雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

偽装食品の見分け方9

2007-09-28 14:39:30 | Weblog
写真は雲南省中部の広南市周辺の農村にて。村ごとに少しずつ系統の違う牛を大切に育て、労働力として使っている。この農夫には「農民がいかに苦労しているかをしっかりみんなに伝えてよ」と訴えられた。

今回は長いのですが、お読みいただければ幸いです。

【緑肥にくらべると・・】
 たまたまこの農機具市場で、化学肥料を買っていた農夫に買う理由を訊ねた。
「俺の農地は2畝(約13アール=約テニスコート5面分)あるが、化学肥料だと1畝あたり70から80キロぐらいですむ。1キロ2.4元だから192元(約3000円)だ。緑肥だと1キロ1角(0.1元のこと:筆者注)だけど肥料車(リヤカーより一回り大きい車)1台分は軽く、1回で使っちゃうんだよ。だから150から200元かかる。重いから、まくときの作業量も膨大だ。だから化学肥料を買うんだよ」と親切に教えてくれた。

 値段はたいして変わらないのに、作業が軽減されるとなれば、農民が化学肥料に飛びつくのはやむをえないことだ。ただ使い続けると、土地がやせたり、気候変動など不測の事態のときの植物の回復力が弱くなったりといった知識は持ち合わせていないようだった。

【JRAからつややかなナスへ】
 日本で化学肥料や農薬に頼らない農業を目指して頑張る農家に化学肥料と自然堆肥について聞いてみた。多摩地域で年間を通して栗や各種野菜を手がけるOさんは、

「以前は化学肥料を減らそうと鶏糞をベースにした堆肥を使ったこともありましたが、鶏は抗生物質の投与が多いので使わなくなりました。近年は府中の東京競馬場の敷きわらと馬糞がまざったものを使っています」

 日本の競争馬はドーピング検査や食物の管理が厳しいので、堆肥としてよいようだという。コストはタダ。ただし熟成されたものではなく、レース開催中に集められた馬糞をそのまま持ってくるので、臭う。そのため近隣に迷惑のかからない場所に農地を持っていないとなかなか引き取ることもできない。しかも住宅地がますます拡大し、近隣からの条件も年々厳しくなっているので、扱う農家は減少しているとのことだった。

 Oさんの農園は周囲を森に囲まれた立地なので引き取りが可能だ。これを裏庭で2年間寝かせ、十分、熟成させてから使う。化学肥料や農薬も使ってはいるが、土壌がしっかりしているので量は格段に少なくてすむという。

 今夏は高温障害が起きたり、台風が上陸したりと作物にとっては障害だらけ。そんなときこそ堆肥がおおいに威力を発揮する。近隣の農家がのきなみ強風でナスがこすれてできるキズのために商品価値を下げたなか、ここのナスは驚異的な回復力をみせ、キズ一つない、つややかなナスに仕上がっていた。

 作業も、最近は堆肥をまくためのトラクターが開発されているので、楽になったそうだ。

 家の中では人間のこぼす食べ物を求めて鶏が駆け回り、トイレの下には豚がいて、農作業には牛や馬を重用する中国の農村。日本よりも、自然堆肥を使う環境は整っているのだから堆肥のコストを下げるか、高価な有機農産物の利益が正しく農民に行き渡るしくみができれば、転換も早いのではないか。よもや莫大な量が必要な割に値段の安い自然堆肥の「偽装」はありえないと思うのだが。
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偽装食品の見分け方8

2007-09-21 12:59:39 | Weblog
写真は昆明市郊外の農機具市場の化学肥料と農薬売り場。クワやスキなどが並んだ区画に比べて、圧倒的に広くて清潔な売り場となっている。農夫がトラックや馬車で乗り付けては、購入していた。

【悲しいマコモダケ】
 その後、2004年10月12日の新聞に「農薬、化学肥料の偽製造所を摘発」との記事が掲載された。

 記事によると、安い農薬や化学肥料を国内で買い取り、中国で名の通った企業や国名を印刷した袋に入れ替えては、高い金額で転売していたという。これらの製品を検査すると、実際より農薬などの効力が著しく薄まった製品や、逆に通常よりきつい農薬が多く見られるなど、品質のバラツキがひどかったそうだ。

 これでは、どんなに現代農業に精通した農夫でもお手上げである。
他日、別の地元紙では「指導通りに農薬をまき続けていたら、畑がとうとう全滅しちまった」と叫ぶ農夫の写真が記事とともに掲載されていた。

 その手には雲南料理にかかせないマコモダケ(見た目は真っ白な小型のタケノコ。歯を入れた瞬間はシャキ、噛むとしんなりジュワっとくる食感で、炒め物やスープに使われる。クセのないタケノコのような味)の、育ちきらないまま、しなびた物体となったものがしっかりと握りしめられていた。

 過剰農薬のせいとのことだが、袋の表示が偽装で、知らないうちに過剰投与になっていたのだとしたら、やりきれない。
 
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偽装食品の見分け方7

2007-09-14 14:14:12 | Weblog
写真は昆明郊外の農機具市場。農業に必要なものならなんでもそろっている。

【「世界」が集まる化学肥料】
 品質のごまかしは食品ばかりか、その生育過程にも及んでいた。昆明市郊外のとある農業資材の専門市場でのことだ。

 スキ、クワなどの農機具から、竹の棒や麦わら帽まで露地売りされる中で、農薬や化学肥料の売り場だけがコンクリートの建物内にあった。おそらく場所代は高いだろう。売り場面積も格段に広い。そして、よく売れていた。

 化学肥料は10キロ用米袋とそっくりな、編み込まれたビニール製のものに入っていた。産地名の表示をみると、「アメリカ製」「フランス製」「ロシア製」「ルーマニア製」など欧米と旧共産圏の主要農業国名が、ずらりと並んでいる。

 これはすごい。さすが農業国・中国よ、と感心した次の瞬間に、妙なことに気が付いた。袋の文字が、すべて中国の簡体字で印字されているのだ。

 つまり、これが本当ならば、遠い外国からはるばる運ばれてきた化学肥料は、中国で一度、別の袋に詰め替えられてから売り場に並ぶことになる。コストの安い化学肥料の製造は現代中国のお家芸だ。それをわざわざ輸入するというのも変だし、詰め替え作業の手間もけっこうかかるはずだ。コスト面から考えても、とても一農夫が買える代物になりそうもない。        (つづく)
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当たった!

2007-09-07 11:10:26 | Weblog
写真は昆明最大の花卉市場脇の排水溝。周囲にはトウモロコシなどの野菜畑が広がっている。その中心を流れる排水溝の水は、奇妙に着色された青色をしていた。作業をする農夫に毒々しい色の由来を尋ねても、「普通の水だ」というばかり。

【高級レストランにて】
 本当にこわいのは路上の買い食いではなく、高級感あふれるだけの無責任なレストランなのだと痛感した出来事がある。10年ほど前の、上海の超高級レストランでのこと。私はツアーの添乗で、お客とともに10数名でテーブルを囲み、楽しく食事をしていた。

 開始20分後、不覚にも私が最初にトイレへと駆けだすこととなった。そして、その夜中までに全員が、激しいおう吐と下痢に襲われたのだった。

 おそらくレストランの青菜の炒め物に農薬が残っていたのだろう、へんな味がした、などと翌朝、皆で話し合い、私の勤めていた会社は訴訟の手続きに入ったのだが、結局、証拠がないため水掛け論で終わってしまった。上海に隣接する浙江省の紹興で、特産の酒づけの貝類でも同じような症状に陥ったこともあった。

 時は過ぎ、2004年に雲南で暮らしていた当時では、深刻な食中毒事件の報道は、ほぼ連日となっていた。悪質な食中毒でダメージを受ける人数がここ2,3年、急カーブで上昇している、と中国衛生部からは棒グラフつきの資料まで公表された。そのわりに我が家や知り合いで、被害を受けた人はいなかった。 

 かつて一流レストランで「そんなことはありえない。わがレストランのせいではない」とつっぱねられ、こちらの主張すら理解されなかった中国も、いまや少なからざる人々は、その危険性を認識してきたように思う。日本で「中国製品は危険」と暴風のように報道されているほどには、じつは中国で報道されてはいないのだが。
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