雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

素朴な副菜・豌豆粉(ワントウフェン)③

2011-05-29 15:54:02 | Weblog
写真は呈貢県のエンドウ豆畑。(2003年10月撮影。)

【雲南豌豆粉の故郷へ】
 3月に中断した豌豆粉の話の続きです。(一時、中断していたのもの再開です。)

 エンドウ豆にはスナップエンドウなどで莢ごと食べられる軟莢種と、完熟大豆のように硬くなったものを食べる硬莢種があるという話をしました。硬莢種にはインドカレーに入っているレンズ豆や、和菓子の豆かんの豆などの品種です。

 この硬い莢を持つ、完熟エンドウ豆の産地となっているのが、昆明・デン池の南東部にして、中国第2の水深を誇る撫仙湖の北部にあたる畑作地帯です。この辺りはレンコンの特産地として知られる澄江や花卉栽培などで知られる呈貢県があります。2つの湖のある豊かな土壌に支えられたこの辺一帯は、品質の優れたエンドウ豆の産地でもあるのです。

 なかでも呈貢県は豌豆粉の代名詞として、以前から昆明の市場でよく見かけていました。そこで昨夏は、この辺りに碗豆粉の工場があるのでは、とねらいを付けて、おもに地元の旅行社経由で下調べをしたのですが「聞いたこともありません。」と相変わらず、打開策なし。タクシーの運転手も、当然ながら「ない」の一言で、しかも、呈貢県は昆明市の広がりに合わせて、大地をひっくり返すような一大都市開発プロジェクトが展開されていて、交通事情もままならず、とうとう残念ながらたどり着くことはできませんでした。

 ただ、鉄道路線にある呈貢駅の建物内には「豌豆粉城」なるものがあって、特産のそれを食べさせてくれるのだそう。(昆明の中心部にも豌豆粉を武器にチェーン展開中。)
ただ雲南の人は大好きでも、雲南から外にチェーン展開するには、味が豆そのものの素朴さに、今や舌の現代化した人々にはどこまで受け入れられるのか、難しい挑戦が待ち受けているような予感はします。           (つづく)

*マカオ編、未消化との声もいただきましたが、普通の雲南の食のブログへいよいよ戻してまいります。 今後、せめて貴重な電力を使うのだがら、(おこがましいですが)読んだ人の心がおもしろいと思うブログにしたいです。
(当ブログの内容の無断転載を禁じます。必ずメールでご連絡ください。)
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マカオの白いこうもり傘②・あこがれのタンター

2011-05-22 14:24:31 | Weblog
                                                
上はマカオ・アンドリューのエッグタルト店のタンター(蛋撻)。下はそのお店の本店。
               
【クロツラヘラサギも】
 マカオの海に浮かぶ2つの小島。この一郭に、かつてポルトガル人が作り上げた旧い街があるのですが、いまやその二つの島の間の海を埋め立てて、一大賭博場を拡大し、最終的には一つの島にしよう、という大工事の真っ最中。やがては中国本土にまで小島をつなげる計画なのだそうです。

 その埋め立て地帯には、世界有数のどでかさ感のあるホテル群を建造中で、私の泊まったホテルもここ。(日本からはホテル・オークラが参戦し、今年末に開業予定だとか。やたらに金ぴかの外観でした。)そこからちょっと外れたところにある、「さぎ山」は、すぐそばに昔からある美しいポルトガル館が建っているところから、もとからある湿地らしい。つまりそこは偶然にも埋め立て地との微妙な境界だったのです。

 調べてみると、世界でおよそ2000羽しかいない貴重な渡り鳥・クロツラヘラサギの越冬地としても知られているそうで、本格的な保護の必要をマカオ政庁も感じてささやかに金網を張り巡らせたようです。(日本にもある環境保護団体「バードライフ・アジア」が2007年にこの問題で助言をしたそうです。)

【本場のタンターを食べる!】
地元のマカオの人はポルトガルの遺風もあるのでしょう、じつに親切で、紳士的。ちょっと道を尋ねると、本当に親切に案内してくれます。夕暮れは旧市街でコーヒーを飲んでまったり、というのがはまりそうな街でもあります。ただ、この開発ぶりですから、外部からきた人々がもたらす雰囲気などで、街が大きく変貌しているのも事実。

 そんな中、雲南で大好物だった、カスタードをパイ生地のお皿にのせたタンター(エッグタルトのこと。)をいただいました。マカオが発祥で、マカオに行ったお目当てもこれ。

 タンターはカスタードのとろけるようなフルフル感と外皮のパイ生地のさっくり感との対比が、味のハーモニーとなっているのですが、雲南で最も通い詰めた「嘉華餅屋」のタンターより卵とバターが多く、風味が高い仕上がりでした。雲南のものはミルク多めのプリン風であっさりとしています。値段は雲南の2倍。おいしさは1・5倍、といった感じを受けました! 

 現在、マカオで人気のタンター店・アンドリューのエッグタルト店は、日本にも進出していて大阪・道頓堀を中心に神戸などに5店舗を構えています。1998年からマカオ・香港・台湾で突如巻き起こった、人呼んで「タンター大戦」につばぜり合いの末、勝ち残った、というわけです。

 ちなみに昆明一のタンターの店「嘉華餅屋」の成立は1988年。現在、80店舗を構え、小麦粉を使ったパン類からピッツア、ケーキ、月餅など幅広く品揃え。バット一杯に焼き上がったタンターが、ホカホカのまま店に出されると、ものの数分で焼きたての品が売り切れてしまうので、私ものんびりとした雲南では珍しく、真剣勝負の連続でした。(地元の人に負けじと、静かにお金を持って手を伸ばし、眼光を煌めかせて店の人に気づいてもらい、タンターをゲットする。あまり、お客さんも声を出さないので、この方法がなじむのです)

 またマカオでは地元の人で賑わうメンの店(メンは米線の乾めんや、ハルサメ、サトイモのハルサメ・小麦粉メンなど各種あり。高菜の漬け物のすっぱさが絶妙さアクセントとなったスープで、何杯でもいただけます)や、できたてのバケット店など、旧市街の裏通りではしっかりと、おいしいお味が息づいていました。おいしいものは交通不便な裏通りに集中しているようです。こちらもさぎたちのように、とぼけたたくましさで生き抜いてほしいものです。
   (この章・おわり。次回は震災で中断していた「碗豆粉」のつづきです。)
                
        マカオで食べたフライドチキンのせ米線。
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脱線編・マカオの白いコウモリ傘

2011-05-15 16:49:44 | Weblog
         
         
写真上は、香港半島から香港島をのぞんだところ。ちょうど「光のショー」見物のための観光ジャンク船が通りすぎた。
写真下はマカオのタイパ島とコロアン島の埋め立て地に立つ巨大カジノホテル施設からもれる光を自然保護区からのぞんだところ。
【香港・マカオの「光汚染」】
 香港は、現地用語で「光汚染」と呼ばれるほどの、夜空が照り輝く電力都市。鹿鳴春で1時間でもディナーが楽しめたのは、8時に終わる「光のショー」のおかげでした。なんと毎晩、香港島の北側全体が、大音響の音楽に合わせて、ビカビカとレーザー光線を放ち、ビルの照明をリズミカルに点灯させているのです。観光客は対岸から無料でこの華やかな光景を楽しむ、という寸法。つまり鹿鳴春の予約客は、ショーの後、ゆっくり夕食を、という人達でした。

 さてマカオの夜も負けてはいません。夜の空は本当に明るい。
ラスベガス仕込みの広大なホテルに泊まったのですが、迷うと客室までたどりつくのにさらに30分はかかる、というたいへんなところでした。
 
 カジノは24時間営業。シルク・ド・ソレイユも毎晩。ミネラルウオーターは飲み放題。辻立ちのマジックショーをただで見ることも可能。それはそれですごいものでした。ただ雰囲気は(関東の方はイメージできるでしょうか?)世界最大級のイオンモール・越谷レイクタウンや船橋のららぽーとにそっくり。なんとなく清潔で自然がなく、安っぽい。宿泊客は、中国本土からの家族連れが多かったので、安心、が重要なキーワードなのかもしれません。

 ちなみにこの3月、マカオの賭博収入が過去最高を記録したそうです。いまやデフレの国・日本の方が、よいものがより安く買え、一方、インフレの国・中国から来る人々は香港やマカオの方が安いとのことで、見事な消費っぷりでした。

 また日本の新聞によるとマカオからおよそ90キロの広東省深セン市龍崗区に、来月、同地で4基目の原発が新規に稼働するそうです。これは中国では14基目。2015年までには37基に増加する予定なのだとか。福島原発で苦しむ日本を凝視しつつも、中国は日本より安全だと言いはって計画の変更は一切なし。どんな根拠があるのか、知りたいものです。

【さぎ山、発見】
 さて、そのホテル街から歩くこと15分ばかりの湿地に唐突に金網が張り巡らされた自然保護区がありました。中は東京ドーム2個分以上の広さの窪地です。

 ほこりっぽさと喧噪にささくれた気分で、車のビュンビュン通るアスファルトの道からなにげなく目をやる。と、黒い目をぼーっと見開いたとぼけた顔のシラサギたちが、深緑の森の上に、まるでいたずらで突き立てた白いこうもり傘のような風情で、ニョキニョキと生えているかのように存在していました。数百匹はいそうです。

 バードウオッチングの世界では、このような営巣地を「さぎ山」というのだそうです。車の排ガスや土煙、光害のど真ん中に、この不思議な光景。ほっとしました。 (つづく)
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ますます脱線・笑いと食の都・香港

2011-05-08 11:11:39 | Weblog
              
写真は香港・鹿鳴春の北京ダックを切り分けるシェフ。バックの人の動きが速すぎて、写真に撮ると、みな、お化けのように残像化されてしまう。

今回は長いので、目が疲れない程度にお読みください。

【さすらいの鹿鳴春】
 北京では「北京ダック」、天津では自称「天津ダック」、雲南では宜良の「北京ダック」を味わっていたので、やはりここは、香港でも、と香港の北京ダックの店「鹿鳴春」に向かいました。

 場所は、あくまで目抜き通り(の終わりの方)にあるのですが、やはり予想通り、どこから入ったらいいのか分からない、ごちゃごちゃとした雑貨屋さんの狭い階段を登った2階でした。
 あまり中国に行ったことのない、母も同行したのですが「こんなところにお店があるの?」といぶかること、いぶかること。
(中国の、とくに地方にいくと、地元の名士のアテンドによる、おいしいお店というのは、一見さんでは、絶対見抜けないような、納屋を通った先、などといった不思議な場所にあります。まさに隠れた名店。というか隠れてなければ、名店とはいわない、といわんばかり。かの小平が上海に行くと通っていたという中国式マッサージにひょんなビジネスのつながりで行った知人も「どの場所にあったか、一度、行っただけでは、わからん」と行っていました。税法の関係などでもあるのでしょうか。謎です。)
 
 さて、店に入ろうとすると、入り口のウェイターに「予約は?」と聞かれ、していないと答えると、大げさに首を下に向けて、横に何度も振り、ため息までつかれる始末。
妙におおげさです。
 さて、日本ではここで断られて終わるのですが、粘るとたいてい道が開けるのが中国。しばらく様子を見ていると、
「1時間で食べ終われるか?」と聞かれ、うなずくと、予約席の札を外して、すばやく円卓が用意されました。
 店員4人がかりで流れるようなスピードで、メニューが用意され、こちらもとにかく急がなくては、と、ビールと茶、それに「北京ダックコース」一人あたりにすると1000円弱のものを注文しました。
 その次の瞬間にはコップにはビールが、茶碗にはジャスミンティーがなみなみと注がれてゆきます。ともかく数人のウェイターがぎっしりつまった円卓の間を縫うように、踊るような足取りで回遊しては、飲み干すと、すばやく次を注ぐ、という調子でまったく落ち着くことができません。ベテラン店員に囲まれるというのも、ものすごい威圧感です。雰囲気だけで手のひらが汗ばむような緊張感におそわれます。

【自由すぎる!】
 さて、落ち着く暇もなく、すごいスピードで取り皿が並び、おつまみ(キャベツの甘酢漬け、ピーナツの塩まぶし・くせになるほどのおいしさ)、フカヒレスープ、くらげ、ハムなどの冷菜、青菜のニンニク炒め、エビチリなどが次々と現れました。
 いずれも最高の「塩梅」で、スルスルとお腹におさまっていく、なんというか天にものぼるようなフルコース。日本を思って後ろめたい気持ちが払拭しきれないまま、食べていたのですが、やがて何かが弾けるように食に没頭してしまいました。それほど味に力があったのです。

 やがて、こちらの食のスピードが勝ったのか、メインの北京ダックまでに、ようやくあたりを伺う余裕ができました。
 複雑に入り組みつつも小学校の40人教室2部屋ほどの広さに5人のウェイター。すべて白黒のタキシード姿なのですが、なぜ香港で料理屋を舞台にした喜劇映画が量産されていたのかが、よーく理解できました。
 ある人は、厨房に入っては、すました顔で出てきて、口だけモグモグとさせていたり、
ある人はせわしげにビートたけしさんのように首を痙攣させながら、自分も茶を淹れつつも、若手に茶を入れるように指示していたり、
目は上下に宙を浮いたようで頭がパンチパーマの人などは、広東語でいろいろしゃべっては、時折、つい歌まで。
 皆、常に何かをせずにはいられない。そしてあまりに一生懸命で自由すぎる! だから仕事を遂行しようとただならぬ情熱を発しつつも、なぜかそこはかとなくコミカルになってしまうのでした。
最後の北京ダックまで、絶品路線を堪能し続けましたが、個人的には笑いのツボにはまってしまい、押し隠してはいたものの、お腹が吊るような思いでした。

香港から中国本土へ資本は移っているとも聞きますが、老舗の名店、かくあるべし、との思いを強く持ちました。      (脱線・おわり)
                

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番外編・香港で見つけた雲南④

2011-05-01 09:57:35 | Weblog
                 
                           

 上の写真は九龍公園近くの通りにて。「大家姐監製作・海天堂・鮮製亀苓膏」と縦横にしておおがきされ複雑に組み合わされた看板がビルから突き出している。とても目立つ。
下は亀苓膏こと、亀ゼリー。熱いものと冷やされたものの両方がある。

【亀ゼリー】
 雲南では缶詰やパック詰めされたプリンのような形の亀ゼリーが、大好物だったわが家。(本当に亀の腹部の甲羅の部分と土伏苓などの漢方薬から作られたゼリーです。亀は店独自に養殖されたもの。広東省の技術を取り入れて、雲南でも作られていました。詳しくは2009年11月17日、11月23日の当ブログ・「亀ゼリー」の項をご参照ください。)

 より本場で食べたいと雲南でも缶詰で見かけた香港でも人気の海天堂の亀ゼリー店に行くことにしました。香港名所ともなっている本店の大看板を見つけ(女性が切り盛りする一代記として香港テレビでドラマ化もされている。)、
「目的の場所だ」とすすけたビルを駆け回ること10分。いくら探しても痕跡すらなく、途方にくれ、周辺をとぽとぽと歩いていると、近くの路面に3坪ほどの小さな店をようやく見つけました。

(看板と店は必ずしも同じ場所にない、という、ある種の香港の法則を知った思いがしました。地価が高い香港のこと。出世するたび、もしくは没落するたびに、きっと激しく移転を繰り返しているのでしょう。ちなみに店はチェーン展開され、香港の街中にいくつもありました。)

 中では地元のおじいさんとおぼしき人が太極拳の格好で、どんぶりのようなお碗になみなみと入った亀ゼリーを一心不乱に食べていました。すでに様子が香港映画のような雰囲気です。

 雲南では冷たいゼリーしかありませんでしたが、本場の香港のものは、アツアツのものと冷たいものが選べます。アツアツを注文すると、スプーンがなかなか入らないほどの弾力がありました。こげ茶色のうっすらと膜のはったゼリーに思い切ってレンゲを割り入れると、ふうんわりと漢方の味。雲南のものほど苦くはありません。ただあまり味がしないので付属のサラサラの蜂蜜をかけると、ようやく、ほんのりとした甘みが出て上品な味になりました。

 一人分で500グラムも入った亀ゼリーを、じっくりと食べると背中から肩胛骨のあたりまでじんわりと温まって、手が汗ばんできました。一緒に行った方々も皆、同様に燃えるように熱い手となっていました。ものすごい亀ゼリーの威力です。後に何らかのリバウンドがあるのでは、と、警戒したのですが、たんに眠くなるだけで終わりました。体にやわらかく作用するのだ、とますます気に入りました。

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