もう10年も遠ざかってしまったが、2号嫁は結婚するまでは物書きのはしくれのようなことを15年ほどやっていた。モノを書く仕事をしたいな~と何となく考え始めた頃(1980年代)、世の中はカタカナ職業ブーム? みたいなことが起きていて、その中の憧れの職業のひとつが『コピーライター』であった。コピーって短い言葉なので、誰でも簡単に書けると思われてしまうこともあるが、絶対に難しい。だらだら書く方がよっぽど楽だもんな。
さてこの本。日本を代表するコピーライターのひとりである岩崎俊一さんが今までに手がけたコピーとともに、そのコピーの背景となる自分の暮らし、家族、生き方なんかにまつわるエッセイも合わせた本である。実は岩崎俊一さんという名前はピンとこなかった2号嫁である。この本も東急沿線に無料で置いてある『SALUS』で紹介されていて、面白そうだな~と思って買ってみた。が、掲載されているコピーを見ると知ってるものばかり。名前よりもコピーの方が有名かもしれん(失礼)。
『年賀状は、贈り物だと思う』
『やがて、いのちに変わるもの』
『21世紀に、まにあいました』
『美しい50歳がふえると、日本は変わると思う』
ね? どこかで聞いたり見たりすることのあるフレーズでしょ。
とはいえ作品だけが載ってるわけでもなく、コピーライターという職業は何ぞや、とかコピーライターになるためにはみたいなノウハウ本でもないし、著者は作家でもエッセイストでもない。
でも、なんか響くというか心の奥にじんわりと残る本なのである・・・。
著者は『コピーは作るものではなく見つけるものだ』と言う。つい見過ごしてしまうような日々の当たり前にあるしあわせやふしあわせを見出すことができるから、ステキな言葉たちが生まれるのだ。
言葉を仕事にするということは、言葉ときちんと向き合うこと。言葉と向き合うということは、生きるということと向き合うことでもあるのかもしれない。うれしさや痛みや怒りや喜びをきちんと感じる心があるから、人の心に響く言葉を生み出すことができる。広告という、15秒(長くても30秒?)の中にこんなにドラマが詰まっている。それが『商品』を売るためのものであっても、その『商品』の後ろにはいつも人の暮らしや想いがあるのだから。
個人的に好きなコピーもいろいろ♪
なんといっても、ため息モノだったのがサントリーオールドの広告。女優は太地喜和子さん。口説こうと思っても、男の下心なんざすべてお見通し。そんな彼女を『観音様』のようだと思い、だから最後は許してくれるだろうと想像する。でも彼女ならきっとこう言う。『でもね、私は苦労を知らない男は嫌いなの』。そこで、このコピーである。
『一度、ふられていらっしゃい。』
いや~~~~カッコイイ! 完全に自分の『妄想』から生まれたコピーだと書いているが、物書きなんざほとんど妄想だったりするもの。また巻末に載っているこの広告ポスターが非常にカッコイイのだ!
『この子の3歳は、たったの1年。』
『幸福は、ごはんが炊かれる場所にある』
『スイカ1個を食べきれる家族がいた幸福。』
しあわせな家族に大いなる憧れがあった2号嫁なんぞは、今この年齢になってこういうコピーとその背景を見ると、うらやましいやらせつないやらで泣きそうになる(*^^*ゞ しあわせって、こんなにあったかくて、でもちょっと苦くて、優しくて、意地悪で。一行のコピーからさまざまな風景が浮かび、さまざまな感情がわきあがってくる。コトバってスゴイな~と改めて思える。
読み終えると、ちょっとしあわせな気持ちになれる。そして一度読み終えても、何かの拍子に読み返したくなる。いつも本棚のどこかに置いておきたい、そんな本ですよ♪
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