雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の漢方薬・三七④

2009-08-29 21:39:25 | Weblog
写真は「三七」の全体。写真のものは一年物で、これから根が太くなり、薬効も増すのだという。

「三七」。日本では「田七」とも呼ばれる、中国では高麗人参なみに有名で、お高い漢方。
あまりに専門的な話になってしまうのですが、「いつか目にすることもあるかも」と思い、おつきあいください。

【規格等級】
 市場では同じぐらいの大きさのものをわけて、五〇〇グラムに何個入るかで、大雑把に等級が把握されます。以下は干した春三七についてです。

 七年物は大抵、二〇個から四〇個はいるもので、二〇個クラスを一等とし、以下、小さくなるにつれ、等級が下がります。また大きすぎるものも規格外として等級が著しく下がります。最低ランクは「冬三七」の一三等です。

 このランク付けは、あまりにも専門的すぎて、私には、さっぱりわかりませんが、目の前に「三七」を見るともっとわからなくなります。

 まず、三七の根を細かいパウダー状に砕いた「三七粉」。お手頃価格です。五〇グラム、三〇〇円ほどで、表に三七の絵がついたパッケージ商品です。つい、おみやげにしたくなり、実際にしたこともありました。
 これは文山市の特製商品として、地元でも、やたらと勧められ、日本人で愛飲する方も多いのですが、これはどうも、あまりおすすめできないようです。たとえ本物の「三七」を使っていたとしても、等級の低いものを加工しているためです。等級が低いということは、効果も薄い、ということ。胃の弱い私だと、てきめんに胃が重くなるので(父は目が少しよくなったような、といっていました・・)薬効がないとはいえませんが。

 ちなみに「三七」の漢方書には「粉末にして売れば、二流、三流品でも形がわからないので、いくらでもごまかしがきく」
と堂々と書かれていました。ゲンナリ。

参考文献
黄鑫『十大名中薬叢書・三七』(天津科学技術出版社、2005年)
上田 信『森と緑の中国史』(岩波書店、1999年)
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雲南の漢方薬・三七③

2009-08-23 11:34:07 | Weblog
写真は「三七」が育つ、ムロの中。作業はすべて中腰となる。
【高価なわけ】
 さて、三七の栽培基地である冒頭のムロとは。
 簡単な木組みの上に「杉」の葉を大量に葺いた小屋がけ状のムロの中は、ひんやりとした空気。適度に風を通し、光を適度にさえぎる、中国で古来より植樹に使われるコウヨウザン(広葉杉)という日本の杉とは別属の針のような枯れ葉が、遠くからみると「茶色の絨毯」に見えたというわけです。その屋根の高さはせいぜい一.三メートルほど。腰をかがまねばならない高さの薄暗い畑には、濃い緑を3葉、7葉と茂らせた「三七」が整然と植わっていました。

 元々薄暗い森に生えているわけですから、これが「三七」にもっとも適した環境なのです。

 さて、「三七」は藩種から収穫まで最低でも三年かかるとか。畑で三年は大変な時間ロスです。たとえば「桃栗」なら同じ「三年」でも、収穫が始まったら、何個でも何年でも採れるため、利益も上がるわけですが、「三七」は根こそぎ掘り出すので、一つしか採れません。

また「最高品質」には七年かかるため、その間は植えっぱなし。さらに昔から「三七」が育つと、あとは雑草すら生えない」といわれるほど、根こそぎ土の栄養をすべて奪ってしまうため、同じ場所を畑にし続けることすら難しい。
そのほか作業はすべて、ムロの高さの制約で中腰となるため、過酷。現場で話を聞けば聞くほど「三七」が高い理由が、よーく、分かりました。 (つづく)

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雲南の漢方薬・三七②

2009-08-16 14:28:02 | Weblog
写真は「三七」の花。
【外用薬では血止め、内服薬では血の巡り】
「三七」はウコギ科ニンジン属の多年生植物で、高さ三〇から六〇センチ。花は緑から黄緑色となり、その果実は鮮やかな赤色になります。その根、茎、花、果実、いずれも薬効効果があるという不思議な植物です。

 雲南のスーパーやお茶屋では、「三七(花)茶」が売られています。これは緑色の三七の花を乾燥させたもの。緑茶と三七花を3:2で混ぜ、沸騰した湯を注いで、ゆっくりと飲めば、慢性肝炎、めまい、蚊文症(目の病気)、耳鳴りなどの改善に効果があるそうです。それほど高いものではないので、おみやげにいいかもしれません。

 あらゆる部位の中で一番、高価で薬効もあるのが、根。粉末にして飲んだり、お酒やスープに混ぜたりしていただきます。かなり独特の苦みがあります。

 主な成分は有機ゲルマニウムやサポニンなど。朝鮮人参と同じ成分も多く含みます。薬効についてはまだ研究途上だそうですが、直接傷口に塗るというシンプルな方法の血止め薬としては古くから知られていました。
 雲南に本拠を置く中国有名漢方ブランドの「雲南白薬」では、止血湿布の主な薬剤として使っています。近年では手術の際の血止め薬として使う病院もあるそうです。

 また内服の場合は、血の巡りを整える効果があります。そのため、最近では高血圧の薬として注目を集めていますが、古来、女性の「血の道」の薬として有名でした。
 明代の四代奇書の一つにして赤裸々な性描写で有名な『金瓶梅』には広南(清代までの文山地域一帯の政治・経済の中心地域)鎮守がもってきた三七薬で、婦女の病がぴたりと治った、という一文が出てくるほど。

 白内障が治ったという人にも遭いました。雲南でずいぶんと世話になったご老人です。白内障になりかけたとき、医師に処方されたそうです。しょうがにそっくりな形の根茎を粉にして、毎日、飲み続けたところ、すっかり治った、と絶賛していました。
 なんらかの効果を期待して「三七」を服用している日本人にも出会ったことがあります。「日本だと目が飛び出るほど高いけど、雲南なら安いから」という安易な理由でした。

 私も目の痛みを和らげようと、2日ほど服用しましたが、胃の動きがわるくなったので、やめました。私が風邪の時に愛用する葛根湯と同様、胃の弱い人にはきついお薬だと感じました。                (つづく)

*一週、お休みし、岩手に行ってきました。寒かった。冷麺、ジャージャー麺、おいしかったです。でも、いずれも朝鮮、中国など外からきたもの。わんこそばは花巻が発祥の地だそうですが。ささっと、つくれて、ぱぱっと食べられて、そして働く。「雨にも負けず、風にも負けず・・」とガマンして勤勉にしていると、行き着くところが「麺」だったのかも、と感じました。外食の場所が少ない、という印象で、とくに三陸海岸では「食パン」を探すのに苦労しました。

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1雲南の漢方薬・三七①

2009-08-02 22:05:13 | Weblog
【金(きん)でも換えられない貴重や薬】

 昆明から雲南省西南部へ向けて車を走らせると、あきるほどのトウモロコシ畑と林が続きます。ところが文山地区へと入ると急に、風景が一変。林をばっさりと刈り取って、北海道・美瑛の美しい丘の並びの両側をぐっと押しつけて凹凸を大きくしたような丘また丘となるのです。

 その景色は異様で、巨大な茶色い絨毯が斜面をなだらかに覆ったような姿にも見えます。キノコか何かを育てているらしい茶色のムロのよう。興味を持って近づくと、そこには立派な看板があり、「三七の栽培基地」と書かれていました。

「三七」とは日本では「田七」という名で知られる高級漢方薬のこと。高島屋の薬局では80グラムを1万円~2万円で売っています。日本で知られる効能は、代謝機能を高めることによる肥満防止、肝炎、高血圧予防など。

 日本での知名度はまだまだ低いのですが、中国では古くから高麗人参なみに大切に扱われてきました。

 明代に李時珍が書いた『本草綱目』には「一切の血病に効く」として、その効能の確かさと貴重さから別名を「金不換」と記されています。この産地が雲南省の「文山」周辺で、ここだけで世界産出量の八五%をまかなっているのです。(残りの15%は地続きのお隣、広西壮族自治区)         (つづく)

*夏です。今年は中国麺紀行の旅、を企画していたのですが、日本は新型インフルエンザ、中国は政情不安のため、受け入れ先が不安がり、やむなく中止になりました。そこで、日本で外様の麺文化を見事に地域の文化へと昇華させてしまう、不思議な地域・盛岡へ行くことにしました。冷麺、わんこそば、盛岡ジャージャー麺など、食べ歩いて見たいと思います。そのため、来週の更新はお休みします。
*あと、感想など、どしどし、お寄せください。お待ちしております。


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