雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

宜良ダックをさがして⑭

2011-10-30 11:41:14 | Weblog
写真は陽宗湖の北側にある撫仙湖湖岸の道路工事風景(2004年撮影)。道路工事が地面を平らにならしてからアスファルトを作る、という見慣れた工程とは違い、手作業で、石を一つ一つ、積み上げたり、地面に押し当てて槌で押して固め、最後にアスファルト、といった工程を踏むこともけっこうある。
 そのため、すぐに凸凹ができ、ヒビが割れることも。最近では技術も向上してきたが、それでも場合によっては、「これで大丈夫かな?」という工事風景が見られる。撫仙湖付近の作業員は地元の人が多かったが、昆明の工事は四川省からの出稼ぎ労働者が多い。言葉も四川言葉で、雲南の人よりも声が大きく、勢いがあり、ややきつく感じることも。

【高原の「真珠」から「ヒ素」池に】
 アヒルが放し飼いされている陽宗湖は2008年の昆明市環境局の検査で、水質は中国の規定で最悪の5類に分類されました。高濃度の猛毒のヒ素が池から検出されたのです。

 じつは中国各地でおこった現象と同様に陽宗湖も1990年代より、大きな変化をとげていました。誰もが賞賛する「美しい湖」。これを観光地化して稼ごうと、宜良県政府は1992年10月に《外商投資を鼓励するための暫定規定》なるものを発布し、雲南省第一省級休暇区の指定を受けました。
 それを機に、シンガポールや香港などの華僑からの投資が堰を切ったように流れ込んできて、大規模なホテル、ゴルフ場、射撃場などを揃えた観光施設をつくり、池の周囲にコンクリートやアスファルトの道路を敷設。
 「休暇区」指定から3年後の1995年、県の税収は4000万元(約4億8000万円。1元=12円換算。)にまでふくらんだのです。まさに陽宗海さまさまです。

 次は観光地以外の開発です。池を抱く山の上に採石場ができ、湖の西南端の澄江県には化学肥料工場ができ、譚葛村には良質の磷がとれることから農業肥料にかかせない磷の工場もでき、村人の収入も加速度的に増大したのでした。

 古くからの政府からの指示も後押ししていました。

 1955年にときの総理・周恩来がこの地を訪れ、北京に戻るや
 「陽宗海は‘高原明珠’だった。」
 とにこやかに感想を述べ(ここまではいいのですが)、さらに一言
「あそこに発電所を迅速につくるように」と指示を出したのです。その後、池周辺に火力発電所が建設されたことはいうまでもありません。(静かな池の横にさりげなーく旧式の火力発電所が今も建って、稼働しています。)               (つづく)

※先日は、「雲南の食を訪ねて」の「チーズのような豆腐」にご参会いただいた方、ありがとうございました。実際に、ほんものの「毛豆腐」をゲットしたいと、どうやったら、日本に持ち込めるのか、という具体的な相談をされる方もいて、いつか、日本でも食べられる日がくるかも、とワクワクしました。
 そして11月8日(火)も、私が話します。今、ブログで書いております「宜良ダック」の話です。さらに作り方など、具体的に踏み込み、他地域との発展の比較なども盛り込みますので、もし、時間など余裕がありましたら、ご参加ください。
写真を大幅に増やしております。雲南のお茶もご用意する予定です。
さらにこの日が無理な方は12月6日(火)「素朴なエンドウ豆羊羹」。これだけではおそらく、時間に余裕が出てくるので、「過橋米線」の話、さらに戦前の昆明付近の食生活はどうだったのか、なども話す予定です。ぜひ、ご予約ください。
(「豆腐」の話がおもしろかったと次回、ご予約いただいた方もおられたのですが、一回ずつの受講なので、なかなか席にゆとりがたっぷりと・・。高いものね。値段に見合うように努めてはおりますが、すみません。)
*受講料はどんな学生でもいいのでたとえば、近所の語学教室やカルチャースクールでも、学生証があれば500円となります。

火曜14時半から16時 
新宿駅西口より徒歩5分。エステック情報ビル地下1階 工学院大学孔子学院(西口地下道を歩くと、「エステック情報ビル」の看板が見えるので、その目の前のエスカレータを上る。) 予約の電話はこちら。
電話03-3340-1457(工学院大学孔子学院事務局)
もしくはURL http://www.kogakuin.ac.jp/cik


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閑話休題・上海蟹

2011-10-23 10:54:01 | Weblog
            
 孔子学院の発表の準備をしていたら、雲南以外の話を書きたくなりました。先週末に所用で行きました上海の話です。上海蟹は中華街などで日本でも食べられるようですよ。
 写真は上海王寶和酒家にて。上は陽澄湖の上海蟹。文末は王寶和酒造でつくられた紹興酒。(2011年秋撮影。)

【もう一つの秋】
 中国で秋と言えば上海ガニ。ひと夏の栄養をたっぷりと身につけた秋。なかでもメスは腹に卵を宿した10月が、オスは11月が旬と言われています。

 雲南でも、この時期に、上海ガニの最高峰「陽澄湖」のシールの貼られたものが高級店のもっとも目立つ場所に置かれていました。それをわざわざ食べに行ったことも。「おいしいけど、日本の毛ガニにはかなわないな」。雲南には蟹料理は本来的にはありませんので味の追求のしようもないのかもしれません。

 さて、この秋、上海に行くことになり、チャンスとばかりに1744年(乾隆9年)創業の上海ガニ専門店の王宝和酒家に、いそいそと出かけました。
 10月の、とくに週末の上海は商談会と学会シーズンのため、繁忙期。飛行機もホテルもけっこう埋まっていて、何事も高くつきます。

 ガイドブックを読むと、予約は必須とのこと。そこで数日前に電話すると6時以降は滞在中はすべて満席、というおそろしさ。開店時間の5時からなら、と店側に勧められて行ったのですが5時半には、やはりほぼ満席となっていました。ただ、予約なしの人のための席も用意されており、5時ぴったりに店に行けば、すぐに座れそうです。

 前菜の上海ガニのあらゆる部位をまぶした炒め物や、酢の物など、日本人にもやさしい料理の味は抜群。紹興酒は紹興市の「王宝和」直営工場で醸造されたもの、酢を中心とした付け汁もオリジナル。店のあらゆるものは、あくまでも上海ガニをおいしく食べるためのしつらえのようです。そのきっぱりとした方向性に、すごみすら感じます。

 そしてメイン。店の人がトレーに、縛り上げた暗緑色の生きたカニを持ってきて、
「これでよろしいですか?」
とくに文句もないので私は即オーケーしたのですが、隣のテーブルの香港からのお客は、裏返したり、押したりと、いろいろといじりまくった末
「もっといいのを出してちょうだい!」店の人は、また別のカニを持ってきて延々と交渉しておりました。

 そして出てきた紅色の蒸し上海ガニ。言葉をなくします。角のテーブルに座っていた日本人カップルなど、トレーの上のオス、メス2匹ずつを頼んだ後も、なごやかに談笑していたのですが、出てきたとたん、本当に静かに、目を合わせることもなく、もくもくと修行僧のように食べておりました。地元のおじいさん、おばあさん、若夫婦に孫というテーブルは、家族の和が見られてなごやかだったのですが・・。つくづく、罪な食べ物です。

 カニ味噌は日本の毛ガニを超えるおいしさ。黄金色にとろけます。卵は、うん、そのお味。もちろん身も丁寧にほじくり出しましたが、なにぶん、大きなものではないので、苦労したほどは食べられません。

 しかし、ここの紹興酒はおすすめです。くどくなく、紹興酒としてはすっきりとした飲み口で、上海ガニをしっかりと引き立ててくれます。
 「王宝和」のもともとの本拠地は紹興。その紹興酒を上海で売る酒屋から上海ガニのレストランへと発展した店だったのです。
 紹興で紹興酒工場めぐりをしたこともありますが、皇帝ご用達レベルの酒造家は1949年に国民党とともに台湾へ移住してしまったため、深い味は台湾製にはかなわないな、というのが率直な感想でした。ところが「王宝和」は、工場を大きくすることもなく、中国に踏みとどまって愚直に造り続けていたようなのです。

 食後に茶色のお茶が出されました。これ、氷砂糖とショウガ汁を混ぜた、いわゆる日本の冷やしあめの、アツアツ漢方版。より一層、口の中がさっぱり。ただ、カニを蒸すだけの料理にこれほどのノウハウがあるとは、と感嘆することしきり、でした。

王宝和酒家:上海市福州路603号 電話+8621-63223673
                 


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宜良ダックをさがして⑬

2011-10-09 10:57:31 | Weblog
【おしらせ】
前回と同じお知らせなのでお読みの方は、読み飛ばして本編へどうぞ。

また工学院大学孔子学院で、雲南のお話をさせていただくことになりました。受講料が高いのですが、ブログをごらんになっていらした方には、最後の回の食事代を補助させていただきたいと思います。転送可ですので、いろいろな方にお知らせいただければ幸いです。
 今回は、作り方などを丁寧に伝えられればと考えています。

タイトル『雲南の食を訪ねて』
10月11日 第1回「20世紀初頭の雲南」(小松碧さん)
10月25日 第2回「チーズのような豆腐」(私)
11月 8日 第3回「北京の人々を唸られた雲南ダック」(私)
11月22日 第4回「雲南のチーズ」(小松碧さん)
12月6日 第5回「雲南料理を味わう」(費用実費。)

※第1回から第4回まで参加費一般2000円、学生500円(どんな学生でもいいそうです。)
1回ごとに受付。
場所:新宿駅西口から徒歩4分、エステック情報ビル地下一階。(新宿区西新宿1-24-2)
申し込み 電話03-3340-1457
     もしくはURL http://www.kogakuin,ac.jp/cikへ。
  
写真は宜良の市場近くに作られた新市街のロータリー。夏場でも水をまいて、イギリス庭園のような緑を保全していた。

【無公害アヒルの養殖場へ】
 さて、もう読者の方はお忘れかと思いますが、宜良にきた目的は、湯池(=陽宗海)で放養されているというアヒルを見ることでした。
 ところが例によってタクシー運転手は軒並み、街はずれには行ってくれません。
「湯池へ。」と声をかけても、「行かない。」で終わり。たった10キロの距離なのに。困っていると、やり手そうな20代後半の青年タクシー運転手がやってきて
 「なんで湯池に行きたいの?」
と声をかけてくれました。アヒルの養殖場を見たい、と話すと、
 「今、湯池ではアヒルの養殖が禁止されていて、誰もやっていないよ。」と教えてくれました。

 以前、お話したように私が昆明に住んでいた2004年には陽宗海でのアヒルの飼育による環境汚染が問題となっていました。同年10月の昆明日報によると、湖には数万匹のアヒルが放し飼いされ、陽宗村だけでも7戸4000羽。他の村も合わせると途方もない数のアヒルがいる。この糞便や羽毛、飼料の垂れ流しが陽宗海の汚染の原因ではないか、と分析しています。

 かつては「高原の真珠」とまで讃えられた陽宗海がデン池などの周辺の湖と同様、臭気を発するおぞましい湖へと変貌してきたことへの危機感が報道側には、あったのです。

 農薬と化学肥料が撒かれた田んぼにアヒルが入れなくなったと同時期、宜良のアヒルは儲かると気づいた農民が、残る陽宗海に集中的に放し飼いを始めたことが原因でした。とくに二〇〇〇年以降に急速に増加し、政府が問題視していました。

 そこで2005年に一時的にアヒルの放し飼いを禁止。
 すぐに変化があらわれ
「水質が大幅に改善。しかもたいして環境のためのお金を使わずに!」
 と昆明市環境局が高らかに勝利宣言を出しました。この方法はデン池の浄化の参考になるだろう、と手放しの喜びようです。

 こうした背景があったので2010年夏、タクシー運転手の言葉から、今やその汚染対策が常態化して、アヒルは完全に閉め出されたのだな、とすばやく推察しました。
 ところが、じつは事態はより深刻化していたのです。            (つづく)

※来週の更新はお休みいたします。翌々週の更新となります。
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宜良ダックをさがして⑫

2011-10-02 11:58:02 | Weblog
 写真は地どりの売り場。(宜良市場にて。2010年撮影。)みな、「放牧」(と地元の人はいう。)されて育っただけあって、目つきが鋭い。
 右端が放し飼いで育った地元の鶏。左が雲南産のアヒル「滇麻鴨」。オスは首から上が深緑に光り(秋以降に変色することが多い)、雌は茶のまだら模様をしている。日本で見かけるマガモと色目は同じ。ブロイヤー育ちの2倍の値段となっている。
 薄緑色をした卵も雲南の人にはなじみ深い食品だが、その親が滇麻鴨である。ちなみに同じ市場には大きなウサギや烏骨鶏、鳩、なんと猫までが売り物として生きたまま展示されていた。もちろんペットショップではなく、食材(のはず。)
 現在は宜良の湯池での放し飼いが禁止されたため、クリークの多い滇池北岸の晋寧県(鄭和の故郷の近く。鄭和がかつて建立した父のことを語った碑文が残されている。)に主産地の座を奪われている。

スマップでとぎれてしまった北京ダックとの違いの続きです。

【劉文の改革③】
⑤アヒルの品質により一層、こだわった。
具体的には、地元の伝統的なアヒルの滇麻鴨を使い、自然の理に逆らわず、春に孵化させ、水田に放って成長させ、秋に締めた。

アヒルは家ごとによくしつけられていて「イーライ、イーライ」との呼び声で、その家のアヒルがすぐに集まるように訓練されていたという。締める1週間前には日陰にある大きな貯水池に放して、強烈な日差しを避ける。これは皮の色に光沢を出して、きめ細やかにし、アヒルの心の安定を図るために必要な作業だったのだそう。

そして締める時には、体の血を一滴も残さず、出すように心がけた。アヒルにストレスがあると、俗にいう漢方の世界での血がドロドロになる現象(於血)が起きるが、ストレスなく育てると、血が残らず外に出るのだとか。(なんとなくわかります。)

こうすれば見た目にも悪い血がかたまってできる、へんな斑点もできない。
また締めたアヒルは衛生的に処理することを心がけ、ハエにたからせる隙を与えなかったという。


 この5つの劉文の改革で作り上げられた、宜良ダックは当然ながら、評判となりました。北京からきたお客人の接待にも最適。なんたって、本場とは違った方向に進化し、自然の旨さを心がけた独自の旨さを追求し、成功しているのですから。

 当時の水田には化学肥料や農薬はないので、天然の小魚や小エビ、貝類など、食べるものも豊富にあります。いまでは、手の届かないほど高級な有機食品だったというわけです。
無農薬、有機栽培の天然の水田。空気。私も時空を超えて食べに行きたくなります。

【お知らせ】
また工学院大学孔子学院で、雲南のお話をさせていただくことになりました。受講料が高いのですが、ブログをごらんになっていらした方には、最後の回の食事代を補助させていただきたいと思います。前回はブログを見ていらした方、本当にありがとうございます。どうも人の集まらない講座のようです。転送可ですので、いろいろな方にお知らせいただければ幸いです。
 今回は飲食関係者の方の参加があるようなので、作り方などを丁寧に伝えられればと考えています。
タイトル『雲南の食を訪ねて』
10月11日 第1回「20世紀初頭の雲南」(小松碧さん)
10月25日 第2回「チーズのような豆腐」(私)
11月 8日 第3回「北京の人々を唸られた雲南ダック」(私)
11月22日 第4回「雲南のチーズ」(小松碧さん)
12月6日 第5回「雲南料理を味わう」(費用実費。)

※第1回から第4回まで参加費一般2000円、学生500円(どんな学生でもいいそうです。)
1回ごとに受付。
場所:新宿駅西口から徒歩4分、エステック情報ビル地下一階。(新宿区西新宿1-24-2)
申し込み 電話03-3340-1457
     もしくはURL http://www.kogakuin,ac.jp/cikへ。

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