Fish On The Boat

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『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』

2019-04-02 01:21:48 | 読書。
読書。
『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』 イルセ・サン 枇谷玲子 訳
を読んだ。

世の中の5人に1人はHSPと言われる敏感な人だといいます。
疲れやすく、怒ることを嫌い、
競争社会に向いていないと思っているような人たちですね、簡単にいうと。
そんなHSPの人であり、
牧師やセラピストなどとして活動する著者による、
敏感な人の味方になる本です。
HSPの人は、自分は間違っているんじゃないか、などと
自身をせめてしまいがち。
そうじゃないこと、そしてもっと気楽に生きる術を教えてくれます。

興味深かったところをふたつみっつ。
まずは、これですね。
自尊心が低いと自分に過度な要求を課して努力をするようになるという。
だけどそうやっている間、満たされることはなく、延々と努力は続く。
一方で、自尊心が高ければ努力なんてしない。
ありのままの自分でいいからだ。
どちらにせよ、人からの評価や人から愛されるか否かが基準なんだ。

幸せでいたいなら、バカでいろということになりますかねえ。
人生ってそういう裏腹なものの両方をいったりきたり
あくせくするのがほんとうみたいなところがあるように思っています。
割り切りたいし、
「割り切った方がいい」と
苦しみから逃れることを説いたような本書には出てくるけれど、
苦しみはあって当然なんじゃないのかな。
そこのところは、ちょっとまだ異を唱えたいところです。
まあ、人によりけりなんでしょうけども。

次はこれです。

<恥じていることや隠したいことが多いと、
会話をするのは難しくなります。
秘密を守ることにエネルギーを使うため、
言葉がすらすらとでてこなくなるのです。>

僕はこれで大変だったんですよ。
しゃべらなくなりますよね。
それに加えて、意味のあることを喋らないといけない、
失礼だし馬鹿にされるみたいに思ったから余計に喋れなくなった。
隠しごとを通すことを選んだ代償として、孤独になっていったのでした。
30歳くらいまでこういう傾向だったと思う。
くだらないこと喋っててもいいじゃん、って罪悪感なく思えるまでですね。

でも、この本を読んでいると、
いわゆる本のとおりのケースにとどまらずに
あがいたり勇気を出したりして克服しているとろもあるようで、
他人からみえないところで戦ってきた人生だったなあと感じるのでした。
僕は「静かにアグレッシブ」みたいなところはあるようだ。

最後に、これは、本書に書いてあったことと僕の思索のハイブリッドなんだけれど、
それはこういうことになります。

夢を追い、成功しないのならばもう終わり。
オール・オア・ナッシングである。
そういう見方をして、
うまくいかなかった人を直接的にでも間接的にでも断罪する人は多く、
本人ですらそうだったりする。
もしかして日本人は特にそうなのではと思いもするのだけれど、
それってね、人としての成熟度が非常に低い行為なんだ。

夢を追う最中の自分というものは、
理想の自分とかけ離れていて自尊心が低い。
酔っているときもあるけれど、
自分ってダメだなあと思うこともしきりだ。
そして夢をあきらめるとき、
辛い思いをして最後には自分を受け入れる。
その心的作業を経て、
それまで認めてこなかった自分と和解することになる。

自分はダメなやつだったなあ、ということを受け入れること。
そう、自分はダメなんだと認識することで、
それまで突き放していた自分と肌が触れ合う。
厄介者レベルとすら思える自分を受け入れることは、自尊心を回復させます。
それまでより自分を愛することにもなる。
それって素晴らしい過程じゃないですか。

だから、夢を手に入れることだけに関して言えば、
オール・オア・ナッシングかもしれないけれど、
人生にしてみればそんなことはないのです。
自分へのほろ苦さとともに慈愛をも手に入れる人は多いでしょう。
だから、そういう人を見る成熟した人は、
きっとほのかに微笑んで彼を見やるのですよ。

巻頭にHSP診断簡易テストがあるのですが、
僕もその傾向があるようでした。
まあ、そうでしょうね。
だからこの本のよさもよくわかりました。

ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 : 2016-10-22

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