雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

閑話休題・孫悟空が「封」じられた山?

2009-07-26 11:45:18 | Weblog
写真は文山壮族苗族自治州硯山県にて。山の中腹に白いペンキで書かれた「封」の字が印象的。孫悟空が山に封じ込められたでもいるかのような「中国的ファンタジー」を感じさせる現実ばなれした光景に思わずパチリ。

【山を封じて林を育てる】
 ご存じの通り中国では、環境問題は深刻です。なかでも天然の地を畑にし、地力が落ちると表層の土がパウダー状になり、やがて、ちょっとした雨風で、土砂災害や土が流れ出る「表土流失」の問題は砂漠化に直結する問題なので、中国政府も本腰を入れた対策をとっています。

 そのおかげで、中国の森林被覆率は1950年に国土の8%から18.2%にまで回復したということです(国家林業局、第6次森林資源調査1999年~2003年)。ちなみに日本は64%、世界平均は29.6%です。(JICA中国事務所ニュース2,005年5月号より)それぞれ、指標も若干異なるなかでの数値なので、単純比較はできませんが、中国では苗木や立ち枯れた緑化失敗地域も含まれる、との中国専門家の話もありますので、1割をようやく超える程度、と考えるのが妥当でしょう。緑化の深刻ぶりが、数値からも伺えます。

 さて、雲南でも中央政府の意向に沿って、緑化事業がさかんに行われています。
7月3日付け『雲南日報』によると雲南省では2009年度中に650万畝(約43万ha,東京ドーム92,682個分)の造林を予定していて、なんとすでに計画の半分近くまで造林を完了済みとのこと。
 このほか「退耕還林」(畑から植樹して林にすること)工程23万畝、
天然林保護工程39万畝
防護林工程23万畝
石漠化(土が砂となる砂漠化に対して、乾いた石となってしまうこと)治理3万畝
封山育林工程94.95万畝
 が今年6月までの上半期ですでに完了した、ということです。

 「封山育林」とは、文字通り山を封じて林を育てる政策です。

 林を開放しておくと、家畜が吹き出たばかりの柔らかい芽を食べ、土を踏み固め、人間は木を切っては薪などに利用します。木々の回復力に対して人口が少なければ、林がなくなることもないのですが、実際には多すぎる人間と無秩序な伐採のため、すっかり、林が消えてしまい、畑から表土流出、という悪循環からなかなか断ち切れないのが現状なのです。

 そこで入山禁止をわかりやすくしめそう、としたのが上の写真のようなのですが・・。家畜は当然、字が読めませんし、まだまだ文字のわからない「文盲」の多い農村のこと。どれほどの効果があるのでしょうか。
 そもそも周囲にまったく緑がないなかで、その中心の岩山を「封じる」意味がどれほどあるのか、考えれば考えるほど、いかにも数字合わせの対策、という気がする、気の抜けた光景で、一緒に行った人たちに
「ガマン、ガマン。これは幻や」
 と言わしめるインパクトがあったのでした。


 
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夏の風物詩・木瓜水

2009-07-19 15:41:06 | Weblog
【なぜか昔懐かしい味】
雲南中部は「四季、春の如し」と呼ばれていますが、それは「一年中、春らしい日がある」というだけで、夏や冬がないわけでは、ありません。朝、肌寒くても、日中に日差しが照りつければあっという間に30度以上に気温が上がる夏。家の中では外套を羽織っても寒くてたまらないというのに、晴れてさえいれば、外は肌がひりつくほどのポカポカの日差しに恵まれる冬。だから地元の人は「一日のうちに四季がある」といいます。

 そんなひとときの夏に人気があるのが「木瓜水(汁)」。
ほんのり甘くて、清涼感があり、口の中がさっぱりする「デザート」です。昼食のしめくくりに、またはお昼寝タイムが終わって一仕事をはじめる三時頃になると、人気店には行列ができるほどのポピュラーな一品です。

「木瓜」とは中国語でパパイヤのこと。南方の果実・パパイヤのとろりとしたジュースを思い浮かべそうですが、日本の伝統的な夏のおやつ・ショウガ汁と砂糖でつくる「ひやしあめ」を固めたような、健康的な味わいです。

 秘密はパパイヤの果実ではなく、その黒々とした種にあります。種を水に浸けて、ひたすら揉み続けると、ヌルヌルしたものがでてきます。これをひやし固めると、寒天のようにプルンと茶色く透明感のある木瓜水ができるのです。

 そもそもパパイヤの種には肉をやわらかく変質させる物質があり、薬用効果も高いとのこと。ちなみに効用は熱冷まし、咳止めなどです。

 このプルプルに、雲南独特の黒砂糖「紅糖」や「バラ糖」(バラの香りをつけた黒糖)、いりごまなどを溶かし込んだシロップをかけていただきます。

 最近では種を揉み込んでつくる店は、手間暇がかかるため少なくなり、「木瓜粉」というパパイヤの種からつくられた「木瓜水」の素を水に混ぜて作る店が多いそうです。木瓜粉はスーパーなどでも売っていますが、その製造元は「黒竜江省」。なんとも不思議な感じです。

 近年、日本でも人気が出てきた台湾のおやつ「愛玉子(オーギョーチ)」(上野に戦後まもなくから、台湾で覚えた味をメニューとして出し続ける名店「愛玉子」があります。一度、おためしあれ)は、パパイヤの種と似たような性質を持つ、台湾固有の植物「オーギョーチ」の種からつくられたもので、作り方は同じです。
 どちらかの作り方が影響を与えていることは容易に想像されます。


 写真は雲南南部の都市・建水にて。昼過ぎに、この店を目指した人の流れに乗って進んだところ、木瓜水の店を発見した。建水城の東門である朝陽門近くにある。建水のもの売りのおばさんや、麻雀好きのおじさん、若い学生さんなど老若男女乱れて、ひとときの清涼感あふれるひとときにひたっていた。







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閑話休題・これなーに?②

2009-07-12 17:29:43 | Weblog
写真は日本の連結送水管。(高層建築の消防活動時に消防車のホースをつないで高層階を消火するための連結部のこと)前回の昆明のものと比べると、ごく普通の何かの「口」という気がします。

【コワい高層建築】
 前回の不思議写真を掲載するために中国での連結送水管の設置法を調べようと思ったら、恐ろしい現実に気づいてしまった。なんと、日本や台湾をはじめ世界各国で高層建築には「連結送水管」の設置義務があるのだが、中国では、まだ努力義務でしかない、という恐ろしい現実である。

 つまり中国では、急ピッチで膨大な数の高層建築物が建てられ続けている現在においてなお、連結送水管に限らず消防のための設備を施していないものが、けっこうある、ということなのだ。

 中国でもこの問題を深刻に考える人はいて、上海の22階建てのビルを調べても、なんの消火設備もない、といった報告がゾロゾロ。また、たとえあったとしても、今度は接合器そのものが問題だらけ、ということがあるようだ。以下に新聞で見かけた記事を箇条書きしよう。

 ①接合器の口に消防車のホースが付けられていなかった。
 ②ホースを無事、装着しても、加圧したら水道管が破裂して水浸しになってしまった(水道管破裂によって死者の出た消火活動まであるらしい)。

 最近、上海にある13階建てのマンションが一日かけてゆっくりと傾いていき、最後にはパタリと横に倒れてしまった、という投稿を見つけた。冗談ではなく、本当の話。証拠写真を見れば納得だろう。
(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0627&f=national_0627_029.shtml)

 ビルが1棟、根こそぎ倒れたという大事件だというのに、死者は内装工事関係者1人。ガラス一枚すらも割れなかったという不思議なゆっくりとした倒れざまだったらしい。おそろしいことにその横にすでに第2の倒れビルとなるべく、ピサの斜塔のように傾いたビルがあったこと。このような状態ではとても消防法にまで考えは及ばない建物も多いに違いない。

中国に行くときはあまり高層階のホテルに泊まらない方が賢明だな、と今回、深く思ったのでした。



なごみのページにするつもりが、とんでもない方向にいってしまいました。

コメント (2)
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閑話休題・これなーに? ①

2009-07-05 17:54:25 | Weblog

昆明を歩いていると,
ふと視線を感じた。なんとも不思議な「君」。振り向くと、どことなく宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」のロボットに似ていなくもない風貌。心ならずも世界を破壊に導き、今や、血塗られた歴史への鎮魂を秘めて、ボロい7階建てのビルの入り口付近に閉じこもってしまったかのような姿。周囲はにぎやかに車や人々が往来しているというのに、この静かでレトロなたたずまいはなんだろう。

 じつは、これ、日本でも7階建て以上の建物の1階部分に消防車から強制的に加圧した水を送るための送水口。ここに消防車のホースをつないで、各階にある放水口に水を送る仕組みとなっている。つまり高層建築にかかせない大切な設備なのだ。

 もし建物の外から消火栓にホースをつないで消火活動を行った場合、はしご車でのばせる範囲でしか消火活動が行えなくなってしまう。日本では「連結送水管」と呼ばれている。

 中国では「消防水〓(上に石、下に水を書いて一字)接合器」という。近年、日本では、この設備の金属部分の盗難が相次いでいるのだが(平成20年1月19日、東京新聞より。キャップの部分で新品で3万5000円程度するらしい)中国では、その金属部分が盗まれないようにしっかりと「のり」づけした、結果、このようなお姿になったのかもしれない。  (つづく)

*雲南懇話会、無事終わりました。結局、用意した原稿の半分も読めない事態となってしまいました・・。早口でしゃべることと時間配分って、難しいんですね。
さて、また初心に返って日常に戻ります。感想などございましたら、書き込みください。

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