雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の豆腐⑧焼豆腐Ⅰ

2010-05-30 17:27:40 | Weblog
写真は、平日の昼間からにぎわう個旧の焼豆腐店。

【鼻腔をくすぐる焼豆腐】
 夕方に昆明の裏道を歩くと、なんともいえない香ばしい香りが漂ってくる。「焼豆腐」だ。2~3センチの正方形で厚みが1センチぐらいの小さな黄色みかがった臭豆腐を炭火でじっくり網焼きする。「焼豆腐」を箸で何度も何度もひっくり返し、きつね色とちょっぴりの焦げ色を付けていく。10分ほど経つと、えも言われる発酵した香りが漂い、ぷっと焼豆腐の皮が張る。この、枕のようにふくらむ瞬間が食べ頃だ。たいてい、店の女主人が店先にでんと座り、長い菜箸で客の注文に応じて、丁寧に焼いてくれた。

 これを、単純なものでは醤油、香菜、刻み唐辛子だけのタレ、
一般の店では刻み唐辛子と塩、山椒などを混ぜたパウダー、
もしくはテーブルに並べられた甘醤油、普通の醤油、漬け物などを付けた後の付け汁、山椒、刻み唐辛子、菜種油、ハッカ、椒塩(炒った山椒を細かく砕いて塩と混ぜたもの)、グルタミン酸ソーダなどを、客が適当に混ぜて付け汁にして、焼豆腐に絡めてぱくりとほお張る。

 たいてい地物の酒〔(大理などの)ビールか白酒(蒸留酒)〕片手に、一日の労働の疲れをほぐしながら、老若男女問わず、ほお張っていた。その後、過橋米線を食べてシめとする店が私のお気に入りで、よく通ったものだ。

 5個0.5元から1元ほど。原料が豆腐なので驚くほど安く、おやつがわりにちょうどいい。豆腐が発酵しているせいか、焼くと、スポンジのように気泡がフツフツと歯の先で弾けるのも心地よかった。

【建水にて】
 この小さな煉瓦のような「焼豆腐」の故郷も過橋米線と同様に、建水にある。
 実際、建水では、そこら中に焼豆腐店があった。そしてそれらの店にはたいてい、蕪などの乳酸発酵させた塩付けの瓶が並び、その漬け物の汁を場合によっては付け汁に混ぜ入れていた。

 建水でたまたま入った店では片手で赤ちゃんをあやしつつ、じつに器用に焼豆腐をあぶってくれた。その自然な働く姿にホレボレしたものだ。

 しかし、それ以上に賑わっていたのが建水から山々を隔てた南隣の錫の鉱山町・個旧で、昼から酒を片手に焼豆腐の炭火を囲う労働者やその家族があちこちに見られた。スッと焼いては、さっとほお張る。そのリズムのなんと小気味よいことか。

【石屏では】
 一方、建水の西隣り、石屏にも「石屏焼豆腐」店はあるが、それは建水のものとは形も作り方も異なるものだ。そして建水のものより有名である(後で詳しく書きます)。10センチ×20センチの長方形で厚さ1センチほどの形のものでこれを串に刺すなどして、様々な素材とともにバーベキューのようにして食べる。
石屏の夜をそぞろ歩くと、それらの店が、夜の明かりとともに賑わいを見せていた。
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閑話休題・ゴボウとニンジン

2010-05-23 16:34:45 | Weblog
写真は昆明の市場で買ったゴボウとにんじん。

【京野菜そっくり】
 昆明の市場の野菜は本当に豊かで、京野菜のような野菜もずいぶんと見かけます。ニンジンもその一つで、京野菜そっくり。薄いオレンジで背高のっぽ、日本にもあるごく普通のニンジンよりやや高めの値段ではありますが、シャキシャキとした噛みごたえがたまりません。

味は、ふんわり甘めでやや土の香りのする、まさに京野菜のニンジンそのもの。大根も然りで昆明の超高級ホテル(5つ星クラス)では、これら根菜類をスティック野菜にして朝食バイキングにおいているところもありました。でも煮込み料理ではごく普通のニンジンの方が煮くずれがなく、味も濃厚でした。

 そして、ゴボウ。先日(2010年5月22日)放送のTBSテレビ『世界ふしぎ発見!』で
「中国から伝わったのに、中国では食べられず、日本(と韓国)でしか食べられていない野菜は何でしょう?」

 との答えがゴボウでしたが、じつは中国にもあったのです。昆明の市場で秋から冬の一時期に見かけました。

 とはいえ日本のゴボウよりもはるかに短く、長さはおよそ20~30センチ。それらが束になって木の根の乾燥品のような状態で売られていました。ごぼうには「堀川ごぼう」という京野菜がありますが、どちらかというとそのタイプ。長細い形ではないのです。

さて、久々にきんぴらごぼうを作りたくて、買ったものの、皮をむいてみると、なんだが日にちがたってしなびかけたゴボウのようで、うまく、皮をこそげ落とせません。そこで、皮を軽くとって、2センチほどのざく切りにして丸ごと鶏(頭付き、手付きで売っています)のスープに入れると・・。

 出来上がりのスープは黒みを帯び、鶏肉の味はすばらしくなっているものの、入れたはずのゴボウは影も形もなし。全部、溶けてしまったのです。

 中国では食べられない、というより、漢方系の薬膳スープの素、そのもの。日本のゴボウがいかに、先人が努力に努力を積み重ね、おいしい品種へと改良していったかが、偲ばれました。

(ちなみに台湾でも栽培されていますが、多くが日本からの輸入品だと、台湾の野菜図鑑にありました。台湾でも人気なのでしょうか? 意外と日本の誇れるお野菜なのかもしれません。)
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雲南の豆腐⑦

2010-05-14 18:20:21 | Weblog
昆明・翠湖近くの日本料理店「明治屋」の名物・すき焼き。豆腐だけでなく、しらたき、ねぎ、牛肉など、たいていの食材なら普段使いの中国産で揃えられるのも雲南ならでは。オーナーは、京都でしっかり修行を積んだ日本人。お米はもちろん中国産だが、プロのコツによって、粒立つご飯となり、んまい。値段も日本料理店にしてはお手頃なので、中国の人の姿も見られる。女子マラソンの三井住友チーム(渋谷陽子ら)が、昆明合宿の息抜きに訪れる店。(昆明市洪化街56号)

【雲南の腐乳】
 昆明中心部から車で30分ほどの、市郊外、といっていい場所に、石灰岩質のカルスト地形の典型的な観光地・石林がある。イ族の「アシマ」と呼ばれる美女の伝説がかつて中国で映画化されたこともあって、中国でも有名な地だ。2007年には世界自然遺産にも登録された。

 この「石林」県を流れる川・黒竜灘の上流の水を使った名産に「雲南石林腐乳」がある。唐辛子色に染まった赤黄色。水質が腐乳に合うらしく、なめらかな舌触り、と評判だ。

 人によっては「臭いが強烈で食べられない」というが、雲南産は他地域のものより臭いが少なく、私は苦にならない。ただ、沖縄の豆腐ようのようにそのまま酒のつまみとして単品で食べるには、適さない。しょっぱすぎる。

b雲南では、調味料として、米線の上に載せたり、炒め物の味付けにしたり、ホテルならお粥の脇に置かれていたりする。小さな家族経営の飲食店では、中華鍋の脇にお碗に山盛り載せて置かれてあり、お玉でちょっとずつ掬って、隠し味とする光景がよく見られた。そしておいしい、と思う店のものは、たいてい四川産だった。

【御礼】
5月12日(水)の孔子学院の講座が無事に終わりました。なんとブログの読者の方が来てくださっていて、大感激! ありがとうございます。受講料に見合った話をしようと今回はかなり準備したのですが、ご損はなかったでしょうか? 人数は「アインシュタイン」に毛が生えた、といったところでした。
 直後、孔子学院の院長先生の部屋で「いかに文化講座に人を呼ぶか?」の緊急会議がはじまり、私はひたすら、かしこまるしかなかったのでした・・。

 しかし、孔子学院、奥が深そうです。なにしろ、頼まなくても中国からかなりの量の図書が毎月、送られてくるらしい。段ボール箱を開けて、本を探す根性のある方、必見かも? 

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雲南の豆腐⑥

2010-05-08 22:34:59 | Weblog
 写真は市場に並べられた「腐乳」(2008年、蒙自にて撮影)。黄色みがかった熟成「豆腐」に、唐辛子をたっぷりとまぶしてある。赤い部分をこそげ落とすと、それほど辛くない。店頭に並ぶ直前に唐辛子などはまぶされているためだ。

【豆腐乳】
 前回、ご紹介した豆腐に毛カビをつけて発酵させた「毛豆腐」を調味料に漬け込んで熟成させたものが、これ。四川、北京などで作られたブランドものから、雲南産まで、バリエーション豊富に出回っている。この章の最初にご紹介した豆腐屋では「乳腐」の名で売られていた。豆乳で作られた「チーズ」といった味わいだ。

 さて、沖縄の豆腐ようは、紅コウジで発酵させ泡盛に漬け込んで防腐しているが、雲南では毛カビ、上海などの高温の地域ではクモノスカビで発酵させた後、濃い塩分を含んだ調味液に漬け込んで、雑菌の繁殖を抑えている。

 この味わい深い食品は、雲南では、唐辛子をまぶしたり、八角、山椒、茴香などの漢方系の香辛料をたっぷりと混ぜて味付けしたりして売られていた。スーパーでは調味料コーナーに瓶詰めされて売られている。100グラムほどで4元(80円弱)ほど。豆腐より高いが、中国の人にとっては、日本の「梅干し」のような存在らしい。

 北京の「王致和」は唐辛子などは一切使用しないため、青みがかった色をし(清末の西太后のお気に入りだったらしい)、四川産のものは唐辛子が効いていて、さらに紅コウジも使うのか、赤みがかった色をしていた。市場なら豆腐屋か、味噌屋で買うことができた。

(インターネットで引くと、「腐乳」の本場は桂林や広西とある。原料は大豆、米の酒、塩、唐辛子、胡椒、ショウガ、八角、茴香、丁字<クローブ>で作られているので、雲南で見かけるものより、酒の香りが強いのかもしれない。だが、雲南で見られるのは地場産か四川産、もしくは「王致和」ぐらい。桂林産は、見かけなかった。好みの味とは違うのか、それとも販売網に雲南が入っていないだけなのかは、わからない。)                  つづく
コメント (11)
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