文山州で食べた羊肉鍋と、つけだれの入った小鉢。とにかく発汗作用がハンパではなかった。(2004年10月撮影)
【文山州イ族の豆乳鍋】
もう一つはイ族が住む雲南の中東部にある文山州硯山県にて。鶏丸ごとのスープに豆乳の入った鍋。これに香菜(コリアンダー)、唐辛子、花山椒、ピーナツを刻んだものなどの入った小鉢が一人一鉢ずつあり、スープをその小鉢にちょっと入れてぐるぐるとかき混ぜて、ニンニクの唐辛子漬けをポリポリと食べながら、煮立つのを暫し待ちます。
煮立ったら最初に、野山を駆け回って引き締まった鶏のあらゆる部分を皆でほお張る、次に白菜などの野菜をドバドバと入れていただく。最後にスープを小鉢にたっぷりと注いで飲み干すと、すっかり身体もあたたまりました。
【羊肉鍋】
豆乳鍋もごちそうですが、身体が最高にあたたまる鍋はやはり羊肉です。「テムジン」や「小肥羊」など中国の北京の方からのチェーン店の勢いが昆明ではすごく、羊肉のしゃぶしゃぶを定期的に食べに行くほど、わが家ではお気に入りの鍋でした。
(近年、日本にも「小肥羊」など数店が進出。週末には満席になるほどの人気となっています。)
もともとチベット高原を通じて雲南とモンゴル高原は行き来が盛んだったので羊肉料理や乳製品は雲南では土着の食べ物といえます。
雲南中東部にある文山州の地元の人が隠れて通う羊肉火鍋店。看板すらなく、見た目はたんなる何かのお店。薄暗い奥に入るといくつかの部屋に仕切られた薄暗い空間があるのですが、こういうお店が地元に愛されている「うまい」店なのです。地方の役人のお偉いさんの接待などが好まれて行われる空間はたいていそういうところで、もちろん地元の一般人も集います。
さて鍋には白く白濁した鶏ガラスープにたっぷりの羊肉のぶつ切りが入っていました。
煮立つのを待つ間の各自の銘々の小鉢には唐辛子を練り込んで発酵させた味噌、刻み唐辛子、味の素、胡椒、刻み(九条ネギ系の)ネギ、香菜(パクチー)など、かなりの量が入った碗にちょっとのスープを入れ、かき混ぜておきます。
これに鍋の羊肉をひたして食べます。半分以上、食べたところで白菜、青菜(つる草系のもの)、羊の肝、羊の血を固めたもの、腸、湯葉の細切り、ハルサメなどを入れてさらに食べていきます。10人以上で鍋を囲ったのですが、地元の男性はズボンを皆、たくし上げ、もう汗だく。10月も終わりの寒い時期です。それほど羊肉鍋はとにかくあったまるのでした。
ちなみに日本の「小肥羊」では、つけだれは有料。香菜をつけると、さらに350円が追加されるシステム。雲南なみのつけだれにしようとすると4人ぐらいで食べても一人500円ほど加算されてしまうのが悲しいところです。鍋の味は、雲南でもよく食べたものと同じで、幼少期の舌に染みついていた娘にとっては「懐かしい! おいしいね。」と、うれしそうに食べた後、「雲南にいきたくなっちゃった」とため息をつくほどの郷愁の味だったようです。
(この章おわり)
*今年もお読みくださり、ありがとうございました。年末年始の2週間の更新はお休みします。
よいお年をお過ごしください。