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『図解 人類の進化』

2022-01-06 19:53:46 | 読書。
読書。
『図解 人類の進化』 斎藤成也 編・著 海部陽介 米田穣 隅山健太
を読んだ。

ブクログの献本企画で当選した本です(ありがとうございました)。

人類の誕生から現在まで、そして短くではありますが未来の人類にまでをも視野にいれた、人類史の概説・入門書として楽しめる本です。二部構成という形で、第一部では進化論の誕生と進歩の話、DNAの話や年代測定の話、大きなスケールでの気候変動の観測やメカニズムの話などがつづいています。各章それだけで一冊の本になるくらいのものを短くまとめているので解説なしででてくる用語に難儀する部分はあったのです。けれども、人類学の成り立ちを知るうえで、生命科学や地質学や物理学や歴史学なども大きく関係する学際的な姿を知っておくことで、人類学そのものを隠すことなくをまるごとイメージすることができますし、人類学を志す方にとっては優先的に知っておくべき学問がなんであるかがわかりますから、道筋をぱーっと照らしてくれる体裁になっていました。第一部で紹介されて解説される部分はもう、第二部でぞんぶんに人類学の髄を楽しむための鍛錬であり、より人類学を立体視するための視野拡張にあたるものだと思います。

そして第二部の「人類の進化」の部分はこの本の佳境で、ずいぶん面白かった。アウストラロピテクス類などの猿人から原人、旧人、新人と一直線に進化して今にいたるわけじゃないことは前に読んだことのある人類史の本からなんとなくわかっていました。それでもうろ覚えになっていて今回の『図解 人類の進化』ではっきり、数多くの途絶えた系統があることが理解できました。そして、原人も旧人も、どうやら段階的にアフリカから出発して世界に広まってそして途絶えていったのだと。新人が最後のトライとしてアフリカから出ていって世界に広く住まうことに成功して今日にいたる。偉大なるアフリカですよ。進化の起こる土地。だからひとえに、70万年前の原人の化石がでたから、アフリカを出発したのがその頃だし僕らにつながる祖先がその原人だ、ということではないんです。あくまで原人は先発隊のような先輩だったのであって、現生人類(ホモ・サピエンス)への遺伝的な繋がりはどうやら無い。僕らの祖先は20万年前頃にアフリカを出た、アフリカでそこまで進化を遂げた種なのだと考えられる。

また、文化史的視点からの自然環境を重く見るような考察がありましたし、「人種」という観方についての倫理的な考察もあるのが僕にとっては嬉しかったです。そういう見方が含まれていると、より複数の観点から人類を眺めることができると思うのです。安直なモノの見方が差別や偏見などを生みますし、より大きなスケール感を持って人類史の知識を学んでいけると隘路での行き止まりにハマりにくいのではないでしょうか。

最後のほうでは日本人の成り立ちについての仮説(置換説・混血説・変形説)などが語られてもいます。現在、定説になっているのは、広い意味で混血説に属する二重構造説だそうです。この説を見ていくと、縄文人の直系のように現在につながっているのがアイヌ人で、本土の人間たちは渡来人たちとの混血が深まり縄文人としての血が薄まっているようです。沖縄人もアイヌ人に近いという説が昔からあり、この二重構造説を構成するミトコンドリア分析や骨形態解析などからも、おそらく祖先は同根なのではないかというような結論が導かれていました。つまり、アイヌ人と沖縄人は縄文人の血が比較的薄まっていない。比べて、本土の人たちは薄まっている。その違いがあるだけで、先祖は同じように縄文人である可能性が比較的つよく見られるようなのでした。

それと、日本の旧石器時代は30万年前くらいから、なんて僕が子どもの時には教わったり本で読んだりしたものですけれど、その研究はねつ造が元になっていて、現在は5万年前くらいからということになっているんだそう。人類史的には比較的おそくホモ・サピエンスが渡来してきたということでしょう(そして彼らが縄文人になったのでしょう)。

勉強して知っている人にとってはなんのことはない知識なのでしょうけれども、僕のような「学問のおのぼりさん」はきゃーきゃー言っちゃいます。そんな面白みのある読書でした。


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2 Comments

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Unknown (fusiginamarimo)
2022-01-06 22:34:40
こんばんは〜^^
なるほど、そう言えばアイヌと沖縄人が
似た雰囲気をしている訳ですね
前から何となく疑問に思っていました
これで納得です👍
Unknown (ますく555)
2022-01-07 09:42:59
おはようございます!

僕も読んでいて「ワオ!」がでました。
日本のいちばん北といちばん南の人たちが似ていて、実は日本人としてのルーツの特徴を色濃く残しているだなんて、スケールのでっかい「事実」ですよねー。

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