雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

うまいビール3~超爽10度半!

2016-08-26 12:40:02 | Weblog
【‘超爽10度半’の秘密】
生産規模を拡大した1998年、一方で手がけたのが原麦汁濃度を下げたビールの開発でした。
今まで原麦汁濃度11%と12%の2種類だったところに、
農村向けに9%および10.5%を開発したのです。

これがこの回の第一回の写真の解説につけた「超爽10度半」ラベルの意味でした。

 素人考えでは麦の風味を薄めたビール、と思ってしまいそうですが、発酵度を高めてカロリーを減らしたビールなのだそうです。

 実際に味がよく、安いと大当たりを取りました。一方で、原麦汁濃度12%のものは高級感のある「風花雪月」というブランドへ昇華させてホテルなどに置くことで、これまた販売量を拡大していきました。

 そして、華やかな面でもっとも昆明に世界が注目した、1999年の昆明の世界園芸博の際には、500万元の寄付を行い、数百万元を出資して1011カ所に希望小学校を雲南の各州に建設し、地震の際の救援など、社会活動も積極的に行ったのでした。

【雲南でビールは傍流】
一技術者の楊澤彪率いる大理ビールがここまで努力し、当時、他にも競合他社が瀾滄江ビール、昆明金星ビールなど5社乱立するほどだったのですが、じつは雲南ではビールはまったく主流にはなりえませんでした。
 雲南ではあくまで‘酒’といえばアルコール度数が高いぴりりとした蒸留酒「白酒」。さらに農村なら自家製の「土酒」とよばれる蒸留酒も強敵です。(中国では自家製酒は造ってよい。)田舎の結婚式などに行ってもビールはまず、ありません。それで乾杯なんて度数が低すぎて恥ずかしい、ぐらいに思っているのではないでしょうか。

その風潮を変えることはできませんでした。

2008年の雲南ビール消費量は一人あたり年間12リットルで、これは全国平均の3分の1にすぎません。実質ベースだと、年間総消費量は全体20万トン以下で全国平均の5分の1というデータも。それなのにビールの生産能力は雲南省全体で80万リットルを超えていたのです
(2010年中国食品商務網「雲南省初歩京成啤酒大麦生産基地」)
(つづく)

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うまいビール2

2016-08-21 15:42:59 | Weblog
写真は大理の大湖のアー海西方にそびえる蒼山。最大高度4122メートル、19の主峰を持つ。ここの標高3000メートルあたりからの水を引いて大理ビールができあがる。

【理系の青年、危機を立て直す】

雲南の新聞で一番好きなビールに選ばれた「大理ビール」。その道のりから見てみます。
 
大理ビール有限公司は国の指導で1986年に創業。2年後には早くも倒産の危機を迎えます。

そのとき大理の主民族である白族出身で、1978年に四川にある上海化工学院の分院を卒業し、貴州の工場の技師として10年近く勤めていた中国共産党員の青年に立て直しのために白羽の矢が当たりました。

彼の名は楊澤彪。

本人曰く“本土の工業の振興のために人生初の大挑戦”を決意したのです。

着任早々、問題点を洗い出し、酵母を世界第4位のデンマークのビールメーカー・カールスバーグのビール酵母を取り寄せ、技術指導も受け、アルコール度数も高めた高級ビールから、より安価なアルコール度数の低めのビールまで数種類のラインナップをもうけました。麦芽とホップは輸入して、さわやかできめ細かい泡立ちの本格ビールを誕生させたのです。

また党の指導で総経理になった楊澤彪なので、大理市は最大の味方。市に要請して地元に麦芽用の大麦畑をつくり、徐々に地元シフトする体制も整えました。

1990年に招待したドイツのビール醸造家は、大理ビールの水の報告を聞くと「OK。この水は世界のビールの中でも最上の水を使っている」と太鼓判を押したそうです。

また大理市政府は
「大理が酒で接待しなければならない時には大理ビールを使うこと、市の渉外窓口には大理ビールを置くこと、大理人なら大理ビールを飲むこと」

というアピール文を提出。市挙げての応援態勢が作られました。町おこしの基本のようなスタイルです。

 さらに車の販売や各種売店の売り方を徹底的に分析し、
「地位は競争によって、収入は貢献によって」
「才能ある人を入れ、悪い人を淘汰する」
との国営企業的発想からの脱皮を掲げたスローガンを打ち出しました。

 こうして生産規模を500トンから1998年に12万トンに一気に挙げて雲南省最大のビール企業となりました。
(つづく)
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雲南の酒・ビール編 1 うまいビール

2016-08-10 15:44:41 | Weblog
2004年から2006年にかけて飲んでいた、なじみの大理ビール。このあと、雲南ビール戦国時代に巻き込まれていたとは露しらず。ひたすらおいしくいただいていました。もっさりとした緑色のビンと「超爽10度半」というわけのわからない文字、そして一本2元ほど、というはてしない安さに惹かれていました。

【昆明でナンバーワン人気のビール】
10年前、雲南で好んで飲んでいたのは大理ビールでした。緑のビンに入ったうす黄色で細やかな泡立ち、くせのないのどごし。どことなく日本のビールに似ていて、飲みやすかったのです。

アルコール分は2%台。日本のビールがアルコール分5%台なので、びっくりの低さと思うでしょうが、中国の、とくに地方で作られるビールの大半はたいてい2%台が普通なのです。

 雲南で同じくらい店に置かれていたのが瀾滄江ビールでした。こちらはやや色が濃い液体で、独特の甘みと香りがありました。雲南の料理屋でビールというとこのうちのどちらかが出てきたものです。

 大理ビール、当時、飲んでいたときは知らなかったのですが、日本人の私の舌にあった理由の一つは水にありました。
大理の下関西郊にある工場に引き込まれているのが、19の主峰が連なる最高海抜4122メートルの蒼山から取り出される雪解け水だそうです。それは中国大陸には珍しいきれいな軟水でした。

 2009年に雲南の地元紙《春城晩報》が主催した「食全酒美大調査」では雲南人が「最も好きなビール」の第1位に大理ビールが選ばれています。

ただ、ここまでの品質と味になるまでには倒産の危機に始まり、現状の中国ビール業界の戦国時代を生き抜く知恵まで、けっして楽な道のりではありませんでした。   (つづく)

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