雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

中国の偽装食品の見分け方3

2007-07-27 00:17:17 | Weblog
写真右は、注水肉事件で暴動まで起きた店の豚肉の固まり。左は比較のために安心な肉を売る店で、同金額で同量の豚肉を買ってみた物。脂肪の厚みの違いは歴然。肉部分も、右の方は赤みが不自然に濃い。
 右の肉が注水肉かどうか、焼くなど実験してみたが、やや水分が多めに出る程度であった。味はやはり左のうすピンク色の肉の方がおいしかった。

【高級肉に変身する「痩肉精」】
 昆明市場の肉販売量では豚肉の占める割合は80%以上となっているそうだ。(牛肉は厚切りステーキにして食べると娘の歯は折れ、私自身も顎が痛くなってしまうほどに、かみごたえ十分。鶏は一羽を捌くところから始めるので食べるまでが大変なのだ)
 その豚肉に関する偽装で、もっとも怖いのは「痩肉精(肉やせパウダー)」だろう。


 これを混ぜた飼料を豚に与えると、まず毛に光沢が出て腹がひっこむので、一頭あたりの売値が上がる。肉は脂肪分が少なく、つやのあるピンク色となるそうだ。

 「痩肉精」の薬品名は塩酸クレンブテノール。ぜんそくの発作を抑える薬で、気管支拡張剤なのだそうだ。これを与えると豚は興奮し痩せる。つまり身が引き締まる。だが、やがては四肢が震えて無気力になり、心臓が肥大するといった症状が出るという。
 中国では1998年から摘発例が出始めた。中国に上陸する直前までは欧米で使用され、問題化して禁止薬物に指定されている。

 人間の場合は中毒化すると、寒け、めまい、四肢無力などの症状からはじまって、心臓病、高血圧などを引き起こす。

 2004年には全国的に取り締まられ、雲南でも11月にかなり摘発されたがその3ヶ月後の2月2日の『春城晩報』には早くも「上海で『痩肉精』の代替薬品を使った薬漬け豚が発見される」の第一報が掲載された。

 また2006年にも数百人規模の「痩肉精」中毒事件が中国で起こっていることからも、取り締まりの効果は、あまりあがっていないことがわかる。「痩肉精」肉は見かけだけでは分からないので、一般人だとあまりにきれいな豚肉は避ける、といった程度の自衛策しか見あたらないという。

 ただ農民にとっても、この薬は安くはないので、都会向けの肉にのみ使用されている、ともいわれている。

【本当の心配】
「痩肉精がずいぶん問題になっていますが、あれはなんですか」と知り合いの昆明市民数人に聞いてみたが、「痩肉精」の言葉すら知らないとの答えが異口同音にかえってきて、驚いたことがある。

 肉の問題について、あれだけ報道されているというのに、彼らの関心事は「水増し肉なのか」「量がごまかされていないか」のみに集中していた。

 現在、北京発のテレビ番組で「危ない中国食品の実態」スクープ合戦になっているが、中国の実情を考えると、世界に向けたアピールというよりは、13億人市民の意識を高めたいという、政府の捨て身の行動のように思えてならない。
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中国の偽装食品の見分け方2

2007-07-21 00:25:20 | Weblog
市場にて。店先に「無注水牛肉供応店」とわざわざペンキで書いてあるのも珍しい。

【水増し肉】
 よく摘発されるのが「水増し肉」。少しでも肉に重さを加えてお金を稼ごうと、肉の切り身に水を注射したり、肉に水を加えて重くしたりするらしい。見分け方は針の穴を捜す、変色の具合を確かめるなど。市場には「無注水肉です」などと大書きした店を見かけることもあるほどポピュラーな手口だ。色素を加える場合もある。

 加工食品として使用する場合は古い肉を新しく見せかけるよう発色剤(ミョウバンなど)を使用したり、完全に腐臭を発した肉には苛性ソーダを加えたりする。肉の脂肪分からとれるラードは、回収されては何度も薬で再生されるそうで(もちろん違法)、昆明に料理店を持つ日本人からは「実態知ったら、こわくて外のモン、食べられへんでー」と冗談っぽく聴かされたこともある(ラードは炒め物や、こってり系麺類の多い外食ではかかせない)。

 注水肉かどうかの見極めは、調理すればテキメン。焼くと、肉から通常以上に水が出る。

 ちなみに私が通っていた市場では、そのようなごまかされた肉はなかったように思う。というのも、日本で食べた肉よりはるかに味が深く、おいしかったからだ。これだけ中国の食品の安全性が疑問視されるなかで運がよかったのだろうか。

 そこで、昆明の市場を見て回ったところ、注水肉が出回るのは昆明中心区と郊外部の境界線上の市場に集中しているようだった。新規につくられた高級分譲マンションに囲われ周囲から切り取られたような、昔ながらの農村(昆明では「城中村」と呼んでいた)に、雑然とした、安いけど、ちょっときたないものも売られている市場がデンと構えている。そこには昔から住んでいた農民と、街の建設のために近年、流入した出稼ぎ労働者が通う。高級マンションの住民は外資系スーパーに行くので、治安の悪い市場にくることはほとんどない。

 このような市場では、水滸伝ってほんとの話だったの? と思ってしまうような、肉がらみの「暴力」事件が多発していた。それについては後の後の章で。
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中国人による「偽装」食品の見分け方

2007-07-13 23:44:24 | Weblog
写真は雲南人の好物である、どくだみの茎の前菜。鼻に抜ける独特の臭みと唐辛子の辛みが食欲をかきたてる。熱々のごはんに載せれば何杯でも食べられる、とは昆明に移り住んだタイ族のおばさんの言。夏ばて気味のときにはぴったりの食べ物である。

【「知」は身を助く】
 毎日のように偽装肉事件や中国の危険な食品情報など食の安全にかかわる報道がなされていますが、消費者を欺く驚愕の手口の数々に驚かれる方も多いことでしょう。

 「中国のモノって危ない」と思っているのは日本だけではなく、中国市民も同じ。それどころか彼らが日々、痛切に感じていることなのです。ですから中国のちゃんとした家庭の人たちは悪い食品の見分け方を、よーく、知っています。信用のある店で購入する、加工されない状態のものを買うのは基本中の基本。私が、屋台の食べ物を買い食いしようとすると
 「こういうのは不潔だから、やめたほうがいい」
 とたしなめられるほどです。

 見抜けなければこちらが負け。中国でも消費者対販売側で、熾烈なバトルが連日、繰り返されていました。以下はそのリポートです。

【どくだみ茎の前菜】
 雲南では主にタイ族の食事にどくだみの茎をごま油と唐辛子味噌風などであえたものが、ごはんの友として愛されているのだが、これがまず問題だった。

 どくだみの茎はさわやかな香りとパリッとした歯ごたえが身上なのだが、新鮮でないと歯ごたえは落ち、見た目も黒くなっていく。そこで編み出されたのが、漂白剤づけだ。

 『春城晩報』の記者が「黒い噂」を聞きつけ、とある昆明の市場の仕分け場に行くと、一人の日焼けした若者がしなびたどくだみの茎を漂白剤に付けていた。
 聞くと悪びれもせず、
「この薬に10時間つけこむと、色もよく、歯触りもよくなると評判なんだ」と答える。そこの店主は悪いことだと知っているようだが、雇われた若者はその薬が、人体にとって劇薬なのだということも、手に直接、つけると肌が荒れるということも知らずに素手で作業を続けていたのだった。

 タイ族出身の昆明市民に見分け方を聞くと、「簡単なことよ。本当のどくだみの茎にはピンクの小さな縞があるから、それを探すの」と教えてくれた。

 ちなみに雲南ではどくだみを「魚腥草」とかく。魚の生臭い草、という意味だ。とはいうものの日本のどくだみほどは、きつい匂いではなかった。野草ではなく、栽培種となっているためだろう。日本の春の山菜「うど」と同じである。
                            

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女性救出キャンペーンも4

2007-07-06 23:23:43 | Weblog
写真は昆明駅前にて。駅左には列車よりもはるかに雲南各地へのルートをもつバスの旅客ターミナルがある。列車の魅力はトイレがあることと、沸かし立てのお湯が飲み放題であること、そして他省へ確実につながる長距離ルートがある点だ。

【戸籍がない!】
「そんなの、山東省で死亡届のあった人を洗い出せばいいんじゃないの」
 と、考えるのは素人のあさはかさ。山東省付近で誘拐された女性を「妻」とした夫の捜索をするとしても、中国ではコトはそう簡単には運ばない。しかもその男性には身寄りがない様子。もしかすると戸籍にすら入っていない可能性がある。

近年、雲南省でも村単位で戸籍から抜け落ちている地域が「発見」され、話題になることもある国なので、人一人の捜索も、日本式の捜査方法では進まないようなのだ。

 野人伝説をご存じだろうか。今でも中国のテレビ番組では好んで特集されているが、毛むくじゃらの孫悟空のような野人がいまでも山深くに棲んでいる、というのだ。

 番組では村人の目撃情報をもとにスタッフが山中に分け入り、ときに野人の存在を科学的に検証しようと試みる。湖北省神農架では目撃情報が相次ぎ、実際に1976年と80年には中国科学院によって大規模な科学的調査も試みられている。

 古くは東晋時代の『捜神記』などにも出てくるほど、中国ではポピュラーな伝説なのだが、それらが信じられる余地があるほど、中国には前人未踏のミステリアスな場所がまだまだ残されているのだろう。


【危険な昆明駅】
 誘拐の舞台に頻繁にあらわれる「昆明駅」に行ってみた。2005年春に改装された総面積約2万7000平米のガラス張りの建物で、入り口正面の広場には電子音楽に合わせて吹き出す噴水設備がある。

 大きな荷物を持ってうろうろする人々と、その人達のために焼き餅などの「小吃(シャオチー)」を売ろうとする不法屋台がひしめき合い、ひとまず1元で腹を満たそうという人々が串を片手にむさぼっている。

 出稼ぎ風の人々やいかがわしい人々も回遊し、駅前で途方に暮れてたたずむ田舎から出てきたばかりの少女も目に付いた。

 列車駅のすぐ隣はバスのターミナルだ。ひっきりなしにほこりっぽいバスが雲南各地へ向けて出発し、到着便にも好奇心に目を凝らした若者が必ず1人は乗っているという案配。スリや乞食も多く、さまざまな勧誘の声が呼びかい、ただ立っているだけでも緊張を強いられる場所。様々なエネルギーが交錯する雲南の玄関口なのである。

 私はよほどの用事がないかぎり怖いので、昆明駅付近には近づかなかったが、駅近くに集中する中上級ホテルを利用する日本人観光客が、フワフワと雲南の土産物を求めつつ歩く様子には、ときにハラハラさせられた。

 ときに日本人もスリにあう、ここはまぎれもなく犯罪の舞台なのである。

 2007年6月16日、山西省臨汾市洪洞県の複数のレンガ工場で、誘拐された子供たち1000人以上が強制労働させられていた、という衝撃の事件が日本でも大きく報じられた。いまだ中国各地で誘拐事件が続いている証拠だ。
 その多くは、一部の警察関係者の善意によって救出されるか、黙殺されるか、のどちらかしかない。犯罪の根深さの前に警察も脱力感に襲われてしまうのかもしれないが、根本的な解決には、今しばらく時間がかかる、という予感はぬぐえない。

 昆明の繁華街で見かける、手足のない成人した乞食や、乳飲み子まで利用する乞食集団も、警察も手を焼く大規模組織の一端であることは、地元新聞を読めば分かる。でも、なにもできない。誘拐関係とも関係がありそうだ、という識者もいる。根の深さは底が知れない。   (この章 おわり)
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