さて、おなじみ1年半から2年に一度の単行本発行というスローペースのマンガでございます。この夏に6巻が出て、来年には実写映画化だそうだが・・・ううむ。四姉妹のキャストを見ると、ううむ・・・だが、まあマンガとは別モノと思えば・・・ううむ。
鎌倉を舞台に、四人姉妹と彼女たちを取り巻く人々の日常を描いたこの作品、6巻では5つの物語が綴られている。かなりネタバレしているので、まだ読んでいない方は飛ばしてくださいね~。
『いちがいもんの花』
すずが、母方の祖母の遺産手続きのため、初めて母の実家を訪れることに。すずの母親は、金沢の老舗呉服屋の娘。しかし家庭のある男性(香田家3姉妹の父親)と恋に落ち、結果として父親は自分の家庭(香田家)を捨てて自分の母親と一緒になった。いつも明るく前向きなすずだが、常に自分と自分の母親が香田家を不幸にしてしまったんじゃないかという想いは消えずにいる。
『結局、ずーっとついてまわるんだよね。うちの親が不倫から始まったってこと。お父さんとお母さんは、お姉ちゃんたちだけじゃなくてむこうの家族まで不幸にしちゃったんだなって』
そう言って金沢行きを迷うすずに、風太が言ったコトバがまたいいんだよな~。
そして姉たちと一緒に金沢を訪れるすず。そこで、叔父や叔母、美大生のイトコ・直人とも出会い、また絆が広がっていく。
『逃げ水』
個人的にはこのエピソードがイチバン印象的であった。
香田家の次女・佳乃の顧客で、ガンで亡くなった『海猫食堂』のオーナー・二ノ宮さんの遺産相続の話。彼女には好き勝手やって音信不通になっていた弟がいるが、本人の意思とは関係なく、法定相続人というだけでその弟に遺産を受け取る権利がある。本人は、法定分だけは弟に渡すが、あとは本当に世話になった人たちに遺産を遺したいと願っていたのだが、それを『あなたの善意が、あなたの大切な人を傷つけることがある』と言って止めたのは、佳乃の上司である信用金庫の課長・坂下だった。
『あなたは自分の意思を通してそれでいいかもしれない。でも、残された人間は あなたがいなくなった後も 世間の中で生きていかなければならないんです』
それを聞いた二ノ宮さんが、友人であり一番の理解者?でもある『山猫亭』のマスターにつぶやいた。
『死んだ後のことは 正直考えてなかったわ。先に死んでいく者の願うことは すべてかなえられると思うのは やっぱり傲慢よね』
そして山猫亭のマスターも坂下に言う。
『くやしかったんやろな。店のローンやっと終えてこれからやいう時に、病気にやられてもうて。おまけに血縁やいうだけで虫の好かん相手にこつこつ築いたもんごっそり持ってかれてしまうなんて。こんなはずやなかった思たやろな。本音ではくやしゅうてくやしゅうてたまらんかったんやろ。難儀なもんや 人間ちゅう生きもんは』
『こんなはずじゃなかった』そう思うことが、人間ひとつやふたつはあるはずだ、とマスターは言う。そして坂下課長も『二ノ宮さんの弟さんも、心のどこかでこんなはずじゃなかった、と思ってらっしゃるんじゃないでしょうか』と言う。それを聞いて、佳乃は『こんなはずじゃなかった ってことが、あなたにもあったんですか?』と心の中で思う。
この後、佳乃は坂下への恋心にハッキリと気づくわけだが、そこがまた美しい♪
前半の2編では、この作品の最初から何気なく出てくるコトバ『人の生き死ににお金の話はつきもの』『そしてそれはきれいごとばかりではない』という現実が突きつけられてもいる。生きていた時には何の愛情も優しさも示さなかったくせに、遺産だけをむしり取ろうとする親戚や、女ひとりで苦労してやっとこれからという時に、すべてを奪うように襲う病気など、理不尽な現実。その現実を、人間ってのは受け止めて、生きていかなければいけないのだろうか。
『地図にない場所』
一編目で出会ったすずのイトコ・直人が主役の話。見た目ちょっとチャラ男系でとんでもない方向音痴。子どもの頃、いじめに遭っていた彼は『地図にない場所』を探したのだという。とにかく逃げ出したくて、誰も知らない地図にも載っていない場所に行ってしまいたかった。そしてそんな場所を探そうと図書館に行き、まずやったことは・・・地図を広げることだった・・・。そこでバカバカしくなって親に転校させてくれ! と訴えた直人。新しい学校で徹底的にキャラを作りこんで人気者になり、それが直人のチャラ男の原型になったというわけ。
そして、卒業製作の準備のために鎌倉を訪れ、すずたちと一緒に迷いながらもたどり着いたのが、布製品を作る女性作家のアトリエ。あまりの居心地のよさに『あのとき、こういう場所を見つけることができていたら、もっと楽に過ごせたかもしれない』とつぶやく直人に、その女性作家が
『立ち上がってたたみなさい 君の悲嘆の地図を』
というオーエンの詩を贈る。彼女もまた、学校に行けなかった3年間があり、この詩に救われたのだという。
かくして直人は、地図に載っていない場所をついに探し当てた。
この話はいいですね~。お気軽に『前向きに行こうよ!』的な薄っぺらさがなくて。
そういや、大昔のさだまさしの歌にもあったっけな・・・『もし君が 地図にない場所を探したきゃ 初めに地図が必要だってこと』
迷いながら、つまづきながら、転びながら、自分の力で探し当て、あきらめずに、やっとたどり着いた場所、やっと出会った人。それが自分にとっての地図にない場所であり、自分にとってのかけがえのない人になる。
『肩越しの雨音』『四月になれば彼女は』
すずに、女子サッカーの強豪校からの推薦入学の話が。これを受ければ、鎌倉を離れることになる。自分の進路で悩むすずと、彼女がどんな決断をしようとそれを尊重するスタンスの姉たち。そして風太をはじめとする仲間たち。4月になったら、すずはこの街を出ていくことになるんだろうか? それとも・・・?
いや~~そろそろこの物語も幕が近いのか? でも、三女・千佳の彼氏であるスポーツ店の店長の過去や、佳乃の上司・坂下が都市銀行のエリートコースを捨てて地元の信金に来た本当の理由なんかもまだ明かされていないし、何より長女・幸の同僚ナースであるアライさんもまだちゃんと描かれていない。やたらともったいぶってる部分もまだまだあるなあ。というわけで、まだまだ知りたいことはいっぱいあるぞ・・・。なのでまだまだ終われないんじゃないだろうか・・・。
が、この続きがまた1年半後なんだよな・・・(´m`)クスクス 気長に待つしかない作品なのである・・・。
映画はどのエピソードを中心に構成されるんだろうか。ちなみにキャストは、
長女・幸・・・綾瀬はるか 次女・佳乃・・・長澤まさみ 三女・千佳・・・夏帆 四女・すず・・・広瀬すず だそうな。やっぱり、ううむ・・・だが(^^ゞ