ルンルンピアノ

ピアノ教室の子どもたちとの楽しい毎日。。。。。。

576      仙人と沼島

2007-01-31 20:48:05 | Weblog
※沼島灯台までの一本道。  クリック♪


朝起きてすぐ、「水仙郷と沼島 (ぬしま) に行こうか」 とNが言う。

沼島 ←クリック

「仕事があるんじゃないの?」
「うん・・でも、きょう行っとかんと水仙も終わってしまうし、この後もなかなか行きにくいしなぁ・・」

私もきょうは5週目でレッスンの無い日だ。
急いで着替え、水津さんの写真をもって家を出る。

沼島は、水津さんが最後に行きたいと言っていた場所だった。
なんで沼島なんですか?と聞くと、どうも、イザナギ・イザナミが登場する ‘国生み伝説’ に惹かれての事らしかった。
去年、写真家のosakiさんが水津さんのお見舞いにいらした折り、水津さんから 「沼島に行きたい!」 と言われ困惑されていた事を思い出す。
世界中を旅した仙人にとって1番最後に行きたかったのが、神の宿る島 「沼島」 だったのだ。

8時半に家を出る。
名塩SAで地図を確認したあと、新しく出来たという ‘阪神高速7号北神戸線’ に乗った。
道も結構空いていて、青空の下グングン気持ちよく走る
途中 ‘淡路SA’ で休憩。
ひときわ目立つ大きな観覧車が出来ていた。

カーナビの調子が悪いので、標識を見たり人に尋ねたりしながら 「土生ターミナル」 へ到着。
30分ほど待ってから、「沼島汽船 しまかぜ」 に乗船。
船に乗りつけない私は、(酔わないかな・・大丈夫かな・・) と、ちょっと心配だったが、船内のテレビの 「キューピー3分クッキング」 を見ているうちにもう沼島に到着してしまっていた (所要時間10分)

島へ上がってパンフレットを広げ、まずは 「オノコロ神社」 を目指す事にする。
でも、島は思っていたよりも広そうで、神社までの距離が一体どのくらいなのかも分からない。
困っていると、ターミナルのそばに数十台の自転車がとまっているのに気が付いた。
(レンタサイクル

しかしよく見てみるとそうではなく、島民の人達のふつうの自転車だった。

不安な気持ちをかかえたまま、とりあえず歩き出す。
風が強いが天気は上々
途中で出合ったおばさんに 「どこかお昼を食べられるところはありませんか」 と尋ねると、「もう少し行ったら木村屋さんがありますよ」 と教えてくれた。

沼島漁港沿いにいくつもいくつも伸びている細い路地を、パシャパシャ写しながら進む。
漁村の趣きでいっぱいのステキな路地ばかりだ。
Nが、「僕の子どもの頃過ごした風景とおんなじや」 と、弾んだ声を出している。
やっぱり思いきって来てみてヨカッタ。

しばらく行くと、「木村屋旅館」 と書かれた建物があり、1階が小さな食堂になっていた。
入ってみると地元の人らしい先客が1人座っているだけで、お店の人の姿は見えない。
「すいませーん」 とNが叫ぶが返事は無い。
何度呼んでも返事がないので、階段の上へ向かって叫ぶ。 「すいませーん、すいませーん」
やっぱりシーンとしたままだ。
(どーしよう・・時間ももったいないし・・出ようか) と思いかけた途端、そばに置いてあった小さな食卓ベルに気がついた。
Nがそっと遠慮がちに振ってみる。 リンリリン♪
すると、「は~い」 と声がしてやっと店の人がトントンと2階から降りてきた。

どう考えても、ちっちゃな鈴の音より、大声の方がよく聞こえてたと思うんだけどなぁ・・
それに、店内のおじさんもちょっとは協力してくれれば良いのに・・・もうちょっとでお客さん帰っちゃうところだったゾ

それでも何とか無事に、お造り定食にありつくことが出来た。
「おのころ神社」 と、店内に飾ってあった写真の 「上立神岩」 への行きかたを聞いて店を出る。

風がうなりを立てて吹く中、ボケや水仙、スイートピーなどが明るく咲いている。
軒の低い家々、石積みの塀、どこか南国のムードを感じる。

しばらく歩くと学校に出た。
「沼島小中学校」 と書いてある。
ちょうど昼休みなのだろうか、5,6年生くらいの男の子達が数人、サッカーボールを蹴って走っていた。
Nがカメラを向けて撮りだすと、「あ! 撮ってる撮ってる!!」 「ちょっと待って、今キメるとこだから」 などと元気いっぱいだ。
私も金網越しにカメラを向け、男の子が力いっぱいシュートした瞬間をパチリ。
(どうだ!) と満足げに振り返る男の子にVサインを見せると、「ナイス♪ おばちゃん」 と最高の笑顔をくれた。
都会ではまず見ることの出来ないシーンだ。

「あ、白鳥がおる♪」 とNの声。
学校のすぐ前のため池に白い鳥が2羽泳いでいる。
でもよく見てみると、白鳥でなくアヒルだった。
生徒達が飼っているアヒルのようで、草むらに大きくて清潔そうな小屋もあり、「アフラック&しまちゃんの学校」 ときれいにペイントされている。
(この学校の子ども達もアヒル達もきっとシアワセなんだろうなぁ) と、ルンルン気分になった

その後、上立神岩まで続く山の一本道に入る。
日差しが強く、真っ白に乾いた地面に二人の影法師がクッキリと映り、まるで夏のようだ。
枝葉を落として白い肌がむきだしになった木が、青空に向かって何本も屹立している。
草むらの中には時おりひっそりと息づく石仏。
ゆるい上り坂を夢見心地な気分で歩く。
風がどんどん強くなってきたかと思うと、先を歩いていたNが突然、「見てん!!」 と叫んだ。

そこは山道のてっぺんにあたるところで、白いベンチがひとつポツンと置かれており、眼下には紺碧の紀淡海峡が広がっていた。
「ここがアミダバエや」 

<てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った> のフレーズが思い浮かんだ。

そこから下へ少し下った辺りから 「上立神岩」 が見えた。
高さ30メートル、「竜宮の表門」 とも呼ばれる奇岩だ。
背後を振り向くとちょうど逆光で、水面がまばゆい光に包まれている。
風のうなりもいつの間にか聞こえなくなっていた。
遠くの方に、ポツンと小さく白い船が見える
しばらく写真を撮ったりボーッと眺めていたりしていたが、Nの 「そろそろ行こうか」 の声にうながされ引き返す。
時間があればもっともっと見ていたかった。

もと来た道を下って平地に出ると、<沼島灯台 1.3キロ> の立て札が目に入った。

「行ってみようか、1・3キロならスグだろうし」
「う~ん・・・きょうはヤメとかへん?」
「なんで? 灯台見たいなぁ」
「1・3キロったって、こんな道じゃどうせ3キロぐらいはあるで」

確かにな・・・目の前の急坂を見るとそう甘くない気はする。
そんならよそうかと数歩歩きかけたが、やっぱりどうしても行きたくてたまらなくなった。
「ねえ、やっぱり行ってみようよ」
「え~?」
「今度いつ来れるかワカンナイしさ・・・このまま行かなかったらズーッと心残りになりそうな気がする」
「う~ん・・・」
「行こうよ、 シンドクなったらすぐ戻ればいいやん」

というワケで行くことになった。

目の前の坂道を早速登りだすが、思っていたより勾配がキツく、あっという間に汗がふき出し足が出なくなる。

「けっこうキツイねぇ・・」
「だから言ったやろ」

本当にキツイ・・・もうダメかも知れない・・・暑くなって上着をぬいだ。

「クルマの中のお茶持ってきた?」
「い~や」
「あーあ・・・持ってきてって言ってたのに」
「自分の分はカバンの中に入れてるで」
「え? ホント?! あ~良かったぁ」
「でも欲しいんやったら、‘3べん回ってワン’って言い!」
「エ?」
「それでそのあと、‘お茶を下さい、お願いします’ って言い」
「ハァ~??」

アホらしくて喉の渇きも失せてしまった。
Nは持っていたポッキーまで見せびらかしながら上機嫌で歩いている。
よくわからない性格だ。

なんとか急坂をやり過ごし、なだらかな道になりホッとする。
しばらく行くと前方にオレンジ色の鳥居が見えてきた。
近づいてみると鳥居はズラリと続いており、強風のためかバタバタ将棋倒し状態になっている。
その鳥居の中をくぐりながらどんどん進んでいくと、まだずいぶん先の方に、白い灯台がポツンと見えた。
(もうずいぶん歩いたと思ったのに・・・まだあんな先??)

しかも、目の前にまた急坂があらわれた。
さすがにNが真顔で 「もうヤメとこう」 と言い出す。
ガンバリたい気持ちもあったが、時間もあまり無いことなので断念する。
何度もうしろを振り返りながら道を戻った。
それにしても 「1・3キロ」 は、やはりNの読み筋通りだったなぁ・・・

平地に戻り、きょうのメインである 「おのころ神社」 へ急ぐ。
途中で人に聞きながら20分ほどで着いた。
着いたと思ったらまた急な石段があり、再びゼイゼイ言いながら登り、やっとてっぺんに辿りついた。
すぐ目の前に小さなお堂があり、中はガランドウで、壁にイザナギとイザナミの水彩画が架かっているだけだった。
お堂の裏手には、やはりイザナギとイザナミらしい銅像、それに、戦没者芳名碑というのがあるだけだった。

本当はここに水津さんの写真を置いていきたかったのだが・・・・
何だかあまりにも寂しすぎる気がして、結局一緒に帰ることになってしまった。
以前、「おのころアイランド」 というところへ行ってヒドイ目にあった事を思い出す

「おのころ」 の4文字には要注意なのかも知れない。

4時発の 「しまかぜ」 に乗るため、帰り道を急ぐ。
さすがに少し足が痛い。

船着場へ無事到着。
乗船場の前へ来るとオッサン顔のロシアン・ブルーがいた。
ものすごい人相をしている。
写真を撮っていると、1匹、もう1匹とネコ達が集まりだしてきた。
全部で6匹ほどだろうか。
どれも均整のとれた体つきで、毛もツヤツヤしている。
やはりお肉より魚を多く食べているせいかも知れない。
Nがポッキーを1本投げてやったが、クンクンにおいを嗅いだだけで全く食べようとしなかった。
そばでウミネコがニャーオニャーオと鳴いている。

時間になり 「しまかぜ」 に乗船、来たときと同じであっという間に到着してしまった。

水津さん、また一緒に沼島へ行きましょう。

おわり
コメント (13)
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