雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

閑話休題・中華の乾物の戻し方

2011-12-25 17:12:24 | Weblog

写真上は千張肉(豚バラ肉と青菜の蒸し物)下は火夾乳餅(雲南ハムと雲南チーズの重ね蒸し)。いずれも先週の「雲南料理を味わう」会にて。
【雲南料理をいただく会報告】
12月20日に先週の予告通り「雲南料理を味わう」を行いました。ご参加いただいた方、ありがとうございました。

参加費はお店に支払う実費のみ。「雲南講座」を共同開催する小松碧さんが先月、大量に買い込んだ雲南の食材を秋葉原にある雲南料理専門店に持ちこんで、メニューをコーディネイト。結果、お店の自慢料理+お店にないメニュー計13品という豪華コースとなりました。
午後1時半から1時間半を見込んでいたのですが、気づくと3時間食べ続けるマハラジャもびっくり(?)の会でした。

米ヌードルをアツアツのスープでいただく過橋米線、雲南キノコのスープ「汽鍋鶏」、雲南ハムと雲南チーズの重ね蒸し「火挟乳餅」、各種キノコの炒め物など、味もやさしくて複雑な満足のいくもので、ホッとしました。

会場の「中国雲南酒膳坊 過橋米線」店は数年前まで吉祥寺にも支店があったのですが、今はこの秋葉原のみ。
お味の方も、その数年前に比べ、かなりのレベルアップを遂げていました。私は話す方が忙しくて、今回、とても食べる余裕はなかろうと「タッパウェア」を持って行き、家に持ち帰ったのですが、そこで「事件」発生。

雲南の幼稚園に通っていた娘が「雲南の味だ~! 懐かしい」といって、パクパク食べていたのですが、やがてうつむき「懐かしすぎて、胸が締め付けられて、涙がでそう」という思いがけない展開に。親として、少々とまどう料理ともなりました。

【本格的に乾物を戻すのは手間がかかる!】
さて、自分で作っても、なかなかこの味は出せないので、会の終わりに中国人シェフに作り方を伺うと、やはり、乾燥キノコや乾燥米線の戻し方の手間が半端無いことが判明。たとえば、雲南なら生の米線なら、さっとスープに入れれば終わりですが、乾めんは半日前からの準備が必要だったのでした。

まず、乾燥米線を10時間、水に浸けた後、グラグラの湯で湯通しして、それをまた冷たい水に浸す。冷めたところで、もう一回、湯にくぐらし、また水に浸ければ、あとは普通にスープに入れればいい。

ちょっと、煮立たせてはまた冷やし、と徐々に固い状態から中心まで水分を含ませるというわけです。こうしてようやく、雲南のムチムチとした食感とほのかな米の甘みさえ感じられる米線を日本でも味わえるのか、と感心してしまいました。

中華料理の最高級品は、フカヒレにしてもアワビにしても日本の俵物(海産物の乾物)を使ったもの。つまり、乾物をいかに最高の状態に戻せるかが、中華のシェフの腕の見せ所なのでしょう。神髄に触れた気もする、有意義なひとときでした。

【さらに実践講座をすることに(予告)】
*1月17日(火)に第6回特別講座を開くことになりました。場所は東京・新宿区の四谷地域センター(地下鉄 丸の内線「新宿御苑前」駅より徒歩5分)。IH調理器具のみの施設ということで、ガス器具しか知らない私には不安だらけではありますが、コツを伺いながらの調理になりそう。雲南料理の店から例の米線の乾めんも譲り受けました。なんでも聞いてみるものです。

講座は正式には13時から(準備を9時から。準備からの参加も歓迎。)雲南料理を作る実践編を行います。小松碧さんが昆明から持ち帰った様々な食材を使う予定です。中華料理のシェフなども参加予定ですが、実際のところどうなるかはフタを開けてみないとわかりません。が、滅多にない企画ではあります。私も参加します。

参加ご希望の方は工学院大学孔子学院事務局(電話:03-3340-1457)まで。
参加費2000円。学生500円。(材料費、会場費など500円程度)

*来週は、更新をお休みします。みなさま、よいお年を! 次回は本編に戻ります。

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雲南のお豆②

2011-12-18 15:31:45 | Weblog

写真は文山壮族自治州の人里離れた奥地の村で暮らす子供。村の人は、かつて南京から移り住んだ苗族の子孫だという。一方で苗族だとも話す。この村まで車で通る道はなく、外界の人々との頻繁な接触は最近、始まったと、村の人々は話していた。これらの写真を見て、民族学の研究者は「目が少し青いようですね。不思議な民族ですね」と話していた。雲南の在来種はこのような人里離れた村々で、よく見つかっている。(2004年撮影。)

【雲南にしかない豆がある!】
 さて、国連食糧農業機関のホームページにはオーストラリアと雲南農業研究所による共同研究が公表されています。
(「Collection of pea (Pisum sativum) and faba bean (Vicia faba) germplasm in Yunnan」
http://www2.bioversityinternational.org/publications/pgrnewsletter/article.asp?id_article=2&id_issue=156)

 内容は、えんどう豆とそら豆を2004年、2005年に雲南各地の市場と農家で収集し、状況を詳細に聞き取り調査し、分析したものです。

 フィールドワークの結果、えんどう豆、そら豆、それぞれ40種類あまりが発見され、うち1割ほどが研究所などで品種改良された新しい種で、残りはすべて彼らの求める雲南固有の在来種でした。(在来種は人里離れた自給自足の村により多く見られ、これらの中から今後の育種プログラムに有用なウイルス抵抗にすぐれた形質などを発見した、と締めくくられていました。)

 地元の農家はこの在来種を「ご先祖さまから伝わった大切なもの」と考えていて、代々受けつがれた種子をとりわけては、また次の年に播種していました。

 これは、逆の作用ももたらしていて種の保存を重視するあまり、
「地元の栽培条件に適応した種を、何世紀もかけて選抜していったもの、とは仮定できない」
 つまり、雲南でもっとも栽培しやすい種が在来種、とは必ずしもいえないと、研究者は考察しました。
 けれども、よく考えてみると、雲南の人の愚直さが、結果的に、他地域ではとっくに消えてしまった、昔ながらの種を保存していたのでは? と私は思うのです。

【豌豆粉はなぜ黄色い?】
 以前、このブログでもご紹介した雲南のおやつに「豌豆粉」という、えんどう豆の甘くない羊羹があります。この写真を、雲南以外の地方出身の腕に覚えのある中華の料理人に見せると、

「ああ、満漢全席のスイーツの一つですね。作り方のコツは~」
 とひとしきり説明した後、
「しかし、何でこんなに黄色いの? ぜったい何か入れていますね。」
 と確信を持って答えます。

 また、中国のブログなどを見ていると、雲南の「豌豆粉」の写真をブログのアップしている人に対して、北京や中国東北地方の人達が
「おいしそうですねえ。でもなんで、そんなに黄色いの?」
 と、書き込んでいるのです。

 雲南の人にとって黄色いのは、当たり前。けれど、それ以外の地域の人にとっては、その黄色はちょっと、普通じゃない、というわけ。
 けれども、お互いにとって、えんどう豆の色はあまりに自明すぎて、会話が成り立っていないのです。
 じつは、これこそが、雲南のえんどう豆の独自性を表しているのでした。
(つづく)
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雲南のお豆

2011-12-11 09:23:52 | Weblog
写真は文山市付近の珠街集貿市場にて(2004年秋撮影)。大豆をふやかして、発芽させたもの。大豆以上、もやし未満の食材である。

【大それた用事】
 雲南では、見たこともない野菜、キノコ類に圧倒されますが、豆の種類やその愛着のほども半端ではありません。赤い豆は小豆か、緑の豆は緑豆か、などと類推しつつ見ていて、ほかにわかるものといえば、大豆、そら豆、えんどう豆、ひまわりの種、カボチャの種、インゲン豆ぐらい。小さい豆にちょっと突起の出た形など、よくわからない豆の方が多いぐらい。もちろん、すべて食用です。
 このように、雲南の、こだわりあるお豆の文化を見てみましょう。

 2004年、私が雲南に滞在していた頃、雲南の、とりわけえんどう豆が世界的に注目を集めていました。他国では見られない在来種が、続々と発見されていたからです。世界各国のプラントハンター達が、それこそ血眼になって、新種、原種を集めようと、雲南の大学や社会科学院などをパートナーにして、雲南を舞台に熾烈なバトルを繰り広げていたのです。

 日本の植物学者も昆明にやってきていました。
 時には市場に連日通っている私に
「もし、えんどう豆があったら、送ってくれない?」
 とオーダーがあったことも。どれがえんどう豆やら、わからないほど市場に豆があふれていたので、お役に立つことはまったくありませんでした。それほど、大それた用事とは思っても見なかったのです。

 ちょっと、田舎の道ばたを歩いていると、「あ、これ、いい。」といって、手をフワリと伸ばして種を取る。そんな気軽な動作は、どうみても犬の散歩中の近所のおじさん。緊張感のかけらもなかったのですから。

 ところが、このころの調査報告書がようやくネットでも見られるようになり、そのオーダーがじつに深い内容だったことがようやく理解できました。      (つづく)

*12月6日(火)の「黄色い羊羹・豌豆粉」にお寒い中、おいでいただき、本当にありがとうございました。私も先月末から家のものが入院したりと、なかなかたいへんな渦中にありますが、なんとか続けていけたらなあ、と考えています。
12月20日(火)は、雲南料理をいただく会を1時半から秋葉原近辺で行います。雲南に数十年通い詰め、いろいろな雲南旅行のアテンドも行う小松碧さんが、いろいろな雲南の食材を先月調達してきたものも料理してもらう予定。どうぞ、お楽しみに。
お問い合わせ・孔子学院03-3340-1457へ。
場所:中国雲南酒膳坊 過橋米線 秋葉原店 料金4000円程度。
                 

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