雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

宜良ダックを探して⑤

2011-07-23 14:02:10 | Weblog
                   
 上の写真は、宜良市場の入り口にある李烤鴨店。夕方4時を過ぎると、行列になる。別に特別、セールをやっているわけではなく、日常の風景なのだ。(2010年夏撮影。)

【宜良を代表する烤鴨店】
 次に市場で唯一、長蛇の列になっていた李烤鴨店を見てみました。他店を圧倒する製法の秘密は、「無公害」アヒルを使うという肉の質へのこだわりと、焼き上げた後、吊したまま、熱風で風干しするところ。こうして、皮をより一層、パリッと仕上げるのです。

 お味はアヒルの身も引き締まり、脂身よりも旨さが際立つ日本人好みの「烤鴨」でした。(昆明市内のスーパで売られている真空パック包装のものは、当たり前ですができたてではないので、皮のパリパリ感がないせいか、残念ながら味が一段、落ちるように感じます。)

 また市場には私が最初に宜良に行くきっかけとなったレストラン・学成烤鴨店の烤鴨のみを売っている売店もありました。こちらはこじんまりとしていて、目立った列はできていません。やはりレストランが主流なのでしょう。
                   
 上の写真は宜良の学成飯店のテイクアウトの烤鴨を売る店。市場にも小売店はあったが、昆明のレストランほどの人気はない。テイクアウトなら李烤鴨店の方が人気が高い。

 じつは「学成」も宜良を支える出世頭的存在です。
 1980年代後半の改革開放期。宜良の狗街出身の蘭学成が、当初よりアヒルの養殖を手がける「蘭老鴨公司」と食事を提供する「学成飯店」の二本柱で経営を始めました。

 飛躍は1992年。北京の全国家鴨協会展覧会に参加し、最新の北京アヒルの養殖技術を文革以降で、はじめて雲南で導入。

 2007年に経営が安定し、次への飛躍を願って、アヒルの質にこだわり、小型で、脂身がつきにくく、旨みの深い、宜良産の雲南地鶏(滇麻鴨)を使った「烤鴨」を復活させました。このアヒルは生育期間が北京アヒルの2倍の60日かかるわりに小型のアヒルにしかならないというコストがかかるものなのですが、食べれば納得、の味わいなのです。値段は北京アヒルの1・5倍から2倍の値段で売っています。

 こうして「学成」烤鴨店は現在も、雲南の「烤鴨」業界のトップを疾走し続けているのです。

 また、他2店舗、改革開放以来、宜良を牽引し続ける烤鴨店がありますが、これらは、切り方や見せ方を工夫した店。このような名の知れた店だけではなく、白Tシャツのおじさんのお店のような家族経営の店から、新たな技術を開発してチャレンジする店まで、宜良ダックの世界は、今も熱い戦国時代を突き進んでいるのでした。  (つづく)
 
                 
 宜良の市場では、次々と宜良烤鴨の技術革新の店が生まれている。店には、赤い文字で「挑戦 伝統風味」の文字が。新鮮で脂っこくなく、簡単に手で骨と肉がほぐれる「緑色保健」の安全な烤鴨だとアピールしている。一流店では、一匹、ともすると35元するところを、18元、20元で売る、典型的な安売り店だが、品質も一流だと、猛アピールしている。

※いつも、お読みくださり、ありがとうございます。宜良ダックの記事はどうやら、米線以来の奥深い話となりそうです。長くなりますが、夏の暑さにうだりつつ、ビール片手にちょいと息抜きに、お読みくださればと思います。さて、いろいろとありまして、更新を2週間、お休みさせていただきます。ノルウェーで、不気味な爆弾テロが起きましたが、夏の旅行に行かれる方、十分にお気を付けください。

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宜良ダックをさがして④

2011-07-15 10:08:53 | Weblog
写真は、宜良市場にある烤鴨製造・販売のお店。写真を撮ることを快く許可してくれ、説明も丁寧。とても親切なご夫婦の、気持ちの良い店。市場の知り合いも多かった。

【地元の烤鴨店の作業手順】
 午後2時頃、市場がもっとも暇になる時間に奥にある、夫婦連れの烤鴨店をのぞいてみました。烤鴨を焼くお釜を2台持ち、地元の人も「まだ焼けない?」なんて聞いて通り過ぎています。

 そこのご主人は白いTシャツを着て、よく陽に焼けた見た目はごく普通のおじさん。雑作も一見、ラフなのに、その手際の良さに見ほれてしまいました。

 最初にアヒルの毛を剥いて、表面をきれいにしてから、内蔵を尻と腹から取り去り、針金で吊るします。ここまでが第1工程。次に手でしごくようにまんべんなく蜂蜜を塗ってはまた吊し、を何度か繰り返す。最後にドラム缶のような釜の上に蓋のついた密閉式の缶に吊し入れて、練炭で、こんがり、じっくり焼き上げます。こうして出来上がった「烤鴨」からは余分な油が落ち、旨みがぎゅっとつまったダックとなる、というわけです。

 さっそくその店で焼き上げたばかりの「烤鴨」を買い、ホテルで食べました。表面がこんがりと飴色にかがやき、なんとも香ばしい。ただ皮は、以前昆明市内で食べた学成飯店ほどカリカリ感はありませんでした。また肉の下に脂身、内臓を取り去った腹の中にも脂がたまり、手がヌルヌルに。醤油たれと胡椒をつけて食べると美味ですが、日本人には、やや脂分が多いかな、という味でした。
                              (つづく)
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宜良ダックを探して③

2011-07-10 17:37:39 | Weblog
写真は宜良の市場の正面玄関にある、市場でも一番人気の店「李烤鴨」店。「無公害」と呼ばれる一般の育て方よりもは、餌や育て方にこだわったアヒルを使い、焼き上げる前と後には、十分に熱風で乾燥させて、表面をぱりっとさせるなどのこだわりで、夕方の店の前は大通りまで続く長蛇の列ができる。写真は昼下がり。店の裏手から見たところ。戦前のヨーロッパ映画に出てきた月世界へ行くロケットのような堅牢な形の鉄のかたまりが、雲南でもっともポピュラーなアヒルを焼き上げる窯。中に炭をくべて、焼き上げる。

【宜良のアヒル】
 宜良は昆明より東に30キロ、バスで1時間ほど。そこから陽宗海まではほんの10キロです。

 まずは昆明の東はずれのバスターミナルより20分おきにでているバスで宜良市の中心街へと向かいました。さすがに昆明市の大開発も宜良までは、達していないため、道路沿いからはなだらかな丘隆が薄い緑に覆われている様子や畑が見られます。
 宜良の街は想像以上にこぎれいに整えられた田舎町、といったところ。バスターミナルそばにはほんの5年前なら昆明市内の各地に見られた青と白のかまぼこ屋根付きの大きな市場(第一集貿市場)が、当たり前のような風情で大きな構えを見せていました。

 市場に入る通りからして野菜、果物、魚がふんだんにとりそろえられ、パワフルそのもの。なかでも目を引くのがアヒルをこんがりと炙った「烤鴨」売り場でした。米線売り場は1店舗しかないというのに、それは4つもあったのです。

 夕方に長蛇の列ができるほどの一番人気は「李烤鴨」店。昆明でレストラン展開を行う「学成飯店」とは違い、独特の製法で焼き上げたアヒルを家に持ち帰って食べる「中食」ものとして、昆明のカル・フールなどのスーパーでみやげものとしても人気の高い銘柄です。後で詳しく書きますが、「学成飯店」と同様、細かな気配りで、積み上げられた「おいしさ」が、一歩抜きんでているのです。

 このような大手の経営も興味がありますが、まずは標準的な夫婦で「烤鴨」を作り続ける個人の店でじっくり製法を見せてもらうことにしました。宜良には、「烤鴨」で生計を立てる家が100軒はくだらないと言われるので、家族経営の店が山のようにあるのです。  (つづく)
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宜良ダックを探して②

2011-07-03 15:46:30 | Weblog
写真は宜良県の田園風景。畝にはトウモロコシが植わっている。(2010年夏撮影。)

【宜良へ】
 まず、湯池の場所ですがいくら地図を見ても見あたりません。そこで『宜良県志』にあたると、地図名は陽宗海で、あるときは大澤、またあるときは明湖、明の時代の文人の詩には鉄湖となるなど気ままに呼び習わされているということがわかりました。県志の注に「別名、はなはだ多し。」とわざわざ書き込まれているほどです。

 場所は昆明市郊外の滇池と、中国第2の水深を誇る撫仙湖の間で、面積31キロ平方キロの縦長の草履のような形をしています。水深29.7メートルと、おとなりの撫仙湖の157メートルには及ばないものの、ほとんど水たまりのような水深のデン池よりもは、深さもあります。水は雨水と地下水。この水も最後には珠江を通って香港とマカオの間から海へと流れていくこととなります。

 陽宗海の歴史を読むと明の初代皇帝・朱元璋 の指名で雲南を治めていた回族の沐春によりおよそ2万ヘクタール強におよぶ大改修がほどこされたことがわかりました(南京より屯田兵として送られてきた兵1万5000人を動員したとか)。この灌漑のおかげで、以来、2000ヘクタールの良田を潤す重要な一大農作物地帯となったというのです。

 つまり宜良は、水田に放せばエサは豊富にあり、また湖の東北部から温泉がわき出しているため冬でも暖かいという、アヒルを育てやすい環境にあったことがわかります。

 また、陽宗海の横には1910年よりベトナムと昆明を結ぶ「滇越鉄路」が通り、静かな湖面を見ることができます。                      (つづく)
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