MAICOの 「 あ ら か る と 」

写真と文で綴る森羅万象と「逍遥の記(只管不歩)」など。

鯛の兜煮

2007年11月03日 | たべもの・料理


大きな「鯛かぶと」(上の写真)が約400円と安かったので買い込んできていそいそと「鯛の兜煮」を作った。
まず身をきれいに洗って(身や骨の間に付いている血は完璧に取った。これがおいしく炊き上げるひとつの要因である)軽く湯通しをした。醤油と味醂と砂糖に生姜少々、分量は適当である。やや醤油を少なくしたので調整はいくらでも出来る。
炊いているうちに香りがあがってきた。が、想像していた「いい香り」ではなかった。
「もしかすると」と思い、入っていたパッケージの商品名を見た「鯛かぶと」、三重県産、ココまではよかったが、案の定「養殖」の文字が小さく入っていた。スーパーで見たときにやや背のほうが黒ずんでいて気にはなったが「兜煮」の二文字が脳裏にちらつき、間髪を入れずに籠の中に入れてしまった。
養殖ものでは本当に美味しいものはできない。「鰤大根」もスーパーで売っている養殖物の「鰤」ではいろいろ手間をかけても「天然物の鰤」には追いつけない。鰤も大根も香りや味がまるで違うのである。
魚は住んでいる場所によっても味が変わってくる。東京湾のボラは臭くて食べられないが、伊豆などのきれいな海にすむボラ(釣ったらすぐにシメ手内蔵を取ることが条件らしい)の刺身は美味しいようだし、逆に、鯉や鯰は養殖物以外は泥臭くて食べられないという。

以前、カウンターに座れば頼まずとも好みの寿司のコースが出てきた行きつけの寿司屋で、養殖物の「はまち」と天然物を食べ比べたことがあったが、養殖物は油が乗りすぎていてなんとなく鰯のような香もしていた。養殖物は鰯を餌として与えているのでそのようになるのだという。それ以来、寿司屋では「はまち」は食べられなくなった。
会社の研修所が伊良湖岬近くにあって、そこの夕食にはまちの刺身が出たことがある。管理人兼料理人に「養殖?」と聞くと、昼に市場に揚がったばかりの「天然物」という。養殖物は身が白っぽいが、天然物はやや赤みがあり、油の乗りも少なく「しこしこ」として絶品だったのである。今はその会社もなくなり研修所も特養老人ホームに変わってしまったと聞く。

話は横道にそれてしまったが、結局味を良くするために化学調味料を使い、更に香りを消すために5cmほどに切った葱一本分を加えることになった。一晩なべに入れたまま放置し出来上がったのが下の写真である。何とか満足できる味に仕上がった。


で、結論。安いものは安いなりに覚悟して食すべき。実際魚屋さんで見る天然物の「鯛の兜」は養殖鯛の価格の2倍以上はするのだ。

「本当に美味しいものを知らない人は、不味いものが判らない」という。それゆえ不味いものでも「美味しい」という。おなか空いていればなんでも美味しいというのは定説だが、たまには本物の味を味わっていただきたいと思う。鯵の干物でも安いものと高いもの、スーパーのものと港周辺のもので異なる。
とうもろこしだって採れたてが一番おいしく、一日で甘みが半減するという。だから生産地で焼いているとうもろこしは絶品だし、スーパーのものは美味しくないというのが定番である。しかしそれだって現地の採れたてを食べたことのない人にとっては「スーパーのものでも十分に美味しい」のである。

以前築地の料亭で「モズクの雑炊」をご馳走になった。もずく雑炊には「いくら」が散らしてあった。このいくらの塩加減とモズクのとろみ加減が絶妙で美味しかった。手帳にメモをし早速自分でも作ってみたがそれなりの味になった。「いくら」の旬である。美味しいいくらが手に入ったら友人を呼んで食べさせようと思うが、食事イコール餌的食べ方をする人なので、本当の美味しさはわかっていただけないかもしれない。でも食べたいのは私である(笑)
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