読書。
『なぜローカル経済から日本は甦るのか』 冨山和彦
を読んだ。
ともすれば、すべての企業がグローバル経済で生き残るため、
そして成功するための経営が求められているように感じられるものです。
本書では、グローバル経済圏とローカル経済圏を、
それぞれGのものとLのものとして区別し、
GとLは連関の薄いものだという前提で論を進めていきます。
つまり、どれだけグローバル企業ががんばって儲けても、
いわゆるトリクルダウンと呼ばれる、
グローバル企業からほかのサービス業の人びと、
もっと言えば、格差の下のところにいる人々への潤いは
ほとんどもたらされないものだという見抜きがあるんです。
よって、グローバル企業はグローバル企業で、
ローカル企業はローカル企業で、
というフィールドと性格の違いを
しっかり考えていくのがこの本のねらいです。
ちなみに、あまりスポットライトのあたらない、
サービス業(医療、介護、飲食、交通など)に従事する
労働人口は、総労働人口の7~8割だそうです。
そして、この分野では、グローバル企業のひとのように、
「自分を変革して、世界に飛躍していこう」
という世界観、人生観で労働者を語るのには無理がある。
別個の、質の違う世界観があるということです。
たとえば、看護師や介護士のような職に就くひとたちに、
どんどんキャリアアップして儲けていこうと説くのは、
一部のひとには共鳴をうむかもしれませんが、
多くのひとたちはそんなことよりも、
誇りだとか社会的な意味合いのほうを重視して働いている。
そして、そのような、生きがいの持ち方が、
サービス業、ひいてはローカル経済圏でのやり方のゴールになると、
著者は述べていました。
一方で、
グローバル企業のほうでは、
弱者は切り捨てていくという厳しい世界にしなきゃいけない、
ということです。
弱者の救済なんてやってると余計なコストがかかるという考え方。
どんどん、世界でやっていけない企業は退場していってくださいという
考え方なんですね。
また、さっきのトリクルダウンがおこらない説明になりますが、
グローバルな製造業にぶらさがる中小企業はいまや少なく、
サービス業中心の世の中なために、
グローバル企業から利潤が下のほうへ流れないのだそうな。
格差が縮まらないのはそのためだと。
連関が薄いのです。
ローカルな経済圏のサービス業などは、
平均的な能力をもってされるもので、
高度な仕事は与えられない労働になっているとされるけれども、
そのぶん賃金の上昇は鈍い。
ただ、サービス業では、
生産性の低い会社も高い会社もごちゃまぜになっていて、
生産性の低い会社がのうのうとやっていることが、
生産性の高い会社の足を引っ張る構図にもなっているようです。
日本は特にそうだと。
サービス業の最低賃金をあげていって、
それで苦しくなるような生産性の低い会社は淘汰されるべき、と。
考え方として、最低賃金を上げていって、
労働者の労働の質も上げていくのが理想のようです。
3人でやっていた仕事を、2人でこなせるようにしていく。
そうやると、賃金が50%上がってもいいくらい。
そういうふうに、個人の仕事の効率性をあげていくのが
今後、ローカル経済圏では大事になるということでした。
ローカルにも、高級品の製造や生産があり、
それらがグローバルで戦えるものだったりもします。
混ざり合っているわけですね、グローバル経済圏とローカル経済圏は。
それらを峻別して考えてみて、やり方の違いを理解して、
かつ、それぞれの選び方も考えていくのが大事になっていく。
それでいて、それぞれの行き来についても
考えていくのが必要なのではないかと思いました。
どうですか、7~8割のひとびとが、
グローバルで戦うための啓蒙的言説とは関係がないのです。
そういうところをはっきりさせてくれたのは、
本書の大きな手柄のひとつでしょう。
いまって、労働者の7~8割という多くのひとたちに
陽があたっていないように感じました。
とはいえ、グローバルに活躍する企業が経済を引っ張るのは確かです。
こちらが下火になるようではいけないですし、
いつの世にも、そんな世界でやっていこうとする気概のひとや、
ばしばしやっていける能力をもつひとがいるものです。
そういうスター性のあるひとはグローバル経済圏でやっていってほしい。
と、まあ、こんな調子の本なのです。
こうなっていくのも、グローバル化、少子高齢化、
団塊の世代の大量退職、などの背景があるからです。
きっちりと、自分がいるポジションがどういう経済圏か、
という把握ができていると、
いまよりも戦略が立てやすくなるかもしれないです。
コンパクトシティについての言及も数ページにわたっていて、
このあたりのイメージを深めるものでもありました。
ぼくがここで書いたことよりも、もっと詳しく広いことが
本書には書いてありました。
ちょっと雑だなと思った箇所もありましたが(第六次産業の扱いなど)、
それでもそういうところは行間を拾うように読むと、
内容の深さが増します。
予備知識が必要なところもありますが、
ネットで調べながら読めば大丈夫だと思います。
今の日本の経済のありかたの大局をつかむのに役立つ本でした。
『なぜローカル経済から日本は甦るのか』 冨山和彦
を読んだ。
ともすれば、すべての企業がグローバル経済で生き残るため、
そして成功するための経営が求められているように感じられるものです。
本書では、グローバル経済圏とローカル経済圏を、
それぞれGのものとLのものとして区別し、
GとLは連関の薄いものだという前提で論を進めていきます。
つまり、どれだけグローバル企業ががんばって儲けても、
いわゆるトリクルダウンと呼ばれる、
グローバル企業からほかのサービス業の人びと、
もっと言えば、格差の下のところにいる人々への潤いは
ほとんどもたらされないものだという見抜きがあるんです。
よって、グローバル企業はグローバル企業で、
ローカル企業はローカル企業で、
というフィールドと性格の違いを
しっかり考えていくのがこの本のねらいです。
ちなみに、あまりスポットライトのあたらない、
サービス業(医療、介護、飲食、交通など)に従事する
労働人口は、総労働人口の7~8割だそうです。
そして、この分野では、グローバル企業のひとのように、
「自分を変革して、世界に飛躍していこう」
という世界観、人生観で労働者を語るのには無理がある。
別個の、質の違う世界観があるということです。
たとえば、看護師や介護士のような職に就くひとたちに、
どんどんキャリアアップして儲けていこうと説くのは、
一部のひとには共鳴をうむかもしれませんが、
多くのひとたちはそんなことよりも、
誇りだとか社会的な意味合いのほうを重視して働いている。
そして、そのような、生きがいの持ち方が、
サービス業、ひいてはローカル経済圏でのやり方のゴールになると、
著者は述べていました。
一方で、
グローバル企業のほうでは、
弱者は切り捨てていくという厳しい世界にしなきゃいけない、
ということです。
弱者の救済なんてやってると余計なコストがかかるという考え方。
どんどん、世界でやっていけない企業は退場していってくださいという
考え方なんですね。
また、さっきのトリクルダウンがおこらない説明になりますが、
グローバルな製造業にぶらさがる中小企業はいまや少なく、
サービス業中心の世の中なために、
グローバル企業から利潤が下のほうへ流れないのだそうな。
格差が縮まらないのはそのためだと。
連関が薄いのです。
ローカルな経済圏のサービス業などは、
平均的な能力をもってされるもので、
高度な仕事は与えられない労働になっているとされるけれども、
そのぶん賃金の上昇は鈍い。
ただ、サービス業では、
生産性の低い会社も高い会社もごちゃまぜになっていて、
生産性の低い会社がのうのうとやっていることが、
生産性の高い会社の足を引っ張る構図にもなっているようです。
日本は特にそうだと。
サービス業の最低賃金をあげていって、
それで苦しくなるような生産性の低い会社は淘汰されるべき、と。
考え方として、最低賃金を上げていって、
労働者の労働の質も上げていくのが理想のようです。
3人でやっていた仕事を、2人でこなせるようにしていく。
そうやると、賃金が50%上がってもいいくらい。
そういうふうに、個人の仕事の効率性をあげていくのが
今後、ローカル経済圏では大事になるということでした。
ローカルにも、高級品の製造や生産があり、
それらがグローバルで戦えるものだったりもします。
混ざり合っているわけですね、グローバル経済圏とローカル経済圏は。
それらを峻別して考えてみて、やり方の違いを理解して、
かつ、それぞれの選び方も考えていくのが大事になっていく。
それでいて、それぞれの行き来についても
考えていくのが必要なのではないかと思いました。
どうですか、7~8割のひとびとが、
グローバルで戦うための啓蒙的言説とは関係がないのです。
そういうところをはっきりさせてくれたのは、
本書の大きな手柄のひとつでしょう。
いまって、労働者の7~8割という多くのひとたちに
陽があたっていないように感じました。
とはいえ、グローバルに活躍する企業が経済を引っ張るのは確かです。
こちらが下火になるようではいけないですし、
いつの世にも、そんな世界でやっていこうとする気概のひとや、
ばしばしやっていける能力をもつひとがいるものです。
そういうスター性のあるひとはグローバル経済圏でやっていってほしい。
と、まあ、こんな調子の本なのです。
こうなっていくのも、グローバル化、少子高齢化、
団塊の世代の大量退職、などの背景があるからです。
きっちりと、自分がいるポジションがどういう経済圏か、
という把握ができていると、
いまよりも戦略が立てやすくなるかもしれないです。
コンパクトシティについての言及も数ページにわたっていて、
このあたりのイメージを深めるものでもありました。
ぼくがここで書いたことよりも、もっと詳しく広いことが
本書には書いてありました。
ちょっと雑だなと思った箇所もありましたが(第六次産業の扱いなど)、
それでもそういうところは行間を拾うように読むと、
内容の深さが増します。
予備知識が必要なところもありますが、
ネットで調べながら読めば大丈夫だと思います。
今の日本の経済のありかたの大局をつかむのに役立つ本でした。
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