ミャオの家より

今はいないネコの飼い主だった男の日常

ワタシはネコである(100)

2009-04-15 19:34:15 | Weblog



4月15日
 昨日は、久しぶりの雨だった。気温も、朝の10度から殆んど変らなかった。
 それまでは、毎日晴れて、20度前後までも上がる、暖かい日だっただけに、余計に肌寒い感じだった。ワタシはずっと寝ていた。

 三日前のこと。夕方、飼い主と散歩に出て、一緒に帰る途中に、一台のクルマが来て近くで停まり、子供の声が聞こえ、家族連れが降りてきた。どうやら近くに生えていた、ツクシなどを取りに来たらしい。
 飼い主は、挨拶していたみたいだけれど、ワタシは用心深くて、知らない人やクルマに会うのは、イヤなのだ。飼い主がワタシを呼んだけれど、ワタシは怖くて、動けない。
 その後、家族連れは帰ってしまったが、夕暮れから夜になってしまい、とうとうワタシは、人のいない家の軒下に潜り込んで、一夜を過ごすことになった。
 一晩中、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の徘徊(はいかい)する、物音の中で、よく眠れなかった。
 朝が来て、日が十分に高くなってから、家に戻った。ニャーオと鳴いて、ベランダに上がると、キャットフードとミルクは置いてあったが、飼い主はいなかった。
 飼い主のいない時に、ベランダにいると、他のネコが来て、落ち着けないし、危険でもある。少し離れた物陰の中で、横になって過ごした。
 夕方前に家に戻ると、飼い主も帰ってきていた。ニャーニャー鳴いて、今までの心細さを訴える。それでも、オーヨシヨシとムツゴローさん可愛がりをされて、サカナをもらうと、もうみんな忘れてしまうのだ。
 しかし、その夜から、ワタシは、ずっと寝続けたのだ。気分も悪く、食欲もなく、じっと寝ているしかなかったのだ。時々起きながらも、一日半、寝続けて、ようやく今朝になって、元の体に戻った感じだった。 
 キャットフードをカリカリと食べて、ミルクを飲んでいるワタシを、飼い主がなでてくれた。それから、雨上がりの晴れた空の下、飼い主と散歩に出た。毎日変わらずに、同じことを繰り返すことが、一番ありがたいことなのだ。

 「昨日の、久しぶりの雨の後、今日は、雲はあるものの、さわやかに晴れて、春のそよ風が心地よい。
 午前中、ミャオと一緒に散歩に行ってきた。辺りの臭いをかぎまわり、元気に歩いているミャオの姿を見ているのは、心楽しいものだ。
 まる一日以上、寝続けていて心配したが、今朝になって、いつものミャオに戻っていて、一安心。なにしろ、去年は、私が北海道へ行く前に、大事件が起きて(’08.4月14日~4月24日の項)、ミャオも私も大変だったのだ。
 今回も、もしやと心配して、ミャオの体のあちこちを見てみたが、どこにも傷や痛がるところはない、とすると、やはり、心因性によるものだったのだろうか。
 イチローの、WBCの重圧による胃潰瘍(いかいよう)の場合や、私がずっと前に、ヒグマに会った後、軽い胃潰瘍になった時とは(’08.11月14日の項)、少し意味は違うけれども、ミャオもまた、それ以上に、生死にかかわる程の、心因性の拒食症になったことがあるからだ(’08.2月11日、13日の項)。
 一昨日、私は用事があって、朝早く家を出て、遠くの町まで行ってきた。ミャオが戻ってきたのは、私が帰ってきた後だった。そして、ミャオは、その夜から寝込んでしまったのだ。
 それは、ミャオが、もうそろそろ飼い主がいなくなるころだと、気づいたからなのか、と私は心苦しく思っていた。しかし、ミャオがまた元気になってくれて、それは、私の取り越し苦労だとわかったのだが、どのみち、ミャオとの別れの日は近づいてきている。

 ところで、数日前、まだ良い天気が続いていた頃、私は、久しぶりに、近くの山を歩いてきた。ほんの3時間ほどだったけれど、やはり、いつ行っても山はいいなと思う。
 家からそのまま、歩いて行く。道のない林の中に入り、急な斜面を下り、涸れた沢を渡って登りかえすと、古い林道に出る。ここからは、誰もいない道を、のんびりと歩いて行く。
 枯れたような木々の、あちこちの枝先から、小さな新緑の葉が開きかけている。そして、道を曲がると、大きなヤマザクラの木が満開だった。いっぱいの白い花と、みずみずしいアズキ色の新緑の葉が、青空に映えて美しい。
 さらに歩いて行くと、黄色いキブシの花が、垂れ下がるように、鈴なりに咲いている。道端には、小さなハルリンドウの紫の花も見える。
 道をたどると、まだ枯れたままの、ススキの丘に出る。雲ひとつない青空の下、周りの山々がよく見えて、柔らかい風が吹いている。足元には、所々に、キスミレの花が咲いていた(写真)。
 このキスミレは、環境庁の絶滅危惧種2類に指定されているけれど、ここ九州でいえば、地域的な差はあるだろうが、その心配は全くないと思う。
 それは、阿蘇山から九重の山々、そして由布、鶴見岳周辺の高原や山裾にかけて、至る所で見ることができるからだ。春に、野焼された後の、まだ灰まみれの草原には、辺り一面に、びっしりとこのキスミレが咲いている。
 北海道では、春になると、カタクリやエゾエンゴサク、そしてミズバショウの花などが、原野のあちこちに、咲いているのを良く見るけれども、このキスミレは、それをはるかにしのぐ規模である。
 普通一般に言われるスミレは、例のスミレ色、紫色のものだが、黄色いスミレは、高山性のものが多く、このキスミレも、九州では、いわゆる高原地形の所で見られる。
 高山植物のキバナノコマノツメは、高山の草原帯で見かけ、タカネスミレは、高山砂礫地に見られる。特に、タカネスミレは、北海道の大雪山系に多く、場所によっては、この九州の一大群落に匹敵するほどである。
 山で一番好きなのは、雪の季節だと言ってはみても、こうして春になれば、花が咲き、新緑が目に映えて、やはり、当然のことながら、山はいつの季節も良いものなのだ。
 あの“日本百名山”で有名な、深田久弥氏が、あなたの一番好きな山はと聞かれて、『最近登ってきたたばかりの山です』と、答えたそうだが、その気持ちはよく分かる。
 私も、数日前の、このわずか3時間ばかりの山歩きが良かったと思う、何よりも、その印象が新しいものだから。

 ところで、この三日ほどの間に、テレビで幾つか良い番組を見ることができた。今まで書いてきた、岩佐又兵衛のことと関連してもいるので、簡単に書き記しておく。
 4月13日 NHK教育 『心の時代 桜を守る・命を伝える』(再放送 あの桜守で有名な、京都の佐野藤右衛門さんの心にしみるお話。)
 4月12日 NHK・HI 『ハイビジョン特集 幻の色・よみがえる浮世絵』(浮世絵復元の色刷りの鮮やかさ、ましてそれがあの”奇想の系譜”の一人、歌川国芳だからたまりません。)
 4月12日 NHK教育 『日曜美術館 曽我蕭白(しょうはく)』(再放送 さらに”奇想の系譜”の絵師の一人、蕭白の絵を、テレビ画面で見ることのできる喜び。)

 断わっておくけれども、私はNHKとは、何の関係もない一個人だけれども、良い番組を制作してもらい、いつも感謝しているのだ。中高年の人々に近いNHKは、年寄りたちに近く、ひいては天国に近く、はい、そう言うことで、神の御恵みがありますように。
 
 


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