雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の豆腐⑮ 中国のゆば

2010-08-13 16:20:38 | Weblog
写真は、石屏郊外。天日で豆腐皮を乾燥させている。ほんのり大豆の香りがした。

【豆腐皮】
湯葉(ゆば)といえば、豆乳を温めて、表面に浮いてきたタンパク質の膜を掬いあげたものだが、現代中国の湯葉は豪快だ。というか、湯葉とは見た目は同じでも、じつは別物。中国では「豆腐皮」と呼ばれている。

 雲南から広西チワン族自治区へと抜ける山間の小さな町・八宝で見かけたのだが、水につけてふやかし、皮を取り去った大豆を機械に取り付けられた円筒のステンレス製のバケツに入れる。それを機械があっという間にドロドロにすると、何らかの凝固剤を加えておぼろ豆腐のようにすると、それが圧延機のようなところから黄色い膜状の形で伸ばされて出てくるのだ。これらの作業は複合型の5メートル足らずの機械一台で事足りていた。

 「豆腐皮」は庶民の味方。乾燥させたものは日持ちもよい。雲南大学の留学生に聞くと、一食5元で自炊するには、欠かせない素材なのだという。

 牛肉の2倍のタンパク質があり、細く切って炒めたり、スープに入れたりすれば、栄養価も腹持ちもばっちりだ。それだけに、日本の湯葉のようにすくい上げて作られるモノだと思っていた私には衝撃だった。

 ゆばの起源は、中国のはずだ。そのように日本の料理書には書いてある。現代の中国の料理書にも、豆腐皮の作り方は、豆乳を温めて膜をすくい上げたもの、とある。(深圳市金版文化発展有限公司主編『百変豆腐』、陝西旅游出版社、2004年11月他)

 なのに現実は違っていた。

【豆腐皮機】
インターネットで調べてみると、豆腐皮機は、河北省製のものが、じつに簡単に買えることがわかった。どうやら今、中国で作られる豆腐皮の大半がこの作り方となっているようだ。

 石屏県の豆腐皮も、特殊な現地の水を使う以外は同様の荒っぽい作り方をして大量生産されているものもあるが、日本の湯葉と同じようにつくられているところもあった。

 夕暮れ時に、散歩をしていると、木の柵に干された豆腐皮が夕日に照らされて、やわらかい黄金色に輝いていた。

 ちなみに『雲南伝統食品大全』によると、豆腐皮に限って見ると1983年と84年も、石屏県の国営企業が画期的な技術改良を行って近代化を施し、徐々に生産量を増やした、と記録されている。結果、85年に50トンだったものが、2000年代前半には800トンの大台に載るまでになったという。(以前、書いたが石屏でつくられる豆腐は全体で2500トン前後、生産されている。)

 この近代化により、大豆から、廃棄される部分が極端に減る、というメリットもあるのだという。しかしこれでいいのだろうか。 
(つづく)
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雲南の豆腐⑭石屏豆腐Ⅳ

2010-08-04 15:04:49 | Weblog
             

写真左はおぼろ豆腐を網竹と粗布の上にならしているところ。工員さんは慎重な手つきで、きっちり長方形にならしていく。
写真右は、石屏豆腐を固く仕上げるために、押し固める圧搾機。重石と木を積み重ねた上、テコの原理でぎゅっと押し固めていた。

【石屏豆腐の作り方②・圧力を加える】
次に、竹で編んだ横1.2メートル、縦40セントほどの板状のものの上に白い粗布を広げて、その上にアルミ製のボウルですくいとったアツアツのおぼろ豆腐を、ゆっくりと均し入れる。そして、形が崩れないうちにすばやく粗布を板の形に合わせて長方形に包み込む。

 この板を9枚程度、重ねて(圧搾機で)ぐっと重しをかけて、水分を徐々に押し出す。こうして網竹の模様のついた厚さ1センチ強の真っ白な石屏豆腐の形が出来上がる、というわけだ。

 あとは板に豆腐をへばり付けたまま、半日、干し、さらに粗布から取り出した豆腐をお姫様でも扱うように丁寧に9枚ごとに棚に重ね置いて日陰干しし、最後に、握り拳くらいの幅に、包丁で切りそろえていく。
 
 こうして朝、作りはじめたものが夕には出来上がり、近所の人から、専門業者までがリヤカーを引き引き、買いに来るのであった。

【炒めたり、焼いたり】
 この豆腐は、日持ちがよく、石屏豆腐が大好き、という昆明出身の女性から
「その日に食べることもあるけど、2,3日後に炒め物に入れることもあるよ。数日、冷蔵庫に入れておくと、パンパンにふくれるけど、それもまた、料理するとおいしいのよ。」と、聞いたことがある。

 実際彼女の作った季節の野菜と石屏豆腐の炒め物は、独特のクセが、昆明の人々の人気を呼んでいた。

 また石屏豆腐を串刺しにして炭火で焼いたものも、石屏の町はもちろんのこと昆明の街角でも(とくに冬場に)人気が高い。独特の香りが人を呼び、ビールにも合うのだ。

 日持ちをよくするために塩漬けにしたり、何らかの発酵を促したりするような工程はとくには見あたらない。日持ちと味の秘密は、一にも二にも、十分な圧搾と石屏の井戸水にあるとしか思えない。

 石屏豆腐の製作工場は「北門」以外にも、付近に数店あった。それぞれに虎の子の井戸を持ち、不思議なことに味も少しずつ違う。
石屏の井戸水、恐るべし!

 だが、地元で一番人気は「北門」。ここが、おいしい理由は、水だけではないないだろう。工場で働く若者は真剣な顔つきで仕事に取り組み、年かさの社長は、いつも若者に対して自分も作業しながら、常に笑顔で接して、工場の雰囲気を和らげている。この健全な、あうんの呼吸が、「誠実、スマイル0円」とでも言いたくなるようなプラスアルファの味を引き出しているに違いない。

           
上の写真は、日陰においた石屏豆腐を規定の大きさに切り分けているところ。これが済むと、リヤカーで受け取りに来た小売り業者が次々と引き取って、市場などへと向かう。
(石屏豆腐の項・終わり)
*週末更新が夏ばてのため、遅れました。夏は年を追うごとに厳しくなってますね。毎週、見てくださっている方々、ご心配くださった方、ありがとうございます。
 8月中旬にはなんとか豆腐の項を終わらせたい、と思っています。お付き合いください。
 さて、8月15日から8月30日までは私は久々に雲南等にまいりますので、更新はお休みさせていただきます。いろいろ見てきますね。ええ? まだ続くの?と思わずに、お読みいただければ、と思います。  
コメント (4)
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