雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

通海の甘酒④ 雲南の昔のお酒

2014-02-14 14:03:59 | Weblog

写真上は大理の中心部から離れた保山への街道筋。大理から保山への街道は昔から旅人が利用した。山また山、渓谷越えが多く、戦前に日本の東亜同文学院の若者が同ルートを通過の際にも尾根につくと、米線や飲み物など簡単なものが売られていたという。
と写真下は大理古城内・文化園客桟前の露天の様子。客桟とは中国では古くは酒店を意味し、同時に簡単な食べ物を用意していた。現代では簡易ホテルの意味を持つ。インターネット上のチャットの部屋も客桟と呼ぶ。(2005年春撮影。)

【旅人を甘酒でもてなすこと】
 そもそも、雲南では昔から旅人には甘酒を出す習慣がありました。日本と同じです。日本で初もうでに行くと、今でも甘酒で氏子会などがもてなしてくれますが、同じ習慣といえましょう。

 江戸時代ごろから伝わる伝統行事では、村で甘酒を大甕に仕込んで、祭りの日に皆で飲む習慣が残されている地域があります。

 某雑誌の取材で話を聞くと
「役人がうるさいから甘酒と言っているけど、ちゃんとコウジで仕込んでるから3日以上経つと、それ以降は酒になるんだよなあ」と明るくおじいさんが話してくれました。すでにおじいさんの顔は赤ら顔。どぶろく、おそろし。
 つまりコウジが生きていれば甘酒はアルコールになる。それだけに品質管理が重要になります。

 清の康煕年間に書かれた『雲南通志・土司』ほかで、雲南のイ族などの少数民族の間でもっぱら造られていたお酒は葡萄酒のように果実を醸した果実酒が主。あとは、元代以降からさかんに造られはじめた粟やソバなどの雑穀、いまではおもにとうもろこしで造られるアルコール度数の高い蒸留酒となります。雲南では一部地域を除いて、高原が多く、冷涼な気候のため、お米が獲れる地域が限られていたためでしょう。

 一方で漢族が住む地域では甘酒が主でした。明の地理学者にして旅行家の徐霞客が大理から永昌(今の保山)に行く途中の渓谷を越える時の記述には

「数家が南の峡谷にあった。橋のところでは『漿(どろりとした液体状のもの)』を売る者あり。糟がたくさん入っていて、それを啜ってみると、それは酒醸だった」(『徐霞客遊記・滇遊記之9』)

 とあります。これは、どう考えても甘酒のようです。

*来週の更新はお休みします。体を壊しやすい時期ですので、みなさま、身体を大切におすごしください。

*川野明正著の白帝社アジア史選書011『雲南の歴史 アジア十字路に交錯する他民族世界』が昨年12月に出版されました。川野さんは、しょっちゅう雲南に赴き、奥さんも雲南の方、とどっぷり雲南に浸かっておられます。雲南の概説書は数冊、ありますが、ですます調のやさしい文体が特徴で、近代のことがよく書かれています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

通海の甘酒③ 甕出し甘酒はいずこ

2014-02-09 09:48:46 | Weblog
ドライブインでは、甕からひしゃくですくって、甘酒を入れてくれた。甘みがふっくらとしておいしい。

【甕だし甘酒は通海限定】
 初めて雲南を訪れたとき、バスで立ち寄った通海の甕出し甘酒に病みつきになり、その後は昆明市内で探し求めました。雲南の名産は、市場や路上で季節になると「どこどこのいちご」とか「建水 毛豆腐」などというように場所と製品の名前をボール紙や木札に書いて売っていたので、注意していたのです。こういうものは大抵、昆明に持ってきてわざわざ売るほどの価値がある、昔ながらで防腐剤などのまぜもののない、おいしいものなのです。

 ところが、そこでは見あたらず、意外にもウオルマートなどの大型スーパーの食品売り場の冷蔵棚にありました。「通海甜白酒」と印字された透明なプラスチックの半円のパックに入っていました。ちょうど、日本のおぼろ豆腐がスーパーで売られているような形です。甕だしではありませんが試しに買ってみました。

 値段は流通コストや包装代が加わるため、じゃっかん高めになります。品質保持のためか、アルコール臭く、お米の甘みにふくらみがなく、お薬のように食べないと喉を通らない感じで残念に思いました。

 調べてみると、おいしい甕だし甘酒が昆明に輸送できないのには理由があり、甕が重く、割れやすいためであることと、甕で甘酒の品質を保持できるのは温度管理に注意しても1週間だが、パック詰めなら一年保持期限を表示できる、という納得の理由があるのだそうです。(2011年8月・昆明「生活新報」より)

 結局、昆明のスーパーで見た甘酒は通海産の一種類のみ。そして場所はヨーグルトやハムなどの並ぶ食品コーナーにありました。

 その後、2010年に北京のスーパーで同じパッケージの「通海甜白酒」を見つけたときは「お、雲南の企業も頑張っているな」とうれしくなりました。といっても実のところ、中国の甘酒の主流は雲南ではなく、湖北の佬米酒(孝感米酒とも書く)や四川の大竹醪糟が2大巨頭で有名です。いずれの産地も中国では有名な米どころの上、湿度の高い地域です。

 上海には「老上海酒醸原汁」と書かれた、酒粕から造られた甘酒があるそうです。これは、どちらかというと日本で今はやりの「塩コウジ」のような隠し味的調味料として現地では使われているとのこと。(「ブログ「中国、食うぞ、飲むぞ」http://ameblo.jp/parkshore1991/entry-10018272472.htmlより」)

甘酒も奥が深そうです。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする