Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『戦争の時代の子どもたち』

2013-02-26 09:31:20 | 読書。
読書。
『戦争の時代の子どもたち』 吉村文成
を読んだ。

滋賀県大津市瀬田国民学校五年智組の女生徒7人が、
昭和19年の4月から同20年3月まで書きつづけた
絵日誌を紹介し、そこから当時の軍国主義日本、
そして当時の国民学校教育を読み解き、
さらに、この絵日誌のもつ不思議な明るさに迫っていこうとする本です。

戦争による抑圧の中、臣民を作る教育、つまり
自分で考えてはいけないという、枠にはめた人間作りが
叫ばれた時代がこの太平洋戦争の日本です。
本書で紹介される絵日誌にも、そんな空気のなかで、
なんとか落ちこぼれずに空気と同化しようとする、
ある意味健気な感じは読み取れます。

しかし、どこか明るく、絵も文章も自由なところがある。
その不思議さには担任の西川綾子先生の放任主義があり、
矢嶋校長の「ほめる教育」が影響しているようです。
それだけではなく、土に触れる教育なども好い影響を
与えているようです。

戦時下の暗い中での明るさがこの絵日誌の中にはあります。
当時を生きた人たちの中からは、この絵日誌をつけた人たちに対して、
「この人たちはめぐまれている」などと感じる人も多いそうです。
きっと、本当に恵まれていたのでしょう。
でも、その恵まれたゆえんは教育のありかたに起因するものだったり
するのではないかと思わせられます。

現代の教育が受験教育化して、その本来の人間形成という意味では
機能しているのか疑問があったりします。
本書でも、現代では即制栽培の教育などとも書かれていて、
この本の主人公の子どもたちとは正反対だったりします。
効率化がすべてではないことも、この本は教えてくれるような気がしています。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする