞のように乗れれば一発あっていいが、近3走を踏襲するのならば北宏はここでも差す競馬だろう。その形だと突き抜けるほどの怖さは感じない。

マーティンボロ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106265/
フレールジャックの全弟で、姪のヴィルシーナとは父が同じディープインパクトだから3/4同血の間柄でもある。母母Morn of SongはRahyの全妹で一族に活躍馬多数の名牝系。
サンデーサイレンスとRahyを経由するHalo≒Red Godのクロスにはメイショウクオリアやサンディエゴシチーやアクティブミノルやアトムなどがおり、基本的にはHalo的機動力でフワリと先行捲るイメージでいい。フレールジャックは小回り内回りの1800mがベストだったと思っているが、東京でもスローになるとヴィルシーナのように立ち回りの巧さでフワリと抜け出してしまえるのがHaloクロス馬。馬がパンとしてきた今なら多少の渋化はOKだろうし、乗り慣れた川田ならばある程度前々の競馬でくるはずで、緩ペースでの流れ込み3着を警戒。

ディサイファ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102678/
アドマイヤタイシやリリーファイアーの半弟で、母母TribulationはQエリザベス二世チャレンジC(米G1・芝9F)勝ち馬。Tribulationの全妹の仔にグラスワンダーとWonder Again(米G1ダイアナHなど)が、Wonder Againの仔にレッドレイヴンがいる。母父Dubai MillenniumはFall Aspenの孫で血統も配合も競走成績もパーフェクト、種牡馬としては1世代の産駒を遺しただけで急逝したが、そこからDubawiという有力後継も出た。母ミズナはNorthern Dancer4×3、Raise a Native4×4、Swaps5×5の相似配合で、自身はAlzaoとShareef Dancerを通じるNorthern DancerとSir Ivorの組み合わせのクロス。Dubai Millenniumの肌は最高だし繁殖牝馬ミズナも魅力的だが、ディープとの配合が最高かとなるとそこまではほめきれない。
デビュー当初はいかにも“緩いディープ産駒”という感じで未完成だったが、古馬になって腰などがパンとしてきて追っての味も出てきた。ただグラスワンダー牝系譲りの掻き込み走法も受け継いでいて、毎日王冠やエプソムCを見ても、東京の良で一線級相手だと斬れ味で少し見劣るかなという印象。重不良は[2.1.1.0]、渋ったほうが善戦の余地はありそうだ。

サトノノブレス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010103602/
おなじみのアンティックヴァリューの牝系だが、本流のベガではなくオールドスタッフの分枝で、ここにGeiger Counter(HyperionのないKingmambo)のスピードが入るとエクセラントカーヴやコレクターアイテムのようなマイラーが出る。きょうだいや近親にはヒカルオオゾラ、テイエムクレナイ、バトルドンジョン、メジロスプレンダー、メジロガストンと何ともつかみどころのないメンツが並ぶが、これは母母父のAlways Run Luckyという謎のBold Ruler系がつかみどころがないからで、その母Big PuddlesがAlibhai2×3で力馬っぽさを伝えるので、ダートや短距離向きのパワー型が出たりして何ともつかみづらい。
本馬も「ディープ×トニービン×Irish River×アンティックヴァリュー」という累代ならば鋭敏に斬れる中距離馬のイメージなのだが、わりとHyperion的な体質で外回りでタメてもそれほど鋭く斬れないし、雨の小倉記念を力強く捲りきったり、雨の菊で最内をジワジワ追い上げてきたり、インベタ1京Aでルメールが絶妙なペースで逃がしてギリギリ粘り込んだりと、むしろパワーと粘り強さと機動力を要求されるレースで好走してきた。上がり11.4-11.6のオールカマーや上がり11.1-11.7の春天の凡走をみてもディープの斬れ者というイメージからは程遠く、やっぱりこれはBold Ruler忍者とAlibhaiパワーが同居したAlways Run Luckyのイメージというべきだろう。母系のAlibhaiパワーで走る中距離馬という意味ではアクシオン的なイメージでもいいかも。東京の良でこの相手だと苦戦必至とみるが、馬場が渋りそうなのと先行勢が手薄なのと乗れてる岩田の手綱、この三つを頼りに食い下がりたい。

カレンブラックヒル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106230/
イトコにクリテリウムドメゾンラフィット(仏G2・芝1200m)のPenny's Picnicがいる牝系で、母チャールストンハーバーはDrone≒Terlingua3×3、Le Fabuleux4×4、Pavot≒Ace Card5×6という父母相似配合。ダイワメジャーはDroneともStorm Catとも相性が良いが、Le Fabuleuxの母系に入るSindはPretty Pollyの全妹Mirandaの血を引くので、ノーザンテースト≒Storm Bird3×4にGreat Nephewの母Sybil's Nieceが「HyperionとNearcoとSister Sarah」で絡み、そこにLe FabuleuxのMirandaも絡んでLady Angelaの底力を増幅している…という意味でもダイワメジャー産駒の配合としてはベストに近い。
Storm Catの影響も強く父よりはマイラー寄りの体型だが、Wild Risk的なナタのストライドやノーザンテースト的なパワーや粘りも表現されていて、ダービー卿も毎日王冠もスピード任せに押しきったというよりは、いったん馬群に沈みかけたようなところからファイトバックして勝った。そういう渋い脚質なので時計や上がりが速すぎると辛く、ダービー卿も毎日王冠もゴール前は12秒台。時計や上がりが速すぎると身上の二枚腰を発揮できないという面はあるのだろう。ベストは1800mだから2000mとなるとスローが希望だろうが、一方でオールカマーのような上がり勝負では鋭さ負けしてしまうというジレンマが…。ただし日曜の天気が崩れる予報なのは有難く、「スローだけど馬場が渋って上がり12秒かかる前残り」、この条件下ならば望みは出てくる。

ヒットザターゲット
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104835/
母ラティールは3歳春に未勝利-特別を連勝してクラシックロードを歩み、古馬になってからも愛知杯2着や中山牝馬3着など堅実に走りつづけた。Conquistador Cieloが出るタミーズターンの牝系で、そこにノーザンテースト(Lady Angela3×2)、ニホンピロウイナー(Abernantとチャイナロックを通じるハイインローのクロス)、タマモクロス(母グリーンシャトーがSwapsとテューダーペリオッドを通じるハイインローのクロス)が重ねられ、古馬になってもタフに活躍したのはこのHyperionの賜物だろう。そこにキングカメハメハが配された息子のヒットザターゲットはNorthern Dancer5・5・7×5となったが、母父タマモクロスにNorthern Dancerが入らないので配合形は決まっている。
Miesque(ForliとFlower Bowlを通じるハイインローのクロス)、グリーンシャトー、ニホンピロウイナー、ノーザンテーストから受け継いだHyperionの血が騒ぎ始めたのはやはり古馬になってからで、4歳以降3つの重賞を手中に収めた。典型的な平坦巧者で、全8勝の内訳は小倉3、函館2、京都福島新潟が各1。若いころよりはいくぶんトモはシッカリしてきた印象もあるが、母系にHabitatの血が入るのでどちらかといえば前輪駆動の走りで、下りで惰性をつけられる京都外回りがベストコース。京都大賞典もトーセンラーと同じぐらいの脚では伸びており、展開が向かなかっただけで昨年ぐらいは駆けている。東京だと京都ほどは斬れない印象はあり、馬場が渋って上がりがかかるのは歓迎だろうが、ユタカのイン差しがハマっても掲示板までか。

トーセンジョーダン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006103169/
「トニービン→ジャングルポケットの父系にノーザンテーストをもってきてHyperionの濃厚な継続クロスを重ねつつ、米血の塊クラフティワイフを母母に置いて1/4異系とする」パターンは、本馬の他にもカンパニーやレニングラードが出た黄金配合。超Hペースの秋天を追い込んで勝ったのがもう4年前のこと、それ以後は13年JC3着も12年春天2着も12年大阪杯3着も11年JC2着もすべて先行粘り込みでの好走で、11年秋天は超HペースでHyperion的な持続力粘着力だけで追い込めたが、やっぱり前で受けてHyperionを振り絞るというのがこの馬の持ち味を最も出せる競馬だろう。もう8歳の秋、「Hyperionの成長力」という言葉もさすがに使いにくくなった。先行なら見せ場はつくれるかもしれないが、ブドーはフランス人だからおそらく出してはいかないと思う。

ラブイズブーシェ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009101075/
函館2600mの臥牛山特別など4勝をあげたハリーアップの全弟。母母ナカミシュンランの全姉ナカミジュリアンはクイーンC勝ち馬で、その母ナカミサファイヤは新潟記念に勝ちオークス2着、近親にもナカミアンデスやフリソなどスタミナ自慢が出る牝系で、牝祖シスターサリーはSon-in-Law2×5。そこにモガミ、メジロマックイーン、マンハッタンカフェとやはりスタミナを秘める種牡馬が代々配されてきた。血統どおりのステイヤーで、燃費のいい走りはヒルノダムールと重なるものがあるし、函館記念はロングスパートでバテない強みを活かした鞍上の好プレーも光った。ただし馬場が渋ったとしても2000mのスピード競馬では少し苦しい。G1で狙うのなら有馬だろう。

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ジャスタウェイ、ジェンティルドンナ、ゴールドシップ、ディープブリランテ、ホッコータルマエ、ヴィルシーナ、カレンブラックヒル、ハタノヴァンクール。
2009年生まれの5歳世代は、オルフェーヴルのようないつでもどこでも無敵のスーパーホースこそいないが、それぞれが自分の得意分野においてチャンスがきたときは逃さないという勝負強さがあって、いろいろな分野のスペシャリストが揃った非常に層の厚い世代だ。
その分厚い世代において、フェノーメノはクラシック路線からずっとトップクラスの一頭として走りつづけ、立ち回りの巧さとHyperion的粘り腰で何度も名勝負を演じてきた。
イスラボニータはルメールへの乗り替わり、エピファネイアは東京替わりとそれぞれ上積みファクターがあり、ジェンティルドンナもスローならば2000mでも必勝パターンに持ち込めるかもしれない。
ただし東京は土曜から日曜にかけて雨の予報で、雨量が微妙だが現時点では渋化もにらんだ予想でいくとなると、後続がいくらかでも斬れや瞬発力を殺がれるであろうぶん、ここも正攻法で前で受けるであろうフェノーメノの、男盛りの5歳ステゴ産駒のHyperion的二枚腰が頼りになる。

◎フェノーメノ
○イスラボニータ
▲エピファネイア
☆ジェンティルドンナ
△デニムアンドルビー
△フラガラッハ

達者な外国人騎手が次々と来日しトップホースに乗り替わるのが当たり前になってきた昨今だが、だからこそトーホウジャッカル酒井学とか、スノードラゴン大野とか、いわゆる中堅クラスの乗り役がお手馬と呼べる馬で大一番を勝ちきった意味を噛みしめたいし、ここは蛯名の意地に期待してみたくなった。
 

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「血統クリニック」天皇賞をアップ&今週の新馬戦

2014-10-30 16:53:34 | 血統クリニック

土曜京都5Rレッドベルダ(デ)
日曜東京5Rアフェットゥオーソ(パ)
デ…「ディープインパクト好配合リスト」 パ…「パーフェクト種牡馬辞典 POG推奨」

先ほど「血統クリニック」天皇賞をアップしました、今週もよろしくお願いします
予報だと東京は土曜から日曜にかけて雨ですね~
雨予報と逃げ馬不在、予想のとっかかりとしてはこれがまずポイントじゃないかと

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「血統クリニック」菊花賞再掲

2014-10-27 09:07:51 | 血統クリニック

昨夜は寝不足なのに飲みすぎてさっき起きました…これから回顧書きますが、まずは血クリ再掲
しかし今年も菊花賞デーにブログのアクセス記録更新で、やっぱり菊は血統というのが未だにあるんやなあ…と

ワンアンドオンリー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105072/
ノーリーズンやグレイトジャーニーの近親で、母母サンタムールはGreen Desertと3/4同血で、その母アンブロジンはトワイニングと3/4同血。Courtly Deeにさかのぼるおなじみの名牝系だ。母がNorthern Dancer3×5で自身はHalo3×4、母系にDanzigとミスタープロスペクターとSpecialと「War AdmiralとLa Troienne」が入るのでヌーヴォレコルトと似た配合パターンになっていて、できるだけ近い世代にニアリークロスや組み合わせのクロス生じさせることで、晩成型の多いハーツクライ産駒を3歳春に完成に近づけようとした配合といえる。(ここまで神戸新聞とほぼ同文)
母はタイキシャトル×Danzigらしいマイラーだったが、この馬は父の若いころに似た細身で長手の体型。ダービーはノリが勝負を賭けて引っかかるのを覚悟で出していって、実際かかり気味ではあったがでも前で受けたぶんと距離適性のぶん、そして東京で伸び伸びとストライドを伸ばして走れたぶん、イスラボニータについに雪辱したというレースだった。神戸新聞は本番を控えてダービーのように出しては行かず、しかし追い込むのではなく3角すぎからのロングスパート。ゴール前はかなり接戦になったが、先頭に立ってからの「抜かせない強さ」を見せたという点ではローズのヌーヴォレコルトと似た勝ち方で、やはりハーツ産駒が成長し完成するというのは、Hyperion的が発現してくるというのとニアリーイコールなのだ、ということを再認識させる勝ち方でもあったと思う。着差的には辛勝だったが、菊花賞の前にノリがやっておきたいことをやっておけたという意味では、トライアルとしては満点に近い勝ち方だったといえるのではないか。トップスピードに乗るまでに少し時間がかかる脚質だからここも下りからのロングスパートでいいだろうし、タイプこそ違えエピファネイアもゴールドシップも下りからのロンスパで菊を制したわけで、そのあたりの仕掛けのタイミングについてはノリに任せておけば心配無用だろう。2000~2400mベストでステイヤーではないが、エピファだってゴルシだってオルフェだってステイヤーではない。

ハギノハイブリッド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104344/
サイレントメロディの甥で、母母サイレントハピネスはローズS勝ち馬で、その全妹に阪神JFのスティンガーがいる。タニノギムレット×トニービンはクリスタルパレスとKalamounを通じる「Grey SovereignとPrince Bio」の組み合わせのクロスになるが、本馬以外に目立った活躍馬は出ていない。牝祖Real DelightはBull Lea×Blue LarkspurだからRobertoの母母Rareleaと3/4同血で、本馬はHail to Reason4×5とRarelea≒Real Delight5×7によりRoberto血脈を増幅していて、飛節のつくりなどはRoberto的Bull Lea的だが、決してパワー型とか力馬というイメージの馬ではない。母母サイレントハピネスがHalo≒Chieftain2×4、母父トニービンがHyperion5×3・5、そこにGraustark3×4のタニノギムレットが配されて、近親の菊2着フローテーション(スペシャルウィーク×リアルシャダイ×レガシーオブストレングス)や同じタニノギムレット産駒の京都新聞杯勝ち馬クレスコグランド(タニノギムレット×サンデーサイレンス)とイメージが重なるようなRoberto的ステイヤーにみえる。京都新聞杯も鋭く斬れたというよりは持続力でジワジワ抜け出してきたという勝ち方で、菊花賞で狙ってみたくなる馬だ(ここまでダービーや神戸新聞とほぼ同文)。
神戸新聞は内にいたのでロンスパ外差し合戦に乗り遅れてしまい、やむなく馬場の荒れたインを突いたが休み明けとしてはまずまずの内容だった。折り合いはいつもスムーズで、無駄のない燃費のいいフォームでトボトボと走る姿がいかにもステイヤー然としていて、ステイヤーだから休み明けは動かないだろうという予感もあった。松国師のオーダーは「下りからのロンスパで」、祐一がそう乗ってくるかはわからないが、折り合いに気を使うことなく動かしていける馬であることは前走で把握しているはず。ここは予定どおり◎級の印。

シャンパーニュ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104477/
名牝ファビラスラフインの孫で、ギュスターヴクライの甥でブレイズアトレイルのイトコ。Fabulous Dancer4×3、Kaldoun3×4という大胆なクロスの父母相似配合でもある。梅花賞の追い比べで惜敗した後にバルジューが「怖がって馬の間に入っていかない」とコメントしていたが、チチカス産駒らしいAureole魂を受け継いだスタミナ寄りステイヤー寄りの中距離馬で、ベストパフォは逃げてサトノアラジンを寄せつけなかったゆきやなぎ賞。阿寒湖ではハナは切れなかったが少頭数で揉まれず外々を捲るというセカンドベストな競馬を岩田が選択し、あの形でもギリギリ勝ちきったのは収穫だった。TVhも同じパターンで外から捲りにかかったが、2000mで淀みのないペースでは追走に余裕がなく捲りきれずに4角一杯。(ここまで神戸新聞と同じ)
神戸新聞は行ききれず外にも出せずイン好位、終始周りに馬がいるという最悪の形で、おまけに外差し決着で見せ場もなかった。神戸新聞で先行した馬たちは出てこないが、セントライトで逃げたサングラスはこの枠ならばある程度主張してくるだろう。となると番手で揉まれず、4角でサングラスがバテて早め先頭に躍り出る、というのが現実的な理想形か。その形になったならば、バンデのような粘り腰を発揮して不思議ない馬なのだが…。

サウンズオブアース
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104377/
ブルーグラスS(米G1・AW9F)のDominican(父El Corredor)の半弟。母ファーストバイオリンはChris Evertにさかのぼる名牝系で、Dixieland Band×Secretariat×Hoist the Flagと母系に入っていい種牡馬が代々配されており、繁殖牝馬としてはなかなか期待大の血脈構成をしている。Gone West系El Corredorとの間に中距離のG1馬を産んだということは、ファーストバイオリンの繁殖牝馬としての地力の証明でもあるだろう。
ネオユニ×Dixieland Bandだからパワーと粘りに富んだ血統。一方でSecretariatからナスキロ柔い体質も受け継いでいてパワー粘着型に特化できず、春はミカエルビスティーのような何とも煮え切らないストライドで差していた。しかしDixieland Bandはデルタブルース、レッドリヴェール、アメリカンボス、フミノイマージン、アクシオン、イジゲン、ブラックバースピン、バーバラ、ダノンゴールド、アポロノサトリなどの母父で、母Mississippi MudがAlibhai3×4で自身はHyperion4×5・5・6だから成長力と持続力とパワーに定評がある血だ。神戸新聞の鋭いというよりはしぶとい伸びにはひと夏越しての成長が顕著で、特に腰回りが春よりも逞しくなってフォームにブレがなくなった印象。とはいえ神戸新聞はいったん少し出たところをグイッと差し返されて、さすがにダービー馬の格が一枚上と認めざるをえない2着ではあった。ネオユニ産駒としてはデスペラードあたりに近いタイプに完成しそうで距離延長もOKだろう。Dixieland BandのHyperionが発現してきた今は京都よりは阪神のほうがしぶとさが活きそうな感はあり、ここはあまり末脚の斬れで差そうとせず、トライアルよりも前で運ぶような意識があれば食い下がれるのでは。

タガノグランパ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105005/
タガノテイオーの近親で、キングカメハメハ×スペシャルウィークはクラリティシチーと同じ。母父がサンデー系でクロスがNorthern DancerとMill Reefだからローズキングダム的なアウトラインでもあり体質はナスキロ柔い。母タガノグラマラス同様この馬も外回りベターで1800mベストだろうと書いてきたが、ダービーやセントライトの好走をみるとどうやら“Blushing Groom風味のローズキングダム”という見立てでよさそうだ。
父がキンカメで母もNorthern Dancerクロスという配合はあまり感心しないし成功率も高くないが、フィフスペトルやショウリュウムーンやラブリーデイなどNijinskyクロスに累進すると時々上手くいくことがあるのは事実。ローキンは追いこんでビッグウィークを捕まえきれなかったが、この馬は前で受けられるのが強みでここも菱田くんは前で受けてくるだろう。ステイヤーではないが、京都外回りならばまたトゥザワールドに先着の可能性は高いとみる。

ヴォルシェーブ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103789/
リルダヴァルの3/4弟で、母母はディープインパクトなどを産んだ名繁殖ウインドインハーヘア。「ネオユニヴァース×ウインドインハーヘア牝系」の組み合わせは、Halo≒Sir Ivorのニアリークロスと同時に、ポインテッドパスとBurghclereのところでCrepelloやHyperionやFair TrialやWild Riskなど重厚な欧血をクロスする。この組み合わせには他にトーセンソレイユ=モンドシャルナ姉弟などがいるが、どちらも馬格のなさに泣いている現状(ネオユニらしく捲るにはある程度の馬格が必要)と比較すると、本馬は母父にサンダーガルチのパワーが入ることと母がNorthern Dancerのクロスを持つことで、上記2頭より馬格に恵まれたのは大きい。(ここまで神戸新聞と同じ)
あまり父には似ておらず、リルダヴァルが胴も脚も長くなったようなイメージで、この伸びのある体躯を活かして東京で追い込んで勝ってきたが、神戸新聞は直線追い出してからの加速で上位陣に置いていかれた。さすがにオープンまでくると、後方からまとめて差し切るには鋭さが足りない。Hyperion的な粘着力はある馬だから、岩田なら今度は前々で運んできそうな薄気味悪さは少なからずあるが、でもソコソコ穴人気になりそうなので…。

トーホウジャッカル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011100482/
トーホウアマポーラの3/4弟で、Quiet AmericanやFappianoやオジジアンなどが出るファミリー。母父Unbridled's SongはFappianoの父系なので、母トーホウガイアはCequillo6×4の牝馬クロスを持つ。姉はフジキセキのIn Reality的な側面が強く出たスプリンターだが、こちらはわりとNureyevが強くフサイチパンドラをサンデー×ミスプロ的に柔緩慢にしたような中距離馬。緩慢なストライドは外回り向きだが、良馬場でオープン馬を相手にするとちょっと鋭さが足りない印象…と神戸新聞では書いた。
その神戸新聞は上がりのかかる持続戦になったのもよかったのだろうが、直線で立て直しながら1,2着馬に迫ったしぶとい末脚は光った。とはいえ「しぶとい」と「距離延びていい」は必ずしもイコールではない。母父Unbridled's Songは芝2200m以上で[0.1.2.18]、賞金上位はトーホウアマポーラ、エーシントップ、サイレントソニック、クリーンエコロジー、アカンサス、バンドワゴン。そしてあのしぶとさは京都より阪神向きのイメージでもあるだろう。菊は高速馬場でもロンスパ戦でわりと上がりのかかる決着になりがちだから、ここもしぶとさで食い下がれる余地はあると思うが、神戸新聞よりは多少パフォーマンスは落ちるのではないか、という読みでいってみたい。

ワールドインパクト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104051/
ダノンジェラート、ロジプリンセスの全弟で、母ペンカナプリンセスはフレッドダーリンS(英G3・芝7F)に勝ち愛1000ギニー2着。そこへディープインパクトで、AlzaoとShareef Dancerを通じるNorthern DancerとSir IvorのクロスにCozzeneからもSir Gaylordが重ねられて体質はナスキロ柔く、一方でLyphard4×5にBusted~CrepelloやBurghclere≒AureoleやCourt Martialのクロスでウインドインハーヘアのスタミナもシッカリ押さえて粘着力にも富む配合といえる。ナスキロ柔く斬れて差レースもできるし、ハイインロー的粘りで先行踏ん張るレースもできるし、どちらもできるのだがどちらにも特化しきれないのがディープ×ペンカナプリンセスの難しいところと言えるのかもしれない。
現状は東京や外回りがベターで、青葉のように直線先頭か大寒桜のように大外一気か、いずれにしてもあまり馬群の中に長くいるのはよくないと思う。テン乗りのブドーがそのあたりを理解して乗ってくるかどうかもポイントといえそうだ。

ゴールドアクター
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105266/
牝祖トサクインの産駒に神戸新聞杯のホウシュウリッチがいるが、近親には目立った活躍馬はいない。父スクリーンヒーローはNorthern Dancer4×4とHail to Reason4×4を持つので思った以上に早期から動く産駒を出している。本馬は母父キョウワアリシバがNative Dancer4×4、母母父マナードがPharos=Fairway5・5・5×5・6で、しかし母ヘイロンシンは強いクロスを持たないので、緊張と緩和のリズムに優れた配合ということができる。父スクリーンヒーローと似た歩みというか、着実な成長を遂げてここに駒を進めてきた。
母父キョウワアリシバのベストパフォは朝日CC(阪神内2000m,通過順位3-3-2-2)3着で、準オープン勝ちが旧中京芝1700mを5-4-3-1、Alydar系らしい捲り脚質の中距離馬だった。その父Alysheba(ケンタッキーダービー,BCクラシック)はAlydarよりもスタミナに寄っていて、Alyshebaを母父とする馬の賞金獲得ベスト3の顔ぶれ(エアエミネム、アラバンサ、ウイングランツ)を見てもそれは実感できる。キョウワアリシバは長い距離を走ったのは生涯一度だけで、それが94年松前特別(900万下)、札幌2600mで2着を10馬身ちぎる爆勝だった。だからゴールドアクターが札幌2600mで水を得た魚のように走っている姿には、スクリーンヒーローよりもキョウワアリシバの面影のほうを重ねやすい。長丁場でバテたことはない馬だが、青葉賞はショウナンラグーンやワールドインパクトに斬れ負けという4着だった。Alyshebaを母系に持つ馬の芝連対率は阪神内18%、東京14%、中山13%、阪神外13%。京都内12%、京都外8%。京都外が最も悪く阪神内が最も良いが、これはパワーとスタミナに富むが斬れ味一息という特徴を浮き出させているといえよう。エアエミネムはマンハッタンカフェの勝った菊で好位から抜け出しかかったが3着だった。ここもバテることはないはずで先行して見せ場はつくるだろう。でもやっぱり京都の高速馬場では、上がりがかかっても掲示板の端っこぐらいかなあ…。

ショウナンラグーン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102893/
母母メジロドーベルはオークスと秋華賞とエリザベス女王杯勝ちで、その父メジロライアンはHyperion5・6×5・5、母メジロビューティーはPerfume≒Nasrullah4×4・5。そこにHalo≒Boldnesian2×4のマンハッタンカフェが配され、Nasrullah≒Royal Charger5・5×5であまり強いクロスをもたないシンボリクリスエスが配されて、ショウナンラグーン自身はHail to Reason4×5、Boldnesian6×6など緩い父母相似配合になっている。(ここまでダービーと同文)
シンボリクリスエス×マンハッタンカフェでSeattle SlewとLaw Societyを通じるBoldnesianとPrincequilloとWar Admiralのクロス。父と母父を足して割ったような体型で、ショウナンマイティを少し硬質にしたような斬れで東京の直線を追い込んでくる。体型的にもストライドを伸ばして走りたいタイプなのだろうが、マンカフェ譲りの体質の硬さも少し出ているのでG1級をズバッと差し切るほどの斬れ味はない、というのは辛すぎる評価か。長丁場の持続戦で末脚が映えるタイプなのかどうかだが、後ろから追い込むだけでは幸運が転がり込んでくることはなさそうだ。

トゥザワールド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103975/
トゥザグローリーの全弟で、母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯に勝ちドバイワールドC2着。キングカメハメハ×サンデーサイレンスは様々なタイプが出るオールラウンドな配合だけに、母母のところに何があって、何がクロスされて何がONになっているかが仕分けのポイントだ。母母のところでMill Reefをクロスすればローズキングダムになるし、Alibhai×Mahmoudをクロスすればソリタリーキングになるし、Hornbeamをクロスすればミッキードリームになる。本馬はNureyev4×3のクロスにSharpen UpからTudor Minstrel(HyperionとLady Juror)が絡み、コディーノ(Special≒ポッセのニアリークロス)にHyperionを追加でトッピングしたような粘着力+機動力の脚質になったのは順当だろう。皐月も弥生もセントライトも持ち味を発揮したレースだったといえる。
ダービーの直前にブログ「配合に素直な前チャンピオンサイアー(4)~東京G1で好走したキンカメ産駒は、みなナスキロのクロスだった(2)」で、配合に素直なキンカメ産駒が東京や外回りのG1で好走するにはラストタイクーンのナスキロ柔さをONにする必要があり、しかしトゥザワールドは母母にナスキロ血脈もトニービンも入らないことがダービーでは不安点だと書いた。そしてダービーでは皐月のように出していかず、何となく差しに回ってしまったというレース運びで、直線は外から脚を伸ばしたがゴール前では左手前に替えて失速気味。しかも先着したのがMill Reef5×5のキンカメ産駒タガノグランパだったというのは、書いた本人から見てもあからさまな結果だった。

サトノアラジン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104063/
ラキシスの全弟で、母マジックストームはモンマスBCオークス(米G2・ダ9F)勝ち馬。ディープ×Storm Catはキズナやアユサンやヒラボクディープやエイシンヒカリなどと同じ。この配合は母母のところでパワーを補わないと(Eight Thirtyのニアリークロスがベスト)Sir Gaylord≒Secretariatのクロスの柔さが勝ちすぎて、いわゆる“緩い”馬、動きが緩慢で力強さに欠けるタイプに出やすいのだが、本馬も春先は多分にそんなところはあった。
とはいえ母母父Fappianoはミスプロ系でもパワーに定評がある血だし、母はStorm Bird≒Nijinsky2×3の北米ダ重賞勝ち馬だから母方そのものはパワー型と言ってよく、全姉がそうだったように本馬も肉付きがよくなって着実にパワーアップをはかってきた。ただこの肉付きのよさは長距離向きの体質とは言いがたいものがあり、神戸新聞はワンアンドオンリーに目標にされて捲られて展開的にババを引いたところはあったものの、淀みないペースだと2400mは少し長いのかもしれない…という4着でもあったか。しなやかなディープ産駒というよりもStorm CatがNijinsky的に胴長になったイメージで、つまり父よりも母似の馬だと思うのだ。神戸新聞の内容自体は着順着差ほど悪くないし2着3着馬とは差がない馬だと思うが、京都3000mに舞台が替って上積みがあるかとなると、超スローの前残りならばなんとか…という評価が妥当か。

トーセンスターダム
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103748/
トーセンジョーダンの甥で、ディープインパクト×ノーザンテースト×クラフティワイフはトーセンホマレボシやヒストリカルと同じ。こちらは母父にエンドスウィープが入ったので母はMr.Prospector3×4となり、自身はエンドスウィープからTom Rolfeが入ってその母Pocahontasのクロス5×6になり、前駆のつくりがTom Rolfe的で掻き込んで走るところはベールドインパクト(Pocahontas5×7)やゲシュタルト(Tom Rolfe6×5)などと似ている。
前駆が勝った肉付きで前の掻き込みの強さで走っていて、スタートが悪くゲートを飛び上るように出るのも頭が高いのも腰が甘いからだろう。その意味では3角からの下りで惰性をつけていける京都は合っているし、きさらぎ賞は渋った馬場もプラスだった。「腰が甘く前駆に頼っているベールドインパクト」というイメージで書いてきたが、京都替わりはプラスだし、叩き一変でベールドのような力走も期待できるかもしれない。とはいえ、ディープ×エンドスウィープ×ノーザンテースト×クラフテイワイフというのは、菊花賞で大事な一票を投じたくなるほど奥のある配合なのかどうか。少なくともトーセンジョーダンとは配合のコンセプトは全く異なる。

マイネルフロスト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011106350/
ブラックタイドはディープインパクトの全兄だが、しなやかさや俊敏さはあまり伝えず鋭い脚に欠けるので、相手牝馬からマイラーっぽいスピードを取り込んだ配合が成功している。シャイニーガール(母父アフリート)とフィールザスマート(Distant View)は母父がミスプロ系のマイラーだ。本馬は母父こそパワー中距離馬のグラスワンダーだが、母母父はDanzig×Mr.ProspectorのスプリンターDayjurで母はDanzig3×3。母の半兄にはダートの快速馬スリージェムがいる。ちなみにDanzigはテイエムイナズマの母父でもある。ダービーはビックリの3着好走で、上がり2位の脚で追い込んだテイエムイナズマの6着と重なるものがあったが、インをロスなく捌いた騎乗も大きかった。基本的にはテイエムイナズマと似たタイプで1800mぐらいで手堅い馬だろう。(セントライトと同文)

ミヤビジャスパー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102103/
京都牝特に勝ったシスティーナの孫で、母ミヤビキララは芝1800mで3勝。そこにアドマイヤムーンで、サンデーサイレンス3×3、Northern Dancer5×5・6、Hail to Reason5×5・6。緩い相似配合というべきだが、両親の持ち味は受け継いでいて、アドマイヤムーンをサクラユタカオー的に少し緩慢にした中距離馬、というイメージの馬だ。
瞬時にビュンと加速する脚はないので、外回りでジワジワダラダラと脚を伸ばして差してくるような脚質で、全勝ち鞍が阪神外1800m。京都新聞や白百合のように、京都の高速馬場で相手が揃って上がりが速くなると鋭さ負けしてしまう。この父母では長距離でプラスアルファがあるとは考えにくい。

アドマイヤランディ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103858/
ジョイフルスマイルの半弟で、3代母Canoodlingの産駒にトーヨーデヘアがいるファミリー。母父ジョリーズヘイローはドンH(米G1・ダ9F)、ガルフストリームパークH(米G1・ダ10F)、フィリップHアイズリンH(米G1・ダ9F)の勝ち馬で、Halo≒Sir Ivor1×2だから自己主張が強く、本馬はHalo3×3にTurn-to5×5・5だから主にこの母父の軽いスピードでダートを走っているとみるべきだろう。京都のような軽いダートが合っているタイプだが、芝長距離で新味が出るかとなると疑問。

サングラス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105914/
母ノッティングギャルはダンスインザダーク×ブライアンズタイムだからスリーロールスと同じ配合で、両者のスタミナ源であるGraustarkを5×4でクロスする。父スタチューオブリバティはSecretariat≒Sir Gaylord3×4などStorm Catのスピードを強力に増幅した配合で、アクティブミノルやキクノストームやカシノピカチュウなど開花の早いスピードを伝える種牡馬。本馬は母父の影響も強い体型でGraustarkクロスの影響で肩が立っていて、スタチュー産駒にしては距離がもつがアクティブミノルのような快速ではなく、重心が高い走りなので小回りの1800mを先行流れ込む競馬が一番合っていそうだ。つまりHTB賞は全て条件が揃ったわけで、それであの辛勝となるとここではまだ通用しないだろう。(セントライトと同文)

メイショウスミトモ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102556/
ロングプライドの半弟で、ウイングアローの甥で、父がゴールドアリュールで母父がアジュディケーティングという筋金入りのダート血統。やや硬肉で掻き込みの強い走りはDanzig的で母父の影響が強い馬だと思う。力の要るダートや急坂小回りに向いた1800m型で、ダートなら京都の重より阪神の良で買いたいタイプ。 

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「血統クリニック」菊花賞をアップ

2014-10-23 16:52:14 | 血統クリニック

先ほど「血統クリニック」菊花賞をアップしました~
クラシック三冠、ここまでを振り返ると、イスラボニータは蛯名が、トゥザワールドが川田がずっと手綱をとってきたし、ダービーのワンアンドオンリーもノリは4度目の騎乗
リーディング上位の腕利きでも、テン乗りでG1を勝つのはなかなか大変です

午前中はPCの備品を買いに京都駅近辺へ、ここらで一人ランチとなると何を食おうかな~と考えているうちに、「第一旭」と「新福菜館」の本店が並ぶエリアへフラフラと吸い寄せられます
今日は第一旭が定休やったので、ラーメン親父たちは新福に並んでましたが、私は11時すぎに立ち寄ったので行列は逃れました
おなじみの真っ黒なスープは見た目とは裏腹に実にあっさりで、一言でいうとふつうの昔ながらの醤油ラーメンなんですが、独特の風味とコクが老舗の貫禄ですな(・∀・)
この醤油ダレで炒めるチャーハン(京都では「やきめし」)がまた絶品なのですが、もう勢いでラーメン+チャーハンを注文するパワーが失われてます…



京都ラーメンの元祖が揃い踏みする高倉塩小路

第一旭とか新福とか、阪急うどんとか王将の餃子とか、ここらは京都人のソウルフードですから、帰省したら必ず一回は食べるかなあ…

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「血統クリニック」秋華賞再掲

2014-10-19 16:16:33 | 血統クリニック

回顧は府中牝馬といっしょに後ほど

ヌーヴォレコルト
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104201/
母オメガスピリットは芝1200mで3勝をあげたスプリンターで、その半姉にファンタジーS2着、現阪神JF3着のゴッドインチーフがいる。母父スピニングワールドはNureyevの代表産駒で欧米のマイルG1を勝ちまくった。母がNorthern Dancerのクロスで、母系にDanzigとMr.ProspectorとSpecial=ThatchとMr.Busher≒Better Self≒Courtly Deeが入るという配合のアウトラインがワンアンドオンリーと似ていて、近い世代にクロスやニアリークロスをできるだけ多くつくることで、晩成ハーツクライ産駒の完成を早めることに成功した配合と言える。
ハーツクライにNureyevだからもともとHyperion的な粘着力に富む脚質ではあったが、オークスでは最高のタイミングで抜け出して叩き合いで凌ぎきったという勝ち方。ローズSでは開幕週の馬場を考慮して先制し、直線抜け出してからも後続を寄せつけず、ゴール前の脚色はこの馬が一番良かったほど。ひと夏越してますますHyperion的な脚質に完成してきたなあ~という印象を受けた。ハーツクライ産駒が成長し完成するということは、体質や脚質がますますHyperion的になっていくということでもあり、だから前哨戦を先行押し切りで勝った意味は大きい。ダイワスカーレットのような横綱相撲でドンと受けて立つだろう。

ショウナンパンドラ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103584/
ステイゴールドやレクレドールの姪でドリームパスポートのイトコ。そこにディープインパクトで、ディープもステゴも少し非力なのが弱点でパワーのある牝馬との配合が成功するが、本馬の場合は母父にフレンチデピュティが入って母はVice Regent≒ノーザンテースト3×3、ここでパワーを増すことである程度弱点を補っているといえる。
徐々に体重が増えてパワーアップしているのはたしかだが、未だにトモの蹴りは少し非力で急坂コースでは勝ち鞍がない。ここ2走を見てのとおり、新潟の平坦な直線では抜け出してくるときの反応や鋭さが違う。たとえば東京のカーネーション2着にしても、直線の坂で少しモタモタっとして重心が浮くような走りになっていて、坂を駆け上がってからゴール前の200mのほうが明らかにフォームは良い。エルフィンではシャイニーガールがスローで逃げて上がり11.2-11.4で悠々と押し切るところを、一頭だけ違う脚で追い込んできた。後肢の非力さを前駆の駆動の良さでカバーして走っているだけに、京都の下りでの加速が実に滑らかで、京都の高速馬場ならば上がり1位はこの馬だと思う。上がり1位で追い込んで何着になるか、今年はミッキーアイル以外G1でこれといった見せ場のない浜中だが、ここは腕の見せどころだろう。

レッドリヴェール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104324/
Haloと同じCosmahにさかのぼる牝系。ステイゴールドにSir Gaylordが入った420キロの牝馬となるとナスキロ柔いが非力なイメージだが、母父Dixieland Bandはその母がAlibhai3×4、Hyperion4×4・5で、母母がDetermineとHeliopolisを通じる「HyperionとSwynford」の組み合わせのクロスだから、ここがLady Angelaの「Hyperion,Tracery,Swynford」と脈絡してデインヒルのように頑強さを補えるNorthern Dancer血脈だ。
だから小柄でも非力なところは全く感じさせず、函館の極悪馬場に足を取られながら抜け出したり、阪神の急坂でグイッと加速できる頑強さがある。3連勝はいずれも僅差で、小柄でも頑強で勝負強く我慢強いというのはノーザンテーストの特長そのものと言っていい。実績は1600mに集中しているが、血統・体型・走りをすり合わせていくとナカヤマフェスタとかアクシオンに近いところに着地点はあるように思うし、外マイルよりも内2000mのほうが合っている馬にも思える。札幌2歳のように3~4角で動かしていくレースができれば巻き返しの可能性はかなりあると思うし、そういうレースができる馬だろう。あとは当日どんな体重と体つきで出てくるか。現時点ではまさに▲がふさわしい存在。

オメガハートロック
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104198/
ハーツクライの姪で、オメガハートランド、オメガスカイツリー、オメガブルーハワイと兄姉もみんな走っている。母オメガアイランドはNorthern Dancer4・5×4でそこにNorthern Dancerを持たず5代アウトのネオユニヴァースをもってきた配合も良い。
母父エルコンドルパサーは牝馬(アイムユアーズ,ラブフール,ダンスアミーガ)には機動力を牡馬(クリソライト,ブレイズアトレイル,サムソンズプライド)にはスタミナを主に伝えるが、オメガハートランドもオメガハートロックもエルコン的Special的機動力を受け継いでいて、だからオメガハートランドはフラワーとフェアリーと中山牝馬で◎にしたし、本馬もフェアリーで◎にした。この姉妹はリンカーンの牝馬版のようなイメージで中山1800mで実に狙いやすいが、京都内2000mも機動力を活かせる舞台だし、フェアリーではニシノアカツキとリラヴァティに競り勝っているのだからセカンドクラスのトップ級の評価はできる。長休明けは気になるが4番手の評価で。

バウンスシャッセ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104105/
Stubbs Art(英2000ギニーと愛2000ギニーで3着)、ホーカーテンペスト、フロアクラフトの下で、母リッチダンサーは毎年のようにオープン級を産みつづける名繁殖。3代母Rising TideがNearco4×4→Fairy FlightがNearco4×5・5→リッチダンサーがNorthern Dancer5×3と代々Nearco系のクロスを重ねていて、そろそろこの継続クロスについて緊張→緩和のリズムに転換したいところへ、NasrullahやNorthern Dancerの強いクロスを持たないHawk Wing、フジキセキ、ゼンノロブロイが配されてきた。この種牡馬の選択にも妙味があったというべきだろう。
リッチダンサーはSharpen UpやFairy KingのFair Trial的な粘着力をよく伝えるので産駒は中山芝[5.3.1.4]、東京芝[1.2.1.9]と中山向きの脚質になりやすく、本馬もフラワーCや寒竹賞では内回りの機動力十分という勝ちっぷり。内回り2000mというのは悪くない条件といえるが、パワーと粘りが持ち味なので平坦より急坂がベターだろうし、高速馬場よりはタフな馬場がベター(滑る馬場は苦手のようだが)でもあるだろう。京都の高速馬場だと勝ちきるまではどうかと思うが、イン好位で立ち回るような枠を引ければ何らかの印は必要な馬だ。

リラヴァティ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103890/
アダムスピークの3/4妹で、母シンハリーズはデルマーオークス(米G1・芝9F)勝ち馬。ゼンノロブロイ×SingspielでHalo3×4というのはコスモネモシンと同じ。ただネモシンの母母がNasrullah≒Royal Charger4・5×5だったのに対し、本馬の母母BaizeはForliやHigh TopやRelicやLorenzaccioなどアウトサイダー血脈が強く、こちらのほうがパワーやスタミナでは優るが俊敏さや鋭さでは見劣るというイメージでいいか。
3度の重賞3着はいずれも逃げ先行だが、特に揉まれ弱いわけではなくジリ脚をカバーするには前に行くのがベターということだろう。西海賞のようなスローのヨーイドンはあまり得意ではなく、上がり12秒で間に合うレースならしぶとい。Haloクロス馬らしい脚捌きで走るので外回りから内回りに替わるのはプラスだろうし、阪神から京都に替わって上がりが速くなるのはマイナスだろう。スタミナは上位なので、ある程度緩みないペースで上がり11.8-12.0ぐらいで流れ込みたいところで、そういうペースを自らつくれる立場でもある。

マーブルカテドラル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104414/
母ヘルスウォールは旧阪神(現内回り)のチューリップ賞を逃げ切った馬で、その半姉に函館3歳S(逃げ)とデイリー杯(番手)で2着したサラトガビューティがいる。その母サラトガフラッシュはBold Ruler×Turn-to×Native Dancerという典型的な北米血統だが、Promised Land≒Darlin Patriceの3/4同血クロス3×3を持ち、両者の母であり母母であるMahmoudessはMahmoudの娘でThe Tetrarch4×4を持つので、字面よりは芝向きのしなやかさを伝える繁殖牝馬だった。このPromised Landはサンデーサイレンスの母父Understandingの父でもあるから、ヘルスウォールにサンデー系種牡馬を配するとPromised Land≒Darlin Patrice5×5・5になるわけだが、このパターンで父フジキセキとの間にNZT3着、スプリングS4着のアサクサダンディが出ている。マーブルカテドラルは父がダイワメジャーなのでこのクロスは同じだが、母はSeattle SlewとBold Bidderを通じるボルキロのクロスで、細身で脚長で直飛で斬れも感じさせる走りはこの影響もあるだろう。一方であまりストライドは伸びず手先の軽さでサッと加速できるのはBold Ruler的ともいうべきで、それはこの牝系の持ち味である機動力や先行力とも重なる部分だ。全体としては"忍者走法で小回りもきくエクセラントカーヴ"というイメージか。(ここまで桜花賞とほぼ同じ)
ちょっと前向きすぎるきらいはあるものの機動力と斬れ味を兼備していて、中山で捲れるし東京で差せるし何でもできる馬だ。ただ東京や外回りの淀みないペースをズバッと差し切るような本格的な斬れ味ではない。格上相手に一泡吹かせるとしたら、外回りなら超スロー、内回りならイン捲りだろう。早熟傾向の牝系だけにこれから大きく成長することはないかもしれないが、クイーンSでは直線カベで手綱を引っ張るまではこれはハマったかという手応えと反応でインに突っ込んでおり、高速馬場の内回りをイン差しできる俊敏器用な脚の持ち主だ。スロー希望だろうがヒモ穴候補の一頭。

セウアズール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104252/
母シャピーラは独1000ギニー(G2・芝1600m)勝ち馬で、母父Kornadoはメルクフィンク銀行賞(独G1・芝2400m)勝ち馬でその母がHyperion4×4、母母父Common Groundsはサラマンドル賞(仏G1・芝1400m)に勝ったSharpen Up系のマイラーで、母母Sarah SiddonsはHyperion5×3・5。そこへディープインパクトで自身はLyphard4×5で、全体にHyperion+Fair Trial的な粘着力ある血で固められており、小柄な牝馬だが体質はわりとHyperion的で非力さは感じない。母がSharpen Upのマイラーでこの粘着力で走るという意味ではチャペルコンサート・ムードインディゴ姉妹に近いようなイメージも持てる。休み明けで馬体を増やして出てきて鮮やかに差し切り、抽せんを潜り抜けての出走で、これで内枠でも引くようならば北友の出たとこ勝負のイン差しに一票投じる手はあるかも(^ ^;)

レーヴデトワール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104124/
母レーヴドスカーはサンタラリ賞(仏G1・芝2000m)勝ち馬でSir Gaylord4×4。このナスキロ柔さを産駒によく伝え、レーヴディソール、アプレザンレーヴ、レーヴドリアンなど兄姉たちは東京や外回りで斬れ味を発揮している。本馬も体質は柔らかいし体型に伸びもあるのだが、母父に入るNever Bendの血がマイニングのラトロパワーをONにしたようで、肩が立っていて、柔らかくストライドを伸ばして走れそうなのに前駆の駆動が小さくて伸ばしきれないという走り方をする。
だからこれまではむしろ内回りで良績を残してきたし、桜花賞5着も荒れた無欲の後方待機からインに突っ込んでのもの。紫苑Sは中だるみのスローで上がり11.5-11.1-13.2、この11.5-11.1のところでは馬ナリで抜け出したショウナンパンドラに追いすがるのが精一杯だったが、ラスト13.2のところで苦しくなったショウナンをジワジワ追いつめて差し切った。外回りでの初勝利となったが、これも鋭く斬れたというよりは道悪の巧さで差し切ったという勝ち方だったと思う。ストライドが伸びないぶん内回りを捲るような競馬は得意だが、高速馬場ではちょっと鋭さが足りない気はするので雨が降ったほうが印は回しやすい。

ブランネージュ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103510/
母母コードネームはハットトリックの全妹。そこにフレンチデピュティ、シンボリクリスエスと配されて、Hail to Reason4×5にNothirdchance≒Blue Moon≒Revokedのニアリー継続クロス、そしてSeattle SlewとフレンチデピュティとChieftainを通じるボルキロのクロス。シンボリクリスエス産駒としてはストレッチランナーに出やすい配合パターンで、フレンチデピュティをSeattle Slew的に少し長手にした体型で、体質はソコソコ柔らかい。
中距離に延長してからは君子蘭①→フローラ②→オークス⑤→ローズ④と高値安定。ただこれは距離延長だけでなく東京外回りも合っていたからと考えられ、逆にいうと未勝利脱出に6戦を要したのは距離不足だけでなく内回りだったからというのもあるのでは。鋭角なコーナーで加速しながら差すようなレースはあまり得意ではないと思うのだ。

タガノエトワール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103610/
3代母ダイナフェアリーは新潟記念とエプソムCの勝ち馬で、産駒にローゼンカバリー、孫にホクトスルタンと、シーホークの血を引くだけに長いところ向きの活躍馬が出ている。母母サマーベイブはトニービン×ノーザンテーストでHyperion4・6・6×5・6・6でスイートピーS2着。キングカメハメハ×サンデーサイレンスは万能だが配合には正直で、本馬は母母がHyperionの塊で自身もキンカメとトニービンを通じるHornbeamのクロス(ルーラーシップやミッキードリームなどと同じ)だから、Hyperion的な持続力で走るストレッチランナーに出たのは順当。
ローズSは開幕週の内枠を活かしきった騎乗も大きかったが、持続力ある末脚でジワジワ追い込んで2着。血統や脚質からみて距離延長はプラスだが、長手の体躯はいかにも広いコース向きという印象もあり、小倉で勝ったときも上がりのかかる競馬を持続力でねじ伏せたという勝ち方だった。京都内回りを鋭く俊敏に差すような脚はないだろうから、Hペース前崩れの助けがほしい。

ハピネスダンサー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103837/
母母インディスユニゾンはフサイチエアデールの全妹だから、そこにクロフネが配された母クロノロジストはフサイチリシャールと同血(父が同じで母が全姉妹)の間柄。そこにメイショウサムソンが配されたのが本馬で、「父中距離×母マイラー」の組み合わせで母のスピードで先行し父のスタミナで粘る中距離馬に出たのは順当。サンデーの血を入れてDrone≒Haloのニアリークロスにするのもサムソン産駒のセオリーといえるが、Fair Trial系のクロスを持たないのでちょっと俊敏さに欠けるところはあり、内回りの中距離戦は合っているが京都の高速馬場よりは中山のエアレーション馬場向きだ。

マイネグレヴィル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011105245/
マイネルデュプレのイトコで、マイネルブライアン、マイネルビンテージ、マイネルブラウなどでおなじみのオカノブルーの牝系。母母マイネミレーはマルゼンスキー×ネプテューヌスだからこの牝系でも米血パワーを誇る分枝で、娘のマイネミモーゼ(父ブライアンズタイム)は雨のフローラSでニシノハマグルマの2着に健闘、その後は主にダートを稼ぎ場所とした。本馬は父がブライアンズタイムで母母がマイネミレーだから、マイネミモーゼとは叔母と姪の関係でかつ3/4同血。間にスペシャルウィークが入ったことで母はマルゼンスキー3×2となり、自身はHail to Reason3×4となり、マイネミレーの米血パワーを更に増幅させてきた。スペシャルウィークやマルゼンスキー譲りの伸びのある体型をしているが、走法はわりとRoberto的で掻き込んで走るので、中山のエアレーション馬場や函館の道悪でパワーを発揮するが、東京の良だとアルテミスのように斬れ負けしてしまう...という馬だろう。ミモーゼが2着した年のように雨が欲しい。(ここまでフローラSと同じ。)ここも雨がほしいが、紫苑は松岡がペースを中だるみさせすぎて斬れ負けしてしまったところもあったから、大知ならもう少し緩みないペースで後続に脚を使わせてくる可能性はありそうだ...とここまで書いた後に陣営から逃げ宣言も出た。

パシフィックギャル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011103737/
Mr.Prospector4×4、Raise a Native5×5・5、Buckpasser5×5、米血の強いゼンノロブロイに更に米血を重ねた配合だが、I Pass≒Wavering Monarchの3/4同血クロス4×4(マイニング≒Wavering Monarch3×4でもありマイニング≒Seeking the Gold3×3でもある)は両者の母系の良さが活きたなかなか魅力的なクロス。母アイランドファッションはアラバマS(米G1・ダ10F)など勝った一流馬で、アイランドファッションとローミンレイチェル(米G1バレリーナS勝ち)の持ち味を活かした配合と言うべきだろう。
馬格があってラトロ肩でエアレーション馬場を力強く掻き込んで走るし、これはダートもかなり走りそうというか、古馬になったら交流重賞でブイブイ言わせるかもしれないという1800mベストのパワー型。斬れがないので外回りより内回りベターには違いないが、ベスト条件と思われるフラワーでバウンスシャッセに完敗となると、巧く立ち回っても馬券圏内までは厳しいか。道悪なら印を回す手もある。

サングレアル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011104004/
ビワハイジは母アグサンが持つ「HyperionとLady Juror」の組み合わせ譲りの粘着力で走るマイラーだったが、産駒にはCaerleon+Sir Gaylordのナスキロ柔い体質をよく伝え、ブエナビスタやジョワドヴィーヴルのようなしなやかストレッチランナーを毎年のように送り出す名繁殖となった。本馬も母を少し伸びやかにしたような体型で、フローラSでは岩田が追い出すとしなりながら斬れて完全に抜け出したブランネージュを差し切り。あの斬れ味は世代屈指だが、400キロ台に馬体が減ったオークスとローズSでは完敗を喫してしまった。特に休み明けのローズはもう少し成長を感じさせる馬体で出てきてほしかったところで、もともと外回り向きの脚質でもあるだけに、ここでの巻き返しはちょっと難しいのでは。

ペイシャフェリス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011102351/
血統については桜花賞で詳しく書いたのでそちらを参照していただきたいが、母方の影響が強いマイラー体型でHalo的Tom Fool的な脚捌きで走り「HyperionとFair Trial」的な粘着力も兼備していて、先行力と機動力に富み少し上がりがかかるレースに向く長めマイラー。スペシャルウィークの娘だが2000mは少し長いだろう。

アドマイヤビジン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2011101543/
3代母ミヤマポピーはタマモクロスの半妹でエリザベス女王杯勝ち馬。母はMr.Prospector4×4で、「クロフネ×サンデー×ミスプロ×Buckpasser(War AdmiralとLa Troienne)」というアウトラインはフサイチリシャールやセイコーライコウやブラボーデイジーなどと同じで、クロペリオンの次に成功しやすいセカンドベストの配合パターンといえる。Mr.Prospectorが強い体型で戦績どおり1400m寄りのしぶといマイラー。2000mでは手を出しにくい。

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「血統クリニック」秋華賞をアップ&今週の新馬戦

2014-10-16 17:16:11 | 血統クリニック

先ほど「血統クリニック」秋華賞をアップしました~
追い切りと枠順を見てから少しいじるかもしれませんが、とりあえず印も入れてます

今週の新馬戦にはピック馬や推奨馬の出走はなし、未勝利組に期待したいですが、日曜東京2Rプレシャスメイトは1400mはちょっと短いのではないかと…
あと土曜東京4Rアルトサックスにチェックが入ってるので何だろうとクリックすると、「サムソン×サンデー×Nureyevの黄金配合」とメモしてありました(・∀・)

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血統クリニック~スプリンターズS再掲

2014-10-05 16:08:20 | 血統クリニック

レース回顧はこれから書きます
勝ち馬については「1分9秒台の決着ならば突っ込める」と書いてますが、1.08.8で届いてしまいました(^ ^;)
今年のスプリンターズは「野芝の新潟芝1200mはナスキロ柔さで差せる舞台」というところに一つテーマを置いていただけに、02年新潟スプリンターズ2着のアドマイヤコジーンを父とし、CaroとPrincely Giftとナスキロをクロスする父母相似配合のスノードラゴンに差し切られるという結末は、終わってみれば半ば納得ではあるんですがね~
ノーザンテーストとサンデーサイレンスの周りをCaroとPrincely Giftとナスキロのクロスが固めるというのは、たしかに最も和風なスプリンター血統と言えます

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レッドオーヴァル
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010103743/
名繁殖コートアウト(加G1マザリンBCS2着)の娘でストロングリターン、ダイワマックワン、ブレイクチャンス、ウィケットキーパーの妹にあたる。若いころはディープにミスプロとナスキロが入ってしなやかに斬れる1400m寄りマイラーというイメージだったが、ディープにVaguely Nobleが入ってBurghclere≒Aureoleのニアリークロス、そして母が4×3でもつSmartaireもHyperionとSon-in-Lawの組み合わせを内包するので、古馬になってからもジワジワと成長しつづけ、今や牡馬一線級相手と互角にやれるぐらいの逞しさを身につけてきた。
全体に肉付きがよくなって頑強さを増してきたぶん、若いころより短距離向きにシフトしてきたという印象だが、もちろんディープ牝駒らしい斬れやバネを感じさせる走りで、ブログで書いたように新潟芝1200mはナスキロ的ミスプロ的なしなやか差しが狙える舞台。インベタ札幌で3角から4~5頭ぶん外を回りながら上がり1位の脚で弾けつづけたここ2走を評価するならば、この大舞台で◎というのも決して無理筋ではないと思える。追い切りの動きも素晴らしかったから、新潟への当日輸送で馬体が大きく減らなければかなりやれるはず。

ハクサンムーン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102527/
母チリエージェは全5勝が1400m以下でバクシンオー産駒らしい快速娘、その母メガミゲランも芝1200mのオープン特別を2勝した遅咲きのスプリンターだった。フォーティナイナーがミスプロ系屈指のパワーとスプリントを誇るのはTom Rolfeの強大なパワーに因るところが大で、そしてTom Rolfeの強大なパワーは母父Romanに因るところが大で、このRomanはノーザンテーストの母父系のChop Chopと「Sir Gallahad,Buchan,Commando」が共通する近似血脈だから、両者が出会うとラインクラフト、ユートピア、ヴァンクルタテヤマ、シャドウスケイプとダートや短距離向きのパワー加速になりやすい。しかもバクシンオーの場合は母クリアアンバーが「Bull Lea(父Bull Dog)とCommandoとSun Briar(父Sundridge)」の組み合わせのクロスでもあるので、ラピダメンテやランドクイーンやゴーイングパワーなどフォーティナイナーとバクシンオーの組み合わせはほとんどがダートのスプリンターだ。一方でメガミゲランはMill ReefとモガミとBuckpasserを通じるLa Troienne血脈のクロスをもち、また父アドマイヤムーンがもつSharpen Upと母母父シェイディハイツがもつAlycidonが「HyperionとDonatello」の組み合わせでこれはいつも書くようにLady Angelaと脈絡する。
血統どおりのスプリンターだが、若いころはアドマイヤムーンとバクシンオーの柔らかさが強すぎて少し非力なところもあった。しかし前述したようなパワーや頑強さをONにする仕掛けにより、デビュー当時から30キロ以上も体重が増え、一流スプリンターとして完成したのが昨年のCBC賞。頑強になったことで二の脚が抜群に速くなった。韋駄天揃いの短距離重賞でも最初の100mで1馬身ぐらい出てしまうので競りかけるスキを与えない。これまで中10週以上は[0.2.0.2]とあまり鉄砲は走らないほうで、中24週で+12キロで、あえて出していかずに番手の競馬で答えを出したセントウルは上々と言っていいだろう。本格化してからは急坂コースばかりを走っているが、頑強になった今でもA級スプリンターとしてはしなやかな体質で、去年のアイビス勝ちが着差以上の楽勝だったし、平坦コースのほうが更にしなやかに流れ込めるイメージは持てる。

ストレイトガール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009100301/
オースミフライトやオースミコスモの近親で、母ネヴァーピリオドはタイキシャトル×デインヒルで
Northern Dancer5×4
Herbager4×5
Buisson Ardent≒Bold Hour6×5・6(Pherozshah≒Nasrullah、War Relic≒Time to Dine、Black Toneyが共通)
Flaring Top6×6
という父母相似配合で、現役時代は1200mで3勝をあげた。ストレイトガールも主に母のスプリンター資質で走っているというべきだろうが、母がパワー体質で典型的な夏馬だったのに比べると、こちらは父フジキセキやHalo3×4から柔らかさも受け継いでいる。また母がデインヒルとNijinskyとThatch(Special)を使った相似配合で、そこにフジキセキという図式はエイジアンウインズと似ており、エイジアンをよりスプリントに寄せたようなタイプだとも書いてきた。フェノーメノやミッキーアイルなど、母系に入るデインヒルのパワーをサンデー系のしなやかさで日本向きにカスタマイズすることで成功する、というのは最近のトレンドと言えよう。
父フジキセキ×牝祖タイセイカグラという組み合わせは本馬とその全姉ゴールデンアスク(未勝利)、オースミコスモ(重賞3勝)、ワキノキルシェ(2勝)と抜群の相性だが、このニックスについては以前ブログで詳しく説明したつもりなので下記リンクを参照してください。
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/772f8a57713dfa5c47f18219d80cdd88
函館SSでは渋滞に巻き込まれ、ヴィクトリアマイルは距離、高松宮は道悪、キーンランドはインベタ馬場の外回し。最近の敗戦は全て物理的な説明がつき、高速馬場でも洋芝でも右回りでも左回りでも良の芝1200mで不利がなければ全部勝ってきた。高松宮はあまりにも特殊な極悪馬場だったし、手先のパワーが強い馬だから本来は多少馬場が渋っても荒れてもOKで、出していけば好位をとれるし差しにも回れるし、死角らしい死角はないからここも主役をつとめることになるだろう。ただあえて重箱の隅をつつくならば、この馬のスプリンターとして最も秀でているところはデインヒル譲りの牝馬らしからぬ圧倒的なパワーだと思うので、たとえば対ハクサンムーンでいうと、直線に急坂があるか洋芝のほうがアドバンテージはあったかもしれない。

トーホウアマポーラ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009102583/
トーホウジャッカルの3/4姉で、牝祖Quiet CharmからはQuiet AmericanやDare and Goやエーシンフォワードなどが出る。母母AgamiはNearctic3×3、Native Dancer4×4、母トーホウガイアはRaise a Native5×4にWar Relic≒Good Example7・8・8×5、そこにフジキセキでトーホウアマポーラ自身はミルレーサー≒Gana Facil(Le Fabuleux×In Reality)2×4。
Mr.ProspectorとIn Realityが強いスプリンター体型で、若いころはトモが非力で京都や小倉の平坦高速馬場で凄い時計を叩き出すタイプだったが、少しづつ後駆に力がついて急坂も苦にしなくなった。それでもどちらかというと前駆の駆動の良さで走っているタイプではある。ここ2走、祐一は好発を決めながらもジワッと中団まで下げて差す競馬をさせているが、ここは逃げ2頭を除くとそれほど行く馬がいない。好位で流れに乗って流れ込む競馬でいけば、平坦替わりを味方に残り目はありそう。

コパノリチャード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010106552/
コパノオーシャンズの3/4弟で、3代母アルガリーの孫にコパノフウジンがいる。ダイワメジャーはニアリーDroneな血、「ナスキロ+Tom Fool」的な血脈と抜群に相性が良く、Caerleonの母ForeseerもPrincequillo×Hail to Reason×PharamondだからニアリーDroneで、この血を母系にもつパターンからは本馬やゴールデンナンバーが出ている。本馬の場合は母系にBlushing Groomも入るのでHalo≒Foreseer≒Red God3×4・5といってもよく、これが動きの俊敏さや脚捌きの軽さにつながっているわけだが、一方で母父がトニービンなのでHyperion的な粘り強さもあり、3代母アルガリーがWild Risk3×4なのでカッとする気性も受け継いで、現状はハナを切ったほうが落ち着いて走れるようだ。また母はトニービンとWordenを通じてPretty Polly=Mirandaの薄い全姉妹クロスをもつが、これはカレンブラックヒルの母がLe Fabuleux4×4とGreat Nephewを持っていたのと同じで、ダイワメジャー産駒に大一番での底力を付与する隠し味ではないか考えている。
高松宮の馬場は道悪巧者といえども決して走りやすいということはなく、この馬も他馬よりは上手に走っていたが下を気にして、番手でもそれなりに息が入ったというところはあっただろうし、何よりあそこまで悪くなると持ったまま先行するような前向きな気性の馬が有利だ。京王杯SCは1000m通過56.0はちょっとオーバーペースだったかもしれないが、番手のレッドスパーダと好位のクラレントがそのまま残っているのだから物足りない内容ではあり、やっぱりこの馬はザックリ言うとエピセアロームがカッカしながら逃げているようなもんで、ノーザンテースト的なパワーと粘りがベースのスプリンターだから急坂小回りがベターだと思う。スワンSはスローの逃げで恵まれた部分もあったが、Hペースで行くだけ行った阪急杯は舌を巻くほど強かった。新潟芝1200mはコース形態上上がりの速い競馬になることが多いので、浜中が腹を決めて前傾ラップでガンガン行けるかどうかだろう。ハクサンが番手に控えてくれてもそこでペースを落とそうとすると墓穴だろう。馬場が渋るのは当然プラス。

セイコーライコウ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103968/
クロフネ×サンデー×Mr.Prospector×Buckpasserだからフサイチリシャールと似た配合パターンの"準黄金配合"。母母スコールイはダートのスプリンターだったのでこの影響も強いのだろう。直千の2戦2勝がいずれも着差以上の完勝楽勝、しかし函館SSでも斤量差があったとはいえ、イン伸び馬場で外々を回って差のない4着。船橋Sでもうなりながら抜け出して楽勝だったから1200mでも重賞級の評価できる。ただし芝1200mでの4勝が1.08.8、1.08.3、1.09.0、1.08.8。1分7秒台の決着では③②④と勝ちきれてないし、パワーの勝った血統でもあるだけに重い印までは回らない。

グランプリボス
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008103388/
3代母Nervous Pillowの産駒にBCジュヴェナイルフィリーズ3着のFine Spiritが出るが、近親にこれといった大物はいない。サクラバクシンオーにサンデーサイレンスとナスキロ(Secretariat)を重ね、父よりも体型に伸びが出て父よりも体質が柔らかくなり、つまり父よりも距離適性が長くなったしなやかマイラー。東京と外回りの高速馬場の1400~1600mでベストパフォーマンスを叩き出してきたが、一方でタフな馬場になると凡走してしまうような非力な面はあって、それだけに安田記念の力走には驚かされたし今でもなぜ走ったのかが判然としない(^ ^;) 1200mだとスプリンターズのように追い込む形になるだろうが、直線が平坦なほうが更に斬れは増すはずで、もう少し着順は上げられそうだ。しかし父よりも胴が長い体型で父よりも柔緩慢な体質になったぶん、1200mのG1でビュンと弾けて馬券圏内まで突っ込んでくるイメージまでは描けない。

ローブティサージュ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104278/
母母リッチアフェアーは名繁殖ホワイトウォーターアフェア(ヴィクトワールピサやアサクサデンエンなどの母)の全妹にあたる。Singspiel(Hail to Reason5×3,Herbager5×3)×Machiavellian(Native Dancer3×4)と流行血脈が強くクロスも強い種牡馬を父と母父に持ち、自身もHalo3×4を持つ母プチノワールに対し、アウトサイダー血脈が強くNorthern DancerもHail to Reasonも持たず5代アウトのウォーエンブレムを配したという、この緊張→緩和のリズムが最高の配合だ。
一口ピックで推奨したときは、母のHalo的機動力で小回り1800mを捲るようなイメージを描いていたが、Mr.Prospector3×4の影響が強い後肢高の体型で、思った以上に短距離に適性をみせている。Hoist the FlagやLa Troienneのパワーも強い配合で牝馬にしてはパワー体質でもあるから、夏場のほうが調子が上がりタイプなのかもしれない。ここ2走は道中はインで我慢し直線のイン渋滞を巧くすり抜けて、インベタ馬場で差し馬としては最高の立ち回りで結果を出しているが、このあたりの機動力はデビュー前のイメージに近いものはある。ここもレースの巧さで上位をうかがいたい。ただ着順は3着だったが最近ではもっとレース運びがスムーズだった阪神牝馬をみてもピュアスプリンターというよりは1400mベスト型にみえるし、洋芝1200mで1分8秒後半決着ならばパワーと機動力で対応できるが、1分7秒台の決着だとちょっと追走に余裕がないかも。

マジンプロスパー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007104807/
アドマイヤコジーンというよりはノーザンテーストをNijinsky的Lyphard的に長手にした体型で、Cozzene系らしい柔体質でスプリンターとしては少し動きが緩慢で、母がHalo≒Stop the Music3×4だから脚捌きは無駄がない。重賞で馬券に絡んだのは阪急杯1着2着とCBC賞1着2回とキーンランド3着。芝1200mだと1分8秒台の決着になることが好走の条件で、1分7秒台の決着では[0.0.0.4]。ハクサンムーンを差した13年CBC賞がベストパフォで、1分8秒台で上がり12秒台の決着ならばG1でも狙える、という馬だろう。キーンランドは完全な勝ちパターンだったが、ゴール前1Fが11.9で牝馬2頭に少し鋭さ負けしたような3着だった。ここはおそらく良ならば1分7秒台の決着だろうし、ブログで指摘したように新潟芝1200mはゴール前が11秒台になりがちで、圏内突入には多少なりとも馬場が渋ってほしいか。

ガルボ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007101163/
「マンハッタンカフェ×Caerleon」の黄金配合で、母がNijinsky≒Far North3×3だからヒルノダムール的な配合パターンでもあるが、母母父ファストトパーズ(仏2000ギニー)のマイラー資質とChop Chop≒Roman的なパワー加速が主にONになったマイラーで、パワーと機動力の活きる中山1600mと阪神内1400mでベストパフォーマンスを叩き出してきた。1200mは少し忙しいのだが、函館SSのように1分8秒台の決着なら対応できるし、インの渋滞を一列隣で避けきれたのも大きかった。そのとき叩き合ったローブティサージュとはまあ五分の評価で、1分7秒台決着だとワンパンチ足りないのではないか、という扱い。

マヤノリュウジン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007103884/
母父キンググローリアスの父母Mudvilleがボールドラッド×Tom Fool×Striking(War AdmiralとLa Troienne)なので、村田牧場必殺のキングヘイロー×モガミポイント(ボールドラッドとBuckpasser)とやってることは同じ「キングヘイロー黄金配合」。ただしこの馬の場合は母母父ノーザンディクテイターのところにもう一本「War AdmiralとLa Troienne」のBetter Selfが入るだけに更に力馬寄りで、だから急坂小回りの1400mつ、まり阪神内1400mがベストだろうと書いてきた。芝1200mは[5.1.2.6]だが、勝ち時計が1分7秒台に突入すると[1.0.2.2]、勝ち鞍は1000万下の周防灘特別で、オープンでは[0.0.1.2]、馬券に絡んだのはインをロスなく立ち回った昨年のスプリンターズ3着だけ。時計が速いと1400mパワー型の追い込みではなかなか届かないので、昨年のような巧妙な立ち回りが必須だと思うが、池添はここ2走のような追い込みでくるのだろうか。

ハナズゴール
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009106872/
オールエイジドSの大外一気は見事だった。父オレハマッテルゼはBold Ruler的な軽い忍者走法のスプリンターで旧中京の高松宮勝ち。本馬は母がRivermanとCourting Daysを通じるナスキロラトロのクロスなので、父ほど俊敏軽快ではないが父よりもストライドが伸びて斬れる脚を使える。だから東京と外回りの1400~1600mでは常に重い印を入れてきたが、G1で内1200mとなると前崩れになっても掲示板までか。

サンカルロ
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2006102822/
母母ミスセレクトは伊1000ギニー(伊G2・芝1600m)勝ち馬で、そこにCrafty Prospectorが配された母ディーバはGold Digger≒Fleet Nasrullah(NasrullahとBull DogとCount FleetとDominoとSunstar)3×5、War Relic6×5でCrafty Prospector産駒らしい手堅いスプリンターだった。そこにシンボリクリスエスが配されたのが本馬で、Bramalea≒Gold Digger≒Fleet Nasrullah4×4・6、Seattle SlewとSecretariatを通じるボルキロクロス、そしてEight Thirty≒War Relic7×6・7。
母方の影響が強い短めマイラー体型で、ナスキロ柔さよりもRobertoやIn Realityのパワーのほうが強い体質で、急坂1400mベストの"阪急杯&阪神Cマスター"。1200mは少し忙しいのだが11年と12年の高松宮で2着、急坂コースで上がり12秒決着で直線前が開けば2着には間に合う。東京と京都で実績がないのは京王杯もスワンも上がりが速すぎるからで、新潟内1200mだとよほどHペースで上がりがかからないと圏内まで差し込むのは難しいのでは。

スノードラゴン
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104268/
おなじみのロイヤルサッシュ牝系だがノーザンテーストもディクタスもくぐらない傍流で、母マイネカプリースは桜花賞で5着し全3勝を芝短距離であげた。マイルもこなしたが芝向きのスプリンターだった父と母の配合で、Caro3×4、Princely Gift5×5、そしてSir GaylordとMill Reefを通じるナスキロクロスと、Nasrullah血脈を使った父母相似配合。狙いどおりのスプリンターに出たというべきで、母はタヤスツヨシ産駒らしい力馬っぽさはあって洋芝や道悪で浮上するタイプだったから、息子の道悪巧者ダート巧者ぶりも主に母譲りだろう。
「オーシャンはエアレーション馬場もよかったと思うし、もう一つ時計が速くなると対応しきれない可能性も高そうだが、週末は雨予報だけに渋れば印を回す手も」と高松宮の血クリでは書いた。キーンランドはレッドオーヴァルの直後から同じぐらい外を回って同じぐらいの脚でインベタ馬場を追い込んでいて、着順ほど内容は悪くない。近走の走破時計を見てのとおり、ここも1分9秒台の決着ならば突っ込めるが...。

アフォード
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2008104829/
バクシンオー×デインヒルはNorthern Dancerと「HyperionとAlibhaiとSwynford」の組み合わせをクロスするので、本馬やラッシュライフやアンゲネームなどが出てまずまず成功している(ステゴ×デインヒルほどではないが)。本馬の場合は母母ハートリープスがNearctic≒Sybil's Niece3×4、その父Be My GuestはHyperion4×4、そして母系の奥にはAlycidonも入るから、ここでLady Angelaの「Hyperion,Swynford,Desmond,Pretty Polly」を増幅していて、頑強な体質のスプリンターに完成できる配合だとほめてきた。しかし完成期を迎えて今でも一流スプリンターというにはちょっと動きに俊敏さが足りないし、新潟の良で追い込むには鋭さが足りないと言わざるをえない。

アースソニック
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2009104934/
クロフネ産駒でNever Bend5×5を持つパワー型スプリンターで、前走アイビスSDでは1/2、クビ差の3着。外を回らされながら食い下がった函館SS6着も上位とは差のない内容で、重賞で通用する地力はある。とはいえ、唯一の重賞勝ち京阪杯がスローの番手でアイラブリリをゴール前で交わしただけ。重賞を勝ちきるだけの決め手という点ではまだ物足りなさはある。

ダッシャーゴーゴー
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2007105543/
バクシンオーにミスプロとHaloを重ねた柔軽いスプリンターで、セントウルとオーシャンとCBCに勝っているように前哨戦では実に鮮やかだが、大一番のG1では[0.0.0.7]と結果が出ない。Lady Angela的頑強さをあまり増幅していないのでHペースの前傾ラップを踏ん張るレースが得意でないからで、芝1200mのG1では後傾ラップになることはまずないので良績が出ていない。新潟芝1200mはコース形態上前半3Fがあまり速くならないことが多いが、コパノとハクサンが競らなくても33秒前半-33秒後半ぐらいの流れにはなりそうで、北宏のテン乗りというのも閃きや感性で乗る人ではないだけにあまりピンとこない。

ベルカント
http://db.netkeiba.com/horse/2011101395/
バクシンオー×Alydarらしいパワーで押すスプリンターで、追って味があるタイプではないので、相手が強ければ強いほど行くだけ行くような競馬のほうがチャンスはあるように思う。陣営は今回も逃げることはないと言っているが、CBCは余裕十分の逃げだったが、むしろタメすぎた逃げが敗因ではないかと思うのだが...。

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脚質に幅の出たハクサンムーンにとっては、コパノリチャードの外さえ引けば番手でOK、内を引いても出していけば二の脚はこちらが一枚上だから競りにはならないはずで、平坦コースもプラスとみればここは悲願のG1制覇の期待が高まる。
ただしブログでも書いたように新潟芝1200mはナスキロ的ミスプロ的しなやかさで差しやすいコースでもあり、ならばコートアウトの晩成の血が完全開花を思わせるレッドオーヴァルで行く手はあるのではないかと、キーンランドの追い込みを目にしたときからそればかり考えていた。田辺らしく丁寧に差せばチャンスだろうし、新潟のスプリンターズSだから、ディープ×ミスプロ×ナスキロとか、バクシンオー×ミスプロ×サンデーとか、野芝の高速馬場で育まれてきた血のしなやかさ柔らかさを重視してみたい。
他となると、1分7秒台の決着想定では意外に手を出しにくい馬が多くて、3連系の穴にはトーホウアマポーラの前残りを少し。

◎レッドオーヴァル
○ハクサンムーン
▲ストレイトガール
△トーホウアマポーラ


 

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