雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南、めぐり● 市場から1

2007-10-26 22:58:04 | Weblog
写真は昆明の市場にて。野菜や果物が芸術的なまでに円錐形に並ぶことも多い。

【旬を逃すな】
中国の食文化を語る上で外せないのが、農貿市場(いちば)。近郊の農民が持ち寄った農作物を並べたところから始まった市場だ。ここでは冷蔵設備がほとんどないため、暑い蒸した日には、早朝に買い求める人が多い。早朝と値下げする夕方はとにかく活気がある。食に対する感性が磨かれていく感じだ。

ここでは、いつでも様々な食材が山盛りに並べられ、山菜や果物などから季節を感じることができた。桑の実の売り時は年に、たったの2日だけ。採れたときに並ぶのだ。(これを2キロ買って2元。ジャムにしました。おいしかったー。)

中国で市場の場所を見つけるのは簡単だ。国立歴史民俗博物館の西谷大氏も書いていたが、すぐにやぶれそうな赤いビニール袋を下げた人々の群れの行く手をたどっていけば、たどりつく。

まずは、その市場から雲南の食巡りをはじめよう。

◇お知らせ
「現代思想」11月号は10月28日発売予定です。ところで私の寄稿した文章の題名がな、なんと目次で誤植されていました。ショック! 本文のチェックはしても、目次までは見ることができなかったのですよね。「昆明」が「昆迷」になってるのって、がびょーん、です。
コメント (4)
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偽装食品の見分け方12

2007-10-19 16:23:04 | Weblog
写真は、城中村である羅丈村内にあるお寺、普慈寺。門前は昔ながらの農村。背後はきれいな高層マンションが建ち並ぶ。そんな中、おばあさん達は寺を掃き清め、紙でできた奉納物と巨大な線香をお供えして、正月に備えていた。周囲の殺伐さとは別世界の、不思議な光景だった。

【はかり良好、味良好】
 さて、安心肉を買いに来た張おばさんは、
「‘滇中楽’肉店が開業してからは二回とも、ここで肉を買ったよ。どうも‘滇中楽’のものの方が秤も正確で、質も良好なようだ。以前、この市場で買った肉は、炒めると水が出るし、重量が少し足りないこともあったよ」(『都市時報』二〇〇四年一二月二四日)
と答えている。じつはその後、次々と「安心肉」を掲げたチェーン店が展開しているのだが、他の場所では新聞沙汰にはなっていない。調べてみると、事件がおきた場所にも問題があることがわかってきた。

【城中村再び】
 羅丈村、江東地区、王旗営はいずれも昆明市の中心部からやや北はずれに位置する。一〇年ほど前までは市中心部からやや離れたところにある、ごく普通の農村地帯だった。それが急速に「都市」が膨張し、農村は「都市」の中に飲み込まれてしまった。以前に紹介したことのあるインフラの整わない陸の孤島・城中村である。
「安心肉」チェーン店が問題となった場所は、ちょうど膨張した「都市」の周縁部に集中していた。

 買いに来る人は昔から住んでいながら、今まで耕していた土地を「開発」で失ってしまった農民と、街の建設のために近年、流入した出稼ぎ労働者。

 出稼ぎ労働者は、日々の生活に追われて、いちいち商品をチェックするゆとりはない。毎日、新聞を読む暇もないから「偽装」食品に対する知識も希薄だ。それになじみの客になるほど、長く住むわけでもない。その地域への責任感や帰属意識、ひいては道徳観念も希薄になりがちだ。これでは市場の強みである売り手と買い手の信頼関係が生まれるいとまもないだろう。

 農村と街では法規関係も全く異なり、管理の受け皿も異なるので、開発の予算すら付かないまま、放っておかれた地域。警察の目も届きにくいため、犯罪の温床ともなっているという。

 市政府としては壊してしまいたい気持ちもあるのだが、そうなると流入し続ける外来人の居留地を別に確保する必要が出てくるし、どこから予算を引っ張ればいいのかという問題にも直面する。偽装がたやすく行われる温床には、このような無責任さがつきまとう。  
             (この章おわり)

長い間、偽装食品のおはなしにおつきあいくださいまして、ありがとうございます。続きは、『現代思想11月号』(青土社)でまとめましたので、ご興味がございましたらお読みくださればうれしいです。ついでに感想などもお寄せくださるともっとうれしいです。
 次回からは食欲の秋にふさわしい、雲南のおいしいもの編スタート、です。

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偽装食品の見分け方11

2007-10-12 13:40:58 | Weblog
このシリーズ、長くなってしまいました。調べれば調べるほどいろいろと出てきてしまうのです。これではきりがないので「安心肉チェーン」店の話を終えたら、雲南のもうちょっと楽しい話題にしようと考えています。語り尽くせないものは、『現代思想11月号』(青土社)に載せていただくことになりました。今まで連載した話題も大幅加筆しました。よろしかったら発売は11月初頭のようですので、読んでみてください。(以上、宣伝でした)

写真は羅丈村の農貿市場の入口
【安心肉チェーン店 開業】
 一年の準備期間を経て、二〇〇四年一一月中旬、まずは羅丈村農貿市場に‘滇中楽’が開店した。だが、翌日には市場内の他の肉店主全員に‘滇中楽’前で座り込みをされ営業を阻止されたため、あっけなく閉店となった。

 数日後には、羅丈村に近い江東農貿市場へと進出。だがやはり開店して数時間後に、他の肉店主らに買い物客が新店に行かないようにと三輪自転車でバリケードを築かれる事態となった。すぐに通報で駆けつけた警察官が自転車を強制撤去したが、その日は‘滇中楽’も仕事にならなかった。翌朝は妨害もなく、昼前には豚一頭分をすべて売り切る。一方、他店は閑古鳥が鳴いていたという。

 さらに一二月中旬には王旗営蔬菜卸売市場へも出店した。今度も三〇余名の肉店関係者に囲まれ、営業を一時中断する事態となった。昼食時に囲みは自然となくなったが、午後一時に「今、台でさばいた肉を売り切ったら、以後は、二度と売らない」との約束を結ばされ、その後、しばらく営業できなくなってしまった。

 これらは地元新聞の報ずるところによると、チェーン店の肉質が良好な上、値段が安かったことに原因がある。チェーン店が進出すると、客をみんな持って行かれるので、長年、営んでいた肉店がまったく仕事にならなくなってしまう。直販チェーン店という、今までとは違ったシステムが突然、現れたため、市場が混乱に陥ったのだ。
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偽装食品の見分け方10

2007-10-05 22:15:21 | Weblog
写真は昆明市西方の環状西路と環状南路の交差点に近い農貿市場にて。品質のよい品物が数多く並ぶ。昼過ぎの客がたえた頃、売り子たちは腕枕で昼寝をしたり、将棋をしたり、我が子に授乳したりと思い思いの時間を過ごす。南方の午後はゆったりと流れる。(残念ながら現在、この市場は取り壊され、マンションを建設中)
【安心肉チェーン店】
 中国が豊かになると、肉を食べる機会が増える。とくに現代の中国では、アゴが外れるほどに固い牛肉や、脂身の少ない淡泊な鶏肉より、はるかに食べやすく味わいやすい豚肉は需要も多く、利益率も高い。そんななか2004年、雲南省昆明市では「水滸伝って本当だったの?」と思わせるような、豚肉をめぐる騒動が次々と起こっていた。
 ことの発端は「昆明食品集団」が「安心肉」を標榜するチェーン店を庶民の市場に展開したことにあった。

 2002年5月27日に国家経済貿易委員会は全国108カ所の養豚場を「国家備蓄肉活体備蓄基地場」に指定した。唯一、雲南省で指定を受けたのは国営企業出身の昆明食品集団だ。国の指示を受けてか、2003年5月より飼料中に「痩肉精」をはじめとした人体に有害な物質や薬品を禁止し、養豚の管理や消毒を徹底した養豚場を雲南省各所(禄勧、晋寧、富民、石林、宜良など)に10カ所設け、安心安全な肉を年10万頭以上の出荷することを計画した。

 同社は中国で改革開放政策が本格化するまでは昆明の豚肉市場の50%以上を一手に供給していたのだが、2000年になると30%にまで低下、以後、徐々にその割合を下げていた。それを規模を大きくすることで、一気に挽回しようと試みたのである。(『都市時報』2007年5月30日)

 また配送ルートも統一し、まずは昆明市内の農貿市場に直営のチェーン店‘滇中楽放心肉店’ (「放心」は中国語で「安心」を意味する)を設け、統一料金で販売することとなった。

 農貿市場は、昔ながらの市民の便利なスーパーマーケットだ。米国系の「ウオルマート」やフランス系の「カルフール」など外資の巨大で清潔なスーパーマーケットも人気はあるが、一般に生鮮食料品は値段が高めだし、鮮度もやや低い。より生活圏に近いところとなると、庶民の毎日の買い物には農貿市場の方がまだまだ便利なのだ。

 市場の中は肉区、野菜区などに大まかに分けられ、その中を幅1メートルほどのブース割で市場の管理所が販売者に一定金額で貸し出している。たいてい市場の売り手に品物が渡るまでに何回か仲介業者を経ることになるので、多少、割高になったり、「偽装」の余地ができてしまったりすることもある。直営チェーン店化は、それを防ごう、という意気込みのようだった。
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