雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の牛肉⑦ ナレズシ風と胆汁ユッケ (タイ族正月料理)

2015-06-27 10:27:53 | Weblog


写真は、福建省の世界遺産・武夷山から40キロほど離れた城村遺跡(現在は閩越王城遺跡と呼ばれている。2001年撮影)。越王勾践の子孫が前漢の時代の呉楚七国の乱に荷担して破れ、南下してつくった王宮とも別荘とも言われる。

文献資料が乏しく、実際のところは定かではないが、大きな建築物があったであろう礎石と奇妙な彫り石がが点在していた。おそらく繁栄の時からあったものだろう。あとは草木が茂るばかりだった。

当時は武夷山が世界遺産になったばかりで、この遺跡も観光化しようとしたのか、閩越王像、ガイドは「越王勾践」像と呼ぶものが博物館の前に建てられたばかりだった。草原に映える白く巨大な石像がいかにも暑そうだった。

 近年では、さらに無理にコンクリートで再現した城壁などを作り上げ、逆に遺跡の価値を損ねている感がただよう。

【酸牛肉はナレズシと同じ】
さて、2週前にご紹介した「酸牛肉」。これが魚なら、滋賀県のナレズシそっくりです。
 シーサンパンナは日本の夏と同じく蒸し暑いので、タンパク質を塩してお米でつけ込めば、乳酸発酵によってアミノ酸に分解され、保存がきくというわけです。
 ただし、ナレズシが日本でも奈良時代の『延喜式』に貢納品として出てくるほど、由緒ある食べ物にもかかわらず、独特の酸味と風味が現代人にそれほど広くは受け入れられていないように、酸牛肉も正月料理に特化しているようです。少なくともタイ族の料理店では見かけませんでした。

【生肉の胆汁かけ】
さらに、すっぱい、を通り越した牛肉料理がタイ族では正月料理にありました。
昨年末、NHKのBS2の「コウケンテツが行く中国・雲南」に、シーサンパンナタイ族のおばあさんがつくる旧正月の料理が紹介されていました。そこには、生の牛肉に苦い胆汁をまぶす料理が。かなり衝撃的だったので、ご紹介します。

① 新鮮な水牛の生肉をペースト状になるまでたたく。それに、ハーブや唐辛子などを混ぜ込む。
② 水牛の十二指腸の中の汁(胆嚢からつくられた胆汁が押し出されたもの。緑色をしている)を押し出して、煮出す。
③ ①にかけ、混ぜる。(番組では、かなり苦いらしいというリアクションあり)
④ その上、さらに水牛の胆嚢から絞り出した胆汁をかけて混ぜる。

コウケンテツさんは胆汁を「脳天をつくほど苦い」、とおっしゃっていましたが、肉と混ぜると「苦さの中にあまみがある」とコメント。

これを見ていて思い出したのが、「臥薪嘗胆」の話です。春秋戦国時代の越王勾践が会稽で呉に破れて帰国した後、いつもにがい胆を嘗(な)めて報復を忘れまいとしていた、それが転じて「将来の成功のために長い間、つらく苦しい思いをすること」を指す四字熟語になりました。

それほどひどい苦さの胆汁ですが、タイ族の料理から考えると、それはごちそうだったのかもしれません。胆汁には油を分解する一種の界面活性剤が含まれているので、肉の油成分に作用して、少なくとも舌触りがなめらかになるのでしょう。

ちなみに豚の胆嚢は、中国では漢方薬として使われ、解熱、解毒などの作用があります。また、2000年前の漢の時代から豚の胆汁に蜜をまぜたものを灌腸の座薬にしていたという記録があるようです。
(つづく)


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番外編 gooアンバサダーミーティングへ

2015-06-19 13:01:57 | Weblog

突然ですが、第4回gooブログアンバサダーミーティングに参加しました。

買ったPCにたまたまインストールされ、無料だという理由でgooでブログをはじめて10年。

事故もなく、安定して続けさせていただいたgooブログを
空気のように考えていました。

が、よく考えてみると、この環境がなかったら、
このブログはないわけで、たいへん有り難いことなのです。

アンバサダーを辞書で引くと「大使」の意味。

自分のブログ代表として宣伝する、
さらにgooブログの良さを広める大使という意味かなと思い、
会場のスタッフに聞くと後者の意味でした。

 さて、六本木の森ビル31階というきらびやかなスペースに、
gooTシャツを着たおだやかそうな、
ふだんは背広姿が似合いそうな人もふくめ、スタッフが約10名。

集まったブロガーは30名。
個性的でアクティブで礼儀正しい人たちでほっとしました。
いただいた軽食も、あなどれないお味。

あたたかな雰囲気の中、

一人30秒の自己紹介と、
gooスタッフによるアクセスアップ講座、
ブロガー3人の発表、
グループに分かれてのワークショップに懇親会

と盛り沢山の内容で、3時間があっという間に過ぎました。

いろいろなブログがあって、
いろいろな活用の仕方があるのだなあ。
なかでも私は相当、マニアックなのだなあと認識をあらたにしました。

 画面の工夫の仕方など勉強になった濃密なひとときでした。

(成果、出てます? とりあえず、改行を増やしてみました!
「牛肉のお話」もこのほうが読みやすいですか?次回からちょっと工夫してみます)
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雲南の牛肉⑥   酸牛肉(すっぱい牛肉)

2015-06-14 11:47:46 | Weblog
写真はタイ族の伝統的な家屋・高床式住宅の1階の物置空間(2005年1月撮影)。伝統的にこの空間に野菜の漬け物から自家製で作った酒、また今回の話しの牛肉の漬け物にいたるまで、発酵させて保存させていた。
カメの上の白い帽子のように見えるタイプが本文の⑤のもの。
実際に暮らす空間は2階で、1階は風が通って涼しく、保存には向いた空間。独特のかび臭さが、なんとも懐かしく心地よかった。

【肉を漬ける】
 いままでご紹介してきた生ハム風の牛干巴は回族の伝統技術ですが、タイ族のビーフジャーキー風牛干巴は研究書を見るとタイ族伝統料理の項目には書かれていません。タイ族がつくる「牛干巴」は、伝統料理ではないようなのです。これについてはまた別の回に。

でも、タイ族も牛肉料理は紹介されていて、本などで触れられるのが「酸牛肉」です。

作り方は次の通り。(『雲南伝統食品大全』雲南省食品工業協会編、雲南科学技術出版社、1994年6月)

① 肉をさばいて米のとぎ汁で頭の方から洗う。
② 清水で3回、洗う。
③ 9-10センチに切り山椒の葉、塩、唐辛子、ショウガなどに少しのもち米を入れてかき混ぜる。
④ 圧力をかける。(重しをする)
⑤ 稲草で入れ物の口をふさぎ、その上にお椀を伏せた形で乗せ、草木の灰を水で捏ねて、その上に塗りたくって完全密封する。(この方法は1992年に浙江省で紹興酒を寝かせる時の瓶の密封法として、みたことがある-筆者注)

だいたい2ヶ月前後で肉が酸っぱくなってできあがり。密封した状態で半年ほど持ち、ふたを開けたら冬は5日以内、夏は3-4日以内で食べきらないと変質するとのこと。
 さわやかな味なので夏場が最も出番が多いそう。タイ暦正月の1,2ヶ月前に仕込んで、正月にふるまう料理の一つにもなります。

(タイの正月は4月中旬頃。「水かけ祭り」の名でご存じの方もいることでしょう。雲南では洗面器で水たまりの水すくって誰彼なく、容赦なくかけ合うので、その時期に街に行ったときには覚悟を決めるしかありません。ボーフラのいそうな緑色の水をかけられ、私は服を一着、現地で買いました。)
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雲南の牛肉⑤

2015-06-06 23:04:57 | Weblog
冬に地元の人にひそかに人気の宣武ハム鍋。(2004年12月末、昆明にて撮影。)白濁した塩気のまろやかなスープが、雪の中での幼稚園のお遊戯会に参加した直後の冷え切った体を温めてくれた。
 ちなみに宣武ハムは浙江省の金華ハムと並ぶ生ハム系の中国秘伝のハムとして知られた存在。流通網が恐ろしく悪く、雲南に行くのも困難だった時代には、食通の人々には「うわさに聞く、幻のハム」として垂涎の的だった。神戸在住だった作家の陳舜臣夫妻も著書『美味方丈記』で「清朝時代は、宮廷ぐらいでしか、雲南宣武のハムは食べられなかったそうです。」と述べているほど。いずれも皮の厚さが特徴的だ。

【回族系牛干巴の料理法】
先週ご紹介したような「牛干巴」は保存食としてどのようにも調理されますが、雲南の南の地帯では牛干巴を細切りにして、小口瓶にいれ、そこにあらかじめ塩漬けをした大根を入れ、瓶の口まで水を張ってふたしておくことがあるそうです。こうすると、牛干巴の色、香り、味が保持される上に、肉が柔らかくなって、おいしくなるのだとか。

 牛干巴そのものは手に入らなくても、この食べ方の応用できそうだと、厚切りベーコンに塩漬け大根を入れて見ました。ロリエや唐辛子、こしょう、などを足し一日、冷蔵庫において、鍋で煮立たせてみたら、確かにベーコンはよりやわらかくなり、大根も風味が増しておいしく食べられました。

 そもそも大根には、ビタミンCとともに消化酵素のジアスターゼが含まれています。生の大根の汁を入れると肉がやわらかくなるのは消化酵素のせいなのでしょう。

 そういえば、昆明では牛の生ハムではありませんが、豚の生ハムである宣威ハムを使った鍋店が冬に人気がありました。
具材は分厚く切った宣威ハムの切れ端に白菜と大根がゴロゴロ入っていて、汁はハムから自然と出る香りと肉汁で白濁して、体がポカポカと温まりました。ともかく大根と肉の取り合わせは黄金コンビなのでしょう。当然ながら、ジアスターゼは熱に弱いので、鍋を煮立たせると、消化酵素の役割は終了します。

一方、雲南の北の地帯では乾燥と冷涼のため、南の方よりも容易に日持ちするため、農家の梁に牛干巴を吊しておき、随時、切り取ってはちょっとずつ食べるという北海道のアイヌの人々がいろりの上に鮭を吊して燻製にして、食べていたのと同じ保存法をとっていたそうです。

私自身、雲南の北にあるシャングリラに住むチベット族の家にお邪魔したとき、梁には、牛ではなく豚のもも肉でしたが、そのよく乾燥させたものが吊されていて、家主が自慢げに少し切り取っては見せてくれました。豊かさの象徴なのかもしれません。      (つづく)

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