雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の月餅2 蛋黃(鹹蛋)月餅

2017-10-29 10:36:57 | Weblog
写真は滇池のほとりにあるかつて多くの文人墨客が月を詠んだ「大観楼」公園の中秋節の夜。この日は夜でも特別のお祭りが開かれ、多くの人が風流なぼんぼりを持って月を目指して集まってくる。

【有名なしょっぱい月餅】
 もう一つ、しょっぱい月餅に「蛋黃(鹹蛋)月餅」があります。蓮の実などでできた甘い餡の中に塩漬けにされたアヒルの黄身が包まれています。

 この塩漬けアヒルの卵は、中国では朝食などのおかゆのお供、日本の梅干しのような位置にあり、身近な存在です。おそらく、卵を塩漬けすることで日持ちし、さらに黄色いまんまるの黄身が満月を思い起こさせて、中秋にぴったりだというところが由来なのでしょう。

 しかも、生卵を濃い塩にすっかり漬けて、しょっぱくしたもののを取り出して、黄身だけ取り出し、さらに黄身をオーブンなどで焼くという手間がかかっています。

 さて、最初に嚼むと「ああ、上品な甘さ」と蓮の実の餡に感動し、そこからさらに食べ進めると、ぎょっとするほどしょっぱいものが口にはいってくる、しかも固まった卵の黄身なので、口中の水分を持って行かれてしまいます。

 もちろん、そういうものだと分かって食べればなんの問題もないし、すきな人は大好きなものなのですが、甘いだけだと思っていると結構、びっくりする体験となるでしょうからお気をつけください。

 この蛋黄月餅は雲南独自のものではなく広東由来のものです。日本の中華街などで秋には売られています。中秋節は過ぎてしまいましたが、月のきれいな日には、試してきてはいかがでしょう。

 日本では月餅は中国のケーキというようなお茶うけの甘い食べ物のイメージが強いのですが、中国ではしっかりとおなかに入れる高級な栄養食といえるでしょう。だから甘いだけではなく、びっくりするほどしょっぱかったり、甘さとしょっぱさのいずれもが同居する、不思議な世界を生み出しているのでしょう。
                   (この章おわり)

※週末、もはや恒例ともいえる雨、雨、雨。月どころか災害、作物の心配をしなければならない日々となっています。こんなときこそ、おいしい食べ物に思いをはせ、丸い心でふんわりとなりたいです。

※前回、ご紹介した『さくらそうアラカルト』アマゾン、で購入可能となりました。東京・神保町の三省堂書店にも店頭に並びました(園芸書コーナー)。これから他の地域にもどんどん並びますので、見てやってください。
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雲南の月餅1

2017-10-22 11:50:22 | Weblog
写真は雲南ハムの入った月餅「雲腿月餅」。雲南では王道といえるほど人気がある。

【慣れないと・・・】
うっとおしい天候が続いているので(被害が出ませんように!)、ここらでさわやかな秋の話題に。

 秋といえば中秋の名月。日本では中秋の名月は新聞やテレビで「今日は中秋の名月です」と触れられる程度だが、月の満ち欠けで暦を作る農暦(旧暦)を大切にする中国、韓国、その他のアジア諸国では、お祝いのために国挙げての大型連休や行事が盛大に行われていました。

 さらに韓国ではハングルの日というハングル文字が制定された日とも重なり、日本のBSニュースで韓国のニュース番組が流れていたのですが、なんとニュースキャスターが、韓流ドラマでもやっているのか、と思うような両班の格好をして、黒い、伝統帽子をかぶって丹精な顔立ちで神妙に日々のニュースを伝えているのを見たときには、何事が起きたのかと腰を抜かしたのですが、要は中秋の名月とハングルの日だから、というシンプルな理由だったのでした。日本だったら、羽織袴でニュースを読むことになるのでしょうか?

 さて、そんな日に中国でかかせないのが月餅です。なかに餡が入って周りを卵、小麦粉、油ベースの生地で包んだ円筒形や花型をした甘いお菓子。

 中国の50年ほど前の小説、老舎の「月餅」には、お姑さんがお嫁さんに立派な子どもを産んで欲しいと、人の頭ほどに過剰に大きな月餅を日々、食べさせ続ける話もあり、庶民には栄養豊富で、とびきりの時にしか食べられないお菓子として定着しています。

 当然、雲南でも中秋節の近くになると、月餅が売られるようになりますが、特徴的なのが餡。中国全土でオーソドックスな、小豆やクルミなどの豆から作った黒あん、白あんなどの甘めのものがずらりと主流を占めるなか、果物の甘露煮やコンポートを入れたもの(いちご大福より、若干、日持ちするかたちのもの)や、ぎょっとするしょっぱさの餡が意外と人気を博しているのです。

 このしょっぱい餡は、雲南特製の「宣威ハム」かそれに近いハムなのです。

 月餅は甘い物と思いこんで、お茶を入れておもむろに口に入れたときのしょっぱさには、本当にたじろぎました。しかも独特の発酵臭。

 娘のいた幼稚園でも中秋節前後のおやつに出されたとのことで、果物月餅はまあ、よかったものの、このハム月餅は塩がガリッとする感じで、今でも厳しい思い出の一つとなっているようです。
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『さくらそうアラカルト』出版のおしらせ

2017-10-09 10:37:59 | Weblog

このたび、共著で桜草の本を出版することとなりました。

雲南の桜草にも一章、割いております。

じつは雲南は日本の桜草と同じプリムラ属が世界で一番、集中している場所なのです。

しかも、現在、日本で「西洋桜草」の名前で売られている品種の多くは、雲南省や四川省で19世紀から20世紀初頭にかけて西洋からきたプラントハンターが生命をかけて採取したものを、育てやすいように栽培種化したものなのです。

ほか、日本原産の桜草の栽培法、鑑賞法、さらにその栽培の歴史、未来への提言まで、わかりやすく、ビジュアル化してつくりました。大学ノートと同じサイズですので、本を片手に栽培に簡単に取り組むことができます。

現在、アマゾンサイトから、予約できます。
「さくらそうアラカルト」と入れていただくと、桜草の写真が入った桃色表紙の
さくらそうアラカルト SAKURASO A LA CARTE 江戸園芸への誘い」
という本が出てきますので、ぜひ、詳細、お確かめください。

発売は10月中旬ごろ。配布書店が決まりましたら、また、お知らせいたします。
どうぞ、よろしくお願いします。(今後、ちょくちょく、この本について取り上げていきます。おもしろ、裏話なども入れて行くつもりですので、お楽しみください!)

※来週の更新はお休みします。いつまでも暑いときは容赦なく、そして寒くなると10度以上、低くなる、体調管理の難しい日が続いております。温かい飲み物を飲んで、ゆったり、できるだけ過ごせるといいですね。
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丹増あらわる⑤ 「書記」と「副書記」の大きな溝

2017-10-01 11:33:48 | Weblog
写真は「胡蝶の夢」の一場面。とにかく、すべてが派手な印象。ほんとうは悲恋の話なのだが、それを忘れるほどの迫力だった。

【「胡蝶の夢」復活へ】
 これらの少数民族のなんらかを絡めたエレクトリック舞台は、たいていは2005年からリーマンショックの時期までが華々しく、その後、観光客の減少に従って舞台はおわりを迎えていきました。

 ただ、かつて外国人が多く訪れた舞台に近年はお金を持った中国人が詰めかけるようになり、2016年12月から「胡蝶之夢」などはさらにパワーアップして復活しています。

 私もこれらの多くを見ましたが、いずれも少数民族の踊りに、派手な音響とレーザー光線のような目が痛くなるほどの光の演出、少数のプロと地元で訓練を積んだ演者がアクロバティックな演技と踊りを披露する、といった内容でした。

 昆明の「雲南印象」は元祖だけにオリジナルティーあふれるヤン・リーピンの深い思想性に基づく舞台で見応えがありましたが、他の舞台は北京などの国家が指定した雲南とは縁もゆかりもない国家特級演出家などの肩書きを持つ一流演出家による舞台で、なんとなく2つ見ると、あとは同じように思えてしまったのでした。

 ともあれ、これらの実績によって丹増は2007年1月には雲南省人大常任委員会副主任、さらに同12月には15回中央委員候補委員に選ばれました。彼は新聞記者であり、1970年代には作家活動もしていたため、1982年から中国作家協会に加入。中国作家協会副主席、2011年には中国文連第9回全体委員会副主席にもなりました。

 結局のところ、少数民族のチベット族出身の副書記・丹増は雲南の一般民受けは抜群でした。けれどもマスコミ受けを狙ったパフォーマンスをしているうちに、中国沿海地区に巨大な「チャイナ・ハリウッド」という看板を掲げる横店などに映画基地の拠点を奪われ、さらに一流監督がのぞむ「雲南本来の民族性や景色」も色あせるままにまかせるだけで、彼の政治生命は頂点に立つことなく、おわりを迎えました。
 
 丹増より以前に活躍した雲南省の少数民族・納西族出身にして雲南省党副書記となった和志強も雲南省人民政府省長も兼任し、さらに中共第十三届中央候補委員、第十四届中央委員,第九届全国政協常務委員会委員にもなっています。

 彼らの経歴を注意深くみると「候補委員」や「政治協商会議の常務委員会委員」といった、中央の政治の中枢に直接的に働きかけるというより、その手前で理想を語る部署である点が注目されます。また「副」という役職がほとんどです。

 雲南市民に人気のある少数民族出身の彼らは市民の不満のガス抜きだったのかもしれません。

 今のところ雲南出身+少数民族出身で書記になったものはいないのが現状。「書記」と「副書記」の間には計り知れない大きな段差があるのです。

 書記は中央から命令された官僚、地元の声はあくまでも「副」としての参考であり、ガス抜き、というのが雲南の、つまりは中国の現実だったのです。
(この章おわり)

※長く続いた雲南の書記と副書記の話はこれで終わります。長らくお読みくださり、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします。
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