ミャオの家より

今はいないネコの飼い主だった男の日常

ワタシはネコである(110)

2009-09-05 17:50:48 | Weblog



9月5日

 毎日晴れて、暑い日が続いている。ここは、九州の山の中で、最高気温も、28度までくらいしか上がらないが、それでも蒸し暑さが加わるから、北海道の夏に慣れ切った飼い主には、少しこたえるようだ。
 日中は、さすがに外を歩き回るわけにもいかず、家の中でゴロゴロして、例の訳のわからない音楽なんぞを聞いたりしている。
 しかし、外に出ないのは、ワタシも同じで、だから二人して歩く、朝の散歩が大切なのだ。散歩とはいっても、ワタシにとっては、朝の見回り、臭い嗅ぎまわりの、ひと時なのだ。
 そのために、ワタシが立ち止まり、座り込んだりするから、時間はかかるし、なかなか先に進まない時もある。それでも飼い主は、先に行っていても、待っててくれて、お互いに小さく鳴きあいながら近づき、また一緒に歩き出すのだ。
 夕方涼しくなれば、それはまた別の、ワタシの散策の時間になる。ともかく、ワタシたち動物は、病気やケガで動けない以外は、毎日どんなことがあっても、歩き走り回るということだ。
 それは、もちろん、自分の健康を考えてなどという、人間たちのような、姑息(こそく)で利便的な考えからではない。本能がそうさせるだけのことだ。本能だけで行動することを、人間は軽蔑(けいべつ)するけれども、本能にもとづいた行動が必要な時もあるのだ。

 怠惰(だじょう)な時を過ごして、自らの体が膨(ふく)れ上がった人間たちが、それを元に戻そうとして、別なエネルギーを使っている。そのエネルギーや無駄な食料を、我々動物たちのために使えば、絶滅しかかっている、生き物たちの多くが助かるというのに。
 人間たちの、満足することを知らない、全く情けないその姿を見ていると、地球温暖化防止の第一歩は、まず人間ひとりひとりの、肥満化防止にあると思うのだが。そのことは、メタボ気味の、わが飼い主にも言いたい。
 その飼い主が、風呂上がりに、小さな体重計に乗って、『ゲッ、2キロも太ってしまった』と叫び、ワタシに何かを言ったが、バカバカしい、ワタシはシッポを動かしただけで、寝たふりをしていた。


 「9月とはいっても、九州ではまだ夏であり、暑い日が続いている。家の木々の手入れや剪定(せんてい)作業は終わったものの、まだ庭に生い茂る雑草や、刈り込みの仕事は、残したままだ。
 蒸し暑い中での仕事と、うるさい蚊のことを思うと、すぐにはやる気が起こらない。ついつい、家の中にいて、音楽を聴いたり、本を読んだり、テレビを見たりとぐうたらに過ごしてしまう。
 それでも、時には、遠くの町まで食料品の買い出しに行ったり、仕事や用事で出かけたりしなければならない。しかし、そんな時は、また、自分の欲しかったものが買えるチャンスでもある。


 そうして買ったものの、まず一つは、『A SECRET LABYRINTH(秘密の迷宮)』(パウル・ファン・ネーヴェル指揮ウェルガス・アンサンブル 15枚組CDボックス ソニー・ミュージック)であり、これを何と二割引きの6490円で、買ったのだ。ニシキゴイ、ゲットン!
  これは、中世からルネッサンス、バロックの時代にかけての、音楽の演奏で有名な、古楽・声楽アンサンブル、ネーヴェル率(ひき)いるウェルガス・アンサンブル、その彼らの90年代の録音を、集大成したものである。
 13世紀スペインの、ウェルガス写本による音楽に始まり、17世紀のポルトガルのレベーロに至るまでの、有名ではないけれども、音楽史では重要な作曲家たちも取り上げられていて、古楽ファンとしては見逃せない企画ものである。その15枚のうち、すでに持っていたのは1枚だけだし、いつかは聞きたいと思っていたものばかりなのだ。
 まだ、全部は聞き終わっていないけれども、これから何度も繰り返し聞くことになるだろうものも、数点ほどあり、中でも、『Utopia Triumphans(ユートピア、ルネッサンスの勝利)』では、タリス、ジョスカン・デ・プレ、オケゲムなどの、6声部から40声部に至るポリフォニー(独立的多旋律)合唱曲が、見事に歌い上げられており、そのこの世のものとも思えぬほどの歌声は、私のいつかは来る日の、レクイエムの音楽にしたいほどである。


 もう一つは、あのカルロス・クライバーがウィーン・シュタッツオーパを指揮しての、ビゼー(1838~1875)のオペラ『カルメン』のDVD(デアゴスティーニ・ジャパン 990円)である。そしてそれを知ったのは、何と、テレビ・コマーシャルとして流れていたからである(宣伝費が気になる)。
 書店に山積みされていた一つを買って帰り、さっそく見てみた。若き日のカルロス・クライバー(1930~2004)がオーケストラ・ピットに現れ、さっそうとタクトを振り下ろす、もうその姿を見ただけで、私は胸がいっぱいになってしまった。活躍した期間が短く、数少ないレコードやフィルムしか残さずに、その指揮ぶりのように、一陣の風のように去って行ったカルロス・・・。
 この『カルメン』は、やや太めの二人、カルメンのオブラスツォワと、ドン・ホセのドミンゴの歌を聴くというよりは、まさにこのカルロス・クライバーの指揮ぶりと、もうひとつ、あのフランコ・ゼフィレッリ(『ロミオとジュリエット』『ブラザーサン、シスタームーン』)による、舞台を見るだけでも十分なのだ。
 もちろん、このデアゴスティーニ社の特価990円というのも、信じがたい値段だ。今後、価格は1990円に上がるとはいえ、全65巻にも及ぶDVDオペラ全集の、各巻の内容が気になるところだ。
 つまり、比較的新しいオペラは、デジタル、BSテレビで見て(8月14日の項)、古い名作オペラは、こうして安く買って見ることができる、まったく、良い時代になったものだ。

 しかし、そうして家の中ばかりにいても身を持て余す。朝の涼しいうちに、ミャオと出かける散歩は、それだからこそ、私の健康的な気晴らしにもなる。
 毎年気にしている、家の近くの草の斜面に、今年もヒゴタイの花が咲いている(写真)。わずか二株だけど、毎年咲いて私の目を楽しませてくれる。アザミに似たその花の色は、青空にも負けない、爽やかなブルーだ。
 ヒゴタイは、本来、西日本各地の特定の場所だけに咲く、キク科多年草の花だけれども、1m以上にもなる高さが目立って、やたらと採取され、最近は野生のものが見られなくなり、環境省のレッドデータブックの絶滅危惧(きぐ)種にも指定されている。
 久住高原には、ヒゴタイ公園があり、ここでは、8月から9月にかけて、その群生する姿を見ることができる。
 写真の家の近くのヒゴタイは、幸いにも、採取者の目から逃れて、毎年花を咲かせてくれているものであり、これからも難を逃れて咲き続けてくれることを願うばかりだ。
 自然の中、他の草花も生い茂る中、ひとり咲いている花を見つけるのは、嬉しいものだ。ここにも、がんばってひとりでいたのかと、私だけでなく、ミャオだけでもないんだよ、と・・・。」


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