最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

室蘭の3つの急性期病院の再編協議 合意事項は評価されるも経営統合は困難

2021年01月09日 16時06分11秒 | メディカルはこだて
第76号の特集は「室蘭の3つの急性期病院の再編協議 合意事項は評価されるも経営統合は困難。合意事項は評価されるも経営統合は困難。製鉄記念室蘭病院の前田征洋病院長に聞く」。

明治時代から北海道を代表する重工業都市として栄えてきた室蘭市。日本製鋼所や輪西製鐵場(現在の日本製鉄室蘭製鉄所)が設立され、「鉄のまち」として発展してきた。重化学工業の工場群が港を取り囲むように建ち並び、夕方になるとほとんどの工場から保安灯が一斉に灯される。目の前に広がる幻想的で近未来的な工場夜景は壮観だ。
室蘭市の人口は1970年(昭和45年)には16万人を超えたが、それ以降は減少を続けてきた。2020年9月末の人口は8万1909人。医療圏である西胆振(室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、洞爺湖町)は3市3町からなるが、この西胆振の20年9月末の人口は17万7169人で、25年に16万4447人、40年には12万5020人まで大きく減少することが推計されている。
人口8万人の室蘭市は3つの急性期病院がある激戦区だ。この室蘭市と西胆振の人口減少と人口構造の変化を見据えた、3病院の連携・再編についての協議が続けられている。3病院の一つである製鉄記念室蘭病院は西胆振の中核的な基幹病院で、高度急性期・急性期医療を積極的に展開している。室蘭市の医療体制の現状や同病院の特徴、3病院の連携・再編を進めてきた「室蘭市地域医療連携・再編等推進協議会」の経緯について、同病院の前田征洋病院長に話を聞いた。


製鉄記念室蘭病院の前田征洋病院長

3つの急性期病院がある室蘭市の医療資源は地方都市としては非常に恵まれた環境にある。実際、西胆振の入院の圏域内自給率は94.4%、外来の圏域内自給率は97.6%など、入院・外来ともに高い圏域内自給率を維持してきた。前田病院長は「3つの急性期病院の病床数は、製鉄記念室蘭病院347床、市立室蘭総合病院549床、日鋼記念病院479床。医療圏である西胆振には伊達赤十字病院374床もあります」と話す。
「室蘭市は西から東へと人口が移動してきました。蘭西(西側)は高齢化が進んでいて、40年頃には当院の位置する蘭東(東側の)一部を除き、市内の人口密度はほぼ全地域で低下することが予測されています。病床推計は25年に急性期は約500床の過剰ですが、高度急性期は約200床不足するとされています」。
製鉄記念室蘭病院は1941年新日本製鐵輪西製鐵所病院として開設、以来80年蘭東地区の基幹病院として広く市民に親しまれてきた。92年には新日本製鐵(現在の日本製鉄)から独立して医療法人社団となり、2011年には救急医療の実績が認められ、より公益性の高い社会医療法人として認可を受けた。病床数は3つの急性期病院の中では最も少ない347床ながら、58人の常勤医、25の診療科を展開。病床規模の割に医師数・研修医数が多いのも特徴だ。人口減少が著しい室蘭・西胆振地域において、質の高い先進的医療を目指し、地域での新しい取り組みを積極的にリードしているなど、その経営姿勢は際立っている。

特集は前田征洋病院長のインタビューを中心に9ページの記事として紹介している。

製鉄病院はこの数年、病院全体で「質の高い真の急性期病院をめざす」ことをテーマに、さまざまなことに取り組んできた。「今後もこの方針を変えることなく、より地域から信頼される病院をめざして、着実に実力をつけることが重要です」。前田病院長は「市立病院の今後のあり方に関する結論を待つ間も、この地域の医療が停滞しないよう、さらには今回の合意内容の実現に向け、当院は引き続き高度急性期・急性期医療を中心に診療体制を整備し、先進的に地域医療に貢献していくつもりです」と決意を述べた。




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