波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

母の歌

2015年01月23日 | 日記・エッセイ・コラム

 街を一望できる塔がある。市制開始100周年目に建てたので100年記念塔と言う。一帯は海に面した丘の公園。去年の秋にはママヨさんと団栗を拾った。天気が良ければ隣国の陸地が見えたりする。近くて驚く。丘の中腹から記念塔まで緩やかな階段が設けてあり、沿って地元の人の歌が合成樹脂の歌碑になって並ぶ。そこを登り切ったら塔の周りの高山植物園になる。この荒涼とした風景を嫌だという人もいるが、飾ったところ何もなく、もっとも飾りようも無いのだが妙に惹かれる。

 階段の登り口辺りに「晴天に瞳(ひとみ)預けてリンゴかむ」の歌。この歌のことは小学生の時に一度聞いただけだ。忘れなかったのは、言葉が平易で、鮮やかに色が浮かぶせいだろう。いや、それ以上に若い母の記憶として残ったからだろう。結婚前、父が褒めてくれたと笑って教えてくれた。
   ここに歌を残すよう頼まれた時、一度断った。そして、どういうわけかこの歌が浮かび承諾した。街のどころからでも見える記念塔。あの下に母の歌がある。


 60年以上前の古い写真から、立男を抱いている母と撮影している父の気持ちを思う。とても落ち着いてはいられない、沸き立つような心持ち。原因はわからないが「なんとかしなければ」と焦る気持ちに似ている。何なのだろう?

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