雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の特産料理・過橋米線3

2008-10-24 23:36:20 | Weblog

写真は蒙自にある江氏兄弟橋香園にて、過橋米線の最後の行程のミーシエンをアツアツの鶏がらスープに入れる瞬間。はたしてミーシエンは椀から椀へと橋のような形に見えるのだろうか・・。
【建水説のつづき】
さて官僚として北方に赴任していた李景椿は、そのころに食べた「肉薄切りのしゃぶしゃぶ鍋」をヒントに、ある料理法を劉料理人に指示しました。

「豚肉を薄切りにし、その肉に地元の粉を練って衣にして、大きな海のようなお椀に入れたら、その上にアツアツの豚のラードをかけてくれ。そうして火を通したら(どうやら薄切り豚肉のぱりぱり揚げらしい:筆者)、すかさずマコモダケの葉でフタをして、その隙間から野菜や新鮮な肉のスープを注ぎ込んでほしい。
また別に一椀、湯がいたミーシエンを用意して、計2椀を同時にテーブルに置いてくだされ」

劉料理人が言われたとおりにすると、さっそく李先生は竹箸でスープを攪拌させ、さっとミーシエンを入れるや、満足そうに食べたのでした。

 さて店にきては毎日、そのように食べるので、劉さんも気になり、とうとう、その呼び名を教えてくれるようにと頼みました。

すると李さんは、
「私は鎖龍橋の東から、橋を渡ってミーシエンを食べにくるじゃろ。一方、ミーシエン自体もミーシエンを盛った椀から、スープの椀に入れるときに、橋を越えるようになりますな。人が橋を越え、ミーシエンもまた橋を越えることから、過橋ミーシエンと呼んではいかが」

と箸を休めることもなく答えるのでした。

 その後、劉料理人は工夫を重ね、新鮮なみずみずしい肉の方が、衣揚げ肉よりスープの味がよくなったので、直接、生肉をアツアツのスープに投じるようにし、メニューに加えました。

以来、ますます繁盛し、とうとう彼は鶏市街に2層構えの宝興酒楼を構えるまでになったのです。その店の脇にはミーシエンの工場を作り、朝は小椀ミーシエンと過橋ミーシエン、午後からはご飯とおかず、ならびにお酒や宴会も取り仕切る名店として、今日、4代目を数えているのです。
(第四代の劉家厨師で世家伝人である劉世清(一九一七年生まれ)が所蔵する家譜より)


(いつもお読みくださり、ありがとうございます。最近、雲南の明、清時代の資料調査をしています。誰もが行けるはずの国立国会図書館別館東洋文庫に行くと、一日いても利用者は2人。一人は京都弁を話す中国歴史学者の大御所風。それと私。司書のアルバイトの方3人がとても緊張しつつも暇そうにしていて、私がページを繰ると、一緒に頭が揺れる始末。
 一瞬、働き盛りのような中高年の研究者がきましたが、複写資料を指定すると、大御所先生に「人事の仕事が忙しくて」と話すと足早に去っていきました。若者は皆無。卒論シーズンなのに。
 日本全体がむやみに忙しくなってる今日、真実、研究できる人は、お年寄りぐらいしかいないのが、日本の現状なのかと、少し寂しく思いました。)
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雲南の特産料理・過橋米線2

2008-10-19 22:44:56 | Weblog
写真は建水県の象徴、東門。別名、朝陽門。建築後600年以上の風月をこの地で生き延びてきた貴重な門だ。門を入ると旧市街地として整備され、料理店が軒をつらね、門内の日陰ではお年寄りが象棋やトランプをして楽しんでいた。

【建水説】
 蒙自より個旧市を隔てて65キロ東の建水。豊かなアルカリ水の質の良さで知られる井戸が町のあちこちにあり、その水を利用した豆腐が有名です。この街でつくられた天日干しの「臭豆腐」は炭火で焼く、老若男女のおつまみ「焼豆腐」として、155キロ離れた昆明までわざわざ運ばれてくる雲南名物。現在、人口は約50万で蒙自の32万、個旧の39万と比べても、紅河ハニ族イ族自治州で最大規模を誇ります。

 また蒙自とともに往時の交通の要衝地でもあります。当然、科挙の合格者も多く、なんと清の時代には合計32人が国の官僚となれる資格をもつ進士に合格。これは蒙自の23人をしのぐ数でした。そこで「過橋米線」が生まれたというお話です。

 清の咸豊2年(1852年)、建水城の東門にほど近い場所に劉家慶という料理人が「宝興楼」を開きました。ちなみに東門は建水では今も残る唯一の城門で建水の象徴的な場所です。他の南北西の3門は清初の順治初年に壊され、康煕4年に修復されるもまたも、戦火と地震でほどなく倒壊してしまいました。それだけにいまなお東門周辺は市場や店が軒を連ねているのです。

 さてそこで朝は、日本の一杯めしやという風情の小碗の米線(ミーシエン)店として、また夕からはご飯とおかずを出す食堂として、小さい店ながら次第に繁盛していきました。

 ある朝、立派な身なりの紳士が、宝興楼にミーシエンを食べに来ました。名を李景椿、建水県新橋街の出身で、道光年間の乙未の年(道光15年、1836年)に進士となり、官吏として各地に赴任した後、退職して故郷に帰ってきたのです。その彼が店に要求を出しました。それは・・(つづく)

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雲南の特産料理2・過橋米線

2008-10-12 22:17:00 | Weblog
写真は過橋米線発祥の地といわれる蒙自・南島の中心にある石像。最近、つくられたばかりのよう。


【受験生の夜食】
過橋米線には、雲南では有名な誕生秘話があります。

科挙と呼ばれる官吏登用試験が行われていたころのお話。

 超難関のこの試験を突破するためには『論語』などのさまざまな経典を暗記するなど、何年、いや何十年にもわたる刻苦勉励の日々が求められます。一説によると、合格者の平均年齢は36歳とか。当然、妻子ある人も大勢いました。

 昆明より南、蒙自県にある風光明媚な湖、南湖。この小島で勉学に励む受験生、張浩には美しい妻がいました。妻は毎日、橋を渡って夫のもとに食事を届けます。けれども夫が食べるころには、美味しい料理も冷めてしまうのでした。ただでさえ、食欲の落ちている夫は痩せていくばかり。

 あるとき、家のものが鳥をしめて、土鍋でチキンスープを作り、妻のもとへ届けにきました。まだ野菜などの具は入っておらず、スープはいつもより温かく感じます。よく見ると、スープの表面には鳥の油が黄色く浮き上がり、それが蓋の役割を果たして、スープの熱気を閉じ込めていたのです。その日、夫には熱々の料理を届けることができ、彼も喜んで食べてくれました。

 以後、賢い妻は熱々のチキンスープに、米でできたうどん・米線(ミーシエン)と刻んだ野菜を添えて、夫への食事としました。食べる直前に薄切りの素材を入れ込んでも、十分、火が通っておいしく食べられるのです。

 食事をもりもり食べた夫は見る見る健康を回復し、勉学もはかどって功なり名をとげたということです。(一説には、地方各省が実施する100人に1人しか受からない年もあったという「郷試」に合格し、挙人となったそうだ。)

 この話を伝え聞いた村人たちは「橋をわたって食べるチキンスープの仕立ての米線」を「過橋米線(グオチャオ・ミーシエン)」と呼ぶようになりました。

 上記がもっとも有名な伝説ですが、ほかに建水説、文山説、近年では階級闘争説なるものまであるそうなので、次回ご紹介したいと思います。
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雲南の特産料理

2008-10-04 23:47:26 | Weblog
写真は、「過橋米線(クオチャオミーシエン)」。白湯(バイタン)スープに小皿に載せられた生ものを次々に投入し、最後にゆであげ麺を入れて、食べる。ポイントは、薄切り生肉にすべて火が通るほど、スープがアッツアツということ。

【街の伝統的ファストフード】
 雲南料理の筆頭にあがるのは「米線(ミーシエン)」料理、なかでも「過橋米線」が有名です。
 雲南の地域はお米が主食の地域だけに麺もお米。ミーシエンはお米からつくった麺のことなのです。雲南を旅すると、これに野菜や肉をのせて、朝な夕なにツルツル、と食べる人々の姿が、どこへ行ってもあちこちで見られます。1杯1.5元(約20円。500ミリリットルペットボトルの水1.5本分)から50元(約650円)まで幅広いのですが、よくもまあ、飽きないものだと感心するほど、地元の人は、毎日、よく食べています。

 雲南大学に留学中の人から聞いた話では、中国でファストフード店を展開するマクドナルドやケンタッキーが、いよいよ雲南へ出店という段になって、ためらったとか。

 理由は、それ以上に優れたファストフードである米線の存在に恐れをなしたからだということです。今ではハンバーガーや圧力チキンだけでなく、ピザ、和風うどんなど、世界中のあらゆるファストフード店が昆明の目抜き通りに進出し、昆明人にも愛されていますが、日常食としての米線は老若男女問わず、愛される食のトップバッターでありつづけています。

●過橋米線(グオチャオ・ミーシエン)

 その中で、際だった特色を持っているのが過橋米線です。トリガラベースの熱々のスープに、自分で豚や鳥、魚などの薄切り生肉から生野菜までを次々と投入し、最後に茹で揚げたばかりの米線を入れて食べます。

 雲南で外食が続くと、辛いか脂っこいかで、胃がまいってしまうこともあるのですが、この料理なら自分の好みで唐辛子や醤油、山椒などを入れればよいので、安心です。それよりやや黄色みがかった透明な薄い塩味の鶏ガラスープは雑味がなく、上品な味わい。私は、一度、食べるとやみつきになってしまいました。
(つづく)

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