雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の豆腐⑬石屏豆腐Ⅲ

2010-07-25 17:30:24 | Weblog
                             
写真は、豆腐厰のなによりの財産の井戸水をくみ上げる、北門・石屏豆腐の社長。

【石屏豆腐の作り方/おぼろ豆腐まで】
翌朝、日曜日にもかかわらず社長以下5人体制でフル操業中だった。日本から来たと聞くと「とにかく見ていってくれ」と社長。事務のお姉さん風の人が、店に一枚しかないというカラーA4紙の三つ折りパンフレットを持って現れ、「品質は世界一です」と鼻息も荒い。このテンションの高さは雲南では珍しいことだ。

100坪ほどの広さの豆腐厰は四合院づくりで、左の建物では主に豆乳から豆腐の工程を、中央の建物では豆洗いと豆のよりわけ作業を、右の建物には青みがかった大豆と、熟し切った黄色い大豆2種類の倉庫となっていた。中央の建物に対面する正面入り口の建物が人々の往来する道路に面していて、立派な看板を持つ表玄関となっている。そこでは、出来たての石屏豆腐の乾燥・保存・切り分け・売り場、4つの役割を担っていた。

それらの建物に囲まれた中庭の真ん中に井戸があった。井戸にはポンプが突き刺してあり、機械の力で水をドドっと汲み上げては、バケツに次々と入れていく。その作業をしているのがあの社長だった。まるで貴重な井戸水の配分こそ重要な仕事だ、といわんばかりである。

左の棟ではより分けた豆を使って豆乳を作っている。温めた豆乳の湯気がもうもうと立っている。その作りたてでアツアツの豆乳に社長自らが、その黄色みがかったその井戸水を注ぐ。すぐに作業員がそのバケツをゆっくりとかきまぜると、白い花のようなものが浮いてきた。

ほろほろのおぼろ豆腐が出来上がったのだ。

なんとここでは、井戸水そのものがニガリなのだ。
「気温などによって日々、豆乳の状態も変わるので、入れる水の量は毎日、違いますよ」
と、社長は気さくに話してくれた。

作業員にすすめられるままにアツアツ、できたてのほろほろ豆腐をいただくと、豆の甘さとやわらかな香りがたまらない。色は白く、舌ざわりはなめらかで、これだけでも十分、いける。 (つづく)

写真上は、井戸水をおぼろ豆腐づくりの従業員に渡す社長、写真下は、できあがったおぼろ豆腐。
   




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雲南の豆腐⑫ 石屏豆腐Ⅱ

2010-07-19 11:31:11 | Weblog
 

写真は、石屏の中心街。2006年8月撮影。道路から何から破壊の神様にとりつかれたような状態。そんな中でも、わずかな日陰に人々は憩う。

【昆明で大評判の高級レストランに卸す石屏の豆腐屋】
 石屏のホテルは市場のすぐ隣にとった。街の郊外らしく車のほとんど走らないまだきれいなアスファルトの大通りがT字に走り、その先は見渡す限りの畑。夕には、畑仕事を終えたばかりの黄牛を綱で引いて散歩する男性がいた(エサとなる草を求めていたようだ)。

 ポツンポツンとしか家がない閑散とした地域を背に、畑とは正反対の方向に歩くと、やがて人が吐き出されている奇妙な小さな路地を見つけた。

 狭い、崩れかけた路地を抜けた。すると、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような人込みで溢れかえった街が現れた。昔のままの瓦屋根を載せた家がところ狭しと並んでいる。道路だけが舗装を施すためにひっくり返され、せっかくの石畳も取り外してあるので、どろどろになった土の道が路地の隅々まで続く。新しい街へと立て替え中のようだ。袋小路の街なので車は通りようもなく、人々は大道の中央を堂々と歩く。妙に新鮮だ。

 路地裏には建水と同じように、小さな古井戸がたくさんあり、夕には次々に水を汲みに来る人の姿が。だが水売り人も、井戸水を売る店も見あたらない。

 おそらく、あちこちに井戸を掘ることができるほど、栄えていた上に(雲南では石屏商人といえば、羽振りのよい商人の代表だった。科挙合格者も多数出た)、その水質もよかったので、遠くから水を運ぶ必要がなかったのだろう。

 さっそく石屏豆腐を作る店を探すと、皆、口々に「一番、うまいのは『北門』のだ」という。建水では「西門」だった。豆腐屋の名称は城の門の位置で記憶されるのだろうか。

 ぐちゃぐちゃの道を北へと進むと「豆腐人家」と書かれた立派な額を持つ豆腐屋を発見!裏に回ると北門豆腐厰と書かれた木札があり、中は丸見え。ずいぶん立派な建物だ。

 裏門からのぞくと、夕方5時半という時刻にもかかわらず、作業はたけなわだった。水につけた豆を洗い、殻をより分け(桶に10分つけてから洗うと殻だけうまくとれるとのこと)、出来上がった石屏豆腐を箱詰めする様子が見られた。

 その箱の宛先は「昆明・石屏会館」。伝統的な雲南の雰囲気を味わえると評判の高級レストランだ。昆明の中心・翠湖の近くにあり、雲南省の保存文物に指定されている四合院づくりの豪邸で、二胡の響きの中で昔ながらの雲南料理を味わえる。地元の人が心づくしの接待に利用する店でもある。
(日本の旅行社のツアーで設定されている昔ながらの雲南料理店、とは違うところです。タクシーに頼むとつれていってくれるでしょう。こちらの店の方が、脂っこくなく、食べやすいです。)
 そこの目玉料理の石屏豆腐の製造元がここ、石屏北門豆腐厰だった。
 昆明から昔なら、列車で一日、最近通った高速道を使っても車で3時間半はかかる距離の豆腐屋から運んでいたのである。それだけ石屏豆腐は特別なのだ。


 さて、実際に作る現場の全体をぜひ見学したいと、汗じみた赤いランニングを着たおじさん(社長だった・・)に、翌朝の来訪を約束して、その日は帰った。    (つづく)

*豆腐の項は長くなっております。まだ続くの? と言わずに、どうも雲南料理の根幹を占める食材のようなので、しばらくお付き合いくだされば幸いです。宜しくお願いします。
 
写真右は石屏で、まだ破壊されていない昔ながらの町並み。すり減って照り輝く石畳が歴史を感じさせる。画面右側では道ばたでトランプに興じるご老人の姿が。
写真左は、石屏の小道のあちこちにある小井戸。夕暮れになると、人々が次々とバケツを下げて現れる。
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雲南の豆腐⑪石屏豆腐Ⅰ

2010-07-11 17:29:21 | Weblog
写真は蒙自の市場で売られている石屏豆腐。昆明でも、石屏でも雲南中部の市場ならたいてい見かける。市場から持ち帰り3日ほど冷蔵庫に入れておくと、パンパンに膨れてくることも。「雲南十八怪」の一つに「雲南の豆腐は縄ひもで結んで運ぶ」とあるのが、この豆腐。今や雲南特産の地位を確実にしている。


【ザクロと豆腐の町・石屏】
 建水から50分、バスでのんびりと揺られたところに石屏がある。直線距離で35キロほど離れたお隣の県である。

 2006年8月中旬に通ったときは道中、見渡す限りのザクロの木。時折見える湖のような池にはハスの花が凜とした姿でピンクの花を咲かせ、間の畑にはサトウキビ、トウモロコシ、バナナ、かぼちゃ、ひまわりが植わる。いずれも食用だ。ちなみにバナナの花(紫がかった赤色をして下を向いている。ちょっと不気味。)も食用で、千切りにして炒めて食べた。バナナの皮の部分を少し柔らかくしたような繊維質の優しい味だった。

 ちょうど稲刈りの季節で農民は大忙し。2期作のうちの早稲の刈り入れ時期で、これらの多くは米線の原料ともなるはずだ。紅河州の名産品、たばこの葉も青々とした葉を茂らせていた。

 やがて街外れの(だいぶ離れている。石屏の街が旧市街から数キロは拡大することを想定して作られているようだ)殺風景ながら出来たてホヤホヤの、大きなバスターミナルに到着。
 ちょうど夏の帰省時期と重なっていて、長距離バスで里帰りする人々がおみやげ用のザクロや縄で結った「石屏豆腐」をぶら下げて次々とバスへと乗り込んでいた。そう、ここの豆腐は手にぶら下げることができるほど硬く、ある程度、日持ちする不思議な豆腐なのだった。          (つづく)

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閑話休題・建水の井戸

2010-07-04 17:02:55 | Weblog
           

写真は、建水の南西郊外にある「大板井」。夕暮れ時には水売り人が次々と訪れる。写真の通り、天秤棒をテコに水をくみ上げ、肩に担いで階段を昇り、リヤカーのある路上まで担ぎ上げる。リヤカーに載せられた横置きドラム缶の上部には白いガーゼをヒモで固定し、ゴミなどが混ざらないようにして、水を流し込む。かなりの重労働なのだが、人々は汗だくになりながらも、軽々のその動作をこなす。


暑い日が続いています。熱中症にはくれぐれもお気を付けください。今日は涼しい水の話です。

【建水の水売り人】
 建水では、やたらとリヤカーにドラム缶のようなもの(ステンレスかアルミ製で横腹に蛇口が付いている。)を積んだ「水売り」屋とすれ違う。とくに夕餉の支度をする夕暮れ時が多いようだ。また雑貨屋の軒先には「売開水(飲み水売ります)」の文字が躍っていた。黒ペンキで直接、白壁に書かれていた。

 雲南では500ミリリットルのペットボトルの水が1本1元なのだが、この水は魔法瓶一杯分(2.5リットルぐらい)で0.4元。自慢の井戸水なのだ、とのこと。

 裏通りにある小さな共同井戸から水を汲んでご飯を研ぐ人がいた。そこで水を汲む女性に「水売りの水は買わないの?」と聞くと「買うこともあるよ。井戸によって味が違うのよ。」とニッコリ。穏やかなよい街だ。

 さて、夕方5時。この水売りラッシュ時にリヤカーを引く水売人に水汲み場を聞いた。多くのリヤカーが駆けながら「大板井!」と言い残していく。人に聞き聞き、必死で後を追うと、建水城の南・南湖よりさらに南西の街外れへ向かっていた。

 やはり水汲みラッシュらしく沢山のリヤカーが行き交っている。この辺りは、中心街の近代建築群とは対称的に、まだ崩れ落ちそうな砂岩質の煉瓦造りの平屋や2階建てばかりだ。道はちょうどリヤカーが通る程度の広さしかない。もちろんアスファルトではなく土の道だ。街より一段標高の下がったあたりにその井戸はあった。

【大板井の豊かな水】
 水を満々とたたえた井戸はすり鉢状にさらに標高を下げ、その中心に直径2メートルほどの口がぽっかりと空いていた。底には鯉のような大きな魚が泳いでいる。ちょうど富士山の麓に湧く忍野村の泉のような雰囲気だ。(忍野村の泉群は最近、パワースポットとして有名ですが、その観光客を消した感じが、ここ。)透明だが、飲む前の煮沸は必要なのだろう、としばし、泉を見つめていた。

 我に返って水をリヤカーにくみ上げている、細身だが、がっしりとした肩を持つおばさんに写真の許可をもらおうと近づくと、私に掬いたての水を手持ちのひしゃくに入れてくれて、
「飲んで」
と自慢げに渡してくれた。いっぱい予防接種をしたことだし、と腹を決め(医学的に根拠があるわけではありません。)一口飲む。
 すると、おばさんは
 「涼(リャン/冷たいだろう)!」
 と言って私の顔を見、次に自分でも一口飲んで
 「甜(ティエン/甘いんだ)」
 といって大声で笑った。
 さらに、バケツで水をくみ上げてはリヤカーに水を詰め込んで「3つの家にこれから配るのさ」と言って去っていった。カッコイイ。

 街に戻り、焼豆腐屋でまた、焼豆腐を焼いてもらう。炭火で丁寧に炙り、裏表を返し続けること10分以上。表面が軽く焦げ、芳香が辺り一面に漂う頃が食べ頃。豆腐がふくらんで、皮がピンと張り詰めると出来上がり。外皮がパリッ、内側には豆腐の気泡がふくらんでいて、ふっくらとしていて、柔らかい。なめらかな舌触り。
 パリッ、フワッのコントラストも、味の上品さも、香りの柔らかさも昆明で出会ったものより数段上。本場は違う、と唸ってしまった。 体調は、その後も順調であった。     (建水の水・おわり)
                      

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