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奇跡の三重奏 〈映画「最愛の子」を観て 中 (ネタバレあり)〉

2016-02-14 12:16:28 | Weblog
写真は雲南北東部の黒井村にて。子供が大人の見よう見まねで観光ガイドごっこをしている。黄色に案内の旗を持ち、合図のための笛を首からぶら下げ、妙に大人っぽい顔がほほえましい。

【日本で「無理心中」が起きるわけ①】
 深圳に出稼ぎに出ていた離婚した夫婦の子がほんの一瞬、目を離したスキにさらわれた。その夫婦が子を追う過程と、発見された後の子供と養母の様子を描いたもので、もともとピーター・チャン監督が中国中央電視台のドキュメンタリーをもとに映画化したものです。

 映画館を出る時には、思わず目頭をぬぐう観客が大勢いました。実話のもつ力です。

 ただ、これは誘拐事件の本当に奇跡の一端でしかない、と複雑な気持ちになりました。

 背景には、一人っ子政策のひずみ、農村には年金制度がまだまだ、という社会保障のひずみ、急激な経済発展による社会の流動化、都市戸籍と農民戸籍、出稼ぎ先に戸籍が移せない、男尊女卑の根深い風潮、清朝以前からあった誘拐が生業の村の存在、など中国の課題が複合的に存在しています。

 映画では、誘拐したのは養父となった人で、子は買ったものではなく、さらに実の父母が子をさがし当てた時にはその養父は死亡しており、しかも養母は誘拐の事実を知らずに育てていたと奇跡の三重奏。

 その上、映画のケースは誘拐から3年後の発見ですが、実際には見つかるケースは非常に少なく、発見されてもすでに10年、20年経っているのはざら、なかには67年後、という人もいます。(http://www.baobeihuijia.com/succeed.aspx?keywords=&page=11)

 日本でもNHKスペシャルで何度か中国の誘拐事件が扱われました。なかで誘拐された子供が大きくなって、その事実を知り本当の親を探す若い男性の話が印象に残りました。

 彼は都会の片隅で力仕事をしつつ、誘拐っ子を買った養母と知りつつも優しく養い生活していました。

 そして、もしやと思われる情報があると中国全土に行き、少し気の触れた屋台のおばあさんにも、一縷の望みを抱いて話しかけ、結果、警戒されて暴力をふるわれ、実母ではないと判明しても、その人に同情して幾ばくかのお金を渡し、また失意のなか、養母を世話するためにマンション地下の穴蔵のような小さなアパートに帰っていく、という、それこそ胸の締め付けられるような話でした。
                     (つづく)

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