雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

通海の甘酒② 自然な甘みと酸味

2014-01-29 14:15:37 | Weblog
写真は通海の甘酒(2008年8月撮影。)。一年中、醸造されている。
ドライブインのある玉渓市通海県曲陀関村は標高1900メートル台の雲貴高原からなだらかに標高を下げてくる地点にあり、標高は1877メートル。さらに20キロ先の通海県の中心地・秀山鎮が1815メートルで、以後も前回、取り上げた建水中心部の1482メートルに向けて下り坂となる。

通海のドライブインを過ぎてからの、急速な高度変化のために、しばしば耳が痛くなった。このあたりは盆地となっていて、周辺には湖沼も多い。昆明より湿度がある。
 昆明から南下する場合、山々の間にのびるなだらかな通海を通る道が移動には便利なため、多くの長距離バスが通過する地点となっているのだ。
このような地形の特質から歴史的には雲南の西北部の大理に8世紀前半に勃興した南詔国が通海鎮を設けて以降、たびたび統治機関が設置されている。


【食べるお酒】
 甘酒といっても、日本のようにトロトロのおかゆ状よりではなく、もっとしっかりとお米を食べる感じです。これならば、自然な甘さで小腹も満たし、喉の渇きもじゃっかん癒し、水分も日本のよりは少ないので次のトイレの間隔を空けられそうです。

なにより値段が水500ミリリットルのペットボトル1本と同じ値段(ドライブイン価格)の1杯1.5元(約20円)とリーズナブル。お腹を壊さない用心のために、口に入れるものは沸騰させたものか、発酵食品にしたいと考える旅人の考えにもぴったりはまります。

客の目の前で甕からお玉で取り出してくれたそれは、真っ白なお米の粒粒がとってもおいしそう。米が水を吸って大きくふくらみ、その形は日本のコシヒカリよりは、やや粒は長めのもち米。

香りこそありませんが、くどくない自然な甘みとさわやかな酸味のバランスがよく、気づくと、きれいに食べてしまいました。

甘酒に口の水分を持って行かれたため、結局、直後に水を飲んでしまいました。長距離バスなので次のトイレが心配になりましたが、腹持ちもよく、なんの問題もなく、ほっとしました。  
(つづく)
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通海の甘酒① 長距離バスの友

2014-01-26 10:30:41 | Weblog
写真は昆明より南に120キロ行った6車線道路の通る交通の要地・通海県のドライブイン。周囲は低い丘と青草が生い茂る田園地帯だ。数軒の甘酒店の看板を掲げたドライブインが建ち並ぶ。
 長距離バスはクーラー完備の、見た目も立派なバスだった。写真のバスの他にもミニバンタイプの乗り合いバスや、1日かかる広東まで行くカイコ棚のように2段式寝台が備え付けられ、一日、寝る以外のポーズがとれない寝台バスなど、値段や行き先に応じて様々な種類のバスが往来する。

【表はきれい、裏はみない?】

雲南の省都・昆明から滇南、つまり燕子洞のある建水や文山、石屏、鉱山のある個旧、はては南方のシーサンパンナ、さらに足を伸ばして広東省へとバスで行くときに、昆明からの最初の休憩地として必ず通る町「通海」。

 昆明から高速道路に乗って1時間半、滇南方面の一般道路に出ようかというところにあって、運転者がちょうど一息いれたい場所なのです。乗客はそこでトイレをすませ、ちょっと空いた小腹になにかを詰め込み、しばらくトイレに行かなくて済む程度に喉をうるおしたい欲求にかられます。

 私も何度も通過しました。

 バスを降りたドライブインの表側は行くたびに小ぎれいになっていくのですが、裏手にあるトイレはなぜか変化なし。

 何度行っても、びっくりするほど不衛生な、穴が斜め下に空いているだけで、掃除もあまりしていないボットン式のしゃがむタイプのトイレが容赦なく待ちかまえています。薄暗いしきりの壁も黒くて、少しでも服が触れないように注意せずにはいられません。

 中国のトイレは汚いが当たり前と思っている私にはなんとか受け入れられる環境でも、昆明から来た都会人(すでに水洗トイレに馴れている)や、遠くからきた中国の人も見るとゲンナリして、人によっては入らずにガマンしようと壮絶な覚悟を決める人まで出る始末。バスにはトイレはなく、次のトイレ休憩までは数時間はあるというのに。
 2008年までは少なくともそうでした。

 まあともかくトイレをすませ、ドライブインの表側に出ると、ささやかな食べ物が売られています。スナック菓子などはなく、拭かしたての饅頭と、ペットボトルの水など。なかで、もっとも人々が買い求めているのが甘酒(甜白酒)でした。
    (つづく)
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ツバメとコウモリ8 いきものの住み処

2014-01-18 14:43:54 | Weblog
写真は昆明に比較的近い九郷鍾乳洞。洞内には「九郷盲魚」と呼ばれる、何世代も暗闇で生息していたために目が退化した珍しい魚が生息している。雲南省Ⅱ類保護魚類に指定されている。サワラやししゃもの仲間の魚だ。このように鍾乳洞内には様々な生物が息づいている。

【石灰岩質が生み出す風景】
なぜ、雲南のコウモリでSARSの研究が進められたのでしょう?

まず一点目は、SARSがはじめて報告された食用野生動物の市場がある広東省から近い場所にあること。このときはハクビシンなどが疑われ、中国全土で取り扱いが一時期、禁止されました。

私は2004年から2005年にかけて昆明の市場に通っていましたが、SARSまっただ中だというのに市場にさりげなく犬や亀、ウサギなどとともにハクビシンが売られているので、雲南の人はニュースを気にしないのか、と驚いたものです
(犬もハクビシンも中国では食用。
ハクビシンは雲南料理、広東料理に使われるほかに、満漢全席のメニューにも梨との煮込み料理の記載があります。臭みはあるけど、味は濃くておいしいそうです。私は食べたことはありません。
ちなみにハクビシンは日本にもいます。我が家の屋根裏にも住みつかれ、ベランダでは目があい、お隣さんの屋根では繁殖までしてフンガイものです)

二点目は、もうおわかりになった通り、雲南はコウモリ天国でもあるのです。雲南の中央部を占める現在1400メートルを超える標高のある雲貴高原は鍾乳洞と石林の宝庫なのです。

雲南中央部で観光地化を強力に推し進めている「○○風景名勝区」は十数カ所ありますが、それらの過半には「洞」もしくは「林」という名がついていて、石灰岩質ならではの景色を作り出しています。

これは2億年前は雲貴高原は海底だったからです。珊瑚礁などの石灰岩質のものが厚い層を作った後、6000万年前から1000万年前の強烈な地殻変動と海面縮小で隆起し地上に押し出され、地上部は風化して石林に、地下なら水の浸食で鍾乳洞になったというわけです。

昆明周辺では2007年に世界遺産に登録された昆明の東南12㎞ほどの路南石林。鍾乳洞なら、燕子洞のある建水の他、昆明東北60㎞ほどの距離にある九郷が有名です。

これらの地形はコウモリが住み着くのに最適な穴蔵を提供してくれるほか、最近まで人の住み処も提供してくれていました。

九郷や建水の燕子洞など巨大な鍾乳洞には、必ずといっていいほど、新石器時代の遺物が発見されるのです。
磨製石器や石包丁、猪などの骨、炭など人の住んだ痕跡が残されているのです。
1980年代にこれらの鍾乳洞の一つを訪れた人から見せてもらった写真には石林や鍾乳洞に上手に住居を造って居住する人々がうつっていました。

日のあたらない、じめじめした住居にみえましたが、温度変化が少ない、雨漏りがしないなどのメリットがあるのでしょう。戦乱で住み処を追われた一族が住み始め、外界の歴史が進んでいることも知らずに住み続けていた、という人々の報告もあります。ただ、そのような場所に住む人は日光に当たる時間が少ないためクル病などの独特の病気が見られた、ということです。

ご多分にもれず、近年、建水の鍾乳洞を流れる川も建水の隣にある開遠市の工業化に伴い水質汚染が激しくなっているそうです。独特の生態系を持つ鍾乳洞を流れるだけではなく、飲み水として多くの建水市民が昔から利用し、名産の豆腐のにがり水まで提供している水でもあるだけに、本当に対策が急がれます。
(この章、おわり)
*次回は、たぶん甘酒の話です。
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ツバメとコウモリ7 SARSの元凶?

2014-01-12 14:50:34 | Weblog
写真は建水・燕子洞の参観経路の最深部。歩くだけ歩いて洞窟探検を満喫した後は用意された龍の頭のついた手こぎボートで洞窟の出口まで遊覧できる。生暖かい風が、なかなか気持ちいい。(2006年8月撮影。現在も同様のサービスあり)

【ほ乳類全体の4分の1を占めるコウモリ】
 100年以上前の探検記では見られたコウモリ。今ではコウモリの住み処にツバメが住み着いたとでもいうのでしょうか。

 じつはそういうことはなく、単に人々に好もしい感じを与え、観光の目玉としやすいという観点からコウモリも住む洞窟に「燕子洞」の名が定着するようになった、というのが実情のようです。

 そういえば最近、気になる記事がありました。

「雲南省のキクガシラコウモリからSARSウイルスとほとんど同じ遺伝子の塩基配列を持つコロナウイルスを分離し、コウモリから直接人へ感染する能力があることを確認した」というニュースです(国際研究チームが10月30日付けの英科学誌ネイチャー電子版に発表。)

 2002年から2003年に大流行し世界で750人以上が死亡したSARS。すでに流行は終息していますが、これまでもコウモリがSARSウイルスの宿主といわれてはいても、実際に人にうつるには、そこからイタチのようなほ乳類に感染してから、といわれていました。それが直接感染する可能性があることが判明したのです。

 そもそもコウモリは極地ツンドラと一部の島々をのぞく世界中に生息している上、その種類は980種以上発見されているとか。ほ乳類全体の約4分の1を占める種数です。これを人から遠ざけるのは、そうとう難しいことが予測できます。

 ちなみに、キクガシラコウモリはユーラシア大陸全域のほか日本にもいる一般的なコウモリ。富士山西湖のコウモリ穴にいるのがこの種です。

 そういえば以前、日本の我が家で、小さく裂けた網戸からコウモリが入ってきたことがありました。薄くてヒラヒラして、意外と小さいので「クロアゲハ」と間違え、捕まえると暖かいのでギョッとしたことも。また我が家の近くの軒先では、毎年、ツバメが巣を作ってツバメの雛の様子を楽しませてくれます。私自身、これだけツバメを見たときとコウモリを見たときの反応が違うのですから、洞窟の名前が「コウモリ洞」ではなく「「ツバメ洞」とネーミングされる理由には深く同調できます。100年前の日本人はどちらに親しみを覚えたのか、気になるところではあります。
(つづく) 
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ツバメとコウモリ6 幸せの象徴

2014-01-05 13:54:39 | Weblog
写真は、建水・燕子洞の入り口(2006年撮影)。洞窟や岸壁があると、中国ではまず確実に文字の立派な彫り物があり、近くに道教や仏教の寺がある。
1902年にここを通った探検家も「禅定」「白巾」、各種五言絶句の詩の石刻を見つつ、微光をたよりに洞窟に入ったという(民国・羅養儒『雲南掌故』より)

【洞窟につきものは・・】
今や、ツバメの巣祭りまで開いてツバメに関心の高い建水ですが、清末期までは食べてもおいしくないツバメやツバメの巣に興味を持つ人は、少なくとも文章を書く人にはいなかったようです。

 今を去ること350年ほど前、明の時代の有名な孤高の地理学者・徐霞客も中国各地を探検する中で
「(建水の)洞窟に行きたいと願い続けて数十年。ようやく万里を越えてここについた。」と万感の思いで建水の洞窟探検に赴いています。

 時期は最悪にも雨期の真っ最中。地元の人に案内されて一番行きたかった「顔洞」
(顔氏が所有する洞窟。一番、大きいと評判が轟いていたらしい。今の中国には個人の所有権はないので名称も変わっている。)
 の入り口まで行き、中に入ろうと案内を請うと、地元の案内人が皆

「水が溢れ、流れも急で、とても行けるものではありません。2ヶ月前でしたら、水が涸れていたので、橋がなくても洞窟に入ることは簡単でしたが、今は橋を架けても行けないでしょう。ましてや橋がないのですから、絶対に行けません」と大反対。
 見ると、橋とおぼしき丸太が清流の下に沈んで見えます。

 徐霞客は案内者の選択を誤ったと後悔しつつ、ついに一つ目の洞窟へ入るのは断念。
 次に地元の人の薦めで橋が架かっている洞窟に入ります。暗くて足もとも悪いなか、透明な水の流れる傍を歩くことができ、さらに大きな滝や鍾乳洞のスケールに大満足。

 ただ彼の日記『徐霞客遊記』には、この洞窟のツバメの記述はありません。それ以前に昆明の太華山に登った時には「まるで蜂の巣のようにツバメの巣がある」との記述を残していることを考えると、ツバメを見る余裕がなかったのか、いなかったのか、悩むところです。

 次に下って清の末期、光緒28年(1902年)の中秋節(旧暦8月15日)。地元の富裕者と壮士13人が食糧、飲み物、松明(たいまつ)、ろうそくなど準備万端整えて、午前7時30分より建水の洞窟探検に挑んでいます。

 彼らは数ある洞窟探検と同様のスリルを味わうのですが、そこで出会った動物はツバメではなく、数羽の大コウモリ。突然の明かりに驚いて突進してきたのです。そんなコウモリに対し「1000年前からいる生き物だ」と畏敬の念を持って記しています。

ちなみに中国ではコウモリ(蝙蝠)の「蝠」の発音と「福」の発音が同じ「フー」なことから、コウモリが幸福を招く縁起物として、飾りなどにもよく使われています。今年も、読者の方々に幸福が訪れますように。    (つづく)

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