雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

紅嘴鴎

2006-12-29 21:05:46 | Weblog
 昆明の冬の訪れを告げるのが、「紅嘴鴎」の飛来。その名の通り、嘴が赤いのが特徴だが、日本名を辞書で調べると、ユリカモメとある。日本のユリカモメは三白眼で嘴が黄色かった気がするが、本当に同じ鳥なのだろうか。1985年11月に突然、昆明上空にあらわれ、その後、毎年、頭数を増やして訪れるようになった。調査によると、シベリアより数万羽規模でやってきているそうだ。
 
 ユリカモメは市内中央を流れる盤龍江と翠湖、そしてテン池に集中する。目元がまんまるで優しく、集団で飛び上がったり、水面で休んだりする姿は、不思議と心和む。この鳥を今年もひとめ見ようと、昆明っこは週末、翠湖を訪れる。徒歩ですら、大渋滞を起こすような混雑ぶりだ。当然のように「鳥のえさ」と称する、鹿せんべいのようなものも大量に売り出され、専門家は「生態系を乱す」と警鐘を鳴らしていた。野生動物の集まるところ、どこの国でも共通する現象なのかもしれない。


 今年は、はじめてブログを書いた年でした。つたない文章におつきあいくださり、本当にありがとうございました。私も楽しめました。来年も茶の話など、最新状況を交えながらお送りしたいと思います。どうぞ、おつきあいください。
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雲南の冬の味覚「柚子」3

2006-12-22 23:53:48 | Weblog
 写真左側中央は「本草綱目」の柚、右下が「植物名實図考」の柚。

 今日は冬至です。ゆず湯に入られた方もいらっしゃることでしょう。中盤の名前の由来は長いので、読み飛ばしてください。調べだしたら止まらなくなってしまっただけなので、最初の部分と最後の結論だけをどうぞ。

【ヨウズの原産地】
 昆明のヨウズは主に雲南省の南部・西双版納(シーサンパンナ)で収穫される。標高1890メートルの昆明と比べて、シーサンパンナ州の州都・景洪(チンホン)の海抜は550メートル。海抜が低い上に日本の仙台から東京ほどの距離を南下するため、一年中、南国フルーツがたわわに実る、亜熱帯気候なのだ。植物図鑑にも原産地は雲南、東南アジアと書いてあったので、本場なのだろう。

 1月にシーサンパンナ州の「モンルン」に行った折には、こんな大きなものがぶら下がって樹木は傷まないのかしら、と心配するほどヨウズがそこら中で実っていた。もちろん、地元の路上や市場でもヨウズがたくさん売られていた。値段は1個1元(15円弱)ほど。昆明の半額ぐらいだ。

 ちょうどスイカも収穫期で、路上で売っていたので、その甘みにむしゃぶりついた。ラグビーボールほどのすいかが半個で1元。飲み物の自動販売機などない田舎では、くだものの地売りがなにより喉をうるおしてくれるのだと実感した。スイカは、このあたりでは1980年代半ば水田裏作として始められ、極寒の東北地区に冬場に出荷すると高く売れるというので、以降、さかんになったのだそうだ。

【柚子はユズ? ヨウズ?】
 では、なぜ日本で柚子はユズを指すものが、中国ではブンタンを指すのだろう。
事典(平凡社大百科事典、1985年)のユズの項を引いて見ると「中国名の〈柚〉は転化して現在はブンタンをさす。」とあった。この文章によると、中国でも元はユズを意味していたものが、いずれかの時にブンタンをさしたことになる。

 西暦100年ごろの後漢時代(古墳時代より以前)につくられた中国最古の部首別字書『説文解字』によると「柚は橙に似て酢っぱい」と書かれている。橙は「橘の属」と説明されているので、柚は柑橘系で果汁が酸っぱいものだとわかる。どちらかというとユズを指しているようではないか。

 次に一気に時代が下り漢方薬の大著として有名な明代(日本では室町時代ごろ)の『本草綱目』では柚の別名として「臭橙、朱欒」とあり、その解説には「今の人はその黄色くて小さいものを蜜筒(瓜の一種らしい)と呼ぶ。大きいものを朱欒という」と書かれていた。
 ‘朱欒’は日本ではザボンと音読され、ブンタンと同じ意味だ(と、植物学では理解されている)。産地は広南、ともある。末文は「大小や古今や方言によって呼び方は同じではない」と結ばれていた。明らかにブンタンを指した文章だ。

 『本草綱目』の挿絵を見ると皮の分厚さがおそろしく強調されたまん丸の実が描かれている。うまい絵とはいえないが、ブンタンの特徴がよく表れている。つまり明代には柚子はブンタンを意味していたらしい。

 さらに時代を下って清代(日本では江戸時代ごろ)に書かれた『植物名実図考』には「柚は南方にきわめて多く、赤い果肉で、たいへん佳しきもの」とある。香りにはまったく触れていない。やはりユズというよりブンタンをさしているようだ。ユズならば、そのままで食べるには、ちと苦い。だが、挿絵を見ると、グレープフルーツ系であるブンタンに特徴的なツルツルとした皮ではなく、ボツボツの皮で実の下の部分がきゅっとすぼまった形で描かれている。この丸さのない、ごつごつとした形はユズっぽい。むう、どちらを意味しているのじゃ、と絵に問いかけてみたくなる。

 『本草綱目』の作者・李時珍は湖北省出身、『植物名実図考』の作者・呉其しょうは河南省出身なので、わりと地域的に近接している。同じものを意味しているような気もするが、どうだろう。

 ぜひ、皆さんの意見をお聞かせください。
 ただ一ついえることは、ユズは耐寒性があるが、ブンタンは暖かいところでしか育たないこと。地域性があるので、同じ漢字でも呼び名が変わることは当然ありうるだろう。

【すっぱいのがユズ】
 日本に目を向けると、ユズは古来、もしくは奈良、飛鳥時代に中国あたりから渡来したらしい。表面がでこぼこしていることから「オニタチバナ」とも呼ばれていた。「ユズは実のすっぱい酸をユノスとよび、これがつまってユズとなった」(たべもの語源辞典、清水桂一編、東京堂書店)。

 一方、ブンタンは江戸時代までに南方から持ち込まれたといわれる。元禄時代の「嵯峨日記」などにブンタンのことを書いた文がでている。

 おもしろい話を見つけた。「ブンタン」の由来についてだ。1927年生まれの佐賀大学名誉教授岩政正男さんが台湾大学に行った折に聞いた話では、「旦は俳優を意味し、昔、文という俳優さんの庭園に見事な洋ナシ形をした柚があったので、この果実を文旦と呼ぶようになったという。」(岸本修編『日本のくだものと風土』古今書院)
 ブンタンの代表種・晩白柚(バンペイユ)も日本の台湾統治下の1930年に台湾から日本に導入されている。南方からもたらされたくだものであることは間違いない。しかし、それにしても名前の付け方は、ずいぶん、いいかげんなものだ。

 中国でもユズはあるにはあるが、現在ではあまり料理には使われない。日本ほどポピュラーな食物ではないのだ。だからこそ、南方の珍しい実であったブンタンが「柚子」の字を頂戴することになったのかもしれない。
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雲南の冬の味覚「柚子」2

2006-12-15 22:34:17 | Weblog
写真はマンゴーの量り売り。秤に載らない場合はビニール袋に入れて、直接量ることが多い。ちなみに袋いっぱい買って1.5元(20円ほど)だった。(夏、建水の市場にて)
【ヨウズの買い方】
 どんな食べ物にもいえるのだが、市場で売り子さんに声をかけると、
 「これはおいしいよ。これはきれい。」などといいながら、彼らは少しでも大きいものを秤に載せ始める。中国では食品は量り売りが基本なので大きい方が儲けも大きいのだ。外国人慣れした地区ではうっかりすると、秤に載せられるだけ載せて、いきなり「○○元」とくるからたまらない。
 「いらないです」とジェスチャーしても、聞こえないね、という態度を示されて、しぶしぶお金を払う人のよさそうな欧米人を何度見たことか。

 いいなりになると朝昼晩と同じものを食べ続けることになってしまう。だから市場では、毅然と自分の買いたいものを指して、それ以外は受け取らない、と顔に書いてあるぐらいの気迫が必要だ。

 日本人の場合はしゃべらなければほとんど現地の人と見分けがつかないので、しゃべらず指差し、が一番だろう(と受け入れ先の昆明っ子家族に教わった)。

 とはいえ雲南では、現地の事情にうといからといって、値段をふっかけてくることはないので、食品ならば、まず値切り交渉はしなくてよい。量だけが問題なのだ。その交渉もいやなら外資系のスーパーマーケットで買うのが一番だ。ただし鮮度は若干、落ちる。

【「むく」というサービス】
 さて、お金を払うと、今度は売り子さんが「むくか?」と聞いてくる。うなずくと、2センチくらいありそうな、外はレモン色、中はふわふわの綿のような果皮を手早く取り去ってくれる。見事な手さばきだ。

 だが、切るところが問題でゴミも落ちている地面に直接置いてしまう。そして、今まで何を切っていたのかわからないようなナイフで6カ所ぐらい上下に切り込みを入れて、むいていくのが、つらい。

 時折、鼻水をすすった手で食べる部分まで触られてしまうこともあるので、サービスはありがたいのだが、なるべく断るように心がけた。なるべく、とつくのは、遠慮していると思うのか、笑顔で「いいからいいから」といいながら、むいていく勢いに負けてしまうことも結構あったからだ。
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雲南の冬の味覚、「柚子」 1

2006-12-08 22:59:48 | Weblog
写真は町の「柚子」売り。皮はきれいにむいて一個1~2元で売っている。
【庶民のフルーツ】
 冬といえば「柚子」。中国語で「ヨウズ」と読む。といっても和食の香りづけや冬至の風呂に浮かべるユズではなく、中国では子供の頭ほどもある文旦を指す。

 雲南では11月下旬から1月末ごろまで、これが、日本の「コタツでみかん」に匹敵するフルーツとなる。市場の売り子から町の通行人、幼稚園の先生にいたるまで、ちょっと手が空くと、ぱくぱく食べている。価格は1キロ1元ぐらい(約14円)。一個が2キロぐらいなのでなので30円もあれば一日分のビタミンCがばっちりとれる。町の500ミリリットル入りのミネラルウオーターが1本1元なので、手ごろな価格といえる。それでいて味といい、香りといい(昆明にいるとあまりにもあふれているので忘れてしまうが)一級品なのだから、たまらない。

 1㎝以上はあるレモン色の分厚い果皮をやっとの思いでむくと、薄皮にくるまれた食べる部分の果肉が出てくる。果肉にはレモン色とダイダイ色の2種類あって、ダイダイ色の方は甘みが強く、レモン色の方はさわやかな酸味が口いっぱいに広がる。本をよむと赤い果肉の色素はリコピンでトマトやグレープフルーツのレッド系の赤色と同じものだそうだ。

 不思議と当たり外れがなく、剥きたてのヨウズは、プリプリとしたみずみずしい食感とさわやかな香りが食欲をそそる。乾期の喉をうるおすにはぴったりなのだ。

(「昆明の幼稚園事情」が長かったので、閑話休題です。季節の味をお楽しみください。)
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肝炎がいっぱい

2006-12-01 22:48:19 | Weblog
いつもお読みくださり、ありがとうございます。下のコメントボタンをクリックするとコメントが書けるそうです。何か、ございましたら、お気軽にどうぞ。

 さて、写真は前回の授業参観のテラスでのお遊戯風景。幼稚園の周囲はすべて1階部分は店舗、2階以上は住宅用マンションで埋め尽くされている。町が急速に発展し昆明市内に取り込まれた地区なので、いずれのマンションもだいたい築10年未満だとのこと。

【予想以上に多い肝炎の実態】
 ある春の昼下がり、教室ごとに名簿が張り出された。何かの検査結果の発表のようだ。上の欄には「甲型肝炎」「乙型肝炎」とかかれていて、下の欄には名前とともにプラスとマイナスの記号がずらりと並んでいる。家に帰って辞書で調べてみると、A型肝炎とB型肝炎の検査結果だということがわかった。そのような医学系の個人情報が、何の躊躇もなく張り出されていたことにも驚いたが、なによりもクラスの半数以上の人が、下手をするとどちらの型の肝炎にもかかっていることに仰天した。よく日本で見かける中国のガイドブックには「肝炎保持者が多いので気をつけましょう。」と書かれているが、本当に身に迫る危険なのだということを実感せずにはいられない。

 検査でプラスと出た人は翌日から、保健室の先生から朝、門のところで薬をスポイルで飲まされていた。肝炎の治療薬らしい。A型肝炎は経口感染だというのに、スポイトを回し使いしているのにも驚いた。

【予防接種が頼みの綱】
 ちなみにA型肝炎は生水や生もので感染するもので、まれに劇症化するらしいが、ほとんどの場合、何もないか、高熱が出る程度で治癒するらしい。一度、かかると免疫ができて二度と罹患することはないという。日本ではこの抗体を持っている人は、今や、衛生状態の悪い時代を生き抜いた高齢者だけとなっているそうだ。一方、B型肝炎は深刻で、母子感染のケースが高く、幼児期に無症状でも大人になってから肝臓をむしばまれるケースがある。また感染経路は血液感染などとなる(「家庭の医学」より)。

 我が家は渡航前に考え得る限りの予防接種を受けてきたので、うつる心配はまずない、大丈夫、普通の生活では感染しない、と心をなだめつつも、子供には「箸の交換とかしちゃダメだよ」と、つい過剰な反応をしてしまうのであった。とはいえ、遊び盛りの子供にいっても無駄なのだけれど。

 せいぜい予防接種の効力に期待するか、幼稚園での生活はいいところ、だ液感染、つまりA型肝炎なので、感染後に薬を飲めば大丈夫、腹をくくるしかなかった。

 その後、感染結果表は1ヶ月も貼られ続けていた。
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