雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

番外編・香港で見つけた雲南③「より脱線」

2011-04-24 14:02:30 | Weblog
【米線文化圏】
Nakachunさんより以下のコメントをいただきました。

 「この米線店の名前ですが、なぜ桂林が含まれるのでしょうか?雲南と関係ないような気がしますが・・・。確かに上海で桂林米線の店をみたことがあり、桂林と米線の関係はあるような気がします。でも橋は渡っていなかったような・・・?また桂林では特に米線がはやっている印象はなかったと記憶しています。」

 コメント欄で回答するには長くなってしまったので、本編でコメントします。
いわゆる米線文化圏、というか、販売統計を見ますと、福建、広東、広西、湖南、湖北、雲南と、淮河より南方の地域で米線がよく消費されていることがわかります。広西の桂林も米線がよく食べられている地域というわけです。

 食べ方は様々で、雲南でとくに有名になっているのは「過橋米線」ですが、桂林でさかんなのは、日本でいうところのビーフン=米粉、それも生麺での食べ方。
 つまり、香港でおいしかったこのお店は米の粉でできたメンを使って、雲南風に香菜などを入れ、また桂林風に雲南では取り入れていない豚の腸やハムなども入れてしまおう、味付けには雲南の過橋米線では豚か鳥のパイタンスープだけど、味噌を入れたりして味にバリエーションを出して、より進化させてしまおう、という、いいとこ取りのお店、というわけです。

 そもそも香港の料理というのは(私が語るのもおこがましいですが、)中国全土が1949年に共産党支配下になったときに、唯一、「中華料理」として、世界と対等に味を競い合えた地域なので、広東料理をベースにして中国の各地域のいいとこ取りで料理を完成させていった、といえるわけです。

 今回、香港で「外れかな?」とも思える料理も食べましたが、どうも、それらは世界の料理、たとえば最先端フランス料理との融合中だったり、などと中途半端さが否めないお味。そんな中、雲南と桂林の米線文化を立派に完成へと導いた「雲南桂林過橋米線」はたいしたお店といえるのでしょう。英語名ではっきりと「TRADITIONAL CHINESE NOODLE」、つまり「伝統的な中国メン」と表明しているあたりからも、店の立ち位置がわかる気がします。

 ところで同じ通りに「八王子」という名前のお店があったのですが、あれはなんの料理だったのだろう、といまさらながら気になっています。もしや東京の西にある八王子駅から山に入ったところにあるお店の「スズメの焼き物」料理なんかを出しているのでしょうか? それとも「8人のプリンス」の意味? 

ちなみに香港の料理の歴史については
勝見洋一『中国料理の迷宮』(2009年、朝日文庫。2000年講談社現代新書で出版されたものの復刻版が手に入りやすいです。)をご覧ください。ムチャクチャおもしろいです。

 蛇足ながら「過橋米線」のルーツは雲南に限ったわけではないようです。
たとえば1949年以前の蘇州の美食のあり方を活写した陸大夫の小説『美食家』で、とある美食家が毎朝、米線店に人力車で行って、その食べ方の指定を細かくするのですが、最後の決めぜりふが「過橋!」となっているところから、江南地域で発達した、食べ方の一つが、雲南で遺風として残された、とも考えられます。
 詳しくは拙論文で「雲南の食の世界~過橋米線のふるさとを訪ねて~」『ヒマラヤ学誌』(№11:258-269,2010)をどうぞ。住所がわかればお送りします。では。
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・香港で見つけた雲南②

2011-04-17 15:59:40 | Weblog
               
【香港でみつけた雲南米線】
 香港映画では怪しい人物が多く住む不法地帯的魅力を放っていた香港の中心部ともいえる九龍城(マンション)は、今や可憐なバラなどが咲き誇る市民の憩いの場所九龍公園となっています。英国から中国政府に返還されたときに真っ先に解体したビルだったのだそうです。

 その公園南の飲食店街で「雲南・桂林過橋米線」(亜土厘道21号)を見つけました。見つけたときは開店前だったので、海のものとも山のものとも分からず、ともかく昼時に出直すと、驚いたことに、他よりもは長い列ができていました。身なりのいいビジネスマンから、店の売り子さんのような人まで様々です。店には日本語メニューもあって「過橋米線」の日本語訳は「橋をわたる米の線」と書かれていました。なんのこっちゃ?
                 
 
 注文し、目の前に出てきたのは、とくに橋を渡ることもなく、どんぶりに静かに収まった煮込み米線。醤油で煮込んだ牛のサーロイン肉、回りが赤いハム、青菜を塩漬けし、乳酸発酵させた酸菜、さっとゆがいたモヤシ、ゆば、ニラ、ネギなどの刻んだものが渾然一体となって、酸菜や黒酢などがもたらすほどよい酸っぱさがクセになりそう。

 米線もモチモチとした歯触りに、さわやかな味でいつまでも食べていたくなります。店の人があまりに急がしそうで聞けませんでしたが、おそらく、一日、米線を発酵させた生の酸米線ではないでしょうか。

 自家製ワンタンも黒酢と菜肉あんをくるんだ自家製ワンタンからくるやさしい酸っぱさがクセになる味。雲南で私にとっては一押し絶品の白馬地区の店のスープをより洗練させた味で、さすが食の都・香港、もう一杯、食べたくなりました。  (つづく)
                  
コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

番外編・香港で見つけた雲南①

2011-04-09 20:34:25 | Weblog
写真は香港・上湾の乾物通りにて。「日本元貝」(貝柱のこと)の文字が踊る。2011年4月撮影。

【賑わう場所】
 3月21日のテレビのニュースは自粛ムード一色でしたが、賑わう場所もありました。東京・多摩地域にある吉祥寺駅や町田駅などの都心周辺は、いつも以上の混雑ぶりでした。
 被災地の方々とは比べるべくもないにせよ、それでも異常事態の日常に疲れたか、逆に戦闘的に目覚めてしまったかの人々がターミナルに吹き寄せられ、何かを爆発させたかのように消費に走っていました。電器店も本屋も道も人でワサワサ。「安・近・短」が加速して、カラオケ店の株価も上がっているとか。
 被災地に心を寄せ、できることをし続けながらも、自分の生活を保ち、前進しているこうと思いました。

【香港に行ってきました!】
 そこで、むやみに自粛はよろしくないと、香港、マカオに行ってきました。
 香港のテレビでもトップニュースは連日、福島原発。
3月29日の大見出しは「福島問題、未解決」「中国黒竜江省や広東省でも検出、アメリカでも少量放射能」。
3月30日には香港にも日本の放射能が到達するも、人体に影響の出るほどではないので、心配しないで、と報道されていました。東京電力が言う「拡散するので問題ない」は世界の大迷惑。日本人として肩身の狭い思いをし続けていました。

 にもかかわらず、香港の人もやさしかった。
 ブティックや飲食店には義援箱と「日本、加油(がんばれ)」の文字が。ペニンシュラホテルのフロント前には「1000羽鶴プロジェクト」といって、義援金を渡すと、折り鶴を一つ、白いクリスマスツリーのような木に結わえることができるようになっていました。その鶴は日々、増え続けていったのです。日本人学校の生徒さんが受付に座って、義援くださる方にお礼を述べていました。
(珍しく名の通ったホテル宿泊体験でした!)

 私にも町の人から「日本は今、たいへんだね。大丈夫か?」と、温かな口調で呼びかけらたことも。テレビでは大勢の中国の大学生がお揃いのTシャツに、日本語の大合唱ソングで義援金を募るテロップも流れていました。香港国際映画祭で集ったジャッキーチェンら香港スターが、日本のために義援コンサートを開いてもいました。

 ニュースでは知っていたのですが、目の当たりにした感激は、やはり違います。そういう場面に出会うと、小さく「ありがとう」とつぶやいて、頭を垂れておりました。

【俵物の価値】
 香港で海産物の取引場として知られる上湾。そこには燕の巣、フカヒレ、アワビ、なまこなどの乾物がずらり。店の人は燕の巣やフカヒレに付着したゴミをピンセットでせっせと摘み去っては商品価値を上げることに余念がありません。
 そこで最上物として取引されているのが、北海道産や青森産のフカヒレやアワビ、貝柱、昆布でした。グラム当たりの値段は日本の新幹線の車内販売で買った方が安いのではないか、と思われる金額です。いろいろな店をのぞくと、日本の最上物が入っていたケースが空になっている店もありました。

 また、おしゃれな香港みやげのショップには日本の米やカップラーメン、粉ミルクなど、大きく「日本製」「北海道産」などと書かれた商品がずらり。
 日本には資源がないから、工業製品の輸出で頑張るしかない、と、かつて学校で教えられ、漠然とそのように信じ込んでいたのですが、じつは水は軟水で冷涼、土壌もよく、とても豊かな国だったのだと改めて気づかされました。

 原発事故による放射能汚染を正しく理解して、世界にも正しく告知することが今後の農産物復活の布石になることは間違いありません。

 ともかく放射性物質を封じ込めてください。それに向け、頑張っておられる方々、その奮闘は想像しようもないものですが、ご無事と成功の日々、心を込めて祈ってます!
(つづく。次回は香港のおいしい食べ物です。)

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする