写真はセビリアの救済病院内にある付属の教会。清貧な元病院の雰囲気とそのうちにある教会の豪華さにクラクラ。有名絵画が、飾り立てることなく壁にかけられていた。
【セビリア美術館周辺】
セビリア発カディス行きの列車を目指して、街の東北部にあるセビリア・サンタフスタ駅へ。30分後の10時20分発のチケットを購入しようとすると、カディス行きは臨時列車の14時45分発まで、すべて満席でした。
そんなに混んでるの? と驚きましたが、その日は3月1日で、カディスは年に一回のカーニバルのシーズン。面倒でも事前予約をしておくべきだったのです。
参考 https://goripachi.com/spain-train-renfe/
サンタ・フスタ駅の外観は平べったいが中は深い。
ここは気持ちを切り替えて、午後までの空いた時間を街の西北部にあるセビリア美術館に当てることにしました。(大型荷物は駅のコインロッカーへ預けました。)
駅から混みあうバスに乗って街へ行くと、改めて大都会であることを実感。そして、ようやく着いた美術館は、なんと一時間待ちの大行列。家人はよほどセビリア美術館と縁が薄いのでしょう。2度も行って入れないとは。
観覧は断念して、すぐ近くを散策。すると、ステキな絵が窓越しに見えます。中に入ると昔の版画や絵画を売る古地図専門店「Grabados LaurenceShand」でした。ラーメンのようなゆるい天然パーマの茶色の髪をかき上げ、いかにも古書店の店主、という風情の男性が「いらっしゃい」と一声。後に続く咳。なんとも知的でけだるい雰囲気。古書のインクの香りに癒されます。よく見ると質もよく、版画タイプならそれほど高くありません。ひやかしで見ているはずが、思いがけない出会いもあって、いくつかの古地図を購入することになりました。とはいえ1万円は超えないお値段で済みました。
店を出て、ふらふらと小道を行くと、フラメンコ衣装店が軒を連ね、見ているだけで楽しい。髪飾りやピン止めなどが軽くて、きらびやかで使いやすそうなので、それも購入。一つ1000円ほどのものを3つほど。そして念願の白めに濁ったオリーブオイルを小さな食料品店で購入。一瓶3ユーロほどで、日本でサラダオイルを買うのと変わらない金額でした。セビリア市民の普段の買い物がみえる地区でした。
予定通りじゃないのも、また楽しい。これも旅ならではです。
写真は救済病院の中庭。
ちなみにセビリア美術館が混んでいたのは、セビリア出身の画家「ムリーリョ展」が開催されていたためです。普段からムリーリョの絵は展示されているというのに大規模展を行うと、この人出。ムリーリョはセビリアで大人気のようです。
【救済病院にもあるムリーリョ】
じつはポルトガルからセビリアに着いた翌日、古文書館のあとに救済病院という、ドン・ファンのモデルとされるセビリアの貴族によって17世紀に建てられた小さな礼拝堂のような元病院に行ったのですが、そこにもムリーリョの絵がたくさんありました。私にとっては初めて知る画家でした。
セビリア美術館とは対照的に、とても静かで、来る人もほとんどいないこじんまりとした空間。そこでムリーリョの絵と対峙できました。どの絵からも17世紀を生きたムリーリョの、子供に対するまなざしのやさしさが時を越えて伝わってくるよう。いつまでも見ていたくなる、静かであたたかな(たとえ死神を描いていても)絵の数々。
あとで、彼の生涯を調べると、5人の子供を次々とペストでなくし、6人目の娘も耳が不自由だったとか。子供への思い入れは、特別なものがあったのかもしれません。
(ちなみに彼はカディスで絵を描いている最中に足場から転落して、亡くなったといわれています。)
※次回、カディスへ行きます。