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誘拐事件が減らなかったわけ(映画「最愛の子」を観て) 上

2016-02-05 17:10:56 | Weblog
写真は雲南の子供とお母さん。黒井駅という小さい駅だが、それでも子供の手はしっかりお母さんに握られていた。昆明駅では、時折、誘拐グループが子供を連れ去り、遠くへ連れて行く際に使われ、時折、誘拐グループが捕まっていた。(雲南の黒井駅にて)

【誘拐っ子を買うのは無罪】
雲南で子供および女性、誘拐事件が多発していると以前、当ブログでも書きました。
 ほんの一瞬目を離したすきに連れ去られたり、家に鍵を閉めて寝かせて買い物に出たすきに盗られたり、大胆にも親が手をつないでいるにもかかわらず、もぎとって車に乗せて走り去る、などという事件まで起きていて、私も幼児を持つ身としては、道路側に娘を絶対に歩かせないなど、そこにある危機として対処していたものでした。

買うニーズさえなければ、誘拐事件も減るのに、と思っていたのですが、買う側に罰則規定がなかったとは、いままで知りませんでした。

それが昨年(2015年)11月、ようやく買う側にも罰則がある法律が施行されました。

具体的には刑法第241条第6款の
「誘拐された婦女子を買った者で彼らを虐待および行動を阻む行為を為なかった場合、刑は減、軽もしくは免除される」
の免除の文字を削除した法律の改定が2015年8月29日に公布され、2015年11月1日より発令されました(人民網2015年8月29日より)

免除、とは事実上の無罪です。

しかし、誘拐された子供を買う行為が無罪とは理解に苦しみます。中国の法務者も混乱しがちな法律と考えていたのか、2006年の司法試験には上記の条文の正誤問題が出たほどです。

http://sifa.kaomanfen.com/question/51g1qj.html
(問題は「誘拐された婦女を買った者が、誘拐された婦女の要望によって元の住所地に帰るのを阻止しなかった場合、買った者の刑事責任を追求すべきである」、答えは、「誤り」。)

ただ、なぜ、このような奇妙な条文が今まであったのか、考える必要がありそうです。

まず、信じられないことですが、婦女子の誘拐が法律で禁止されたのが1991年。ほんの四半世紀前のことなのでした。
 ようやく法制化したものの、当時、農村部のかなりの地域で女性を売買して嫁をめとる売買婚が風習として根強くあり、ただ禁止するだけでは現状に合わなさすぎるため、風習を追認する形で1997年にいわゆる免除規定が追加されたというわけでした。
 
 免除規定を入れないと誘拐事件を罰する法が実効できないほど、中国では婦女子の売買は根強かったということです。まずは買われた婦女子がせめて暴力で傷つかないように法で守る必要があったのでした。
ただ、当然ながら。これでは誘拐事件は一向に減りません。それどころか、ここ10年、年間20万人もの子供の誘拐事件が起こり続けたのです。

そんな中、一本の映画がこの法律の改定へとつながるきっかけをつくったのです。中国で大ヒットした「最愛の子」(ピーター・チャン監督、2014年中国公開)。
先日、東京銀座シネスイッチに見に行きました。
(つづく)
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