写真はシャーロックホームズ博物館の2階。ホームズらの居間。実験器具やヴァイオリンなど、本に描写されたもののほか、当時の家具などが細かにしつらえられてあった。
【シャーロックホームズ博物館】
シャーロックホームズ博物館脇のショップでチケットを購入し、列に並ぶこと20分。ビクトリア朝の従者スタイルの係員(ビクトリア朝の警官の立っている時間もあるらしい。)の誘導と名調子を聞いているといつの間にか入口です。
地上4階地下1階の建物に入ると、目の前に雰囲気のいい階段がありました。階段を上がるところからビクトリア朝の調度類やランプなど細かな配慮にいつの間にかタイムスリップ。2階はホームズの部屋です。おおよそ6畳の客間に4畳半の寝室、それにトイレ。シャワーなどの設備はなし。思った以上に天井が低いせいか、想像より狭い感じを受けました。
いかにもさっきまでそこで寝ていたかのような長椅子、使い込まれたクッション、よく来訪者に勧めていた布張りのイスにその後ろの暖炉、立て付けの書棚に革張りの書籍のほか、びっしりと試薬瓶が置かれ、机の上には顕微鏡や実験器具がずらり。それがいかにもさっきまで使っていましたよ、という風情で、名探偵の怜悧にして怠惰な気配を思わず感じてしまうつくりなのです。
じっくりとみていると、執事の恰好をした男性がキングスイングリッシュで一つ一つの調度について解説を始めました。
ヴァイオリンを弾く動作をして
「これによって、彼の頭を休め、イマジネーションをもたらしました。」
など、話す雰囲気が部屋に見事にマッチ。
耳を傾けながらめいめい勝手に見て回る観光客たち。のろわれたらしき、タカラガイの腰巻が巻かれた人形、はく製の鳥やホームズ愛用のパイプにマホガニーの机まで、じっくり見続けたいほど意味ありげな品々。
肖像画などにまじって、壁には「ホームズ物語のわき役たち」と日本語英語併記の日本人のシャーロキアンが書いたホームズの周りを彩る当時のもの、つまりガス灯や馬車、独特の帽子の解説が書かれた文章が、うやうやしく飾られていました。
日本人シャーロキアンの考察が鋭いと認められているのか、それとも日本人の観光客が多いせいなのか。日本語は、ちょっとうれしい。
さらにホームズの住所が書かれ、今も世界中から送られてくるホームズ宛ての封書の中から一枚が飾られていて現代の空気もさりげなく反映させる心にくさ。
ここに入るまでのちょっと複雑な気持ちはどこへやら。ディズニーランドだって、ディズニーの夢の世界、ミッキーハウスだってある世の中なのです。本場の、ちゃんと考察されたコンセプトでこれだけ、作りこまれていたらこれはもう、本物だ!
3階はワトソンの部屋(DR WATSON’S ROOM)と書かれた部屋とハドソン婦人の住まい。それぞれに調度類にこだわりがあり、ここもなんだか落ち着きます。
4階は、ちょっとこわい。ボヘミアの醜聞の婦人や、ホームズとワトソンが話すシーン、なにやら檻に閉じ込められた男性など、原作の何かの場面を再現した等身大の蝋人形がリアルすぎて苦手。あれは原作を読めば十分なので、蛇足なのでは、と感じました。
写真はホームズの部屋脇にあったトイレ。ホームズ連載時、水洗トイレは最先端の設備。それだけにおしゃれな便器で美しい。当時、じっさいにはベイカー街の表通りに面したビルには備わっていたが、裏通りは部屋でおまるをして、外に出していた。
(つづく)
※来週と再来週の更新はお休みします。
夏から秋へと、明らかに変わった気候。くれぐれも体調に注意して、ようやく過ごしやすくなった温度帯に身体と心をやすめたいですね。