雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

宜良ダックをさがして⑱

2011-11-26 15:38:37 | Weblog
写真は前回のアヒル農場の入り口。入り口には黒い精悍な犬。入って横町に入るとすぐに、白くて大きな犬が放し飼いでじっと侵入者を見張っていた。さらにその奥からも犬の声が。よく訓練され、飼い主に忠実な様子から、飼い主のしつけがしっかりと行き届いていることがわかる。

【米、とうもろこし、花の苗とアヒル】
 アヒル農場は98年に家族で創業し、アヒルでは月5000元の稼ぎがあるとのこと。これは都会の下働きほどの給料で、農村部ではわりと高い方です。4畝(約800坪)のアヒル農場と2畝(400坪)ほどの田んぼと畑を持っているとのことでした。主な収穫物は米、とうもろこし、花の苗。アヒルは北京アヒルで一カ月飼育して山向こうの市場の卸しているのだそうです。

山向こうということは陸良?(宜良のような「雲南非物質文化遺産」に登録されているわけではありませんが、陸良も「板鴨」というアヒル料理で有名です) と聞いても地名は分からないとのことでした。

「陽宗海での飼育が禁止されていることは知っている。でもうちとは関係ないよ。」

 とさっぱりとしたものでした。

どう考えても、よい環境で育ったとはいえないアヒル。当然、無公害アヒルのはずもないのですが、わざわざ「無公害」とは名付けずに多く出回っているアヒルは多かれ少なかれ、このような環境で育ったアヒルだと、考えた方がよさそうです。

 民国期に北京の人まで夢中にさせた宜良ダック。あれは一にも二にも、良く運動したのびのび育ったアヒルの肉質にありました。今も、変わらずの味にするポイントはやはりアヒルの品種と育て方にかかっているのだと、しみじみとした気分にさせられました。

 その後で、雲南の観光スポット九郷の巨大鍾乳洞探検へと出かけたのですが、その入り口付近の料理屋で出された「宜良烤鴨」には、ギクリ。あの農場の光景を思い浮かべると一瞬、食べるのをためらいました。でも、やっぱり食べると、美味。聞くと、近所のアヒルで、どうやら放し飼いとのこと。
 以前、市場の家族経営の店で食べた脂っこくしつこい味のアヒルは、ひょっとすると、上記の農場のようなあまりよい環境で育ったアヒルではないのでは、なんとなく、納得。
 雲南に限らず、中国で「烤鴨」を食べる際はできるなら、肉質が指定されたよいものを選ぶ、もしくは相当な田舎の料理屋で食べる、のが、良い味を求めるコツのようです。 (この章おわり)

*長ーくお付き合いくださいましてありがとうございました。ダックの話はひとまず、終えます。
 次回は、以下の発表準備のため、更新はお休みします。

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12月6日には第5回「素朴なエンドウ豆羊羹」を行います。「豌豆粉」の不思議と、世界的に見た歴史、調理方法、雲南の昔の食生活などを詳細に話す予定。ブログの内容よりかなり拡大されております。試食もあります。よろしかったらどうぞ。

時間:午後2時半から4時
場所:エステック情報ビル地下1階 工学院大学孔子学院
電話:03-3340-1457
URL:http://www.kogakuin.ac.jp/cik/より「開講講座(受講案内)」→「文化講座一覧」→「雲南の食を訪ねて」
または「開講講座(受講案内)」にカーソルを持って行くと「講座申し込みフォーム」が出ますので、それに記入するとインターネットからもお申し込みができます。もちろん、上記の電話から予約できます。




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宜良ダックをさがして⑰

2011-11-20 10:46:16 | Weblog
                
写真は宜良のアヒル飼育場。数百匹のアヒルが月齢ごとに詰め込まれている。

【アヒル小屋の中へ】
 アヒル小屋の案内人はおじいさんと二人でアヒル農場を開いている、という、ちょっとボーッとした感じの子です。綱につながれた犬の脇を男の子の指示で抜け、小屋の土間から左に折れると、今度はつながれていない犬が2匹、右側にも少なくとも1匹。いずれも体が大きく、男の子には忠実ですが、かなり迫力があります。彼なしで、小屋に一歩でも入ろうものなら、あっという間にガブッとくることでしょう。

 彼曰く、「農村では普通のこと。番犬だよ。」

 市場では鳩やアヒルなどとともに別の檻に茶や黒の精悍そうな犬を入れて売っていましたが、あれは食べ物ではなかったのだ、と少し納得しました。(雲南でも場所によっては、今でも赤犬を食用にしています。)

 さて、そうやっておそるおそる小屋に入ると、アヒルの羽毛と糞尿のまざった黄色いもやがかかって、むせるような空気。これは体に悪いと、すばやく写真を撮って、小屋を出ました。品種は雲南のものではなく、北京アヒル。短期間に育成でき、肉付きがよくなる品種です。とはいえ、これでは、つまり陸アヒル。かつて陽池で十分に運動させていたアヒルとは、種類も肉質も変わってきます。
エサは何をあげているの? と聞くと、

「ルオポ。(中国語でラクダの意味。)」

の一言。アヒルがラクダを食べるか、とびっくりしたら、トウモロコシや栄養剤などを混ぜた、「ラクダ」という品名の飼料でした。他には水をあげているだけだということ。エサにも運動にも空気にも無頓着な農場です。    (つづく)

*次回、宜良ダックの章は終了の予定です。

写真下は宜良市場の売り犬たち。写真の画角から外れた右横の柵には、精悍そうな赤犬が入れられていた。飼う目的なら、子犬が最適だとは思うが、ここにいるのはすべて成犬ばかり。
                 
      

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宜良ダックをさがして⑯

2011-11-13 16:23:51 | Weblog
写真は宜良の中心街から車で5分ほどの農場にて。「宜良無公害鴨養殖示範戸」と書かれている。
(2010年撮影。)雲南では各自治体ごとに町おこしの中心の作物を決めて、その作物を農業指導通りに行う農家を「示範戸」とし、資金投下することも多い。民営ももちろんある。この看板は民営企業のもの。

【今度こそアヒル農場へ】
というわけで、いまや陽宗海にいっても、アヒルはなし。

「宜良烤鴨になるアヒルがあればいいんだね。それならまかせておけ。」
 と自信たっぷりに自分の車を指す運転手を宜良の街中で見つけました。
すばらしい積極性。よく考えると当たり前かもしれませんが昆明市内ではまったくなかったもの。ようやく「プロ」意識を感じさせる人に会えたと、心の奥底では警戒しつつも、おまかせすることにしました。

 さて、運転手さんは運転しながら、片手で次々と知り合いに携帯電話をかけまくり、宜良市内を抜けて5分とたたないところで停車しました。宜良の中心街はアスファルトとコンクリートに固められていましたが、三分も走ると、道は砂利道となり、やがて田んぼととうもろこし畑にはさまれた、周囲に雑草が生い茂る土の道に。その田んぼのど真ん中に立派な煉瓦造りの建物の棟が四棟、立っていたのです。

 棟の入り口には、
「宜良無公害鴨養殖示範戸/昆明宜良李烤鴨食品有限責任公司」
と書かれた金属製のプレートがやや傷んだ様子ながら刻まれていました。
「李烤鴨」といえば、宜良の市場で一番行列していた有名店です。これはぜひ、取材したい。

 運転手さんは、意外と早く自分の仕事が済んだ、といった達成感に満ちた顔。
私はアヒルを見ようと、その棟の入り口に手を掛けました。だのに押しても引いても締まったまま。大声を出し、戸を叩いても見ましたが、人影すらありません。もしや、と戸の間のうすい隙間に目を近づけると、棚はあるのですが、がらんとした空間があるだけでした。アヒルは一匹もなし。
運転手さんになんとか、周辺の人に状況を聞いてもらうように頼んだのですが、人陰すら見あたりません。

 すぐに運転手さんは携帯電話で矢継ぎ早にまた電話をし始め、サングラスをかけて日焼けした顔を上げると
「ここは、廃業したそうだ。別のところを見つけたから行こう。」

なだらかで青々とした丘の下に落ち着いた小さな農村。その脇から流れ出す生活排水が流れ込む小川にかかった橋をわたると、今度は、さきほどのものとは比べようもないほど、小さくて、みすぼらしい四〇坪ほどの小屋に行き当たりました。宜良県蓬莱村と橋の看板に書かれています。

 入り口には綱につながれた大型の秋田犬の毛のないような感じの犬が、ウーーとうなり声を上げ、こちらをにらんでいます。声からして3匹はいるようです。雲南では狂犬病が常に流行しているので、うかつには近づけません。(地元新聞ではは狂犬病の犬に噛まれたら、傷口を良く泡立てた石けんで洗って、すぐ病院へ、などと、よく特集されています。)

 と、犬の声を聞きつけて、ビーチサンダルに迷彩服のTシャツと半ズボンを着た高校一年ぐらいの丸刈りの男の子が出てきました。運転手さんが用件を伝えると、
 「アヒル? いっぱいいるよ。見たいならどうぞ。」とあっさり見学を了承してくれました。
(つづく)

※先週は工学院大学孔子学院の講座「宜良ダック」を無事、終えました。おいでくださった方、ありがとうございました。
12月6日には第5回「素朴なエンドウ豆羊羹」を行います。「豌豆粉」の不思議と、世界的に見た歴史、調理方法などを詳細に話す予定。ブログの内容よりかなり拡大されております。試食もあります。よろしかったらどうぞ。

時間:午後2時半から4時
場所:エステック情報ビル地下1階 工学院大学孔子学院
電話:03-3340-1457
URL:http://www.kogakuin.ac.jp/cik/より「開講講座(受講案内)」→「文化講座一覧」→「雲南の食を訪ねて」
または「開講講座(受講案内)」にカーソルを持って行くと「講座申し込みフォーム」が出ますので、それに記入するとインターネットからもお申し込みができます。もちろん、上記の電話から予約できます。

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宜良ダックをさがして⑮日本のバイオトイレ

2011-11-06 12:28:19 | Weblog
写真は昆明の海硬公園内に設置されている環境を考えたトイレ「緑色トイレ」。昆明市環境科学研究所、日本の筑波大学、北京大学環境学院、滇池国家旅遊度暇区管理委員会、中国水利水電科学院の共同で設置されたバイオで有機物を分解する仕組みのトイレである。もっと低予算で同様の仕組みのスイス製のトイレは周辺の農村部でも設置されている。

【アヒルの避難が優先事項に】
 日本でも中国関連では、だいたい中国の環境汚染もここに極まれり、という状況が報道されていますが、中国3大汚染湖の滇池だけでなく、その近くの陽宗海にも、開発の結果、さまざまな悪影響がでてきました。

 目に見えて一番大きかったのが、化学肥料工場の煙によって雲南特産の煙草の葉が黒ずみ、お金にならなくなったことです。

 またヒ素汚染の根源は、とくに燐酸肥料製造工場のフッ素除去用の排煙装置を洗浄した廃水に含まれるヒ素が、静かに池を汚染していったことがわかりました。(同様の問題はアメリカフロリダ州ポーク郡でも起こっています。参考http://members.jcom.home.ne.jp/emura/newpage9.arsenic.htm)
もはやアヒルの汚染など、たいしたことではない。むしろ、アヒルを避難させる必要が出て、現在ではアヒルも住まない池となったのです。

 ちなみに2009年6月よりアヒルの養殖業の取り締まりとともに、水辺の草や700畝の樹木の緑化を観光局は演出。そのおかげなのか昨年には4類と呼ばれる水質にまで改善し、今年5月の検査では3類にまで改善したということです。(2011年5月3日、春城晩報)

 水質は努力すれば改善する。少し勇気づけられます。日本の水系も数十年前と今とでは、大きな改善が見られます。

 この日本の技術が雲南ではだいぶ、活用されています。

 たとえば滇池の畔、海硬公園には、筑波大学チームが提供、助言したというバイオトイレ(緑色トイレ)という、じつに名前を聞くだけですがすがしい気持ちになるようなきれいなトイレが設置されています。そのトイレ1個だけでは、どうにもならないとしても、他に下水処理施設の分野などでも日本は縁の下の力持ちのような仕事を請け負っていることもあり(スイスなどに敗れることもありますが)、見かけるとうれしくなります。

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