
国際自然保護連合(IUCN)は17日、生物の絶滅危機に関する情報を紹介する「レッドリスト」の最新版を発表し、日本人の食卓になじみ深い太平洋クロマグロを絶滅危惧種として掲載した。他にも、アメリカウナギやトラフグに似て食用にされているカラスフグも絶滅危惧種とした。食用や売買が制限されるものではないが、保護の必要性が改めて指摘された。 今回、7万6199種を評価、2万2413種を絶滅危惧とした。(11月17日朝日新聞)
太平洋クロマグロは、「軽度懸念」から「絶滅危惧2類」へと移った。「絶滅の危険が増大している」との意味だ。すしや刺し身としてアジアで高い人気があり、メキシコなどが漁獲を増やし多くを日本へ輸出している。IUCNは、過去22年で個体数が33~19%減少したと推定。ほとんど幼魚で漁獲されていることから、再繁殖の機会が奪われているとしている。
クロマグロについては、海域ごとに資源管理の枠組みがある。太平洋クロマグロについては、日本を含む26の国・地域で話し合う中西部太平洋まぐろ類委員会が9月、幼魚の漁獲枠を、2015年から過去の実績の半分にすることで合意している。さらに、卵からの完全養殖にすでに成功している。
6月に発表されたレッドリストで「絶滅危惧1B類」で「近い将来、野生で絶滅する危険性が高い」とされたニホンウナギとは状況が異なっている。
アメリカウナギは「絶滅危惧1B類」。地球温暖化や生息地の破壊などに加え、ニホンウナギの減少に伴い、養鰻(ようまん)産業が代わりに使ったことが影響しているとしている。 カラスフグは「絶滅危惧1A類」になった。「ごく近い将来、野生で絶滅する可能性が極めて高い」とされる。乱獲により、個体数は過去40年間で99・99%減少したと考えられている。
IUCNのルフェーブル事務局長は「食を求める破壊的な活動があるが、私たちの責任として保護管理を行う必要がある」とコメントした。(奥村輝)
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〈IUCNのレッドリスト〉 国際自然保護連合(IUCN、本部スイス)は1948年に設立された、各国政府や非政府組織が加盟する世界最大の自然保護組織。レッドリストは、世界の動植物などについて、専門家が科学的な評価を通じ、脅かされている度合いに応じて「絶滅」「絶滅危惧」「情報不足」など8段階に分類して随時更新している。リストへの掲載は商取引などの規制には直結しないが、有力な材料にされる。
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