雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南のハチミツ⑭ ニセものの見かけ方と天麻ハチミツ

2015-04-25 19:58:26 | Weblog

写真は雲南の市場で売られている雲南産のじゃがいも。土が赤いので見た目は赤いが、洗うと黄色に。これが天麻を乾燥させていない状態と似ているのだそうだ。

【ニセ・ハチミツ】
最後に中国では避けられない問題、偽物の見分け方。

一番、手間をかけていないニセ・ハチミツは水飴に着色したものです。

また昨年、大きく報道されたものでは、とうもろこしやお米でデンプンを出した後(とろとろに煮るなど。)、ブドウ糖と色素、防腐剤、白砂糖を添加して作るもの。
 これは500グラム1元でできるそうです。一般のハチミツが500グラム15元以上なので元手は15分の1。ハチミツという名前を付けずに、へんな添加物を入れなければ金沢の(2014年5月15日鞍山日報より)

【天麻ハチミツ】
ところで今シリーズの写真で触れた天麻。ヤハシの自生地と重なる場所で採取される漢方薬ですが、香港では「天麻ハチミツ」が売られています。これは天麻の花の蜜ではありません。天麻はキノコのように菌なのでミツが出るような花は咲かないのです。かといってニセモノ、でもありません。天麻をハチミツにつけ込んで、飲みやすくしたものです。
せっかくなのでここで、この雲南の特産品の天麻についても触れておきましょう。
『天麻 雲南名特薬材 鑑別与服用叢書』(呉応華 曹雲霞ら編著 雲南科学技術出版社、2012年)という、天麻を扱う人向けの実用的な書物を見つけました。この本には天麻が何科に属するのかという基礎的な植物学的知識はまったく触れられておらず、代わりに栽培法と、その薬効、調理法、そして一番ページを割いて写真付きで丁寧に解説されていたのがニセモノの見分け方でした。
そのニセモノが、吹き出したくなるほど、似て非なるものばかり。
トップにあげられているのが、メークイン系のジャガイモ。それも長っぽそくて、新鮮なものがたいへん似ている、と書かれています。
里芋は、温水につけると粘りけが出るので違いがわかる、とか。意外なのが、オシロイバナ。日本では夏にピンクのかわいらしい花を咲かせる植物ですが、これもじつは根茎で芋状になっています。これは毒性があり、のどを刺す感じがあるので、わかる、とか。
ほかにダリアの根、正月料理で見るクワイ、漢方薬としては別の薬効があるけど天麻より安価な大九股牛、黄精(中国自生のユリの根茎)など。
そもそも天麻はユリ科の根茎です。でも根茎ならなんでもありのオンパレードは、それだけ、高価なわりに、目利きが難しいことがわかります。

ハチミツにしても高級漢方にしても中国では、信用のおける店で買うしか、自衛策はなさそうです。             (この章終わり)

※来週の更新はお休みとなります。次回より新章スタート。お楽しみに。
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雲南のハチミツ⑬ スズメバチ ハチミツ?

2015-04-19 10:54:39 | Weblog
写真は、成虫に孵化したてのスズメバチ。(2004年秋、 文山の市場にて撮影。)
日本では、白い芋虫の姿をした蜂の子のみを食べるが、雲南では成虫も食べる。形からすると孵化したてのように見えるが、食堂によっては完全にピンと羽の生えた精悍そうなスズメバチも炒め物になって皿に乗っていた。

日本から雲南によく通っていた研究者は、我々をその食堂に案内し、さらにオーダーもすべてしてくれ、私たちはおそるおそるもベテランの彼が頼んだのだから、と安心して食べた。
 私たちが食べ終わった後、
「大丈夫ですか? おいしかったですか? 私はいままで食べたことはありません。」
と衝撃の告白。
一同、静けさに包まれたことはいうまでもない。ちなみに地元ではごちそう。

【雲南、だからスズメバチの怪】
このような状況なので、中国のネットを見ると、いろいろと誤解も生じています。

おじいさんが養蜂家で、小さい頃にその手伝いをしていたという中国の「singo」さんは、かなり正確で突っ込んだ養蜂業の現実と模倣の解説をした最後に、
「雲南の『野生土蜂蜜』はスズメバチのミツだから、毒があるので気をつけるように」
とアドバイス(http://www.douban.com/group/topic/40592431)。

中国では野生の「土」蜂蜜、つまり地元のミツバチが集めたミツを、養蜂業者が育てて増やしたミツバチが採取したものより、一段高い値段で売買しているのですが、その雲南のものはスズメバチだ、というのです。

これはあまりに短絡的。中国の上海や北京など中原地域の大都市に住む人にとっては、虫、しかもスズメバチを食べる、というのは、衝撃的なので、雲南の風習をまず、奇異に感じていることが前提にあるのでしょう。でもスズメバチは花のミツは採取しないので、あり得ないのです。このネットを見た方は、きっと雲南のハチミツは避けるようになるでしょう。

このように雲南のハチミツは特殊なハチミツとして、中国でも語られることがありますが、ハチミツで有名なところとしては生産量では、浙江省、四川省、湖北省が三大生産地です。

また、作物の受粉にミツバチが活躍しているものとして有名なのが内蒙古のひまわり、福建の茘枝、竜眼、ほかアブラナ、綿花、イチゴ、リンゴがあります。

参考文献:張复興、陳黎紅「中国養蜂産業の現状」『ミツバチ科学』24(Ⅰ)(玉川大学、2003年)

(つづく)

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雲南のハチミツ⑫  ハチを食べる

2015-04-12 09:46:32 | Weblog

写真上からスズメバチの炒め物(蜂の子+成虫)、写真下は料理屋の店先に置かれていたスズメバチの巣。いずれもすべて食用(写真上は2004年10月、文山にて撮影、写真下は2010年昆明にて撮影)

【国家戦略のハチミツ増産】
ヤハシという雲南に自生する植物が1970年代から、ずいぶんと注目されていたことがわかりました。でも、食料不足だった当時の中国で主食にはとうていならないのに、なぜ研究をすすめようとしていたのかというと。

じつはハチミツの研究と増産は国家規模の戦略だったのです。
養蜂はなんといっても穀物飼料と土地を使わずに、経済価値を生み出します。農家の副業として推奨すれば、打ち出の小槌になると考えたのです。

こうして徐々に生産量は拡大し、改革開放が始まりつつあった1986年にはハチミツの総生産量は17万2000トンで世界2位に。2002年にはハチミツ20万トン、ローヤルゼリー2000トン以上、花粉3000トン以上、プロポリス300トン以上で、いずれも世界1位となりました。
(中国、アメリカ、アルゼンチンが世界3大生産国。それにトルコ、スペイン、ブラジル、カナダなどが猛追する)とくにローヤルゼリーは世界シェアの95%以上を占めています。

海外では残留農薬問題でたびたび禁輸措置を受け、そのたびに改善策がなされる、水分が多い、などの品質面の問題はありますが、ハチミツが強力な輸出向け商品であることは間違いありません。

【ハチを食べ、蜂の子を食べ】
実際のところ、外資の入ったスーパーや直売店はともかく、雲南の市場ではハチミツは売られておらず、見かけるのは、ハチと生きた蜂の子と巣でした。いわずもがなですがスズメバチです。

ハチの食用は雲南では本当に一般的で、ちょっと田舎の食堂に行けばたいていオーダーできました。(昆明の外れ、文山など)

頼むと、ハシで蜂の子を一つ一つ丁寧にほじって、さらに成虫のスズメバチも大事な食材として、さっと油と唐辛子などで炒めて出してくれます。

蜂の子はとろりと濃厚。ハチも食べられるというのですが、かつて道ばたに落ちていたスズメバチを見つけて箱に入れて宝物にしていたら、父から、死んでも毒があるから気をつけろ、と注意された記憶があり、手を付けずじまいでした。

日本も信州などで蜂の子を食べる風習があるのは知っていますが、日本でも成虫になったハチも食べているのでしょうか?

一緒に皿を囲んだ人がいうには「エビの唐揚げみたい」とのことでした。

とくにその後、その人が毒に当たった様子もないので、
成虫のスズメバチも雲南では食べても大丈夫なようです。
(つづく)

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雲南のハチミツ⑪ 天麻とともに

2015-04-05 10:53:05 | Weblog
写真は漢方薬の「天麻」。(2008年撮影)。めまいや神経を静めたり(メニエール病など)、冷え性を治す薬として処方される。蘭科オニノヤガラ(鬼の矢柄)の根茎を蒸して乾燥させたもの。
写真は雲南の老舗デパートで売られていたもの。「第一級野冬麻」とラベルに書かれている。意味は最高級品の野生で冬に採れた天麻。天麻は冬から春にかけて採取でき、とくに春の方が採取量は増えるが、冬に採れたもののほうが薬効は高いといわれる。四川、陝西省などでも採取されるが雲南産が最高とされ、なかでも麗江や昭通産のものがより上質なものとして取引されている。これはヤハシの産地ともぴったり重なる。

【低成長児の助けに】
人間はカルシウムだけではカルシウムを体内に取り込みにくいことはよく知られていますが、ここでストロンチウムを摂取すればぐんと取り込みやすくなるそうです。とくに胎児や新生児にはよく吸収されます。マグネシウムも同時にとるとより、吸収率が高まるそうです。
そのため母親にストロンチウムが不足すると、歯が十分に育たないう歯になりやすく、骨の成長にも関連があるのでは、と言われています。胆嚢炎のある人はストロンチウムの吸収がうまくできず、その子供は、う歯になる率が高くなるそうです。これ、我が家にぴったりと当てはまります。ストロンチウム、いままで知らなかったのですが、重要なのだなあと。

ちょっと脱線しましたが、ヤハシはさまざまな微量元素が豊富な植物で、おそらく蜜も例外ではない、とはいえるでしょう。
我が家は雲南では楚雄州で採取された百花蜜もよく食べていたのですが、この蜜の風味がやたらと漢方臭かったのも、特殊な土壌環境にあったためでしょう。なかでもヤハシは冬場のみに咲く花。百花蜜とはならず、ヤハシを主に蜜をあつめるのは簡単です。ちなみに娘は今でも雲南のハチミツを至高の味と認識しています。三つ子の魂とはすごいものです。

ちなみに今までも取り上げたように雲南は漢方薬の一大産地です。かつて取り上げた三七(田七)や冬虫夏草など様々。
ヒマラヤ山系の大地殻変動で地底から盛り上がった土壌からは様々な鉱物が容易に採掘できます。明清時期から塩や銅、銀、スズの産地としても栄えた地なのです。ここで育つ植物には、ほかでは見られない薬効成分がふくまれていても不思議ではないでしょう。もちろん、日本人としては食べ慣れない物質も多量に含まれているわけですから、過剰摂取は禁物、と考えます。
それにしても雲南省は文革前から省の稼ぎ頭にヤハシ蜜に目を付けている割にはちゃんとした成分分析が発表されていないのは、気になるところです。

参考文献
キャプション
天麻に関してはHONTONANO(http://hontonano.jp/hienai/500nDrugs_078.html)ほか。東京大学付属日光植物園(http://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/nikko-old/5_jokyo/today's_flowers/2010_Jul_1st.html)に天麻がある。光合成を行わず、真菌に寄生して生える様は、異様だ。

本文
(2) 吉垣茂、中村純、内田治、永島俊夫、安藤達彦「各種ハチミツの微量元素分析による採蜜年度の判定」『日本健康医学会雑誌』(第22巻2号、2012年、日本健康医学会)
(3) 張鴿、胥保華「蜜蜂的鉱物質栄養」『動物栄養学報』(2012年第24巻11月号、中国畜牧獣医学会;動物営養学分会主編)
                                               (つづく)
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