雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

キノコ王国のきのこ鍋5

2010-10-30 22:20:05 | Weblog

上の写真はキノコ鍋専門店街の裏通り。マイカーの新車がずらり。すべて係員の指示に従って路駐されている。
下の写真はきのこ鍋店のきのこ鍋。トマトが丸ごと浮かぶ鶏肉清湯スープにまず、ちくわのように中心の空いた竹蓀のぶつ切りをさっと入れて、しゃぶしゃぶ風にして歯ごたえを楽しみ、よい出汁を出したあとに、鶏油キノコ、青頭キノコ、松茸など数種類を次々と入れ、10分ほど煮込んで食べた。キノコによってはよく煮込まないと中毒を起こすものなどもあるので、店員の指示に従いたい。

【「きのこ鍋」街へ】
 雨期ともなると爆発的に出てくる個性的なキノコの中から、好きなだけチョイスして、クコの実などの入った贅沢スープとともにしゃぶしゃぶのように味わうのが「きのこ鍋」専門店の食べ方です。

 キノコのよっては湯にくぐらせたらすぐに食べる歯ごたえ派から、出汁としてじっくり鍋に浸す方法まで様々。スープとの相性もあるので、細かいところは店員さんにおまかせすると、すべてよい加減でスープから引き出してくれるところもあります。

 そう聞くと複雑そうですが、頼み方は簡単。食物の項目と値段のかかれた紙に頼む数量を記入するだけ。まずスープの種類(激辛スープから白湯(バイタン)スープまで)からチェックし、後はキノコ、野菜、豆腐、肉などをほしいだけチェックすればオーケー。店でスープの特徴や旬のキノコなどの情報を聞く方が、よりおいしい鍋になりますが、言葉がわからなくても、注文できます。

 この鍋は、もう昆明名物の一つ、といっていいほどで、広い昆明の中でもある一点に専門店街として集中しています。その場所とは昆明駅からやや南にある関上関興路。

 ほんの7年前までは殺風景な開拓地に忽然と立ち上がったきのこ鍋店だけが目立つ一角にすぎなかったのですが、今や、さらに奥に新興住宅地が林立し、自家用車で動く人達向けの「○○人家」という名を冠した中国風のおしゃれなレストランが軒を連ねる区画へと変貌を遂げました。

 そんな中、キノコ鍋の専門店は、ひときわド派手なネオンサインを煌めかせ、異彩を放っています。あまりにも一角に集中しすぎているためか、道に迷った私が1本脇道にそれたところで、地元の人にきのこ鍋店を尋ねても、例によって「知らない」の一言で終わってしまったほどでした。

【旬のキノコを他種類食べられる】
 さて、この一角を目指して、キノコの旬ともなると、かつてはタクシーが、今ではフォルクスワーゲンなどの巨大な自家用車が夕方には群れをなして訪れます。つまり、贅沢品なのです。といってもまだまだ中国元は安いので、お酒込みで一人当たり1000円ほどあれば、お腹いっぱい食べられます。

 鶏のスープをベースにした薬膳風味のスープなどはそれだけでもおいしいのですが、それにキノコの王様だの、皇后様だのをたっぷりと入れていただくスープは歯ごたえも、味も至上の贅沢の一つ、と思えるほどの味。最後に雑炊でしめると、とろけます。

 近年では日本の東京でも味わえる店はあるのですが、やはり値段が高額になってしまうのが、つらいところ。キノコの種類も限定されます。ですから、雲南に行かれることがありましたら、過橋米線に次いでおすすめしたい一品です。

 そもそも雲南で自炊していても、一つの鍋に五種類以上もの野生キノコを市場で買うのは難事業です。少量ずつでは買えないために、何種類も買ってしまうと、食べきれないほどのボリュームになる上、かえって高くつくことも。各種キノコを味わうなら、やはりきのこ鍋店が気楽です。

雲南の生物多様性のありがたみをひしひしと感じる、最高の一碗は、きのこ鍋、で決まりでしょう。                     (この章おわり)
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キノコ王国のきのこ鍋4

2010-10-23 11:04:54 | Weblog
写真は昆明のデン池脇の食堂「温馨飯店」の店内に掲げられていた鶏油菌のポスター。「薬菌仙-鶏油菌」との文字が赤字で書かれている。公共のバス路線がないせいか、デン池めぐりを楽しむ観光客のマイカーの路駐がすごい。街自体は、農家を主体としたマイカーを持たない人々が多いようだ。

なかなかキノコ鍋屋にたどり着きません。キノコの種類がなんといっても豊富で、モノによっては鶏肉のような味のするものまであり、ついつい長くなっています。このへんでしめましょう。

【運命の出会い】
 他にも、野生のキクラゲなど様々なキノコがありますが、全部、ご紹介しているときりがないので、最後に不思議な体験をした、あるキノコの話を一つ。

 人それぞれ体質があり、たとえば風邪薬一つとっても、人によって効き目のある薬が違うように体に合う成分は人ごとに異なります。私はどちらかといえば特殊体質。体にいいとされるスッポンなどの強力な食べ物を一口でも食べようものなら胃がひっくり返るほどの苦しみとなり、漢方の権威ある先生が体の当たりがやわらかいとされる薬として私に処方する漢方薬ですら、私にはおそろしい副作用をもたらすこともたびたび。

 そんな私に不思議なほど、よい薬効をもたらしたキノコが雲南にありました。その名は「鶏油菌」。
 外観は黄色く、ぬめりの少ないナメコ、といったところ。八月下旬から九月ごろの、やや秋風が混じるころが旬です。哀しいことに乾物や冷凍物などは一切なく、保存がきかないので、その時期の、現地でしか食べるしか食べる方法はありません。
くさーいデン池の傍らにある、あまりきれいとはいえない小さな街の大衆食堂で、運命の出会いはありました。

 胃腸が弱く、冷え性で、低血圧のこの私が、このキノコと豆腐の入っただけの、うすい塩味のスープを一口食べたとたんに、体の血が巡っているのを実感。やがて、ほどよく汗が噴き出て、目、肩や腰の尋常でないコリからも開放されたのです!

 よもや普通のスープと思っていたのにこの劇的変化。汗が噴き出て動きたくないので、かたわらの知人に、なぜか店に飾ってある各種キノコのポスターの該当箇所を読むように頼むと
「すごいよ。ビンゴだ。」
 と、血相を変えてもどってきました。そこには「薬仙キノコ」と書かれていたのです。薬効の優れた仙人のようなキノコとは・・。

 薬効が体を駆けめぐっている最中に目にしたものですから、のけぞるほど、驚きました。その食堂に入るまでは右足の付け根が痛くて、この先、どうすれば歩けるのだろう、という深い悩みに一人、沈んでいたのですが、おかげで助かりました。

 ちなみに本によると、カロチン、ビタミンC、タンパク質、カルシウム、リン、鉄などの成分があり、目、肺、胃腸、乾燥肌などによいそうです。

 さて、その晩は、もてる力以上に歩きすぎたためか、またもや痛みで苦しむはめに陥ったのでした。

参考文献:『菌縁:雲南野生菌煮★(★=食偏+壬)』 雲南菌縁餐飲管理有限公司編、雲南美術出版社,1998

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キノコ王国のきのこ鍋3

2010-10-16 14:09:33 | Weblog
昆明のキノコ鍋屋の棚より。下から2段目の右から2列目が牛肝キノコ(別名・黄念頭)。炒めるとバターっぽい味がする。

【毒キノコの見分け方】
 日本では、キノコが大豊作! 夏ものと秋ものが一気に出ているため、スーパーで毒キノコも混ざってしまう事件が多発していますね。

 ところで、もとよりキノコの種類が豊富な雲南でも6月から9月のキノコの収穫期には、中毒事件はよく起きます。雲南省疾病予防センターによると、年間数人、多いときで数十人が毒キノコで命を落としているとか。とくに多いのが牛肝キノコ。どんな調理でもおいしく、時期も海抜900メートルから2200メートルの間の松林で5月から10月まで採れるという雲南では最もポピュラーなキノコです。少しバターっぽい味がしました。じつはこのキノコが一番、毒にあたる可能性が高いのです。

 専門家は牛肝キノコでは赤い斑点の入ったモノはダメだ、とアドバイスしますが、牛肝キノコの種類は食べられるものだけでも、こげ茶から黄、赤と幅広く、形状のバリエーションも豊富なため(牛肝キノコだけで100種余りある。こんなに多いのに一つの名称でまとめていいのだろうか?)、どれが安全でどれが毒かは、さっぱり私ではわかりません。比較的穏当な値段で食べやすいキノコではあります。

ちなみに雲南で流布されている毒キノコの見分け方は以下の通り。

1.ニンニクと一緒に炒め、ニンニクが黒くなったら毒キノコ。

2.ウジもわかず、虫もつかず、苦いものは毒キノコ(ウジがつくまで普通は放っておけない、と思うのだが・・。)

3.銀器、ニンニク、お米を用いて炒めたり、煮たりして、いずれかが黒くなったら毒キノコ。(これは、韓国ドラマの「チャングム」でも毒の見分け方として使っていましたね)

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キノコ王国のきのこ鍋2

2010-10-10 17:54:44 | Weblog
        
上の写真は竹蓀(左)と青頭菌。下の写真は竹蓀を食べやすく加工したもの。(昆明のキノコ鍋屋にて)

【雲南キノコの帝王】
 雲南で格別に人気があるのが、「鶏ソン(土偏+従)」別名「鶏松」。傘は椎茸同様の茶色ですが、傘の形はより尖り、柄が長く、ものによっては、大人の腕ほどもあろうかという巨大なキノコです。収穫時期ともなると、人の顔より大きなキノコの横で女性がニッコリ微笑んだツーショット写真が必ずといっていいほど、新聞を飾ります。ある意味、日本の松茸的存在といえましょう。

 乾燥ものは日持ちがいいので雲南みやげとしても人気があります。値段は高級プーアル茶ほど。ただ日本の人におみやげで渡しても、知名度が低いためか、プーアル茶ほどは喜ばれません。

 味は、さすが。鶏肉のようなさっぱりとした旨みがジュワっときます。スープに入れてもおいしいのですが、私が一番、気に入っているのは塩味のさっぱりとした炒め物。胃によく、動悸を鎮め、肝炎によいとされています。ただ、私としては値段に見合うほど、高雅な味なのかは疑問。ただ単に、私がケチなだけかもしれませんけど。

【雲南キノコの皇后】
真っ白い網目模様でちくわのような形に見えるのは竹蓀。名前の通り竹の根に寄生するキノコです。傘の部分は深い緑色だったり、桃色だったり、同じく白い編み目のようなスカート風だったりと様々。

 スープに入れるとややぬるりがあって、こっくりとした深い味わいが楽しめます。それゆえ、別名は「菌中皇后」。おいしさがストレートで、わかりやすい味です。

 このキノコは中国南方地域で幅広く採れるのですが、雲南省北東部の昭通と隣接する貴州省織金のものが最高、といわれています。

 かつて福建省に行ったときに、現地の方から、奮発していただいたであろうおみやげが、竹蓀の乾物でした。古来より「草八珍」の一つと言われるほどの貴重品とは知らなかった私は、日本の味噌汁に少し入れただけで、一年、放置してしまい、土のようにぼろぼろにしてしまったのでした。
 このキノコのおいしさは雲南で、現地の人につくっていただいてはじめて分かったのです。まったく、もったいないをしたものです。

【チョコレート色とエメラルドグリーン】
 昆明の市場で雨期にたいていの時期にお目にかかるのが牛肝菌と青頭菌。前者はたいてい黒々とした茶色の傘を持ち、後者はエメラルドグリーンをしています。日本では見かけない色なので、一瞬「毒キノコ?」とひるみますが、大丈夫。
 いずれもずんぐりむっくりとした形をしていて、炒め物によく合います。心なしか、青頭キノコはちょっと苦みがあるような。野生のキノコが高価な中で、これらは昆明周辺でよく採れるので、お手頃なのがうれしい存在。
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キノコ王国のきのこ鍋1

2010-10-01 15:47:14 | Weblog
               



写真は山の幸を道ばたで売る様子。上は主に乾燥キノコを扱っている。下はキノコ4種とスズメバチの巣。いずれも一般の農産物よりもはるかに高い値段で取引される。昆明より61キロ東に離れた九郷風景区付近にて撮影。このあたりはまだまだキノコの生える森が広がっている。
 農民らは竹で編んだ手提げ駕籠にハスの葉を敷き、その上に丁寧に並べたキノコを並べていた。(市場の食材は朝に揃っているものが多いが、野生のキノコは例外。)

【流通は午後から】
 雲南で誇るべき食材の一つにキノコがあります。食べられるものだけで、その数およそ800種。地球上に食用キノコは2000種ほどあるそうですが、その半分弱を雲南で味わえる、というわけです。

 6月から半年続く雨期に入ると、昆明の市場にはいつもある椎茸、マッシュルーム、エノキダケとは別に野生キノコの区画ができます。
野生キノコが市場に並ぶのは夕方。開発が進み、森林は減少していますが、まだまだ昆明の周縁部の山は林に覆われています。そこで農民らは朝から山深いところまで足を踏み入れては、貴重なキノコを見つけてくるのです。そして昼ごろから公共バスなどにゆられて市場や料理店、観光客のいる道ばたへと、自慢のキノコを持って現れる、というわけです。

 そのためか野生キノコ売り場の人はプロの売り子ではなく、多くは農民です。だから料理法などを聞こうとしても、公用語の中国語では会話が成り立つことは稀。弾むような音感を持つ雲南語で、こちらの言いたいことは伝わるけど、なかなかあちらの言葉は理解できません。

【たくさんのキノコの中の松茸】
 そんな中で会話の成り立つ人に日本人とわかると、必ず指し示されるのが「松茸」。「中国産」として日本のスーパーに並んでいるアレです。雲南でも人気はありますが、

「もっとおいしいキノコが沢山あるのに、なぜ、日本人は松茸が一番、なのだろう」
 とよく言われました。

 私もキノコに詳しくはないのですが、ひょっとして中国産の松茸と日本産のものは見た目は同じでも、じつは別物なのではないでしょうか? 本場で食べても、シャキシャキとした歯ごたえはともかく、やはり日本のものより香りが薄いようです。日本では中国産は二流品扱いされていますが、雲南でも高価なキノコではあっても、最上の部類、とはいえないのでした。

 とはいえ、換金作物としては最上のキノコです。そのため旬の6月~7月ともなると、チベット国境付近のシャングリラ周辺の人々は、日本向けの松茸取りのために、村が空っぽになることも。同時期に野生のブルーベリーも収穫するので、やりがいも2倍に。

 そそり立つ急峻な山肌で収穫に精を出すターバン姿のチベット族の人達を見たときには「ここまでしても、日本産より安いのか」と驚きました。

 同じく、シャングリラ周辺の特産品に冬虫夏草があります。高価な漢方薬として日本でも人気の、冬は虫で夏に草になるという不気味なものですが、れっきとしたキノコです。夏に生えるのは草ではなく蝙蝠蛾に寄生したキノコが芽を出したものなのです。
(つづく)
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