雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南のとうもろこし②

2009-03-29 15:46:41 | Weblog
市場にてもちトウモロコシをひくのに使う石臼。新鮮なもちトウモロコシは、水を加えなくても十分、トロミがある。臼での挽きたてを、鉄板で焼いて売っている。プレーンなお好み焼きのような出来上がりとなる。

【包谷バーバ】
 戦後まもない記憶の残る群馬出身の私の父母の話では、
「そういえば、そのころのトウモロコシは、紫の粒も混じってた。粉っぽくて、おいしくなかったけど。」

 
 今ではすっかり果実並みの甘さとみずみずしさへと変貌を遂げた日本ですが、昔のままで出回っている雲南では、現在でも庶民の‘ごちそう’です。

 紫色のトウモロコシ畑の麓の市場では、真っ黒に日に焼けたおばさんが、白いトウモロコシの粒を石臼で挽いては、せっせとバーバ(まんじゅうの意)を作っていました。個旧、蒙自の特産品として政府公報パンフレットに名を連ねる「糯包谷バーバ」です。(包谷:とうもろこしの俗称)

●つくりかた●
 ①新鮮な白い糯(もち)トウモロコシを石臼で粉にし、
 ②水と、場合によってはつなぎに小麦粉やご飯を加え(市場では②の工程はなかった)、
 ③トロトロっと平たい油を引いた鉄鍋に落として、丸くて平たい形に整え、
 ④じっくり蒸し焼きに。

 プレーンなお好み焼き、といった風情です。ホカホカのバーバにザラメをたっぷりかけてもらい、ほおばると、腹にずしりときました。

 私が「香ばしくておいしい」と告げると、無愛想な作り手のおばちゃんの顔がほころび、
「もう一枚食べるかい?」

 うなずくと、写真を撮ってもいいよ、と張りのある声をかけてきました。お言葉に甘えていると、お隣の野菜売りのおばちゃんや米売りのおばちゃんたちまで寄ってきて下町の大所帯のような雰囲気となってきました。

 誇り高い、錫の街・個旧の人々は自分を認める人だととわかると、じつに気持ちのよい応対へと切り替わるようです。そこにたどりつくまでは、本当に近寄りがたいような怖さと厳しさがあって、うっかりカメラもぶらさげられない雰囲気だったのですが。ほっとして、味も倍増した気がします。

【伝統あるお祝い食】
 ちなみにトウモロコシ栽培のさかんな農村地域では伝統的なお祝い料理となると、米よりもトウモロコシの方がポピュラーなようです。

 昆明に住むお年寄り世代と食事をしたときや、雲南中部の農村で歓迎会があったときなど、必ずといっていいほど、饅頭風に形の整えられた、この料理が山と盛られていました。

 酒のつまみからはもっとも遠い、甘くて油っぽくて素朴に腹がふくれる、この饅頭。同席するご老人方は、これが出ると必ず「ごちそうなんだよ」と目を細めてほお張り、私や娘の皿に山盛りによそってくださったのでした・・。

 いつか雲南の「お好み焼き」「もんじゃ」へと化ける日はくるのでしょうか?
                                《つづく》
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雲南のとうもろこし①

2009-03-22 20:42:44 | Weblog
雲南省中部の個旧山麓にある野菜畑の一角にて。紫がかったトウモロコシの他、その畑に生るエンドウ豆の表面などにも紫色の色素が見られた。

●雲南のとうもろこし
 米に「もち米」とうるち米があるように、雲南には「もちトウモロコシ」が存在します。日本にもないわけではないそうですが、雲南ではごく普通に栽培されているのです。色は白、紫とさまざま。けれど地元の人はその違いを気にすることはなく、すべて「玉米」と呼んでいました。

 昨夏、個旧の山麓で見かけたトウモロコシ畑は茎も葉もヒゲもトウモロコシを包む部分もすべて紫がかっていました。けれど一皮むくと、中身はまぶしいばかりの白色。もちトウモロコシです。

 雲南では鉄分の多い紫色がかった赤土の土壌が多いのですが、もちろん、紫のトウモロコシ畑も例外ではありません。


 ふもとの市場に顔をだすと、白いトウモロコシに混じって紫の粒が混じった不思議なものもありました。まるで土の紫が作物に乗り移ったかのようです。雲南産の米やサツマイモなどの農作物に赤色や紫色が普通に見られるのも、土壌のせいもあるのかもしれません。
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雲南の小吃

2009-03-13 12:13:26 | Weblog
写真は「糯米団」を握る売り子さん。早朝ねらいの露店は日の出から9時半ごろまで営業していることが多い。

 ちょっと小腹が空いたとき、朝食代わりにおなかを満たしたいときに不自由しないのが中国の大都市。辻辻に1元(約14円)で食べられる立ち食い屋台があふれています。雲南も例外ではありません。雲南ならではの食べ物だけではなく、そこには出稼ぎ労働者の出身地の食べ物や退職したおばさんの趣味の家庭料理が溢れ、おもわぬ発見も。食の中国旅行もできそうです。
え、こんなものまで売ってるの? と思うようなものも含めて、ご紹介しましょう。(不定期に・・)

●糯米団
 もち米をふかしながら、自転車リヤカーに乗せた屋台で移動し、売れそうな位置につくやいなや、次々と街ゆく人が買い求めます。
小吃のいいところは、買うときにしゃべらなくてもいいところ。言葉の不安はまったくないんです。

客は黙って1元札を差し出す。と、売り子のお姉さんは、おひつの中のほかほかのもち米を握り、
「タン(糖)?」
と聞き返します。そこで客はまたも黙ってうなずけば、最後に雲南特産のザラメをたっぷりとまぶしてくれます。
 いわば、小豆のないぼた餅。お米はつぶしてないので、塩にぎり、ならぬ甘にぎり、といったほうが近いかもしれません。

 もち米は紫米と白米を混ぜて炊いてありました。ほんと、日本の赤飯のルーツは紫米だという説もわかる気もします。ただ、お赤飯のように全体を赤く色づけることなく、はっきりと赤と白の粒々が紅白そのままの色で炊きあがっているのが違うところ。

 日本では「おにぎり」「おはぎ」「ぼたもち」など、いろいろな名前が連想されるので、この食べ物の名前を聞いたところが上の答え。「糯米」はもち米、「団」は団子のこと。
あまりにも即物的な名前にがっかりして、もうちょっと風雅な名前はないのかと、客が一段落したときに聞いてみても、おねえさんは面倒くさそうに「ノーミーファン(糯米飯)」と答えるだけでした。

 味はご想像の通り、とてもシンプルでお茶といっしょにいただきたくなります。またとても腹持ちがよいので、仕事中に小腹が空いたときにはぴったりといえるでしょう。

●もち米と糖
 もち米と糖は雲南でも、よく結びつけられるものらしく、春節(旧正月)が近づくと売りに出される「八宝飯」は究極の甘さ。

ドーム状というかケーキ状に固めた甘いもち米の中にも上にも甘煮されたナツメなどの食材がきれいに飾り付けられた縁起物で、市場の臨時屋台でもその季節にはクリスマスケーキさながらに飛ぶように売れていましたが、甘さがごちそうだった時代の食べ物なのだと、しみじみ。

昆明でいきつけの、ごくごく普通の料理屋で、「猪飯」(中国では豚肉を猪肉と呼ぶのです)を食べたときも驚きでした。

ドーム状の蒸しもち米の上にチャーシューがたっぷり、ぴっちり。茶色が、甘辛く煮付けられたトンポーロゥを連想させて、いやが上でも高まる期待。

当初、いつもの通り
「ご飯もつけてね」と頼んだら、
「ご飯なら、今日はもっといいのがあるんだよ」

いつものスープと炒め物をほおばり、さて、ご飯と、このおすすめの「猪飯」を口に入れたところ、脳天までツキーン。あまりの甘さに三口でダウンしてしまいました。

いつも我々が一元の「ご飯」を頼み、洗面器一杯にでてくるご飯を少ししか食べないので(とても食べきれません。「少し」といっても、気に入られると大盛りになるようです。安料理屋ほど、なぜかご飯が山のようにでてくる傾向があります。ちなみに、いつも残りはお弁当に包んで持ち帰っていました。)、ご飯は苦手と踏んで、気を利かせてくれたようなのでした。

聞くと、この料理は彼らの田舎である、昆明近郊の村の特別なときのごちそうなのだとか。「農家楽」という名の通り、昆明郊外の田舎料理を提供することが目的の店なので彼らの希望にかなった新メニューというわけです。

ですが醤油味の激甘豚もち飯は、インドネシアの人がすき焼きなどの煮物を砂糖などで甘辛く煮付ける日本料理を「甘い」のに「辛い」といやがるのと同様の効果を、日本人の私にもたらしたのでした。

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雲南の米③

2009-03-08 17:17:51 | Weblog
写真は、雲南の伝統的な炊飯器。詳しくいうと、こしき(こし器)兼おひつ(櫃)。フタが編み笠状なのが、やけに存在感を放つ。

 雲南のガイドブックに見られる「雲南十八怪」という雲南18不思議の第4には「編み笠を鍋蓋にする」が登場するが、中国人旅行者にとっても見慣れない光景らしい。

 底が簀の子状になっているので、中華鍋に水を注ぎ、その上に置いて火をおこせば、数十分でお米が蒸し上がる。
 中華鍋に乗せたまま弱火にすれば保温もできる。
 テーブルに置けばおひつにもなる。
 その便利さゆえ、今なお路上の移動露店から食堂の厨房まで、覗けば、たいてい置いてある。

 この米びつの木材はキワタノキだという(bombox celiba。別名パンヤの木。『雲南十八怪趣談』、雲南科技出版、2002年より)。
 あっという間に10から30メートルの高さになる大木だ。

 沖縄や台湾では街路樹として親しまれ、インドでは樹上に実る綿がクッション材に使われているらしい。

 雲南を歩くと竹製のかごとこのおひつに、よくお目にかかるが、日用品の材料はすぐに育ち上がる木が使われていることがわかる。

以下は、前回の続き。終章です。
【米の輸出大国&輸入大国】
 中国では米輸送ルートは非常に複雑です。地産地消は全国的にみても珍しく、米線でも主原料のインディカ米ですら雲南産100%にはなりえず、湖南、湖北を中心にした他省に頼らざるをえない状況。(雲南省の穀物生産量は中国第11位。ハニ族による雲南省元陽県の棚田は世界最大級の面積なのですが。)

 では中国の米の状況はどうなっているのかというと、米の生産の約8割がインディカ米で、中国全土を合わせた米の生産量は世界1位(1億8545万トン。籾米ベース。)の量を誇ります。2位のインドと合わせると世界の半分以上を占めるという米の生産大国となっているのです。一見すると米については自給自足ができて何も心配いらなさそうですね。

 ところが米は輸入量でも今や世界第2位(184万7千トン。1位はナイジェリア。国連食糧農業機関(FAO、2004年)統計より)でもあるのです。人口はたいして減らないのに、都市部が増大して耕地面積が減少していることや、人気沸騰のおいしいジャポニカ米の生産適地が中国東北部だけ、という現状も響いているとのこと。

 つまり米線などの米加工品は雲南、湖北、湖南などのもので、炊く方の米は雲南、タイなどのほか、黒竜江省などの東北部から、となっているわけです。

 中国では日本製品が大人気ですが、日本の米に対する憧れも強烈です。現在は値段の高さが難点ですが、やがて日本の重要輸出品になる日がくるかもしれません。(日本の農業政策、もうちょっとなんとかしてくれないかなあ?)

 この章おわり。
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雲南の米②

2009-03-01 20:37:10 | Weblog
中国の家庭で普及している炊飯器。(建水の街中の家電店「生活芸術館」にて。)タイマー機能などはなく、食べたい時の30分前に「がちゃり」と真ん中のレバーを押し下げると、電源が入り炊き始める昔懐かしい単純な構造。当然、日本の炊飯器技術で作られたので、ジャポニカ米を炊くのに向いている。
 また炊飯釜の上部に取り付けるすのこ状の「蒸し器」が付属品として付いているところが、日本とは違う。炊飯釜に水を張り、蒸し器を置けば饅頭なども作ることができる。

【生活に溶け込む米線】
 米線は昆明市内だけで毎日180トンから200トン消費されているそうです。(昆明市の人口は509万人〈2007年統計〉なので一人あたり毎日350グラム食べている計算に。昆明には3食米線の人が存在する!)

 その8割以上が生麺の鮮米線で、市内15の工場でつくられています。保存が効かないため、毎日、作らなくてはなりません。単純計算だと一つの工場で平均10トン強作られているわけです。

 その一つ「穂豊食品」は、広東省や広西省の大工場を視察して、雲南にも大量生産で効率のよい工場を造りたいと2007年末に日産30トン体制を整えました。米線を衛生的に250グラム単位で袋につめてスーパーなどで売る計画です。食品を監督する市の品質監督局もバックについて、衛生的で質量のごまかしのない米線の普及を目指そうとしたのです。

 ところがその後半年以上たっても、販路を拡大できず、1日1時間程度、機械を稼働させるだけ、という寂しい日々を送っているそうです。米線は店でも個人でも、竹かごに並べられたできたてを量り売りで買う習慣なので、その習慣を変える、というのは並大抵のことではないのでしょう。(『都市時報』より)

【品質を重視した配合】
 また、味にうるさい固定客を納得させようと、当然、工場ごとに味を競うことにもなります。米線はインディカ米が主体だとしても、ジャポニカ米との配合比率が重要なのです。

 以前はまさに職人技でして、気候が変化したりするたびに、必ず使用する米でご飯を炊いて味や感触を確かめた上で、米の配合を決めたとか。現在は科学的にアミロース量などを測って、決断するそうです。

ちなみに米を水に浸けて発酵させる時、水温は30度から50度が適温。昔だと、夏はそのまま冷たい水を用い、冬は米線を煮立てた熱湯を足し入れて調整したそうです。

【水】
鮮米線の場合、できあがりの水分量は米1に対しできあがった米線が2.4~2.5倍となるのが一番おいしいのだそう。ところが80年代までは米を買うのも配給切符制だったので、その比率は1:2.8にまでなったとか。

 つまり1斤の米で2.8斤の米線が買えると、一面では喜ばれたのですが、その水増し米線が、90年代まで雲南の米線の評判を著しく落としたのです。

「ぼそぼそして、味もすっぱすぎてまずかった」とは当時を知る人の言です。
(つづく)
 
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