雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

うまいビール7 瀾滄江ビール

2016-09-23 15:37:35 | Weblog
写真はシーサンパンナの棟上げ式にて。人々はビールを瓶から直接飲んでいた。

【次々と異業種を吸収合併し巨大化したビール会社】

その頃、雲南ビール界のもう一方の雄、瀾滄江ビールはどう動いていたのでしょうか?

まず、ざっとこの会社の歴史を振り返ってみます。

鄧小平の改革開放の号令によって共産党員の劉光漢が1985年に国営企業として創業。

1990年に初めてビールを製造し、1997年に瀾滄江ビール企業集団を設立。臨滄市雲県を中心に1998年から2003年にかけて次々と周辺のビール工場を合併。

多角経営にも乗り出して、2006年には1万3000ヘクタール以上の茶畑を確保して、緑茶や紅茶、プーアル茶などの茶葉・飲料の製造を開始。

さらに2007年には白酒の生産も始めました。白酒とは、蒸留酒つまり、焼酎のことを指します。これは2014年末で生産能力はビール80万トン、白酒10万トンで、さらに現在では葡萄酒など100種類以上の商品展開を行っているようです(「食品商務網」http://lcjlsh.21food.cn/company/cominfo148147.html)

ビールだけに頼らない戦略と、大都市・昆明からは距離があったこと、「大理ビール」の元総経理の楊氏ほど、市場動向の先行きに悲観的ではなかったため、「大理ビール」とは、真逆の独立独歩の道を進んでいます。

実感として、接待や目上の人への手土産品として赤い箱にうやうやしく入った、この会社が製造する白酒の「雲南老窖」は他省の銘酒よりは若干安い上に、箔がつくので接待の時には重宝されていました。

ただ、これほどの他品種展開の中で、会社としてどれほどの利益があるのか、やや疑問があるのですが、内実は公開されておらず、わかりませんでした。

いずれにせよ、はっきりいえるのは、雲南ではビールだけではどうにも心許なく、雲南で中国市場に対抗でき、利益が出るのは茶と白酒(焼酎)なのだ、ということです。

次回からは雲南の白酒を見てきましょう。(つづく)
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うまいビール6 覇者から大名へ

2016-09-18 11:26:21 | Weblog

写真は大理市内の市場。2004年の様子。後ろには大理ビールの水をはぐくむ山々が見える。

【自伝で鬱屈を紛らわせる】
「大理ビール」の拡大に心血を注いできた楊が、業績が順調に拡大している中で買収に応じたのは、いくつか理由があります。その一つには、楊が最初に手がけた改革のうち、品質を高めるために選んだビール酵母がカールスバーグ集団のものだったことです。

しかし最大の理由は、一向に拡大しない雲南のビール市場のなか、次々と押し寄せる省外のビッグブランドの中で、これ以上、独自では商機を見いだせなくなったのでしょう。

今振り返ると、私が飲んでいた大理ビールはカールスバーグに傘下入り前後だったわけですが、雲南料理にあう、さっぱりとした味で、しかも安く、コクもそこそこある、という雲南で手に入る中では最高のビールでした。

さて、2003年に傘下入りしカールスバーグ雲南区主席としての地位を得た楊ですが、心にたまる鬱屈をはき出すかのように4年の歳月をかけて今年2月に『大理啤酒那些事(大理ビールでの出来事)』(雲南民族出版社、2016年)という本を出版しました。

そこにはどれほど経営に腐心し、どれほど成功したか、そしてなぜ「洋打工」(海外企業の雇われ人)になったか、といった大理ビールとともに歩んだ40年近い歳月が切々と綴られています。

理系的発想法で経営の壁を乗り越え、突破し続ける10年の歳月のなかで、独力で次の壁を越える気力はうせてしまった。そして戦国時代の覇者ではなく、大名の位に就いたのです。
(つづく)
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うまいビール5 世界のビールシェア争いのフロンティアの果て

2016-09-10 16:36:57 | Weblog
写真は中国で売られているサントリービールの缶。

【飲み込まれる】
中国全体ではビールの消費量も増大しているのに雲南では、消費量が伸び悩んでいることは前回、お伝えしました。

そうなるとは知らず、中国最後のビールフロンティアである雲南のあまりある伸びしろを見込んで世界のビールメーカーがひたひたと雲南に押し寄せていた時期がありました。

2002年、中国最古参・山東省の「青島ビール」、国内最大規模の生産量を誇る北京の「燕京ビール」が広西壮族自治区のビール会社を買収、
やはり銘酒・貴州省の「茅台酒」がドイツ、イタリアからビールの生産ラインを購入し、隣接する雲南を窺っていました。

これに雲南のビール会社は震え上がりました。

「大理ビール」総経理の楊澤彪は
「絶対に株による提携はしない」
と宣言し、買収を牽制します。

その直後、デンマーク王室御用達のカールスバーグ
(世界シェア4位。この上位4位までのメーカーで世界の販売量の50%を占めている:2010年2月9日ロイター通信よりhttp://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-13791720100209。ちなみに日本ではサントリーが委託生産販売を行っている)
 が昆明市の「雲南華獅ビール」を買収し、次に楊澤彪を捜しはじめました。
そして、ついに2003年6月に「大理ビール」も6.6億元でカールスバーグの傘下となったのでした。

【東南アジアの生産・販売拠点に】
カールスバーグは雲南での販売以上に、雲南を拠点にミャンマー、ベトナム、ラオスなどの東南アジア市場に打って出る戦略でした。そのため雲南全体で2015年には年産60万トンの工場ラインを完成させ、ミャンマー、タイ、インド、ラオスなどに輸出しています
(ベトナムにはカールスバーグの別会社があるので輸出はなし)

一方で「大理ビール」を飲み込んだ後も休むことなく、中国西部地区のビールメーカー「西蔵ラサビール」、新疆ウイグル自治区の「鳥蘇ビール」など10数社と提携、その後、完全子会社化を進め、カールスバーグは中国西部地区のビール指導者とも称されています。

ちなみにカールスバーグは中国ビールメーカーでは、シェア5位。ロシアでもビール-最大手を傘下に収めているものの、ウクライナ問題、酒販規制などで遅れを取っている分を中国で巻き返したいところだそうです。(日本経済新聞電子版2015年4月18日付け)

大理ではぐくまれた地元の味が、グローバル経済のたんなる1ピースになってしまったことは、大理ビールファンとしては悲しくもあるのですが、次回、その後の楊澤彪氏の様子をご紹介しましょう。
(つづく)

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うまいビール4

2016-09-03 11:06:46 | Weblog
写真は麗江でみた麦干し棚。このあたりでは伝統的にハダカムギを植え、主食としてきた。ハダカムギは大麦属なので、ビール用の大麦も獲れるだろうと研究を進め、成果が出ている。

【行き場のない大麦】
 こうなると、困るのが、大理市に呼びかけて確保した大麦畑です。

大理ビールの大麦基地として10万畝(約67ヘクタール=東京ドーム約1万4184個分、さらに雲南の二大ビールメーカーの一つ、瀾滄江ビールも同じ規模の大麦生産基地を持っていました。

しかも大麦を育てる技術は年々向上し、昨年11月、大理のお隣麗江での単位あたりの大麦生産量は全国最高を記録しました。〈100畝(約6.7ヘクタール)あたり745.9㎏〉

中国では大麦は足りないほどの状況のはずですが、実際には余ってしまう。これが2008年ごろから雲南省全体で問題となってきました。

【ビール大国・中国に大麦を】
中国全体で見ると7年連続で、ビール生産量世界一(2008年は4100万トン生産)。消費量も2003年から一貫して世界一位という世界一のビール大国なのです。(「キリンビール大学」http://www.kirin.co.jp/company/news/2014/1224_01.htmlより)

しかも、ビール麦芽の50%以上は外国産に頼っています。

そこで、浙江省の台寧麦芽有限公司(現在は浙江から大理に会社を移転している)が大理の大麦を買い取って麦芽にし、中国やベトナムの各メーカーに販売する計画を立てました。

 現状、ベトナムへの輸出が中心となっているのはビール用麦芽としての品質が安定していないため。標高差が激しい雲南では安定品質は難しい課題です。

 中国全体では内蒙古自治区を中心にビール用大麦畑が2004年の30倍の大きさに急拡大しています。それでも、大麦麦芽は輸入品が中心です。品質面で外国産と中国産ではまだまだ差があるのです。

昨年末の2015年11月には中国が英国から、今後5年間で1億ポンド、75万トンの大麦と大麦麦芽を買い取る大型契約が交わされています(英国環境・食糧・農村相英国農業園芸開発公社エリザベス・トラス議員2015年11月11日更新https://www.gov.uk/government/news/uk-barley-deal-worth-100-million-to-boost-chinese-beer-industry.zh)

 ビール生産量、消費量ともに世界一の中国が、他国から集めるビール用大麦と麦芽。一方で、大理も負けじと大麦を、ビール用麦芽にするための工場増設の投資者を現在、募っています。なんとしても中国で使ってもらえる麦芽を作り出さなければならないのです。
 もし、この投資の興味がありましたら、どうぞ。(大理年産10万噸啤酒麦芽加工生産項目 投資額:4億元 大理招商合作局 電話:0872-2317995 6年で投資回収見込み。利潤率75%見込み)
                                        (つづく)

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