memories on the sea 海の記録

海、船、港、魚、人々、食・・・などなんでもありを前提に、想い出すこと思いつくこと自由に載せます。

いかにして漁業者はその愛する魚を失ったか   トルコ

2011-05-08 00:05:33 | 水産・海洋
トルコのサバは地元のサバだった・・・だがいまやノルウエー産に変わった。これは地球規模の水産物経済についての考察である。(4月27日The Atlantic)

一方にはオスマン時代のスレイマニ・モスク、反対側には象徴的なガラタ搭がある。ウエイター達はオスマン時代の衣装に身を包み酸味のある漬物のカップを運ぶ。 焼き魚の匂いがテントに漂い、低いテーブルの上を流れる。それは近くのボートで調理される。balik ekmek(直訳では魚パン)は脂のあるサバのフィレーを、刻んだタマネギとレタスを半割にしたパンにはさんだサンドウイッチだ。このサンドウイッチを食べながら港の船を眺めることこそまさにイスタンブール体験の神髄と言える。(サバ・パンが懐かしい)

ガラタ橋の上から釣り糸がぶら下がっている、だがトルコにはサバはコンテナ船でノルウエーから運ばれてくる。メイン湾のマダラや、日本のマグロのように、サバは黒海にいたが獲り尽くされた。
地元の特産物は全く地元からのものと思うだろうが、実は国際化した。およそ15年前地元のサバは高値となり、見つけるのが難しくなったと、背後にあるサバ・フィレーの入った青い箱を扱いながらMehmet Asikはいう。Asikはこのサバ・パンをガラタ橋のそばで35年間作り、販売を続けてきた。金糸で縁取られたオスマン時代のズボンをはいた彼は、彼の仲間が7~8人乗った揺れるボートの傍らの岸側に立つ彼は、サバ・パンbalik ekmekの売り手としての変遷を語る。彼はなかなか良いボートを持っている。彼は木炭からガスに燃料を切り替えた(トルコはEU衛生基準に合わせようとしている)また、彼は地元産からノルウエー物のサバに切り替えた。仲間たちも同じだ。

Asikの原料の切り替えは世界的な水産物経済の例証でもある。東京のスシ店は地中海産のマグロを仕入れ、メリーランドのカニ・レストランはアラスカ産の甲殻類を扱う。こうしたことについてSarah Eltonは昨年記述を残している。バルセロナで見つけたタパスはインドネシアのエビだったと。こうしたことは世界の食ツーリズムの挑戦といえる。地元産に見える地元名物も今や本当に世界的になった。

北の黒海、南の地中海、イスタンブールの南のマルマラ海、トルコはかつては漁業資源で有名であった。だからイスタンブールは魚好きのパラダイスであった。魚とメゼ(MESSE小皿料理)のレストランは屋外市場の情景として風靡し、ヒラメや赤いボラをならべ、買い物の楽しみと、美しい写真を撮る機会を提供していた。しかし、乱獲がトルコ水域の資源を劇的に減少させ、魚食は高値のものとなってしまった。最も直近のデータとして利用できる2009年の場合、トルコの漁獲量は6.14%減少したと政府統計研究所が発表している。

サバ・パンの材料のサバがふんだんであった黒海は極端な減少を示し、16%減少、黒海東部のいてはなんと57.8%の減少である。漁獲減少はその前縁も同様であった。漁獲の減少は漁業の抑制によるものではない。マグロ、カジキ、サバなどが最悪である。こうした魚種は黒海にはかろうじて残っているだけである。黒海の主流であったブルーフィッシュ、暖かい水の地中海からボスポラス海峡を経て、初冬に黒海に回遊するこの魚もまた消えてしまった。そして残ったものは小魚のスプラットとアンチョビーだ(トルコのアンチョビーは美味であり、フライや焼き物、米と一緒にピラフとして食べられる。しかしこうした魚はサンドウイッチには使われない)

乱獲についての小規模の調査が行われた、しかしそれは魚資源減少のごく一部を示すに過ぎない。海中掘削も影響している。「太陽光が海の深場まで届かない」とウクライナの海洋生物学者はトルコ国営ニュースに昨年12月報じている。またトルコ水域の漁獲枠は抑えられている。グリーンピースは「何センチの魚があなたの魚か?」という教育的キャンペーをはじめ、若年の魚類の減少を止めようと漁業者に働きかけている。

一方、サバ・パンを食べるための手段、あるいはトルコ料理の魚を得る手段は輸入である、実際トルコはたくさん輸入を行っている。Baraşan Balikcilik,バラサン魚商のスポークスマンIsmet Badakは Baraşan Balikcilik はトルコ第一の,サバ輸入業者であり仕事は順調という。「我々は会社設立の1968年からサバの輸入を行ってきた」と彼はいう。ボスポラスの工業地区の事務所で、彼は世界中から魚がやってるという。「数量も最近は増え、それが続いている」という。Baraşan社は年間にコンテナ150本を輸入する。1コンテナ当たりの魚の重量はおよそ60万ポンドだという。1日当たりノルウエーサバをトルコの需要先に 22,000~26,000ポンドを販売するという。オーナーの Argun Baraşanはイスタンブールの“魚中毒者”から多くの利益を得ていることになる。 そして彼は正直に言う「水際で歩きながら、魚を焼く匂いを嗅げば、必ずだれもが腹が減る。たとえノルウエーからの魚であっても。

写真:店先のネオンサインにはエミノム(地名)の魚パンとある。


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