雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

昆明の飲み水1

2012-11-25 10:11:06 | Weblog
写真は昆明市北郊外にある松華坝ダム。昆明の中心部から10キロという近さ。現在は立ち入り禁止区に指定されている。(2010年撮影)

【深刻な水不足と汚染】
 日本のマスコミで何度も報道されているように中国では水資源の確保が重要な課題です。
工場や農業用水などの排出による汚染のために、もともとの飲用水が不適正になってしまう上、4年続く中国全土におよぶ日照りもあいまって、日々、深刻化しています。

雲南も例外ではありません。

 省都の昆明でも、ここ4年ほど、乾期の終わり頃の3月には飲み水が不足。2012年3月には、昆明の中心部の主要水源となっている松華坝ダム、雲龍ダム合わせて7000万立方メートル備蓄できるところが、その半分ほどの4000万立方メートルにまで減少。市民には3月5日より1日95万立方メートルから80万立方メートルへと取水制限が開始されました。(2012年3月7日 中国経済新聞)

 この水不足、例年雨期(6~9月)になると次第に解消するはずが、今年は7月に豪雨で一時、ダムの貯水量が半分にまで回復したものの、以降もひでりは続き、とうとう雨期が終わった11月になってもダムの貯水量は半分以下のまま、という異常事態となってしまいました。そして、また乾期に突入するのです。

 人口は現在、昆明市域で726.3万人、ここ10年で65万人と10%弱の増加。(昆明日報2012年5月26日)これは戸籍登録者数ですから、出稼ぎ者も含めるともっと、でしょう。

昆明で有史以来、飲用水として利用され続けていた滇池は、中国の中でも指折りの(3大汚染池の一つ)ひどい汚染でありながらも飲用水として指定され続けていましたが、改善のきざしすらなく、とうとう2008年にその指定も解除せざるをえないほど。つまり、大切なメインの水甕を一つ、失ったのです。

 代わりに、別の水甕をもとめて、2007年11月から昆明より72㎞離れた尋甸回族彝族自治県の清水海より、きれいな水を引く工事を開始。今年4月から年1.7億立方メートルの水が昆明の飲用水としてもたらされることになりました。

このために土地を追われた人は尋甸回族彝族自治県で46戸176人、嵩明県で192戸674人。工事は日本とアメリカが最大の出資元となっているアジア開発銀行から50万米ドル借り受けてのもの(雲南日報2007年10月30日ほか)。ちなみに、この銀行の歴代総裁はすべて日本人です。
 (つづく)

*今回から新章です。よろしくお付き合いください。

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大理彫梅3

2012-11-16 16:44:24 | Weblog

写真は大理の町角の市場にて。(2004年撮影。)地元の方も気軽に「小梅」などの梅製品を買っていく。料理の材料にしたり、調味料にしたり、そのまま食べたり、お茶うけにしたり、大活躍するのだ。

【涼味の飲みもの】
 この梅の食品は、昔からよく食べられていたようで、明(1368年~1644年)の時代に科挙第一席の状元(現在、中国では大秀才の異名ともなっている)となりながら、その後、失脚して雲南で35年間、つまり亡くなるまで住むことになった、楊慎の詩に、

五月滇南煙景到(五月になって雲南の南は、景色がけぶるようになった。)
清涼国裡無煩暑(ここは涼しい国なので、暑さもわずらわしくはない。)
双鶴橋辺人売雪〈大理の南門近くにある〉双鶴橋あたりは雪売りが出て、)
水碗啜調梅点蜜和屑(お碗に梅の汁と糖の汁を雪のくずで整えた飲み物をすする。)
(「滇南月節詞」より。楊慎編集の『南詔野史』におさめられている。この詞は1年12ヶ月を月ごとに雲南各地の風物を取り入れて詠んだ詞で、食べ物もたくさんでてくる。)

 というものがあります。
 5月といっても旧暦なので、夏の盛り。「双鶴橋」から大理を詠んだ詩だと考えられます。その最後の行の「梅」は、前回ご紹介した大理白族の伝統的食べ物「潡梅」というのが、大理白族出身の雲南民族大学人文学院教授・楊亜平らの説です。(楊亜平・丁忠蘭「楊慎《滇南月節詞》飲食詞語考釈」『雲南民族大学学報』2010年11月号)
 まあ難しく考えなくても、梅のこしらえものであることはまちがいなさそうです。暑い盛りには、この梅を食べたり、山から取ってきた雪を食べたりして、涼をとっていたのですね。

【梅干しが「彫梅」に?】
 また、ネットを検索していると、「日本式彫梅泡飯」というメニューがでてきました。(http://www.beitaichufang.com/recipe/6793/)
これは、中国の料理雑誌「貝太厨房」が創業10周年を記念して簡単にできる料理を呼びかけたところ、投稿されたものの一つです。投稿者のプロフィールをクリックすると上海に暮らす料理好きのお方らしい。もしかしたら日本人かもしれません。

 その写真には白いご飯の上に日本の梅干しをのせ、のりやごまを振りかけたお茶漬けが。
 梅干しに、なんの切り込みもないというのに「彫梅」という訳をつけるとは・・。漬け込まれた梅という以外の共通点はないのに。

 もし、彫梅と思って口に入れたら、あまりの酸っぱさと、しょっぱさに(種もあるし)、きっと本物の彫梅を知る大理の方はおどろくこと必至でしょう。

参考文献:李正清著『大理喜州文化史考』(雲南民族出版社、1998年)
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大理彫梅2

2012-11-09 17:50:58 | Weblog


写真上は大理・白族の刺繍。花や蝶をあしらったものが多く、色も鮮やか。布靴やエプロン、ハチマキ、腰巻(ベルトのようなもの。私はパスポート入れとして使っている)などが売られている。一度使った中古品も多数。ただ現在、中古品は、作り手が減っているため、だんだんと手に入れることが難しくなってきた。
写真下は大理の路上の市場で売られていた各種の梨や大きさもとりどりの梅製品。

【花嫁の必需品】
 また、大理の白族の風習には昔から幼少時より彫梅を作りつづけ、嫁ぐ日に嫁ぎ先のおしゅうとめさんに、きれいに彫り挙げた彫梅をお盆に載せて見せる風習があるそうです。新婚の夜には招待客がその彫梅の出来をいろいろと話題にするのだとか。

器用さがお嫁さんの勲章だったのですね。私は即、ダメ嫁の烙印をおされそう・・。

 他に大理では梅の伝統的な製法に「潡梅」(黒梅、煮梅ともいう。)が知られています。どちらかというとこちらの方が普段の食のメインです。これはごくごくとろ火、昔ならいろり端のようなところに塩水につけた梅を数日、場合によっては一月から二月おいて加温し、黒くなったら出来上がり。数年間、味が変化することがないので、贈り物にもしたそうです。煮魚の調味料として、また、前菜として楽しんだとか。また、病気の時にはのど、お腹の調子を整える作用もあります。

なんとなくすっぱくて食べ慣れないなあ、と思っていたのですが、調味料としては、ちょっとおもしろい効果を発揮しそうです。            (つづく)


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大理彫梅1

2012-11-04 13:22:07 | Weblog
【美しい保存食品】
 雲南省の西北部の街・大理。ペー族が多く暮らす、かつての南詔国や大理国の中心地だった大理の道ばたで、はたまた、大理の市場で、エンドウ豆で作った豆腐にさまざまな調味料をのせていただく豌豆粉の傍らで、冬の一月だというのに梨は当たり前のように売られていました。

 同じように傍らで売られていたのが、おばあさんたちが表面に波紋状に切り込みを入れた、美しい切り細工のような飴色に光る物体。バケツや壺に入れて売るにしてはあまりにももったいない美しさ。これは、なんだろうと、ずいぶん悩みました。梨にしては黄色すぎるし、梅にしては大きすぎる・・。

 調べてみると、大理でお土産品としても有名な銘菓の「大理彫梅」というおやつでした。細やかで美しい刺繍が得意な大理の女性達。食べる方にも手を加えずにはいられないとばかりに、梅の実に細やかに刃をいれ、表面を波紋状にして漬け込んだものです。梅のすっぱさと甘みが染みます。

 作り方は、
①青梅を洗う。
②石灰水に浸す。
(日本でもカリカリ梅をつくる場合は石灰水に漬けます。クエン酸を中和して、軟らかくなるのを防ぐのです-マルアイ石灰工業株式会社ホームページより)―この工程はしない人もいます。
②梅に花のような細やかな切り目を入れる。
③種を取り、上から押して花のように開く。
④清水の張った桶にいれて少し塩を振って梅の酸味を取る。
⑤ザルに並べて天日干した後に容れ物に移し替えて一層、一層、雲南特産の黒糖か蜂蜜に数ヶ月漬け込む。
丁寧な方法としては数日、漬け込んで、水分が出てきたら、さらに糖などを追加する。これを何回か繰り返す。一ヶ月後に甕などの密閉容器に入れて、一ヶ月置けば出来上がり。当然、その後はいつまでも保存可能となる。

 こうすることで金色にかがやく梅の花となり、ビタミンCも保存されるのだとか。

私が梅にしては大きすぎる、と思ったのは、超絶的に切り込みを入れてから、扁平に押し広げたために、上から見ると、円の直径が大きく感じられたため、だったのでした。  (つづく)
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