雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

元気な退職世代4

2006-06-28 18:00:52 | Weblog
写真は昆明の高級マンション。建てられたばかりのもので、この前を通る幹線道路は敷設工事中のため、常に渋滞していた。マンションは棟ごとに「南アメリカの庭」などとテーマパークのような庭が設置されている。
【深刻な高齢化】
 あるとき、高級マンションの一角で、例によって麻雀に興じるご老人グループに出会った。その時、連れの貴州省(雲南省の東北部に隣接する)の山村出身者が
「ここは裕福だからできるのです。でも農村では、そんな余裕はないですよ」と複雑な顔をしていた。
 日本に負けずおとらず、中国の年金制度はかなり複雑だ。まず、年金の管理は国ではなく、地方が行う。そして地方ごとに保険料率が異なる。たとえば国有企業が多く、退職者数が全国有数の遼寧省のように企業負担率が給与の30%を超え、そのために倒産し、不払いが社会問題化するところもあれば、中国の改革開放の象徴的存在でもある香港の近くにある深セン市では、企業負担率が8%と低い地域もある。昆明では市の下部組織である行政区が徴収を行っていた。
 現在は1997年に制定された法律によって、企業負担率は給与の20%、個人は8%を超えないようにと一応、法律で決められてはいる。だが、運用は地方に任されているのだから、その限りではなく、腐敗も横行している。すべての資金が年金のために運用されていたとしても、将来のための積み立て資金を食いつぶして、現在の老人に当てている状況だ。支給年齢は男性が60歳、女性50歳(管理職が55歳)からとなっており、平均月収の20%程度となっている。2003年の都市企業年金の平均支払額は月平均621元だそうだ。(新華社北京、2004年9月7日)。

 しかも年金制度が機能しているのはほぼ都市部の労働者と公務員、それに軍関係者ぐらいのもので、農村では、実質的に家族扶養に頼るほかない。それで冒頭の連れの人の言葉が出てきたのである。(この章、つづく)


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元気な退職世代3

2006-06-21 12:34:37 | Weblog
写真は徳欽県で出会ったチベット族のおばあさん。チベット族の家に初めて訪れた子供には生卵をプレゼントするのだと、娘に手渡す。子猫を娘が見つけていると「あげるよ」と手渡そうとする。すべて旅の途中なので断ったが、子供には本当に親切だった。

【子守り】
 体を動かし、遊ぶだけではない。中国では、まだまだ「子守りはお年寄りの仕事」という社会通念がある。しかも共働き家庭が普通の中国社会では、祖父母が子守りは非常に重要な役割となっている。 

 昆明では、都会化しているため、その役割は幼稚園や小学校の送迎に集中するが、雲南の農村に行くと、貧しいゆえにその役割は相互扶助的な意味合いもおびる。雲南省北西部の徳欽では、娘をつれて行くと、「おまえたちの両親はみんな死んじゃったのかい?」と聞かれることがよくあった。親が仕事モードの場合、子供は仕事場につれてきてはかわいそう、祖父母に預けてしっかり教育してもらわなければならない、という。
 農村では、農繁期以外は、働き盛りの人のほとんどが街に出稼ぎに行く。その間は、老人が子供の面倒を見て、出稼ぎのお金を家族で分ける。だから農村は、老人と子供だけのことが多かった。

【子供だいすき】
 昆明の休日、設備の整った有料公園に行くと、若夫婦と子供の組み合わせより、年寄り夫婦と子供、それに若夫婦を加えたグループのほうが多い。
そのため子供への目が行き届きすぎて、子供は少々、窮屈そう。子供が工作をしようとすると、「次はこの色が合うでしょ」とつきっきりで指導する姿もよく見かけた。子供の自主性は、わがままをいわない限り、尊重されることはないようだった。
 だが、子供への目はあくまで優しい。娘が転んで泣き出した時には、私より早くそばに駆け寄って「痛くないよ。大丈夫だよ」と介抱してくれた。子供と見ると、アカの他人であろうと優しさの出し惜しみはしないのだ。日本の感覚で考えると、中国人は無類の子供好きだと感じる瞬間の一つだ。 

 話は飛ぶが、戦後、日本に引き揚げる際に、やむなく中国に置いてきた子供が大勢、中国の人の手で育てられた。もちろん、過酷な目に遭った人もいるだろうが、もし、これが逆の立場だったら、日本社会は中国の子供をこれほど育てただろうか。
 日本で子育てするときは、夜中に子供が泣けば、翌日、上の階の人が怒りをこめて抗議にきたり、子供が道ばたで泣いているのを見て、見知らぬおばさんから「幼児虐待ですわ」などと捨て台詞を吐かれたりと、せつない思いを何度もした。ところが、昆明に限らず中国では、そんな空気はみじんも感じられない。日本はつくづく子育てしにくい社会だったのだと気づくとともに、中国の人々の子供好きの空気のなかで、のびのびと子育てを楽しむことができた。

 さて、よく体を動かし、手を動かし、童心にかえって遊ぶ。そして「子守り」。これが健康の秘訣のようだ。では、この優雅な生活は、いかにして生まれているのだろうか。(つづく)
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元気な退職世代2

2006-06-16 17:28:52 | Weblog
大観公園の中秋節。お年寄りによる京劇などの演目が続く。

【優雅の極みは麻雀?】
 風光明媚な公園は、60歳以上は無料とあって、平日の早朝ともなると、その年代の人たちでいっぱいになる。たとえば中国で6番目の大きさを誇るテン池に面した大観公園にいくと、雨にもかかわらず、中国ならではの建物をめぐる回廊の下で、太極拳や健康体操、気功、バドミントン、小道具を使った民族舞踊、二胡の演奏、合唱団の練習、マージャン卓で溢れかえっていた。とくにマージャンをする人の多さに、これでは毛沢東が、麻雀を禁止したのも無理からぬことと素直に納得してしまう。そうでもしなければ「革命」をする時間がとれなかったに違いない。
 ちなみに大観公園は50ヘクタール近くの広さを誇る一大庭園で、清代の増築された大観楼は中国4大楼の一つともなっている。また楼に掲げられた清代に制作された長聯(門の左右に吉祥の詩を書き記したもの)は180字にも及び、当時「古今第一長聯」として、大観楼の名声を不動のものにした珍宝である。
また中秋の名月(中秋節)や旧正月には、夜間ライトアップや地元の人々による京劇風ものなども催されている。市中心部からほど近いにもかかわらず、テン池を遊覧する船も出ていたり、四季折々の草花が咲いていたりと、私の隠れおすすめスポットである。
【鳴き比べ】
 木の生い茂る公園で、鳥のさえずりが聞こえたら、それは竹製のかごに自慢の鳥を入れて枝にぶら下げたご老人グループがさせた音だ。中国では、美声のさえずりを聞かせると、その鳥の声がよくなると「鳴き比べ」をする風習がある。
【町中で凧揚げも】
 ちょっとでも上空の空が開けていれば、そこには「凧揚げ」じさまが、必ずいる。釣りのリールのような糸繰りを巧みに操り、あっという間に蝶や鷹の形をした鮮やかな凧を30メートルぐらいは揚げてしまう。残念なことに、日本と同様、凧揚げに熱心なご年配はいても、子供の姿はほとんど見かけなかった。
 退職者が集う「干休所」(幹部の休息所の意味。退職後の住居も兼ねる)もずいぶん見かけた。
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元気な退職世代

2006-06-08 11:34:51 | Weblog
写真は昆明で暮らした社会科学院の宿舎の庭。奥の空間がコート。手前がコンクリートの立て付けの机。左側の建物に住んでいました。

今回から何回かに分けて、昆明の元気なお年寄り編です。読まれた方は、よろしかったら感想をいただけるとうれしいです。

【一日は陽射しとともに】
 昨今、日本では退職世代が元気だが、昆明の退職世代も負けてない。今回はそんなおじいさん方の健康の秘訣を見てみよう。

私の住んでいた公務員宿舎の朝は、退職した白髪まじりの人々のかけ声で始まった。目の前のコンクリートで固められた庭には、コート用の線が引かれ、毎朝、4~10人ほどの人々がバドミントンを楽しんでいる。6階建てのアパートに囲まれているため、ほんの数時間しか日が当たらない谷間のようなところで、「エイヨッ」「アー」といった、はつらつとした歓声が響くので、目覚まし効果はテキメンだ。

 朝食後は日の当たり始めた宿舎の出入り口前広場でビーチバレーが始まる。門を出入りする人は、彼らに挨拶をしながら、控えめに門を開け締めしていた。

 昼近くになると、同じ出入り口広場で竹製の小椅子を持ち出してひなたぼっこタイムとなる。男性は新聞を持ちながら、女性は、セーターや靴(靴底だけのものが売られているので、上のスリッパ部分を手作りする)を編みながら。あれほど口が動いているのに、細やかな模様を付けていく手さばきは見事だ。

 昼寝が終わると、今度は斜めの日射しの中、庭に設置されているコンクリートの机の上で将棋や麻雀を打ち出す。子供たちは空いている机で宿題をしていた。

【忍法、後ろ歩き】
 早朝、娘を幼稚園に送るときに出会うおじいさんは、手に直径3センチほどの球を2つ持ち、手の平の上でグルグルと動かしながら、ウオーキングしていた。この球は、「気」の流れを整える代物とのこと。昆明では生活に余裕のある人をターゲットにした健康薬や「安眠枕」と称する健康グッズが結構、売られているのだ。

 さて、このおじいさんは手に例の球を載せたまま、曲がり角にくると、突如、後ろ向きになり、そのまますごいスピードで後ずさっていく。どきっとするような非日常的な行動だが、後ろ向きに歩くのも健康法としては有用なのだそうだ。
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美しい手編み、刺繍

2006-06-05 14:31:07 | Weblog
写真は雲南省東南部の文山地方の少数民族の娘さんが作った手刺繍の靴底。

いままで、マッサージ編におつきあいくださり、ありがとうございました。次に高齢者の暮らしと幼稚園編に移るまえの閑話休題です。

【美しい手編み】
雲南の女性は老若を問わず、よく編み物をしている。かばんに毛糸玉を入れ、棒編みをしながら歩き、談笑し、信じがたいほどに揺れるバスにも平気で乗る。農村部では移動のためのトラクターにのって編み物をしている人も見た。転んだ拍子に編み棒が凶器になることはないのだろうかと、心配になるほど熱心なのだった。
ちなみに手編みの品は子供や恋人へのプレゼント用らしく、それらを身につけた子供や男性は見かけても、女性では見かけたことはなかった。
そもそも手製のものは女性が、意中を示すときに使うものだったらしい。雲南東南部の文山地方・硯山付近のイ族の村を訪れたとき、同行した日本の青年に手縫いの刺繍入りの靴底をプレゼントする村の娘さんがいた。「あの人が好きなのね」と周りの娘たちが、はやし立てて大騒ぎになった。彼女は真っ赤になりながら否定したが、本来は結婚の意志を伝えるもので、受け取ってもらうと結婚を承諾したものと見なすのだということだった。それを聞いた青年のあわてぶりがおかしかった。

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