雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南のとうがらし4

2010-12-25 20:49:43 | Weblog
文山州硯山県の民家。壁一面のとうがらし。どの家を見ても同様の風景だった。(2004年撮影)

【文山の干しとうがらし】
 一方、2003年10月中旬に雲南の南東部にある文山州では、とうもろこしと唐辛子とたばこに埋め尽くされた畑が一面に広がっていました。南米原産の作物で埋め尽くされた光景はもしやここが原産では? と勘違いしてしまうほどの迫力。

 家の軒先や壁、家の中の梁にまで、とにかく至る所に日本の「鷹の爪」によく似た大きさの赤唐辛子が逆さに吊られていました。壮観でした。なかでも文山州の邱北県や硯山県(苗族、ヤオ族、イ族など少数民族が多く暮らす地域です)はどこを歩いても唐辛子だらけ。

 じつは、このあたりの唐辛子は宜良あたりの大ぶりのものに対して「小辣」と呼ばれ、雲南の人には乾燥唐辛子の最高峰と認識されている雲南の特産品の一つなのです。小さくて細長く、皮が薄くて、色は鮮やかな赤でツヤがあり、香りも深く、ビタミンの含有量も豊富。

 味は宜良で見た大ぶりなものに比べると、辛さにパンチがあります。ピリッとくる。まさに日本の鷹の爪。

 ここの収穫は9月末。ちょうど雨期が終わる頃です。このとうがらしは皮が薄いので、乾期に突入すれば宜良のタイプよりもは断然、乾燥させやすいのでしょう。乾燥タイプから、保存が効く上、軽いので、とうがらしの形のまま遠方までの流通も可能です。

 統計では文山州のとうがらしは2005年には年産6万トンを超え、その半分は輸出されました。2008年には文山の唐辛子卸値は最高値を更新。今年はさらに上がっています。もちろん、中国の物価高を考慮しなくてはなりませんが、それでも価値は年々、高まっているわけです。

 この急速な値上がりもあって、2010年6月28日には文山のお隣、雲南中部の石屏県では奇妙な事件まで起きてしまいました。雲南小米辣という、文山のものより小さなとうがらしでの話ですが、この値上がりに目をつけた地元ヤクザがなんと、農貿市場で脅しあげて市場価格より安値(500グラム1.9元のところを500グラム1.7元)で買い占め(370元分、つまり約110キログラム)、また、他の市場でも同様の行為を繰り返したというもの。これは省外に持ち出すときに高速道路にいた民警によって7月7日にお縄となりましたが、高値が続く限り、奇妙な事件は今後も続きそうな気配です。

*この一年、お読みくださった方々、いま、初めて読まれた方も、お付き合いくださり、ありがとうございました。遅々としておりますが、来年もよろしくお願い申し上げます。
*次週は更新をお休みします。良いお年をお過ごしください。

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雲南のとうがらし3

2010-12-18 18:31:16 | Weblog


宜良の市場にて。写真左は瀋陽市の国営工場製の機械で唐辛子を刻む。ちなみに雲南では、米線に細長く押し出す機械もなぜか瀋陽製が多い。食品関係の機械が得意な地域のようである。
写真右は、動力は人間の力で唐辛子を切り刻む。こちらの方が、なぜかさわやかな香りが高いような気がした。

【切り刻む機械】
ヘタ取りを終え、5ミリ幅程度のざく切りにする工程がまた興味深いものでした。あるところでは、はるか北方の瀋陽市の国営工場製の機械(専用機械があるのだ)を使っていました。スパゲッティの麺を押し出すように、一気にたらいに切ったものが押し出されていきます。または、伝統的なスタイルなのでしょう、1.5メートル×30センチぐらいの細長いの木桶にざく切り専用の特殊な道具を使って、おばちゃん達がザクザクと切り刻んでいました。日本では見たこともないような独特な形のものです。仕事をしている、という壮絶さはなく、ひたすらおだやか。

どっちを向いてもジャクジャクという小気味よい音がし、さわやかな香りが漂っています。辛さでむせることはない。目にも染みない。ひたすらピーマンの青臭さが抜けたような香りが、暑い日差しに心地よいのです。

さて、ここまでしたら、この後には普通だったら、すぐに塩を入れて乳酸発酵させそうなのですが、この市場では、その様子がまるでありません。ざく切りしたものを1キロぐらいの単位でただただ瓶詰めしているのです。

どうやらこのあたりの人々は自家製の味付けや使い方にこだわりがあるようで、様々な味付けや使い方ができるように味つけなど、(宜良は雲南名産品と一つ『湯池老醤』の産地。唐辛子をベースに様々な調味料、ものによっては野生のキノコを混ぜ、発酵させた調味料もヒットしている。ごはんに載せて食べてもよし、炒め物に混ぜてもよし。これを使って豆腐の唐辛子漬けや辛い浜納豆のような「豆鼓」など様々な製品を作っているのだが、それもまた雲南では人気がある。唐辛子は隠し味のはずだが、結構、辛い。)

ちょっと切ったばかりのものをいただいてみましたが、激辛、というほどではなく、辛みの中に甘さや旨みがあるような深みがありました。辛いけど、うまい、という味です。

さて、一度、切り刻むと、塩やアルコールなどを混ぜない限りは、傷みが早かろうにと思ったのですが、ここではその心配の必要がないほど、よく売れていました。

 聞くと、ちょっとした肉料理にネギなどのハーブ系とともに、たっぷりの生の刻み唐辛子を入れて、塩や醤油で炒めたり、などしていると、すぐに使い切ってしまうそうです。防腐にかかわる作業はしないようなのです。

写真下は、写真上右の唐辛子を刻む機械の全貌。写真を撮ったら、とても喜んでいた。
      



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雲南のとうがらし2

2010-12-11 13:58:07 | Weblog
写真は宜良の市場にて。子供達もせっせと、緑色のヘタをとる。ちなみに唐辛子で一番辛い部分は、ヘタの部分から先端に向けてついている種の付いた胎座、と呼ばれる部分である。普段の料理で雲南で辛すぎる唐辛子を買った時は、その部分を取り除いて使うと日本人にはちょうどよい辛さとなる。(日本の鷹の爪の方が一個あたりは辛い。)

【「生」を刻む】
 市場やスーパーに行けば、野菜売り場では生、乾物売り場では干した保存食や、干したものを加工した粗挽き品や粉がすぐに目につきます。また、市場の中だけでも唐辛子を利用した加工品も枚挙にいとまがないほどです。たとえば、豆腐にたっぷりと唐辛子をまぶしたものや、辛子味噌、赤々とまぶした浜納豆や乳酸発酵した唐辛子の丸ごと漬け、唐辛子などにつけこんだ川魚などバラエティ豊かです。

 2010年8月中旬、昆明のお隣、宜良の市場に行ったときには、野菜売り場はほぼ唐辛子に独占されていました。すべて付近の畑からの直送品、すなわち生ものです。昆明付近の標高1900メートル前後の平らな高原では、ちょうど唐辛子の収穫期だったのです。軽トラの荷台の天井まで唐辛子がぎっしりと詰まったものを無造作に市場に山積みしたり、10キロの米が入っていた大袋を再利用し、詰め込んだものなどが次々に搬入されてきました。

 丸いものからピーマンに横縞の溝が入ったものまで様々な色や形の唐辛子が並ぶ中、ひときわ目を引いたのが30センチ以上の細長く尖った、まるで凶器のようにピカピカ光る深紅の唐辛子でした。唐辛子でも大型のタイプです。地元の人はただ「辣子」とか地元の人はただ「辣子」とか「中辣」と呼んでいるもの。唐辛子としては、これでも中ぶりなサイズで、肉厚で種が少なく、香り高いのが特徴。辛みは唐辛子の中では中程度、といわれています。ちなみにこれより大きな「大辣」は雲南北方の昭通地区での際材が盛んです。肉厚で粉にする部分が多い品種として好まれています。当然、その地区では乾燥させて使用します。

 ところがここの売り場の人々はそのバナナを細長くしたような見事な唐辛子を、自分の売り場近くに持って行っては、生のまま切り刻んで、ひたすら瓶詰めにしているのです。これが一店ではなく、一帯で、です。圧巻。ほんの一部だけ、乾燥目的でコンクリートの上で干していたものもありました。ずいぶん、中途半端な感じでした。

 思うに、8月といえば、雲南は雨期。雨が多い上、しかも肉厚とあっては、なかなか乾燥させるのは難しいのでしょう。そこで、保存の第2の手段として、この工程を行っているのでは、と考えました。

 ところで市場には夏休み中の子供達がずいぶんいました。宿題の帳面を売り場台の端に広げ、ちびた鉛筆を持って、薄暗がりの中でもかまわず熱心に勉強している子がたくさんいます。そんな子供達が勉強に疲れると、息抜きにするのが親の手伝い。親の脇で、運ばれたばかりの真っ赤な唐辛子に、ちょんと突き出た深緑のヘタを取っていました。偉いなあ、と感心。なにより子供も大人も、ものすごく楽しそうです。どこでも手を休めることなく、賑やかなおしゃべりに花が咲いていました。
(つづく)
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雲南のとうがらし1

2010-12-05 17:07:57 | Weblog
                                 
昆明に近い宜良の市場にて(2010年夏撮影)。上は1本の長さが30センチはある中ラーと呼ばれる中型唐辛子、下の写真の左がピーマンの熟したもの、それ以外はピーマンに横縞が入ったようにつぶれた形の唐辛子。色は様々だが、全部、売り物。それほど辛くない、と地元の方はいった。

【さまざまな種類】
 今や雲南料理に唐辛子はかかせません。以前にも書きましたが、雲南の世界遺産・麗江から南京大学へ留学したある男性は、たまらないほどのホームシックにかかってしまいました。そこで帰宅したときに、一抱えの唐辛子を持って大学に戻ったところ、ほっこりと落ち着いたのです。(現在は日本の大学で先生をしています。)つまり、雲南の人にとっての唐辛子は日本人にとっての「梅干し」のような存在なのでしょう。

 日本で唐辛子というと「鷹の爪」や沖縄の「島とうがらし」、辛くない「万願寺」など数種類しか思い浮かばないのですが、雲南では、様々な唐辛子に出会うことができました。長さ30センチ以上はある赤唐辛子や、中ぐらいの大きさの赤や青の唐辛子、ピーマンに見慣れた縦ではなく横皺が入ったもの(辛かった)、小指よりも小さくて青い「小米ラー」などなど。味も激辛から微辛、甘いピーマン系まで様々です。

 そもそも中南米原産の唐辛子が現在、おそろしくバラエティに富んでいるのはなぜかというと、土壌によってその性質を容易に変化させる特徴があるからなのだとか。
 そのためか家庭菜園でも、ごく普通のピーマンを育てていたはずなのに、まれに辛いものが出来てしまったり、またはその逆があったり、と不安定きわまりないことにドキドキされた方もいることでしょう。(私だけ?)

 ちなみに農業書を読むと、甘ければピーマン、辛ければ唐辛子というだけで、同じ種類なのだそうです。色だって、青いものも育ちきれば、驚くほど、きれいな赤になります。ほうっておくと紫にまで変化します。どれも市場では同じ名前で売られているのです。

 そんな気ままな唐辛子、日本でもかつては50種類以上が育っていたそうですが、今や数種類に絞られているのとは反対に、中国では四川・貴州・湖南省の激辛地区ばかりか、近年、唐辛子指向が各地に広がっている上、キムチの国・韓国や日本などへの主な輸出国でもあることもあって、それこそ中国全土にあまねく植えられ、いまでは様々な品種が普通に出回るようになりました。

 なかでも雲南は、標高が数十メートルからヒマラヤ山脈まで続く6千メートル級の高地まで驚くほどの立体的な地形を持っているので、唐辛子は合わせると10ヶ月以上はどこかが必ず収穫期となっています。そして貴重な現金収入源となっているのです。

 今回はこんな雲南の唐辛子に注目してみましょう。        (つづく)


コメント (2)
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